最終話+ほぼ等量のあとがき。
「お世話になりました!」
「いろいろとありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ、貴重な機会を頂きました。皆様ご壮健でありますよう」
「またお越しになってください」
4人と1頭が足どり軽く山を下っていく。あっという間に山の起伏に隠れて見えなくなった。
泰山仙境を訪れる〈冒険者〉にしては珍しいほどいろいろと話をしたものだ。
冒険者は、もっと淡々と用事を済ませ、淡々と依頼を消化し、強いモンスターが出たと知ったら大挙して襲いかかる存在。
冒険者同士ではよく話すが、我々とは必要最低限しか話しかけてこなかったものだ。
「
「辛辣だな?」
「気まぐれ神獣の角端は言うに及ばず。索峰っていう
狐仙の認定を受けるための
気の遠くなるような膨大なアイテム納品を経てようやく1回の挑戦権が得られる。受験料の時点で軽い気持ちでの参加お断りの高難度。
受験料のとなる納品までは周囲の協力が得られるが、本試練は単独参加が必須であり仲間の協力は得られない。
内容も、個人で討伐しに行くには荷が重いと言われるボス級6種7頭と、弱くはない取り巻きを補給なしの連戦でことごとく平らげるボスラッシュ形式、しかも時間制限あり。
ご丁寧に1体撃破ごとに試験官たる東嶽娘娘が受験者の
トドメと言わんばかりに、どのボスがどの順で来るかは参加しないとわからず、5体撃破した後に出て来る6種目は2頭同時であり取り巻きも2倍。
残り時間に追われ、矢尽き剣折れ魔法の源たる
救済措置としては、取り巻きを撃破すれば蘇生はされないこと。
とはいえトータルでの時間制限もあるのでのんびりと取り巻き掃除はしていられない。
狐尾族の種族特性も試練難易度を上げる一因となる。
元来狐尾族は魔力への適性が高く、
かくして〈東嶽娘娘深科挙〉の成功率は5%に満たないという。
ゆえに狐尾族の〈冒険者〉において、狐仙の号は仙君の証であると同時に強者の号である。
これをもって狐尾族は極めたとする者もいて、狐仙になった後に行方知れずになる例も多い。
また狐仙となっても繰り返し受験し達成する者もいる。
成否を問わず、挑戦した者から瑞袞がよく聞く感想は「これ考えたやつ殴りたい」。
挑戦権の難易度から再受験に及び腰になる者が多く、その難易度を先行者から聞いた他の狐仙志望の狐尾族が絶望するとも聞く。
どのようにして達成したのか、聞いてみたいものだ。
「〈
「野狐が狐仙に弟子入り希望、もしくは庇護を求めたか。どこにあれだけ潜んでいたのやら」
項樊が聞いたところによると宿にした廟にまで入って来たという。
〈霊芝狐〉は害のない種で、要求を満たせば珍しい恵みを齎すがそもそもあまり人前に出てこない。
〈東嶽娘娘深科挙〉他、泰山における幾つかの高難度試練受験への裏口受験票となる物を持って来ることもあり血眼になって探す者もいたものだ。
それで本試練が楽になるわけではないのだが、前提となる部分を省略できるのは魅力的であったらしい。
「いい経験には、確かになりましたけどね、。あんな胃の痛いことなら何回もはごめんです。角端の幼い主人にしろ、狐仙の上司の女にしろ、手綱はしっかり握っておいてもらいたいもんです。どちらも御せているとは言えなさそうですが」
「おかげで色々喋ってくれたからいいではないか。冒険者に国家転覆級の政変が起きていることと、角端の出現は、皆に周知する必要がある」
「そこそこに情報くれましたけど、神殿のこと教えちゃいましたから等価にはならないんじゃないです? さっさと騒動が収まればいいですけども、冒険者はアクの強い奴多いからなあ。角端は明らかな凶兆だ、考えたくない」
