「.... どうやら始まったみたいね。」
静かに息を吐き出しながら電話に出ている神明。ぐちゃぐちゃに放置され、山積みにされている建築資材の上に込んでいた。
「おかげさまであいつの所へ行けた。ありがとう。」
「いえいえ。当然の事ですので....。」
「そう。....そういえばあの集団は後どれくらいで着きそうかしら?」
「今は近くの通りを走っているので....。後2、3分くらいですかね。」
「あら。もうすぐじゃないの。いつもよりほんの少し早いかも。それじゃあここらへんで。お疲れ様。」
「はい。では頼みます。」
この会話を最後に電話を切った。
「....さてと。」
また神明は静かに動き始めた。右手に持っている銃を握りしめて。
――――レベル5はこの学園都市にはたった7人しか居ないと言われている。だけど、それは違う。違っていた。闇がこの都市の一部を隠すように、隠し隠されている。あくまでも単なる噂程度でしかない存在。『隠れレベル5(シークレットファイブ)播磨 正吾』....!――――
「....死んで貰うだと?」
播磨のあの言葉ではっと目が覚めたかのように話出した。
「あぁ、そうだ。」
「さっきまで劣勢だった奴が良くそんな事言えるな。まさか私の事を見くびっちゃいないだろうなぁ?」
少し間が開いたからなのだろうか、持ち前の冷静さを取り戻していたようだ。
「当然だし、だからこそこの力を使うんだ。確実に潰してやるよ。」
「成る程。本気で来ると....。」
「そういう事になるな。」
「善きではないか....全力と全力の衝突....。」
「くっ....。」
コスタの発言1つ1つに播磨は警戒心を高めていく。
「そうだ。ついでに貴様に俺の魔法名を教えてやろう。」
「魔法名....?」
「そうだ。俺のそれはjudicii394。日本語にすると『裁き』という意味になるのかな?」
「裁きだと....?」
「それともう1つ。この魔術名は殺し屋としての意味があってな。これを知った物にはな....。」
「............。」
「死がまっている待っているのだよ!」
「くっそ、お前も殺しに来るのか....!」
そう言いコスタは右足で地面を勢い良く踏みつけた。
「バリリェア・ビアンカ!」
コスタの周りがまたもや白で染まっていく。だが今回は規模も何かも違うようだ。
「うぉっ。」
播磨の足元にコスタの糸がじわじわと伸びていく。
「貴様の能力のように、俺の能力の使い道も決してワンパターンではないのだよ....。 」
「やっぱりそうだろうな....!」
播磨はテレポートをして糸の縛りから解き放たれた。
「今度はこっちの番だ!」
コスタを真上から殴り掛かった。だが、向こうも対策をしない訳では無かった。
「丸腰で挑むと思ったか?」
手の周りから蜘蛛の巣のような物が生成されていく。それと、播磨の拳がぶつかりあう。衝撃波が辺りを波状に包み込んだ。互いの能力がじりじりと拮抗し合う。
「ぐぬぬ....!」
つい播磨が口に出してしまう。蜘蛛の巣の装甲は相当硬くなっているようだ。そうこうしている内にコスタがその体勢を維持しつつ別の攻撃を仕掛けてきた。いわゆる揺さぶりだ。片手の指を動かすと同時に前の束がまたもや襲い掛かる。当然のように後ろへと弾き飛ばされた。
「ならこれで....!」
播磨はテレポートをしてコスタの目線の真下へと移動をした。そこから低姿勢のまま蹴りを繰り出した。すかさず反応して装甲を作り出した。
「隙を作れたとでも思ったか....!」
「あぁ、思ったさ!」
播磨の蹴り技が装甲を突破し、コスタの腹部を直撃した。
「....ぐはっ....!」
そうしてもう一度壁へと飛ばされて行った。
「....来たみたいね。」
耳元に自然と入ってくるいくつものバイクの音が神明を気付かさせた。それはまるで、狩りから帰って来た肉食動物の群れの用だった。彼らは次第にバイクを停め、ある建物へと向かい始めた。一瞬見てすぐに判断出来る不良の集団だ。
