2人はしばらく構えたまま互いを警戒するように睨みつづけて続けていた。すると播磨は唐突にこう言った。
「....さぁ、来いよ。」
「あぁ。」
その言葉と同時にコスタは左手を真っ直ぐ播磨の方へ向けた。そして手の平から糸状の束のような物が播磨へ向かって猛スピードで進む。
「さっきのか....!」
播磨は特に問題なく別の場所にテレポート出来た。さっきのは地面に刺さった後に時期に消えていった。床に穴を開けていることから、威力は十分にある事を確信していた。
「どうだ。絶望したか?まあするだけするがいいさ。」
「さぁ、それはどうかな?」
播磨は少し笑みを浮かべながら返した。
「では、どんどん行かさせてもらうぞ。」
今度は手の平を真上に上げた。そしてまたさっきの糸の束が出てきて、真上に突き進んでいく。だが、さっきのよりかなり大きめだ。
「ではこれならどうだろうか?」
天井から糸の束がまた猛スピードで降りて来る。だが、束の数がさっきよりも明らかに多くなっていた。
「な、どんどん来るな。」
播磨は若干劣勢のように見える。今のところただ来た物を避けるのみ。これではきりがない。
「ふふふ....。逃げるだけの戦術はいつか破綻するぞ。」
コスタは左手指をピアノの弾くように動かした。すると播磨が避けた糸の束が前とは違い再び播磨に襲い掛かって来た。
「追いかけてくるか....。なかなか厄介者だな。」
能力のテレポートを使いかわし続ける播磨。だが何度でも播磨にそれは向かって来る。明確な殺意を持って。
「お前、その能力何処で手に入れたんだ?少なくともお前、学園都市の奴ではないだろ。」
播磨はそこまで余裕の無い中問いかけた。
「ふふふ....。魔術だよ。」
「魔術...?」
繰り返し襲い掛かる糸の束を慌てて避けながら会話を続ける。
「とりあえず能力使いが居るのは学園都市だけでは無い。よく覚えておきな。ちなみに俺は蜘蛛の能力って所かな。」
「魔術なんて仮想の話じゃないのか....!」
播磨は今まで自分の心の中での常識、思い込みが完全に否定されてしまったからか、かなり衝撃を受けたようだ。
「ピピピピピピピピ....。」
着信音が鳴った。反射的に電話に出る。
「あの、神明さん。播磨さん達の位置がなんとか掴めました。」
「そう。ありがとう。場所はどの辺り?」
少し焦っているのか若干早口になる。
「今神明さんが居るところから近いです。川沿いの廃工場です。」
「そこか....。」
神明は納得したかのようにこう返した。
「ごめんなさい、ちょっと急がないと行けない。」
「いえいえ。気を付けてください!」
電話を切ってから神明は播磨のいる所へ急行した。まるで播磨が何かを待っているかのように。
一方その頃、播磨とコスタは空中戦を展開していた。そろそろ反撃を試みたい播磨はチャンスを模索していた。そして徐々にある事に気付いて行くのであった。
「ん、そうか....。」
播磨は閃いた。例の糸の束は一回避けきると次のラッシュに若干時間を要する事に。その時間を利用を画策し始める。
「さぁどうする?もがきながら裁きを受けるか?それとも運命を大人しく受け止め来世に期待するか?」
コスタは己の優位を確信してこう発言した。
「図に乗るなよ屑野郎っ....!」
播磨は少しずつむきになっていく。苛立ちと不安と悩みがごちゃごちゃに入れ混ざって行くのを本人が感じていた。
例の束が3方向から飛んでくる。そして播磨はテレポートで難を逃れた。そして今だと彼の体が反応した。
「ここだ....!」
反撃を開始しようとした。だが下から時間差を置かずに束がまた襲い掛かる。
「なっ....!」
何とか避けるが不意を突かれてしまった。
「経験の乏しいお前の考える事なんぞ丸見え。次の波が来るまでの空き時間を利用したいんだろ?お見通しだよ。お前と俺では生きてきた土壌が違うんだよ!」
続けてコスタは手を床に置いた。
「いい加減しつこいからな。これで締めさせて貰うぞ....!」
コスタの周りの地面が糸の色で染まって行く。
「く、来る....!」
すると直ぐに今までとは比べ物にならない量の束が真っ直ぐ飛んでくる。
「ルゥーソ・ディール・インフェンロ!」
最初の方は避けきれるが、段々と追い詰められていく。
「くっそ、なんて量だ!これじゃあ....。」
「悪いな。しつこいからか、少し苛立っていたんでな。少し早いがお別れだ。」
「なっ....!」
何とか避けきれていた播磨だが、遂にコスタの攻撃を食らってしまう。
「うわっ!」
少し急所は外れたが諸に攻撃を受けた。そしてその衝撃で廃工場の端へと飛ばされ、そして壁を突き破り外へ行ってしまった。
「ここまで粘られるとはな....。噂の7人のレベル5にはもっと苦戦しそうだな....。」