冒険者に降りかかった危機がすぐに収まると思えないことは彼らも予想しており、詳細は語らずとも、面倒事が起きたことは隠していなかった。
腹を割って話すほどの信頼関係を築けなかったことは残念だがいろいろと重大情報を漏らしてくれているので、いずれ勝手にわかることもあるだろう。
「〈霊芝狐〉の大量出現も不思議な話ではあるんですが、山頂近くで〈
「そうだな。山頂付近で見られたことはなかったはずだ。日の光を浴びず育つから白い」
貂の類は泰山全域で見られるが、一生を深地で過ごすと言われる〈明星白貂〉はアルビノ種に近い進化を遂げたという。体毛が白くなったことで逆に暗所で目立つようになったため個体数は少ないようだが。
それでも猛者の多い深層環境に適応した生物。小さな姿ながら底力はあり、地脈に近いところで育つからか魔力も強い。
しかしながら、山頂付近、もっと言えば地表付近で目撃されたことはなかったはずだ。
「また奥の方で変なこと起きてなきゃいいですけども」
泰山の地下にある洞窟は広くさながら蟻の巣。数十年単位で〈冒険者〉らによって探索が行われているものの全容が見えていない。
天然部分と古代の文明による手が加わった部分が広大な洞窟内で混在しており、防衛機構として遺された召喚機構が生きていたとか、深部で永い休眠に入っていた古代生物の巣を掘り当ててしまったとか、未発見であった部屋を掘り当てた際に機構を壊し封印を解いてしまったとか、それらに対処した結果、副次的に地下水脈を刺激したり地底湖の底が抜けて地形が変わっただとか、なにか異変が起きた事例に事欠かない。
召喚機構から生み出された生物が逃げ延びて野生化したと思わしき例もある。
かつての文明人たちはこの地下になにを置いたのだろうか。
「大型獣が縄張りを移動したぐらいなら可愛いものだが」
「それでわざわざ地表まで来ます? 一匹だけだったみたいですし、好奇心旺盛だったか道に迷ったかのほうが確率は高そうですが。楽観はしませんが、かといって深部調査に送り出す〈冒険者〉がいないですから。なにか起きてても備える以外ないですけども」
泰山仙境に住まう仙人や修験者では調査に赴けるほどの戦闘力がない。人数もそう多くない。
瑞袞にできることと言えば、調査令の発布と地表の観測のみ。
頼みの調査令は受ける冒険者がいないのでいつ受諾されるかわからない。
「依頼すればよかったか、角端と愉快な仲間たちに」
「受けたとは思えんな。早めに燕都に帰りたがっていた」
「でしょうね」
「依頼を受ける者に強さ以外の条件はつけたくはないが、あまり探らせたくはない相手でもあったな」
「ああ、そっちの理由でも不適格な人選になりますか」
何事もなければそれでいいのだが。
もしなにかが起きていた場合、いろいろと含むところのあった彼らでは正しい調査結果を明かしてくれるか怪しい。
角端がいることも不利な材料になる。角端の存在が他のモンスターを遠ざけ、もしなんらかの大量発生ケースであっても間違った調査結果を持ち帰る恐れがある。
「なにが起きているにせよ我々がやれることは多くない。残念ながら」
「歯痒いこった、まったく」
瑞袞としてはギルドウォーによる〈冒険者〉同士の潰し合いはあまり良いものとは思っていなかった。
しかし泰山に活気があったことも事実であり、常駐していた〈冒険者〉らによって広義で獣害と呼べるものが全て鎮圧されてきたことには感謝がある。
静かなことは良いことだが、そのせいで安心はできない二律背反。
なにか異変が起きているのであれば、それが大事にならず潜伏しておいてくれと〈大地人〉の神殿管理者として祈るばかり。
***
「いいところでしたね、泰山」
「そうか?」
見晴らしよく、静かで、涼しくて。
現実世界で人気の観光地となり、昔の人が大事な場所として祀った意味も、
