私と智世がエリアスの家で世話になって1週間が経とうとしていた。
智世が妖精に惑わされたり、エリアスの友人に顔見せに行って、エリアスを吹き飛ばしたり、
魔法使いと魔術師、魔法師の違いを話したり、智世が魔法を初めて使ってみたり、
神父と名乗る胡散臭いおっさん(サイモン)に会ったり
智世がドラゴンに浚われたり←今此処
「はぁ、智世はドラゴンの国に連れていかれて、エインズワースは後を追ったって・・・全く、」
私は口笛であの子を呼んだ。
蒼天の大空から舞い降りたのは体長20mもある大鷲
ファンタジーの世界でしか存在しえない存在だが、この世にはこのような存在はゴマンといるわけで
「友のところまでお願い出来る?」
「クエッ!!」
雛の時から拾い育てて来たこの大鷲がここまで大きくなっていたことを嬉しく思いながらも背中に乗った。
大空へと羽ばたく大鷲(名称ガルーダ)は直ぐに加速した。
その速さは戦闘機よりも早い、なのに私は風圧をさほど受けなかった。
ガルーダの羽毛がそれを防いでいたからだった。
直ぐに竜の国は見えた。エリアスが言っていた果ての地にある竜の国は確かに多数の竜種が存在した。高高度からエリアスと智世を見つけると、ガルーダは一気に降下した。
「周囲に気を付けて」
ガルーダは、一直線に降下して2人の真上に降り立った。
智世side
それは突然だった。
突然、空が暗くなったように思えると空から黒い物体が降りて来た。
翼のあるそれは私たちの後ろに降り立った。
「大鷲じゃと!?何故此処に!」
「この鷲・・・私を知っている?」
私の前に来た大鷲は、じっと見てから頭を垂れた。
羽毛の中から誰かが降りて来る。
「まったく、後を追うのはいいけど私を連れて行かないなんて、本当に智世にゾッコンなのね。エリアス」
「輝夜!?」
降りて来た人が友達であることにビックリいていると、
リンデルさんが鷲の方に近づいてきた。
「お主がカグヤか。」
「ええ、私が三千院輝夜ですよ。それよりも、覚えてる?智世は」
「じゃあ、やっぱり・・・あの時の雛が?」
「そう、まさかこんなにも大きくなるとは思ってもなかったけど」
「2人は知っておるのか?」
「ええ、私が雛の時に拾ってから育ててきたから。」
「こやつは、鷲の王だぞ。」
「ガルーダなら有り得るわ。元から凄かったし、成長速度も速かったし、」
「それが有りえんと言っとるのじゃ。その種族が人と馴れ合ったなら王にすら成れぬはずじゃ。」
「それは、私がスレイ・スピカで1/4皇族の血を持っているからじゃない?
智世も似たようなものだし。」
「どういうことなんじゃ?そんなことあるわけ・・・」
頭を抱えてしゃがみ込むリンデルに智世が
「あの、世の中、全てルールで縛られているわけじゃないですし、イレギュラーもあると思いますよ?」
「そういうもの・・・なのか?」
その後、ガルーダとネヴィンが実は種族同士で交流があったらしく、近況について話したり、
それでまたリンデルを驚かせたり、
魔力を貸した智世と私にネヴィンが空飛ぶ夢を見せ、最後に菩提樹と成る様を見せた。
ガルーダはその姿をしかと見届け、大空に向けて咆哮を飛ばしていた。
帰り際、ガルーダは自身の羽をリンデルに渡し、私と輝夜、エリアスを乗せて帰った。
智世sideout
その後、
智世が魔術師に浚われたり、猫の王モリィと事件解決に尽力したりと、どうも智世ばかり狙われているらしい。
その上で、魔術師側に勧誘されて、拒否したらしたらでなんかいざこざが起きるし、淀みかなんかしらんものに取り込まれるし、けど智世はモリィと協力して撃破して倒れるし。
そのまま寝ると、2週間も起きないし、エリアスは森の中で療養させてるし
その間に妖精王とか来るし、。
どんだけ智世を狙うんだか・・・
何れ、私は此処から日本に戻らないといけないというのに。
しかし、日本では日本で、私の身柄要求と来たか。
魔法師至高主義の巣窟だと考えることは違うらしい。
イギリス王家の配慮もあって、本籍をイギリスとして登録してあるからいいけど。
智世を狙う集団もいるみたいだし。なにかしら手は打たないといけなさそうね。
智世が起きる前にこちらが戻る手筈も整えておきたいし。
幸いにも軍との協力は取れた。
親が居ないこともあって、そろそろ退役するイギリス軍元帥が義父になるそうだ。それだけでも驚きなんだけど。
その義父となる人がねぇ・・・・・・イギリス軍最強剣士なんて言われている方。
砲弾斬る化け物
近づく前に死んでいる
一人軍団
つかあのおっさん戦略魔法くらってピンピンしてんすけどぉ!!
