ヤンデレ少女がヤンデレ少女と付き合うと……。


※ヤンデレです。苦手な方はご注意ください。
※ガールズラブです。苦手な方はご注意ください。

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ヤンデレ×ヤンデレ×百合=?

 

 葵とは小学生の時に知り合った。

 

 私は昔から楽観的で、物怖じしないタイプだった。だから、引っ越してきたばかりで初めて出会う女の子に声をかけたのだった。

 

 葵は教室の隅で誰にも気づかれないように本を読んでいるようなおとなしい子だったけれど、話しかけると色々なことを考えているのが伝わってきて、私はすぐその虜になってしまった。

 

 葵は物知りで、たくさんの知識を私に教えてくれた。勉強だけではなくて好奇心の満たされる科学的な話や、果てにはファッション、コスメのことまで。

 

 うんと幼い頃から手入れを欠かしていない葵の髪はまっすぐで、それを掻き上げるとふわりとした花の香りが漂ってくる。

 

 子供らしくはしゃぐタイプでない葵は幼少期は周囲から距離を置かれることが多かったが、今は違う。なにせ知的でクールな美少女女子高生だ。放っておいてもお近づきになりたい男子とお零れに与りたい女子がわんさか寄ってくる。

 

 ……まあ、今でも高嶺の花扱いされて一部生徒には敬遠されているようだが。

 

 

 

 そんな葵だが、私との関係に転機が訪れたのは中学生の時だった。

 

 それまで私は誰かに恋をすることもなく、友人は多いもののどこか空虚な日々を送っていた。

 

 そして、葵は私にとってかけがえのない幼馴染兼親友という立ち位置でしかなかった。

 

 次第に私は好きでもないのに男子に告白しては付き合い、交際を重ねていくことになる。というのも、当時の私はクラスの中でもなぜかモテる印象を抱かれており、その期待に応えなければと考えるくらいには自分の恋愛への無関心さに気後れしていたからだ。

 

 どこか焦っていた。

 

 告白して、付き合って、どこか性格が合わなくて振られる。好きでもない相手ではあったが、振られるのは自分を全否定されているようで心に刺さることが多かった。

 

 かと言って、義務感からできた恋人が長く続くはずもなく、一年で十人ほどと付き合い、ビッチの称号を手に入れた。

 

 少しずつ孤立していき、焦りと不安が心を押しつぶしていった。

 

 そんな中でも葵はずっと私のそばにいた。

 

 そして――。

 

「好きです! 美月が好きです」

 

 呆気にとられる私の顔を見ずにずっと下を向いたままの葵が言った。

 

「ごめんなさい、こんなこと言って本当にごめんなさい。でも! 私は美月のことが恋愛的な意味で好きなの……」

 

 振られる恐怖。友情の壊れる恐怖。関係をすべて打ち切られるかもしれない恐怖に怯えて、蒼白の顔で告白してきた彼女を見たとき、私は本当の愛を見つけたのだ。

 

 一番大切な人は気づかないくらい近くにいるのだということを。

 

 私がどうして愛を見つけられなかったのかがようやくわかったのだ。ずっとずっと大切な親友ではあったけれど、私は同性を恋愛対象として考えてもいいということをその時やっと知ったのだ。

 

 私が気が付かなかった六年越しの両片想いはこうして決着がついた。

 

 

 

―――

 

 

 

「ねえ美月。今日、なんで一緒に帰れなかったの?」

 

 切れ長の目をいつもよりも心配げに揺らして問われた。

 

「ごめんってば。文化祭実行委員で捕まっちゃって……」

 

 文化祭実行委員。文字通り文化祭の運営、準備を行う委員会だ。短期的なものだからとクラスの雰囲気に乗せられてノリで選んでしまったものの、予想以上の拘束時間となって葵との時間が削られていっていた。

 

「ふーん、委員会か。じゃあ西城さんかな、一緒にいたのは。それとも南くん? あ、それともあれかな。壱岐さんかな?」

 