泰山仙境からサクサク下山で泰山砦、
目標地点は
それにしても。
「行きに比べて、モンスターが出てこないような?」
「〈
「ああ、そういえば」
モンスターとの遭遇率を下げる〈応鳳霊麟徽〉は行きにはなかったな、と思い出す。
すると王燁ちゃんが手を挙げ、停止を促した。
『祭具の効果もあるだろうが、同じ道を戻っているからな。
「うぉ」
王燁ちゃんと
少女の声から聞きなれない硬い口調、少し行き過ぎて止まった
「幻獣憑依の入れ替え使うようにしたのか」
『喋るのに楽だからな』
それはそうだが、先に一言ぐらい欲しかった気もする。
「それじゃ、王燁ちゃん、いま角端の四足で走ってるってこと? 転ばない?」
『いや、完全停止してから入れ替わった』
角端の自己主張の強さを見ていると、主従の関係とはなんなのか何度でも疑問が湧いてくる。
反省の色が相変わらず見えない。改善するのだろうか。
「どうやって交代打診したんだ?」
『ちょっとばかり合図を決めてな。主人の足先に軽く電撃をな。パチパチといったぐらいだが』
それはそれで器用なことをしている。
「ネタスキルのはずだったんだけどなあ。結構やれること多いんだな」
『我の特異性もあるがな。幻獣憑依の等級を冒険者の策定した基準に当て嵌めれば、秘伝よりも上ではないかと思う』
「幻獣憑依に名前借りただけで、別スキルみたいなものよね。Ex幻獣憑依と言えるかしら」
「固有スキルじゃないですか? 角端入手で解放される要素ですし、CPUの敵が使うスキルと冒険者の使う同名スキルで性質自体が違うことってそれなりにありましたし」
「自動発動って言ってたからそういうことになるのか。冒険者が発動してる幻獣憑依じゃなくて、角端が自前で持ってる幻獣憑依を王燁ちゃんも入手時点からアクティブに使えるようになる、と」
ここまで角端が賢いと、システム上ではできなかった悪用(なのか?)も、できそうな感じ。角端が、だけれども。
「角端よ、さっき言ってた〈応鳳霊麟徽〉とは違う方のモンスター避け。気配が残るとは?」
『知っての通り、我は生態系において限りなく最上位に位置する。足跡、魔力行使の残滓、そういった生物強者の痕跡に対して本能で警戒されるというだけのこと。
貴様らとて、新しい巨大な足跡や大群の通った跡があれば警戒ぐらいはするであろう? 泰山砦付近に入るまでは幾度も戦闘しているのだ、気配は濃く残る』
「なるほど」
「ねぇ、そろそろ、いかない?」
意識を取り返した王燁ちゃんの一声で、3人顔を見合わせ、各々の騎乗生物に蹴りを入れる。
変化が見た目に現れず、奇妙な感覚だけが残る。
〈応鳳霊麟徽〉の敵愾心上昇軽減という実質エンカウント率低下効果と、残留しているらしい角端の気配によって、泰山周辺だけで数十あった行きの戦闘がまさかの帰りゼロ。
拍子抜けするほどにあっさりと泰山の範囲を抜けた。
「ねえ索峰、これたぶん燕都まで宿なしで行けるわよね? 対人が無ければだけど」
行程としてはまだ半分も来ていない。しかし行きの6割7割の時間を占めた泰山周辺は既に抜けた後。
時刻も昼にはまだ時間があるはず。雲が厚いため陽は見えないが体感10時過ぎ。
「雲暗めで風もあるから雨降りそうな気がするな。速度上げて降られる前に燕都に突っ走るか、雨宿りも兼ねて早めにどこかに寄るか、どっちがいい」
「〈強行軍〉使ってもらってそのまま行くわよ。間に合う。たぶん。補助防具もあるし、角端の言う通りならモンスターにも遭遇しにくいはず。それにあの速度なら、PKいても気付いて迎撃態勢とる前に行き過ぎるでしょ」
風はあるが、湿気のある重い風ではない。まだ余裕はあるはず。
相手がプレイヤーであるなら、この天気は好都合ではないかとも思う。
