魔法科高校の劣等生 妖精に魅入られし愛し仔   作:アトコー

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遅れながら、あけましておめでとうございます。

漸く投稿出来た。


新作を思考し始めて、更に遅れそうですけど、それでも投稿していくよん


第13話  密談

四葉家本宅に到着した1台の車。

車椅子で行動する一人の女性は、四葉家の執事に押され、邸宅へと入っていった。

そして、目的の部屋に着き中に入ると3カ月前にテレビ電話で会った女性が目の前にいた。

 

「お久しぶりです、四葉真夜さん。」

 

「そうね、久しぶりになるわね。澪さん。

葉山さん、お茶をお願い出来る?今日は・・・そうね加賀棒茶にしますか。」

 

「かしこまりました。では、多少お時間を掛けますが?」

 

「構いませんわ。あれの香りと味は時を置かないと出ないもの。」

 

そう言ってから、葉山さんが部屋を出て準備してくる。

 

「こうして、面と向かい合って話すのは初めてかしらねぇ。」

 

「ええ、そうだと思いますよ。」

 

「では、お茶が来るまで少し世間話をしましょうか。」

 

「ええ。そうですね、私も智世ちゃんの事とか知りたいですし」

 

「2人共べったりみたいですよ。聞く話の限り。」

 

「確か2人共イギリス国籍なんでしたっけ。」

 

「ええ、あの政府の馬鹿共の所為で。」

 

「真夜さん、それを言っても仕方ないですよ。」

 

「そうね、輝夜さんに至っては一度死んでいるはずだけどもね。」

 

「そう言っても智世ちゃんは自身をオークションに出してましたよ。後で知って怒りと悲しみを覚えましたが。」

 

「そうね。2人共、不可思議なところがあるけどね。」

 

「スレイ・ベガにスレイ・スピカ、か。・・・・・どちらも精霊や妖精に愛されている存在で共存関係にあるのですからね。」

 

2人の眼には、しっかりと部屋の中を動き回る妖精の姿が見えていた。

 

「あの子たちは、もう自分の足で立って動き始めた。それを邪魔するなら、私は十三使徒の称号も師族も要らないわ。」

 

「あら、それは私も同じよ。少なくとも、四葉家そのものを敵に回したも同然なのですからね。」

 

「フフフっ、それは頼もしいこと。」

 

2人で少し盛り上がったところで、葉山が加賀棒茶を入れて持って来た。

お茶用のコップに注がれた琥珀色の棒茶を見て、香りを楽しみ、色を楽しみ、そしてお茶を口に含んだ。

加賀棒茶の独特の香りがふわっと鼻腔を刺激し、美味しい味わいを出している。

そんなお茶を飲み干した2人は、話しを再開した。

 

「それでは、私から話すわね。」

 

あれは、どれくらい前だったかしら。確か大学生を卒業した頃だったかしら?

彼女、三千院由香梨と出会ったのは。

十師族である私よりも遥かに強かったから今でも覚えているわ。

由香梨とはよく喧嘩したけど、善き相談相手だったし、数少ない友だったわ。

信じられる?あの子、魔法を使っていない古式剣術だけで私を倒せたのよ!

もう、びっくりよ。家に招いた時にやったものだから、皆彼女に挑んだわけ。

でも、彼女からしたら赤子を捻るより楽な作業だったのでしょうね。

挑んだ皆、殆どが返り討ちにあって峰撃ちなんていっているけど、ヤられた本人は溜まったもんじゃないでしょうね。

あの日から、四葉家の魔法至高が完全に打ち砕かれたのよ。研究は続けたわ、けど、今のままじゃダメだって気付かされたの。

三千院って名前に数字が付くぐらいだから三矢と縁家か何かと思ってたのよ。そしたら、全くの御門違い。平安時代から続く由緒ある守護代だと知って、勝てないわけだと思ったわ。

え?ああ、年月がってものもあるけど、何よりもその質が非常に深いのよ。

あの頃、剣術大家なんて言われてた家々の殆どが魔法を使った上でのことなの。

純粋な剣術家はごく僅かだったのに、あの由香梨さん。真正面から捻じ伏せたのよね。

 

あの千葉家も、三千院家には屈辱を味わされた剣術大家の一つだったわ。

あれ以来、魔法無しの古来からある剣術が消されることは無くなったわ。

けど、一番びっくりしたのは、由香梨が天皇補佐官でもあったことね。文武両道公私分別がしっかりとしていたから、十師族で陛下にお会いになった時は何処もびっくりしていたわ。

 

それから、私も由香梨も子供が出来た時相互に喜んだわ。

けど、あの時私には生殖能力を失っていたから姉さんに、ああ旧姓四葉の司波深夜にお願いして産んでくれたんだけどね。

あの時、酷い喧嘩をしたのよ。

達也の魔法力が小さいのを見かねた深夜が、息子を実験に掛けようとしたのよ。

私も当然ながら抵抗したわ、けどその時病を患っていた所為もあって、深夜には負けるんだけど。由香梨が宮内庁から駆け込んできてくれてね。もうそれは凄いことになったわよ。四葉の村が半壊するほどにね。深夜とその一派に1人でやるけど、結局はそれが原因で暫く会わなかったのよ。