 ずずいと整った顔が近づいた。

 

「さ、西城さんだよ。ほら、あの子委員長だし。一杯仕事抱えてるみたいだし」

 

「そっかー。西城さんかぁ。二人っきり? おかしいなぁ、おかしいよね、変じゃないかな。私たち付き合ってるんだよね? なのに別の女の子と二人っきり? へぇ。美月、私のことどう思っているの?」

 

 葵の声から色が無くなっていく。

 

「ワタシ以外のヒトとフタリっきり? どうしてどうしてどうして、まるでまるでわたしが大切じゃないみたい――」

 

 底冷えするような冷気が足元を這い、つま先から凍えていく。

 

 でも――。

 

「もう! 葵は心配性だなー。私が愛しているのは葵だけに決まっているじゃん」

 

 そう言ってほっそりした白い手を握ると、ボフンと目の前で何かが噴火したような音がした気がした。

 

「や、やだ、美月ったら。そんなことで誤魔化されたりなんか……」

 

 そう言って身を縮こまらせる葵の手をぐっと引いて耳元に口を寄せる。

 

「わかってくれるまで何回でも言うよ。葵、大好き。愛してる。世界で一番大切だよ」

 

「ふへぇ」

 

 あ、崩れ落ちた。

 

 学校では絶対に見せることのない緩み切った表情でビクンと跳ねる身体。

 

 この部屋では見慣れた風景ではあるけれど……。

 

 私はスマホでその姿を何枚か収めて、ほくほくした気分でパソコンのバックアップファイルに転送した。葵ファイル内の写真もこれで972枚か……。後28枚で大台に乗る。

 

 えっ? 写真を取る理由?

 

 だってこんなかわいい姿を残さないなんて世界の損失でしょ。

 

 それはそうとして――

 

「そう言えば葵さぁ、私と離れている間、なにしてたの?」

 

「えっ」

 

 まだ崩れたままの葵を抱き起こす。まだ足腰に力が入らないようで上手く立ち上がれないのか手を私の腰に回してきた。

 

「私はさぁ、早く葵に会いたくて、話してる時も葵のことだけを考えて、葵のことで頭の中ずっと埋め尽くしてたのに……。何? 葵は別のこと考えてたの?」

 

「……へ?」

 

 ああ、違う。怒りたい訳じゃないのに。でもイライラする。

 

 イライラ、イライラ。この気持ちは何だろう。

 

「どうして私のこと考えているときに西城さんが出てくるの? それって、私のことで頭の中が一杯になってないってことじゃない?」

 

「ご、ごめ……」

 

「何で別の人のこと考えてるんだろう。どうすればいいんだろう。悪いことするのが手とか脚だったら切り離しちゃえばいいけど……。でも頭を切り離したら葵が死んじゃうよね。」

 

「み、美月……」

 

 か細く心地いい声が私の耳に届き、頭の中をすっきりとさせる。

 

「そうだ! 今までのことなんてどうでもいい。これから、私のことしか考えられないようにしてあげればいいんだ。」

 

「ごめんなさい……私、私」

 

「いいんだよ。だけど私のことだけで一杯にしてあげるから、もう葵も私のこと以外考えちゃだめだよ」

 

 こくこくと震えるつむじを見下ろして私はにっこり笑う。

 

「ちゃんと反省してて偉いね! もし嘘ついたら、舌、引っこ抜いちゃうから」

 

 

 

 ああ神様、私、こんなに幸せでいいんでしょうか。

 

 大好きな人と両想いで、しかも似た性質をもって生まれたなんて!

 

 




狂気系元気っ娘のヤンデレ美月ちゃんと依存系真面目のヤンデレ葵ちゃんでした。
すっごい相性良さそうですね(白目)
ちなみにどっちも束縛が強く、独占欲も半端ないです。
そしてキャラ立てしようとしたはずなのにキャラ被りも半端ない(当たり前か……)


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