「雨降ったら雨降ったで、既に外にいる人の動きは鈍りそうですし、普通撤収じゃないです? それに朝から徐々に雲が厚くなってますし。明らかに雨降りそうな空模様で遠出したがる人もあんまりいないと思います」
仮にプレイヤーキラーがいるとしても、この世界に来たばかりで雨にも動じずに獲物を待ち続ける刺客さながらの根性が据わっている人は、存在を疑う。
狙う相手もプレイヤーなのだから、獲物自体の数も減るだろうし。
「なので、燕都急行に賛成で」
「王燁はどっちでもー」
「2票燕都急行賛成が出てて王燁ちゃんが0.5票で過半数以上に到達。よって急行決定だな。反対票入れたいけど1人じゃ意味が」
「あれ、索峰反対だったの?」
「帰る途中にどっか村落寄ることも目的のひとつにしてたからな。行きもだけど」
反対を強硬に主張しないあたり索峰さんの諦めは早いというか折れやすいというか。
強硬に反対することはあるのだろうか。今度
好意的にスキルを発動し、組み合わせたせいか、行きよりも走る速度が上がっている気がする。
〈応鳳霊麟徽〉によるMP消費軽減とMP自動回復により〈強行軍〉の発動時間は飛躍的に伸び、王燁ちゃんのMPが2割を切ったあたりで1度下馬しておやつ程度の軽食休憩。
泰山周辺ですら遭遇しなかったモンスターは昼食時点で直接的にはエンカウントせず、遠目や横目に発見したのみで、ちょっかいをかけられることはなかった。
空模様は雲の色が更に黒く、ちょっと風が重くなっており、そろそろ余裕がなさそう。
王燁ちゃんのMPが7割程度まで回復したところで休憩切り上げ再出発。
角端いわく、何事もなければ休憩なしで
再出発直後、道の燕都側からダッシュで移動中の冒険者パーティの背中を発見し警戒度を上げ、しばらく距離を置いて追走してみたが敵意が無かったので、挨拶ひとつ残して追い抜いた。
追い抜きをかける際、
燕都に近づくにつれ、冒険者を見かける数が増えたものの、皆一様に燕都へ帰ることを優先している様子。
冒険者を発見するたびに索峰さんと角端がすすき色と黒の毛を逆立てて警戒していて、疲れないのかと思う。
それにしても、男衆の警戒度合いとは裏腹に、遭遇した冒険者たちからの私たちへの警戒がゆるい。
〈強行軍〉の都合で角端に乗った王燁ちゃんが先頭を走っているからだろうか。
荒事をしそうにない少女が先頭を走る女中心パーティ。脅威度は低いと見られるだろうと思う。
徐々に大きくなる燕都の城壁。
故郷と呼べるほど長くいたわけでもなく、見慣れた景色でもないのに、帰ってきたと郷愁に駆られるのはなぜだろう。
雨が強くなってきた。あまりしんみりとしている余裕はなさそうだ。
長いお付き合いありがとうございました。
『ログ・ホライズン』幻獣記、完結です。
以降は、書き終えた段階での(←重要)
『ログ・ホライズン』幻獣記、の反省点と裏事情と妄想を語るあとがきのようなもの。
本編で補完しきれない設定を含みます。
***
なんというか「俺たちの戦いはこれからだ!」な終わり方ですが、これでも終わり方としてはほぼほぼ予定通りです。
燕都→泰山、で終わるつもりだったので、自分が書きたかったことは概ね消化しました。
終わり方を決めて書き始めるタイプで、構想段階で、王燁と王燁父を会話させる、というところに最終到達目標を設定していました。
締めの山場としては弱いのは自覚してます。
あと、各話タイトル考えるのが思った以上に苦痛だった。
***
書いていて、第1にして最大の反省は、郭貂麟のキャラ、個性が薄いこと。
掘り下げも浅く、正直なところ、20万字近く書いておきながら今ひとつ作者がキャラを掴みきれておらず、書いている最中にも、郭貂麟が勝手に動いて話を作った、という場面に出くわさなかった。
