前回との関わりは一切ありませんので、十分楽しめるようになっています
本編はややグロテスクな表現がある予定ですが、そんなに期待するような事はないと思いますので、気軽に訪れて下さい
では、この物語は1人の少女の冒険のお話です
まずは序章から…
私は、悪魔の国に生まれた
悪魔…ミスーティアと呼ばれる醜い姿をした『何か』
それを生み出す能力を持って生まれた人々が住む国
だから、悪魔の国
ミスーティアは、一切の感情を持たない
喜びも、悲しみも、全てを無くしたから、悪魔なんだと思う
そこには悪も無ければ善もない
しかし、ミスーティアにはしてはいけない事がある
それは恐怖
ミスーティアに対して恐怖を抱けば、それは真の意味で悪魔になる
なってしまうのだ
ミスーティアは恐怖を好む
だから絶対に恐怖を抱いてはいけない
そうすればきっと、喰われて、そのまま人としては生きられない
ミスーティアに喰われても、悪魔にはならない
けれど、魂は肉体に縛られ、永遠にそこに居続ける
肉体が無くなっても、その破片が残れば、魂は天へと帰ることはなくその肉体に縛られ続けるだろう
…だから、こうのだ
悪魔に、『助けて』と
そして彼らは悪魔になる
感情を一切捨て、人間をやめた、悪魔に
…
…私達は、ミスーティアに恐怖を抱かないように、子供の頃から教育を受ける
怖がってはならない
彼らは恐怖を抱かなければとても良い『もの』だ
仲良くもなれる
ほら、怖がってはいけないよ
…そして、私達はミスーティアと、この国で生きていく
悪魔の国と呼ばれていた
悪魔と共に生き、悪魔を従えている
恐ろしい
恐ろしい
けれど攻め入ることは出来ない
彼らは、自身の肉体を悪魔へと変えられるからだ
悪魔を生み出す力を持ち、そして自身も悪魔となれる力を持つ
決して敵に回してはいけない
ーーー我らには悪魔がなにか、知らないからだ
「兄さん」
少女は、背の高い、しかし少し自分と似ている、その後ろ姿に声をかけた
「なんだい?お話の続きなら、今夜部屋においで、それとも、他の用?」
手に持っていたペンを置いて、背の高い青年は答えた
「兄さん!」
少女は何を言うでもなく、ただ、兄さんとだけ言う
「そうか、ならこっちへおいで、足元に気を付けて」
「うん!」
少女は、青年が呼ぶと、ふらつきながら、足元の本や紙束を避けて青年の膝の上に座る
「えへへ、兄さんの膝だ、高いな」
少女は足をばたばたさせて、青年の腕を掴むと、顔を上げ、青年に笑った
「そりゃあね、椅子に座っているからだろう?本当に僕の膝の上が好きだね」
青年も、はにかみながら、少女の頭を撫でる
「うん…だって落ち着くから」
目を瞑り、ぎゅっと腕を掴む力を込める
「そう、それは良かった」
少女に答えながら、青年は口ずさむ
「いつかの話だけど、続きを話していなかった話があったね」
「…続き?黒い妖精さん?」
少女が顔を曇らせる
「うん、黒い妖精さんのお話
あれの最後だけどね…」
「聞かせてくれるの?」
少女は、その話の最後を聞いていなかった
それは、意図的に遮られてしまったから
それを覚えていた少女は、また続きを隠されてしまうと不安になった
「あの時は途中で切ってごめんね、でも、そろそろ教えてもいい時期なんだ」
「教えても…いい?」
首を傾げ、青年に答えを求めた
「君も大きくなった、だから
もうそろそろあの時期が来るだろう」
「…あの時期って?」
「ああ、『彼ら』と仲良くするための
練習というかね、そう、実践をするんだ」
「かれら?」
初めて聞く言葉に、少女は不安を覚えた
けれど、親しくしてくれた青年が、嘘をつくはずもないと、話を真剣に聞く
「それについては教えてはいけないんだ、ただ一つだけ教えてあげるよ
…それはね」
いつも読み聞かせてくれるように、優しい声音で青年は教えた
少女に、物語の続きを…
「黒い妖精さんは、最後女の子を試すために自らをなげうつんだ、そして、少女がその資格を持たないと、黒い妖精さんは、元の姿に戻れない
…そして、その女の子はね」
「どうしちゃったの?」
ううん、と青年は言葉を区切った
「その答えはね、君次第なんだ」
「わたし?」
「そう、君に資格が無いと、この黒い妖精さんは、ずっとこのまま」
「やだ…元には戻れないの?」
少女が首を振る
「もちろん、方法はあるよ」
「なに?」
青年は少女を見ながら告げた
「何を見ても怖がってはいけない
それが、資格を得るための方法だよ」
その後、青年は少女に物語を聞かせた
普段と変わらず、
少女もやがて落ち着くと、青年の声に耳を傾けた
「…これで、このお話はおしまい」
「また、聞かせて」
「ああ、いつでもおいで」
「マリーベル」
青年は笑うと、少女を部屋に連れていった
うとうとしながら眠る少女に、ほのかに悲しみの感情を向けながら
「また、いつでも聞かせてあげるから」
青年はそう言うと、優しくベッドに寝かしつけた
「だから、今日はお休み」
「…忘れない限り、僕はここにいるから」
少女の側から青年が離れる
ギイ、と扉が閉まる音がした
そして、青年の影もやがて消えた
夜闇に吸い込まれるように
ーーーその時期、と言うのは、この日の事だったらしい
「グルル…ウウ…」
目の前には『何か』がいた
全身が黒くて、目や鼻はあるのに、どこか人間とは違う『もの』
これが、兄さんの言っていた
黒い妖精さん?
「やだ…怖いよっ、なんで…こんなのと仲良くなんて…」
『わたし』は、兄さんの教えを忘れてしまっていた
兄さんは、黒い妖精さんの話をしたとき、『怖がってはいけない』と教えてくれたのに
だから?
だからかな
黒い妖精さんは、『わたし』を睨みつけて、今にも襲って来そうだった
ガタン、と側に置いてあった荷物が倒れる
黒い妖精さんは一瞬気を取られた
その隙に近くの物陰に隠れる
「グル…ウウ」
けれど、隠れても無駄
『わたし』の場所はあっさりと見つけられ、その鋭い爪で切りかかってきた
「やだ…やだよぉ」
『わたし』は、その時無様にも泣いてしまった
ーーー最初から、答えは教えて貰っていたのに
そんな『わたし』を見ていたあの人達
『わたし』を連れてきて、ここに閉じ込めた人達
あの人達は、この黒い妖精さんと仲良くしないとここから出してはくれないだろう
そして、しばらくして、遠くで声がした
そこ内容は、緊張状態にあったにもかかわらず、しっかりと聞き取れた
何故なら、
「…あれは駄目か、『あいつ』とは仲良くしていたのにな」
「ええ…あの子があそこまで親しくした子は他にはいなかった」
「…仕方ない、『あいつ』には申し訳ないが、『あれ』になってしまった今、もう殺すしかないだろうな」
「そうね…『あれ』になれば、もう私達にもどうしようもないもの」
その言葉の先に繋がっていたのは…
「グルル…」
『どうした?また夜眠れないのかい?
なら、ほら、僕が本を読み聞かせてあげよう』
「…にい、さん?」
『わたし』が好きだった兄さん
その、話をしていたから
「そうね、失敗ね」
その言葉を聞いたのが最後
あれから、兄さんには会っていない
いかがでしたでしょうか、これからこの少女がどのように成長していくのか…
次回もお楽しみに