 

最期に会ったのは、由香梨が死ぬ3日前だったわ。

あれが生涯最後の試合でもあったわね。

全力でぶつかってそれでも勝てなかったわ。後一歩まで追い詰めたつもりなんだけど、向こうも腕とレベルを上げてたから、勝てる訳がなかったのだけれども。

けど、悔いが残るような試合じゃなかったわ。四葉としての実力を正面からぶつけて跳ね返すことが出来る日ノ本最強の戦乙女(ヴァルキリー)だったわ。

 

そして、あの日が来たわ。私たちにとって突然すぎる訃報だったわ。

交通事故で亡くなったって。けどね、驚くことにね、遺体が病院に運ばれてなかったっていうの。どうしてなのか、その時は分からなかったわ。けど、事故の遭った現場に行ったら事情聴取を受ける目撃者さんが居てね。その人が言っていたのよ。

 

「まるで、事故を起こすことを予感してたかのように、黒いバンが走って来て車の中で亡くなった2人を連れ去って行った。」

って。何処のどいつだって本気で怒りを露わにしたのはあの時ぐらいよ。

葬式も遺体無き空っぽの箱に遺影だけ飾られて・・・・・

輝夜を引き取ろうとした時には親類をたらい回しにされていたのよね。

怒りに震えていたのは私だけじゃないから分家の方なんかたらい回しにした親類とやらを見つけ出して実験に使って殺したりしてたわ。

尤も、殺した理由は親類や縁者ではなく、遺産狙いの赤の他人だったから。

容赦の欠片も無いわ。

その後、由香梨さんの遺体の一部が見つかったの。遺棄されたのかわからないけど。酷い腐敗状態だったわ。頭部だけ見つからなくてね。

 

ええ、頭部と脊髄が無かったの。酷いものよ。それから調べがいって漸く分かったの。だれが主犯かって。

七草の分家だったわ。そこに弘一も一枚噛んでいる来て、私は完全に七草を信じなくなったわけよ。これが七草と我が家が対立している理由よ

 

 

 

 

 

「そんな感じよ。」

 

「やっぱり、最後の方は私の方と同じ感じですね。主犯が一条ですけど。」

 

彼女、羽鳥智花との出会いは病院だったわ。

私自身が肉体的に虚弱で、車椅子で苦労していた時に彼女と会ったの。

あの頃の私はかなり頑固者で、智花の手なんか借りないなんて思ってたのだけどね。

何度も付き合ってくれるうちに私の方が折れちゃって、智花さんの治癒魔法による治療を受けたのよ。

現行する全ての魔法に該当しない魔法だからその時から狙われていたみたい。

けど、智花は自分の身を顧みずに私の治療に専念してくれていたわ。

病院でも、有名な名医だっただけにその人気の裏にあった感情を私は計れずにいたわ。

これでも、肉体トレーニングは欠かしていないの。智花さんに言われてからずっとやって来たの。虚弱だから無理というのを言い訳にしないで、努力できたのは智花さんのおかげ。お父さんも喜んでいたし。

でも、あれは残念だったかな。智花さんを専属の医師として誘ったのだけど、それは出来ないって言われたわ。知ってる?彼女、日本で数少ないMSF所属なのよ。

MSF、国境なき医師団。世界中で活動する彼らに所属しているから出来ないって。

医師には、救うべき命がある。そこに階級も国籍も関係ない。助けを求める人あらば駆け付ける所存だからって。

けど、智花の訃報が来た時、私も泣いたわ。遺体が無いのに葬式しなくてはいけなくて、なのにそこに時々顔を見せに来てくれていた智世ちゃんの姿も無くて、静かに葬式は終わったわ。後はもう酷いもんよ。智世が行方をくらました事を良い事に遺産に寄って集る馬鹿共を排除して保管するのに五輪家と分家を総動員しないといけないくらいだったもの。

後でお父さんには怒られたけど、恩を仇で返したくなかったから。

後は、似たようなものですね。

 

 

 

「お互い、苦労したものね。」

 

「ええ、智花の遺体を持っていったのが一条だと知ってから一切の関わりを断ち切ったわ。

あんな奴に向けるモノと言ったら憎悪と殺意ぐらいだもの。」

 

「フフフ、そうだ。丁度良いかしら?」

 

「何か?」

 

「そろそろ九校戦なのだけど、2人も護衛を伴って行くそうよ。会うことは出来ないでしょうけど、同伴のところ、どうかしら?」

 

「是非ともお願いします!!」

 

「それじゃあ、決まりね。」

 

「これからよろしくお願いしますね。真夜さん。」

 

「そうね、2人の安全の為にも、澪さん。」

 

2人ががっちりと握手し合うと、残っていたお茶を飲み干した。

 

「真夜さん、今日はありがとうございました。」

 

「いいのよ、私も貴女の話が聞けたわけだし。」

 

 

四葉と五輪の密会とも取れる会合は、その日終わった。

そして、四葉と五輪が手を組んだことが周知の事実となるのは九校戦に観戦に来るという信じられない事態が起きて半信半疑にさせ、三千院家討伐の際に四葉が敵対してからだった。

 

 

 

 


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