結局、書き終えるまで目立つ活躍の機会も与えてやれず、あえて何箇所か、郭貂麟がちょっと活躍する場面を挿入したレベル。
厚底靴属性が途中で掘り下げ限界になった感があり、途中でひまわりの種好き属性を付与して味付けすることに。
明星白貂を出した時点で、作者的には完結が見えていたので、ほぼ死に設定でも強化イベントのひとつぐらい入れてやらねばという親心。
ハーフアルヴに設定したものの、ほぼそれを活かせていないこともあり。
裏設定として、主要4人1頭のうち、単純な地頭では、角端≧索峰>>郭貂麟>>>(物事を深く考える壁)>>崔花翠>>>王燁、ぐらいで、結構頭いいキャラです。
「エルダー・テイル」の知識が足りないため、「エルダー・テイル」に基づく事象への理解力で索峰に負けます。
初期キャラとして登場していますが、役割としては、索峰に次ぐ説明担当。
ベテランプレイヤー頭良い枠兼狂言回しとして索峰がいますが、それに全部説明させるのはバランスが悪いのと、索峰の出番が爆増してしまうため分散させる目的もあります。
同時に、多少なりとも話についていけるキャラは必要だった。
女の子にした理由は、ギルマスの崔花翠が女性で、後で角端と王燁が出ることを確定事項として書き始めたため、同性で歳が近いほうが扱いやすそうだと見たからです。
また、王燁と比較的歳の近い少女を配することによって、初対面で警戒MAXな角端からの警戒度を緩める存在という役割もあります。
索峰と崔花翠がともに成人しているため、そのままだと王燁角端コンビに接点が遠い感じが。
***
第2の目立つ反省、梅石の存在と扱い。
最序盤でセリフ出す癖にその後は空気。
作者的には、上海に飛ばされたプレイヤーが味のする料理の作り方を発見して、索峰に念話を飛ばして翠壁組の食事事情解決、と見込んでいたものの、そこまで書かないまま終わってしまった。
大きな原因として、完結時点で、作中時間はゲームに転生してから18日しか経っていない超スローペースになってしまったこと。
日数管理もやっており、書いていたときの5話構成では、
1日目昼12時転移
2日目郭貂麟寝坊
3日目なし
4日目戦闘訓練開始
5日目なし
6日目郭貂麟の目指す方向性の会話
7日目王燁と角端追加
8日目キャンプ用品購入
9日目燕都出発、不本意な泰山砦入り
10日目瑞袞と会食
11日目泰山登山、索峰1ダウン
12日目訳者を交えた角端との会話
13日目なし
14日目なし
15日目なし
16日目索峰討伐、角端撃破
17日目神殿通話
18日目燕都へ戻る
と、何日か描写外の日があるのにこの遅さ。
原作だと、シロエたちはにゃん太と合流しセララを救助完遂したかどうかぐらいのタイミング。
実のところ、とんでもないスピードで旅行動していたことになります。
この行動のスピード感の原因は、中国サーバーの世界観というか、原作カナミゴーイーストやクラスティタイクーンロードあたりで出てきているやや殺伐とした中国設定を基に。
楽浪狼騎兵のギルドが見切りつけるレベルには荒れたってことで、アメリカでも1ヶ月で暴動で。
燕都に対し、索峰は女性陣を荒事に巻き込ませたくないから見切りをつけており、崔花翠は闇夜の裏路地的な感覚を直感的に得て見切りをつけています。
梅石の存在自体は、索峰のキャラ付けと世界観の説明上、ほぼ必須と言えるのですが、もうちょっとどうにかしたかった感はあります。
***
細かい反省として、恋愛要素の排除のためにも、意識して索峰の活躍を削ったのですが、それでもまだ出番が多くなったのはちょっと気になったところ。
男1女3に獣(オス)1で、角端の個別パートが最終盤まで予定していなかったため、ともすればハーレム展開になるのを、全力で避けかつフラグ折りにいくことに。
