その時、播磨の演算処理によるバリアに隙が出来てしまったのだ。
「貴様、使い慣れていないだろう?自分の能力を。演算処理とやらの精度が悪いのじゃないのか?」
「くっそ、やっぱり抜けが出来る....!」
「後その能力自体のパフォーマンスが高い。やはりそれ相応の負担は掛かるのだろうな。」
コスタは見抜いていたのだ。播磨の能力から負担が大きい事、そこから出てくるであろう演算処理のミスを。
「貴様とは闘いの経験の差が違うのだよ....!」
更なる攻勢に打って出ようとした。播磨が己の能力を隠している事がこういう形で裏目に出てしまう事となってしまったのだ。
「させるか!」
頭の中が焦りで覆われるようになって来た。時間が限られている。播磨に余裕は何一つ存在していない。次なるコスタの攻勢を阻止しようと播磨は走り出した。
「これで....!」
走りながらテレポートし右足で円を描くようにコスタへ蹴りを入れようとした。
「2度目は無しだ....。アルマトゥーア・ビアンカ!」
コスタの右手を一瞬で糸が包み込んでいった。そしてそこに播磨の蹴りが入った。
「ぐっ....。」
蹴りの衝撃からか少し声を出し後ろへ一歩分下がったコスタだったが、前とは違い今回踏ん張り、耐えきって見せた。
「貴様、流石に痛かったぞ....。」
「普通の奴なら重傷かそれ以上なんだが....。お前もお前だよ。」
「だからこそだ....。此処で確実に....殺す!」
「あぁ、俺もそうだ!」
そこから数分間2人の近接戦が続いた。だが2人共格闘技を繰り出すその間にもなにかチャンスを作るきっかけを模索していたのだ。
「....!」
先に仕掛けたのはコスタの方だった。播磨の拳をしゃがんで避けた勢いのまま足元を躓かせるように蹴った。
「なっ、しまった!」
ふわっとほんの一瞬宙に浮いた播磨。その隙に大技を叩き込んでみせた。両手を後ろへ持ってきて若干間を置きその両手を今度は前で1つに合わせる様に目線の先に勢い良く持ってきた。
「ブンドゥク・セインズ!」
すぐ目の前にいた播磨を激しい閃光と明確な殺意を持った糸の束、塊が一瞬で襲った。播磨は
両手で上半身を覆おうとし少しでも防ぎきろうと反射的にそのような体勢を取った。だがあっという間に播磨を糸達が包み込んでいった。
「く、くっそぉ....!」
能力のバリアはかろうじて維持出来ているがどんどん後ろへと押されていった。そしてある拍子についに壁へ打ち付けられた。高鳴る金属音。放置物の山へと正確には放り込まれたようだった。
「はぁ....はぁ....。ふぅ。随分私も年を取ったものだ。この現世でも『人間五十年』だとするならば、とっくに寿命を迎えているのか....。」
さっきの大技で体力をそこそこ消耗した用だった。
「....く、くっそお....。なんつー威力だ。後ろの壁にぽっかり穴が空いていやがる....!」
土埃に囲まれた中自分の光景に驚きながら痛みを少しでも抑えるためかゆっくりと立ち上がった。そして無造作な金属のがらくたの山のある物に目をつけた。
「これは....。懐かしいじゃねえか。」
そしてそっとそれ、腰の長さくらいの鉄パイプに手を当て、ぎゅっと握りしめて自分の体へと持っていった。
「体力の負担的にもうそろそろ限界が来る....。次の大技が来たら流石に防ぎきれない....!」
播磨の心を不安と焦りが貪っていく。だが
「だけどこれを使えば....。でも久しぶりに使うからな。さっさと感覚を取り戻さないとな。」
そう呟いてからまだ周りを覆っている土埃を抜けてコスタの方へ走り出した。
そして直ぐに、『タッタッタッタッ.... 』という足音がコスタの耳に入って来た。
「まだ来るのか....。いい加減早くくたばらんのかねぇ....!」
コスタの息が少し荒かった。それは疲れからなのだろうか、それとも苛立ちからなのだろうか。
それをよそに播磨は手ぶらでコスタへ向かった。そして目の前でテレポートした。