こう呟きながら、少し休息を取るために煙草を用意した。ライターの火がはっきりと映えていた。灰色の煙が穴が空きがちな天井へ向けて登って行った。しばらくするとコスタは立ち上り播磨を捜しに外に向かい始めた。
「痛ったたた....。まあでも大丈夫か。」
普通の人なら間違いなく死んでいるであろう衝撃を受けた播磨だったが、不思議な事にピンピンしている。
「あら、捜してたのよ。」
聞き慣れた声。神明だ。そう確信した。
「やっぱり見られたのか。まあいいや。」
「中々苦戦してる見たいね。」
「まぁ、そうなるのかな。」
「で、どうするのよ。」
神明は播磨にこう尋ねた。
「あぁ、その事で頼みがあるんだ。」
そうして播磨は頼みを告げた。
「....分かった。そっちはそっちで頑張ってね。」
「ああ。当然だ。確実に倒しきる。」
「ええ。」
2人はこうして別の場所へ向かい始める。
「血の匂いがぷんぷんしている....。ここで一体何があったと言うのかな。」
播磨の勝利を確信し余韻に浸っている。この廃工場を少々気紛れで探索しているようだ。
「辺りを見ても廃墟しかないとは....。ここは本当に学園都市の一部なのか?」
コスタは不思議そうに、そして若干の不安を覚えながらこう嘆いていた。
――――今は21時15分。後5分すれば奴等が帰ってくる。神明が食い止めてくれるだろうがそれでも早い内に終わらせないと。―――ー
「....よし!」
コスタの頭上に3つくらいの鉄骨が突然表れる。だがすかさず反応した。
「なっ....!」
慌てて片手を天井へ。すると実物よりかなり大きい蜘蛛の巣の様な物がコスタの頭上をカバーする。辺り一面に広がる大きな衝撃音と土埃。
しばらくしてコスタは叫んだ。
「くそ!一体誰だ!」
自分の周りを警戒しながら見回した。
「よお。ご無沙汰してるぜ。」
「き、貴様ぁ!まだそんな力が有るのか!」
コスタは播磨の奇襲にかなり怒っているようだった。
「感情に身を任せる事。それがどんだけ危険な事なのか、お前が一番知っているよな?」
播磨は煽り気味にコスタにこう言った。
「ならば確実にもう一度仕留めるのみ。行くぞ!」
やはり糸の束がいくつも播磨に向かって猛進していく。だがコスタは何かがおかしい事に気付いた。播磨に避ける気配が全くないのだ。
「馬鹿め。とうとう完全に血迷ったのか?」
「違うさ。」
こう返した瞬間、播磨を襲い掛かっていた糸の束が彼の体を目前に後ろに大きく逸れていってしまったのだ。まるでバリアでも張られてあるかのように。
「ど....どういう事だ!?」
あまりの突然の事に困惑しているようだ。
「....ここの学生は特殊な演算処理をして己の能力を使用する。俺の場合は2つの物体の座標を交換したりあるいは自分の座標を移動出来たりする。」
一歩一歩コスタに近付いて行く播磨。だがそんな彼を余所目にもう一度攻撃をしようとするコスタ。
「さ、さっきのはハッタリに違いない...!そうでないと....そうでないとぉ!」
右手を勢いよく床に置く。やはりさっきのように自分の周りが糸の白で染まっていく。そして束が一回天井に向かい、そこから急降下。
「これで....!」
コスタの耳と目をが大きく舞い上がった土埃と衝撃音が襲う。反射的に顔を隠すように腕を持ってきた。
間もなく土埃は収まった。だがそこからは人影がはっきりと見えた。
「どうなっているんだ!?」
播磨はまだコスタの方へ向かって行く。
「だが....!その演算式を応用する事で能力の幅は大きく広がる。テレポートや物体交換だけじゃない。特定座標への侵入拒否に、負担は大きいが秒に何回もテレポートすることで空中も速く移動が出来る....!」
「ならばこれでどうだ....!」
懲りずにまた攻撃の準備をしている。今回は中々大技のようだ。
「本人の演算能力次第で!」
急に走り出す播磨。それに慌てて構えを取るコスタ。そしてテレポートした。
「そんな....!」
播磨の蹴りがコスタの横腹に直撃する。壁に大きく叩き付けられていった。背中への衝撃は自分の後ろに蜘蛛の巣らしき物を作り難を逃れたようだが蹴りを受けた箇所は相当痛そうにしていた。
「悪いな。俺は立場上、この能力を公に出来ない。風紀委員の俺には相手の個別の理由で屑の相手してる余裕はない。」
目を閉じながら亀裂の入った壁に座り込んでいるコスタ。
「もちろんここでお前を生かすと、お前の仲間に情報が漏れるのは明らか。」
「だからよ....お前には悪いんだが....。」
播磨の言葉に反応してコスタははっと目を開けた。何かを察したかのように。
「お前には此処で、死んで貰うぞ....。」
播磨はコスタを若干睨み付けながらこう言った。