感覚として、一応主人公は索峰、ライバル角端、ヒロインの崔花翠と郭貂麟、マスコット枠で王燁、といった感じ。ただ、明確に主人公主人公とはさせていません。
完全に獣人化させた理由も、イケメン設定とかそういうものを読者の想像の中からも排除しにかかった結果。あくまで保護者の立場を崩させないように。
PK相手には途中加勢で戦闘せず、雑魚狩りでは勝つが、挿翅虎に倒され、角端と相討ちという、大一番で勝たせないのも、バランスの問題。
索峰の主戦場はバトルではなく説明と地の文です。
ちなみに、狐仙の試験のくだり、元ネタとして、泰山で東嶽娘娘が狐に試験を課し、合格すれば狐仙、というものがちゃんとあります。
泰山がイベント用地で、かつ索峰が強キャラであると説得力を持たせる意味があるのと、華南電網公司が伝承になぞらえたイベント配置をしているという説得力を増す要素として配しています。
ただ明かすのが遅い。そしてあとがきで明かさないと絶対誰も気づかない起源。
狐仙索峰は、幻獣記のタイトルにおいて、実は最初から登場していた、隠れた方の幻獣担当でもあります。
***
崔花翠の話。
コンセプトは水滸伝の李逵。もしくは李鉄牛。
水滸伝における、二挺斧でバッサバッサ切りまくるむちゃくちゃ強い野生児系サイコパスおバカ。カナヅチ。水滸伝のバーサーカー。
崔花翠の異名、「
その他、崔花翠に限らず、ところどころで水滸伝モチーフを忍び込ませています。
バトルスタイルは二刀流兼投擲職人のハイブリット。
投擲職人の方の要素を後半あまり出せなかったことは反省点。なお原典である李逵には投げ武器要素はない。
攻撃範囲こそ狭いものの、豊富な手数と高いダメージ出力を誇り、討伐速度が速いことで範囲面のハンデをカバーする。
投擲武器で多数の雑魚敵を自分に集めてから武器攻撃で一掃するのは常套手段。
索峰が弓で遠くからもかき集めて引き連れたものを、横入りして即死判定持ちの攻撃で根こそぎ倒すことも連携としてよくやるパターン。
崔花翠の行動は、理屈こねずに無理やり場面を変更させる力と強引さ。
意識して索峰と対照的にしています。このことは作中でも何度か言及されていますが。
頭良いことを索峰と交換してもいい、と思われる方もいるかもしれませんが、モチーフが短気直情型ということがひとつ、またチェスや将棋や囲碁等、長期予測が必要な盤面において(一緒くたにする気はありませんが)脳科学的に女性がやや不向きという話も加味しています。
原作で意識されているか不明ですが、円卓の戦闘系廃人級ギルマス(=指揮官級、マリエールは巻き込まれた側につき除外)みんな男ですし。
DDDのリーゼや高山三佐みたいな指揮可能な要職立場もいるっちゃいるけど。
あと、14万字ぐらいまでは名前が「崔花翠姐」だった。
索峰の呼び方が「翠姐」なので、不要な要素としてプレイヤー名自体から「姐」はとった。
***
角端と王燁の話。
王燁=振り回され系マスコット、角端=謎行動。
このコンセプトは初期から決めていた。同時に、角端の謎に迫ることも作品の大きな流れとして組み込むことに。
とりあえず角端に暴れさせるだけ暴れさせて、理由と理屈は説明パート書いてる途中に考え、矛盾起きそうなところをあとから微修正し、場面描写の追加もした。
角端の謎行動については全部回収し切ったと思う。たぶん。
この辺は原作のKRとガーネットの関係性から着想を得ている。Ex幻獣憑依については、理屈こねつつ中国サーバーの課金品独自路線ということに。
サイズの変化も、安易な人化に逃げないためのこと。人化させる理屈とメカニズムの方が、こじつけるのが難しい。意義も感じられなかった。
正直、人化させずそのまま喋らせる方が理屈の紐付けも楽だった。