「又そのやり方か....。しつこいぞ!」
コスタは振り返り播磨の攻撃に対応しようとしたが、また消えていた。
「ちょこまかと....!」
消えてまた直ぐ表れた播磨を糸で襲おうと左手を向けたがまた消えた。そして何回かこのやり取りは続いた。
そしてとうとう播磨が蹴りを入れようとした。
「やっと攻撃する気になったか....!」
コスタの頭上に播磨は居た。彼には完全に蹴りを入れて来るかの様に見えた。だが斜め上を見ていた目の先に播磨の姿がない。
「な、しまった!」
コスタ本人も播磨も隙が出来た事に瞬時に気が付いた。
「俺はこっちだ!」
播磨が右手に持っている鉄パイプがコスタの右太ももを強打した。
「なっ!くっ....くそおぉ....!」
コスタは痛そうに眉間に皺を寄せていた。そして衝撃と脚の痛みでコスタは地面に倒れた。
「まだだ!」
播磨のその言葉にコスタは慌てて起き上がった。だが足元がふらついており、とても今までの能力の質を維持できそうに無かった。急な策としてコスタは糸で出来た弾を右手から何発も出した。だが播磨はそれを特になにもせずに
弾き返した。
播磨が地面を足で強く叩いた。そして周りの床でヒビや亀裂、沈下が発生した。コスタはそれに煽られて体勢をまた崩しかけた。
「く、来るなら来い!フィーロ・ミューロ!」
コスタの周りに糸の壁が出来た。
「ならばこうだ....!」
播磨は両手を横に持ってきて手首をくいっと曲げた。すると、両脇にあった廃材が播磨を方へ重力など関係なしに播磨の方へやって来た。
そして播磨は勢い良く右手を前にした。そしてその廃材がコスタの壁へ一直線に、かなりのスピードで向かった。
「此処で、今で、終わらせてやる....!」
糸の壁に激しく物が打ち付けられていく。
「ぐ、ぐぬぬぬ....。」
徐々に壁にヒビがミシミシなどと言った音を立てながら入っていった。
そしてついにそれは粉々の結晶となり破れ散った。コスタは驚く表情した後、悔しそうな目付きで播磨を見た。
「これで....!」
壁の崩壊を確認し播磨が再び走り出した。
「来るなら来い....!」
向かって来る播磨にこう叫んだ。
そして播磨は例の鉄パイプで攻撃をしようとした。
「....二度と食らうものかぁ!」
コスタは糸の束で播磨の体勢を崩そうと攻撃を重ねた。だが攻撃の度に若干煽られるも体勢が崩れる事は無かった。
「そこだぁ!」
コスタ本人ですらあまり自覚の無かった上半身、肋骨の方へ 鉄パイプを思い切り向けた。
コスタは心臓付近で両手を交差さて守備の体勢に入り、播磨の攻撃を防ごうとした。
閃光が激しく飛び交っている。播磨の攻撃とコスタの蜘蛛の巣防御。それぞれが『矛と盾』として対立しあった。
「な、なんて堅さだ....!」
「当然....!私が貴様から見て老耄だとしてもそんな事は関係ない。勝ち、貴様を殺すのだ!」
コスタがそう告げると防御がより一層堅くなった。播磨はそれの反動で体を後ろへ若干剃らされてしまった。
「だけど、それは俺も同じだ!ここで勝たなくてはいけないんだ!」
心が折れそうになった播磨が自分にこう言い聞かせた。
「....俺は守らなくちゃいけないんだ....!この学園都市を....!」
播磨が再び押し戻した。
「この先天国が待っていようが、地獄が待っていようが....守ってみせようじゃねぇか!」
播磨の目の色が明らかにさっきと違った。本気の目をしており、情熱に満ちていた。
「な、何!?」
播磨が押し戻すどころか次第に優位になっていった。
「うぅおぉぉぉ!」
そしてついに、播磨がコスタの守りを押しきった。鉄パイプがコスタの肋骨、心臓付近に凄まじい勢いで当たった。
「そ、そんなぁ....!」
「ぐはっ....。」
コスタが目を閉じて苦し紛れに血を吐いた。そして勢い良く飛ばされ、地面に一度叩きつけられてから壁を破り、外の錆びきったコンテナ置き場に放り込まれた。