など、逸話の多い人。
リチャード・K・ブラッドレイ
息子と妻に先立たれているかなりのおっさんだが、実力は折り紙付き。
そんな人が義父になるって・・・気が気でなくなりそうなのですけど。
まあ、普段どういうわけかアロハシャツで国民にも慕われているようだけど。
取り敢えず、そんなこんなでロンドンから家に戻ると智世が起きていた。
感涙極まっての大ジャンプ&サバ折りを智世にしてしまうが、後悔はしていない。
智世も喜んでたし。最近、エリアスも私に向ける感情が智世に似てきている気がする。
エリアスに何処に何しに行ったのか聞かれたから
「日本への下準備」
「えっ、イギリスから出るのかい?」
「ええ、あっちでやり残したこともあるし、・・・・・・
ケジメを付けないといけないから。」
「でも、危ないんじゃない?」
「ええ、今の日本はかなり危ないほうでしょう。・・・ですが、今はイギリス国籍を持ちとなりバックがあるのでおいそれと手出しはしないでしょうが・・・強硬策に出る可能性も考えられますから・・・」
「・・・それって、死に行くもんだよ。」
「私が日本で死ねば、日英戦争になりますよ。特に愛し仔となれば世界で100人未満ですから尚更ですし。私や智世の扱いは王族と同じ若しくはそれに準じた扱いとなりますし・・・」
「え、そんなに!?」
「智世は、知らないんだっけ?ちょっと前に朝鮮連合に来朝したある愛し仔が、軍に誘拐されてバラバラになってロシアで遺体で発見された事件。」
「それなら、僕も知ってるよ。大分騒がれたことだしね。こっちでは」
「そう。そして、その愛し仔が所属していた国家はロシアだったから
かなり怒ったみたいだよ。戦略爆撃機を何十機も持ち出してあそこの基地、ほぼ全部集中爆撃していったって云うから。」
当時の大統領がその事実を知った時、ロシア連邦空軍と陸軍に攻撃命令を出し、基地を含め都市機能を壊滅に至らしたという。
3カ月の間昼夜問わず、飛来する爆撃機を迎撃する術を失っていた朝鮮連合軍は成す統べなく壊滅し、残存戦力が全体の1割未満という壊滅的打撃を受けた。
更に、空港機能を地中貫通爆弾によって半年は修復不可能な事態になっただけでなく、その後も残った数多くの不発弾に悩まされることになったのであった。
しかし、この事件には裏があり、ロシアと共に爆撃機・戦闘機を派遣して攻撃していた国家があった。
北欧連合とイギリス連合王国だった。
その為、日本にとってイギリスは怒らせてはならない国家であったが、日本の政府(十師族側の)が求めている少女がイギリスで戸籍を取得し、国籍もイギリスとした為、手を出すに出せないのだ。
その為、外交面で「不当に奪われたわが国民を返せ」など大使館を通じて言っているが、イギリス側は完全に無視していた。
しかし、その内の三千院輝夜が日本とのケジメを付けると云う事態に議会が荒れた。
個人の意見を尊重する意見 と 断固として危険だから反対する意見
1週間以上に及ぶ議論の末、輝夜に対する護衛を軍から選抜し、日本で生活する間、安全が保障出来る場所に住む事が決定された。
其処に声を上げたのが退役間近のイギリス陸軍元帥だった。
日本に別荘を持ち、万が一の時半年は立て籠もることが出来るという豪邸。