角端がゲーム時より強くなっていることへの回答は、郭貂麟の考察に加え、作中時間において日本でもまだ判明していない、フレーバーテキストの補正も加わっての強さです。
〈気高き獣の長、召喚されてなお比類なき力を保つ純血麒麟種〉的なフレーバーテキストが角端についてます。
王燁が気づいていない(忘れている)のと、他人から角端のフレーバーテキストが見れないのと、発想がなく検証不足のため、本編中では語られることがありません。
単独契約補正+最上級設定の戦闘AIの転生コンバートによる良い頭脳+フレーバーテキストの盛られた設定=召喚獣として常識外れの強さに。
仮に、王燁が召喚術師と相性のいい全身ガチガチ幻想級装備をして、熟練度も上がっていた場合、王燁を襲ったPK4人は、この世界では、王燁がなにもしなくても角端が単独で全て撃退できるぐらいです。
また、郭貂麟と王燁が、MP大量消費による脱力感を感じる、またはそれによって行動不能になる描写は、原作におけるルンデルハウスが冒険者化する際にシロエが使用したマナチャネリングの際の描写や、マリエールが辻ヒール作戦でMP枯渇を繰り返して頭痛を起こした描写を参考に。
これも作品内時間軸でまだ原理解明に至っていない事象。対策自体は当作中でもされていますが。
王燁にとって角端の容赦ないMP強奪は、MPダメージ攻撃を受けることとほぼ同義。身体能力が上がったとはいえ元が8歳なので、苦痛耐性が弱く被害が大きい。
***
索峰は、上でも述べた通り、作品内では潰れ役。
戦闘スタイルでもっとも慣れているのは、援護歌特化ビルド+長弓。
視野とバリエーションの広い支援特技のフル回転ばら撒きと、矢換装による状態異常付与またはダメージディーラーまで同時にこなすかつ、生存性も高い超一流の変態技能持ち吟遊詩人。
方向として、中〜大規模戦闘向きの装備と特技群で、長期戦になればなるほど、味方の人数が多ければ多いほど影響が強くなる。
中国サーバーにおいては、命中率を高め、長射程の音叉弓で、オールレンジからガンガン攻撃をぶち当てながらMP回復援護歌を音叉弓で強化して、高い生存性でそれを維持、とすることで、全体のMP総量を跳ね上げると同時に自身の支援特技のばら撒きも可能になる相乗効果。
よって、作中の短期戦では持ち味が出ない。
燕都→泰山砦の移動中では、戦闘描写をほぼカットしたものの、泰山砦近くで連戦しまくっていた際、索峰のバトルスタイルは、実は物凄く輝いていた。
PK4人がかりで倒せなかった角端(PK受けた時より王燁の装備強化で相対的に強くなった)を、3対1の劣勢で撃破できる技量といえばヤバさは伝わるだろうか。
もちろん、角端が、崔花翠や郭貂麟と協力する気ゼロだったこともあるが。
ほぼ相討ちではあるものの、あれでも一応上げイベント。間接的に、崔花翠の力量の説得力を上げるイベントでもある。
索峰と崔花翠の1対1では、崔花翠がほぼ一方的に相性勝ちする立ち位置。アンブッシュありなら索峰優勢。
なお、索峰は中国サーバーに2年ほどしかいないものの、中国サーバー外部コミュニティにおいては、大規模戦闘に大きな影響を与えるレベルの非常に腕の良い吟遊詩人としての評価が既に固まっている。
崔花翠が遠慮なく強いギルドの傭兵枠にセットで滑り込むため、多くない優秀な吟遊詩人としての技量と、崔花翠の(地雷としての側面も込みで)知名度に引きずられた形。索峰が大規模戦闘の方が向いているせいもある。
ただ、中国語コミュニティでの話なので、自身への能力的注目に全く気づいておらず、物静かな一般吟遊詩人のつもりである。
大規模戦闘における〈吟遊詩人〉は、援護歌を維持し続けて、かつ近くの仲間に支援バフをかけられれば上等レベル(原作の基準)。