「あんた達....早くお家に帰りなさい。」
「あぁ....?てめぇ何様のつもりだよ。」
集団の内の1人が神明の注意に荒く反応した。
「風紀委員よ。普段からろくな事してないあんた達を取り締まりに来たのよ。」
すると、辺り一面から笑いが起きた。どうやら風紀委員を馬鹿にし、貶しているようだ。
「オイオイ!風紀委員だとよぉ!それも1人!何しに来たんだよ本当!」
「鬱にでもなったのかよ!」
「銀の腕章似合ってるねぇ....!姉ちゃん!」
流れは変わり神明は一気に煽られるようになってしまった。
「その割にはあんた達、隠し持っているそのナイフは何?もしかして警戒してる?」
神明は不良集団の服装から何もかもををしっかり注意し観察していたのだ。
「ちっ、だからどうしたんだよ!?」
1人が逆上して来た。
「あんた達は所詮そんな集団って言うことよ。あんた達がここを縄張りにして他の学区の生徒達を襲撃しているのも全て知っている。そんな屑みたいな生活は今日でもう終わりよ。」
神明は集団を睨み付けてこう告げた。
「さっきから図に乗りやがって....殺してやらぁ!」
神明にある男がナイフを片手に襲い掛かった。「持ち方からして素人ね....。」
あっさりかわしてそこから鞄を使い殴り倒した。
「なっ....。」
周りからどよめきが少し起きた。
「くそっ、ならこれで....!」
さっきと別の男が拳銃を取り出し神明に向けて発泡しようとした。だがしかし男の動きだけが止まったような感じだった。周りの集団には何が起きたのかさっぱり理解出来てない様子だった。止まった男に対して神明も銃を素早く取り出し手早く両脚に弾を命中させた。
「なっ....!」
撃たれた男は苦しみながら倒れこんでしまった。
「こいつ、俺らと同じで実弾銃を....?」
「しかもあいつ何か止まったよな....?何が起きたんだよ....!」
男らは突然の出来事に困惑を隠しきる事は出来なかった。
「レベル4の能力『時ずらし(タイムラグ)』よ。私の能力は特定の人物だけ僅かにだけど時間を止める事が出来る。」
「ちっ、こいつ能力者かよ....!」
「あんた達がこう落ちぶれてる間にもこうして己の能力を磨いている人、能力を獲得しようと努力する人なんて沢山いるのよ。現実逃避は今日で終わりにしましょうか。」
神明は知っていた。エリートという立場を維持し続けて来た者、どん底から這い上がってきた者。だからこその発言だった。
「おめぇなぁ、無能力者を舐めるんじゃねぇぞ!」
集団が一斉に襲い掛かって来た。
「それは違う....!」
男達の動きが一斉に止まった。連続した発砲音の直後に動き出した瞬間に彼らは一気に倒れ込んでいった。
「偏りきった自分達だけの価値観で全てを決めるのは屑がする事....!」
「ち、畜生.... 。」
「急所は外してある。だから安心して。」
「....這い上がって来て。そして気付いて、自分の可能性に....。」
そう口にして神明は男達の元を去っていった。
「....来る!」
土埃の間から動いている人影があるのに播磨は気付いた。コスタはまだまだ戦えるようだ。すると間もなくコスタが播磨の方へ飛んで来た。足元に糸のからくりを施して飛んでいるようだ。
「ふふふ、私がこれでくたばるとでも?」
「思わない方が後でがっかりしないし、その通りだな。」
「そうか....。」
最後にこう小さく呟いた。
地面から僅かな音がした。
「....ん?」
播磨は違和感を感じ、その直後地面から糸の束が来た。急な事で慌てて避けきった。だが糸の束がきりもなく、大量に地面から出てきた。そこから播磨を追い掛けて行った。だが持ち前の能力で来た弾き返しながらコスタの方へ空から近付いて行く。コスタへ近付くごとに当たる糸も尋常な数に増えていった。
「....なっ!」
コスタへ攻撃を仕掛けようと播磨は突然糸の攻撃にかすってしまった。そして少しばかり体勢
を崩す事になった。
「貴様、やはりそうなのか....!」