何故そんなもの立てた?と聞きたいところだが、イギリスにおいて最も信の置ける者からの進言だけに護衛の部隊の選抜は簡単に終わった。
議会では、反対派の意見が多くあったが、ケジメを付けることで今後日本からの抗議も消えることだろうという楽観視と、日本への最後通告を合わせていた。
魔法師を作るために人体実験をしているのは何も日本だけではない。
しかし、まだ日本には淡い希望として通告していた。
国際魔法人権法に反する行為を続ける日本に即時停止か脱退かを問いただすチャンスだと言う議員も居り、輝夜の申請はなんとか通ったのだ。
更に言えば、その別荘をフェイクに使い、エリアスの自宅から転移登校も出来るため丁度いいだろうと考えていた。
「日本の魔法師の状況を知るということもあって、魔法科高校に行くのよ。」
「魔法科高校かぁ・・・でも、・・・。」
智世はエリアスを見る。
一連の話を聞いていたエリアスもまだ不安そうだ。それに日本に行くと成ればそれこそ問題が多くあるだろう。
「エリアスはどう思ってる?」
「反対だよ。・・・何より智世が有象無象に触られるだけで反吐が出る。」
「・・・・・・じゃあ。」
「けど、いくら買ったと言っても智世には人間らしく暮らして欲しいと思ってる。」
表情が読めないけど、困った感じになってるエリアスを見ながらも
「行くのは来年の4月に合わせて行くから、まだ時間はあるよ。行くか行かないか。それまでに決めると良いよ。」
「そう・・・だね。けど、輝夜は行くのでしょう?」
「行かなきゃ、ならない理由がある。全てを断ち切る為の理由が、・・・」
私は、あいつらをやらなきゃならない。じゃないと、私は・・・
決心が付いたように遠い日本に向けて睨み付けていると、視界が真っ暗になった。
誰かが背後から抱き締めてくれている。
「君が日本に行きたい理由が分かった気がするよ。
けど終わった後、君はどうするの?」
「・・・・・こんな田舎でひっそりと暮らしますよ。・・・一度散った命、また落としたら怒られちゃいますし。」
エリアスの顔を見ると、まったくと云った顔をして頭を撫でる。
「君と云い、智世と云い、似た者同士だね。」
「人間、一人では過ごせないですから。似た者を見つけると徒を組みたくなるのですよ。」
「それが、分からないのだけどね。」
「サイモンさんに聞いてみては?知らないより知っている方が知識として得るモノもあるかもしれないですし。」
「そうだね、・・・・・人間を知るには、色々必要だね」
そんな時、家のドアが唐突に開く。
「失礼するよ。」
アロハシャツにアロハパンツを履いたおじさん・・・・・あれ?
「リチャード卿!?・・・どうして此処に?」
「何、世話になっているエインズワース君を一目見ようと思ってね。
あ、これはエインズワース君への土産だ。スイカは嫌いかね?」
「まったく、貴方は御変わりないようで。」
エリアスと握手するスイカを持ったアロハシャツを着た男こそ、
日本に渡る際の義父となるリチャード・K・ブラッドレイだった。
キング・ブラッドレイだと、ちょっと問題なのです。イギリス王国なのです。
王(キング)がいるんです。
なので、皇族の親類という設定です。
なので、イギリスの獅子王から名前を拝借しました。