それを吟遊詩人+付与術師の幅広い支援バフでこなした上で火力まで出せるので、評価は勝手に上がる。
索峰構築の特化ビルドは、安定するまでの道のりが長すぎて、かつ、極めても地味で、玄人好みの有用性はあるが、面白みはない、に属する。
よって「到達点が地味・ソロ戦闘力皆無・それによる育成長期化・要求装備高級・ランニングコスト高い・要求技量高い」の育成心折スタイル。理論上強いが、育成面倒で真似するほど費用対効果は良くない。
初日時点で梅石が、在野の人材として真っ先に勧誘をかけた理由でもある。
転生2日目早朝で果物を大量売り払い大儲けに成功したのは、本人の預り知らない知名度も理由に含まれる。
5話「中国サーバーの姿」で、移動中の翠壁不倒一行が目立ったのも、奇妙な取り合わせとは別に、「ああ、あいつらも巻き込まれたのか」という、崔花翠と索峰の知名度が多少影響している。
書き終えてから思ったが、索峰に日本人設定は不要だったのではないかと思う。
***
なぜわざわざ、原作キャラ完全無視してさらに日本ですらない独自路線突っ走ったのか。
原作を邪魔しない話を書きたかったのがひとつ、構想段階で、◯◯スゲー系にはしたくなかったこともひとつ。
原作キャラ崩壊が怖いが、全キャラオリジナルならその心配なし、日本でやるとどうしても原作キャラ要素混じってきそう、なら中国でいいじゃん、の短絡的思考。
原作のキャラや土地や関係性といった要素を切り捨てて独自路線に走ることを決めたため、世界観説明を原作に任すことはせず、原作未読でも読めるように書こうと務めました。
結果としては、作者本人的には目論見は失敗。原作既読である必要はないが原作知識を多少必要とするぐらいの出来になった感があり、消化不良。
原作知識なしで当作品を読み切って普通に把握された方がおられたら、読解力が凄いかと思います。
実際、事前知識無しで読み進められるのだろうか、これは……?
説明や設定突っ込みたがるところは癖。
その人物から見て知りえない情報を、既知の情報として混同させることには非常に気を使ってはいる。
文字密度平均50近いことの戦犯は村上龍と北方謙三。文字びっしりがまるで苦にならない性分のせい。
正直、ネット小説の空行空けに違和感レベル。幻獣記書いてた時には場面切り替え時以外空行がない。
自分が作品内に入れた空行にも違和感たっぷりです。
そのため、基本軽く読み進められるものではなくなっています。
また、全体として話の起伏に乏しいのも問題。
起承転結の、起があって、承を完結までずっと続けてる感じ。
話に引き込むインパクトは、作者から見ると相当薄味に見える。谷間は水たまりより浅く、山場は天保山ばりに低く。読者から見るとどうだったのだろうか。
内輪で話が進んでることなので仕方ない面もあるが、起伏を作ろうにも、あまり要因を作れず。作者自身、感情を露わにする系の場面を組み立て、描写することが苦手という面もあり。
展開としての予想外を提供することはおそらくできていない。
たぶん、嵌る人には徹底的に嵌る内容ではないかと感じるが、万人受けはしないはず。
作品で書き残したネタはまだいくつかあるものの、続きは、たぶん書かないかと。
筆遅く、同時並行できる人でもないので。
評価、批評ございましたらご存分に。
褒められても叩かれても、正当なものであれば小躍りすると思います。
長いお付き合い大変ありがとうございました。
重ねてお礼申し上げます。
2019/1/10追記
改修完了。
原作の用語や備考的なものを多数追加。多少説得力を増せただろうか?
改行を積極的に加えて、「、」を大量に消去。
文字密度が48ぐらいから39ぐらいまで下落。
……あんまり変わらんな?