どうもキャラクターの口調が定まらない。
時折補足説明を後書きに加えるかも・・・
2095年4月3日
いよいよ、待ちに待った学生生活
魔法大学第1高校の制服も届き、袖を通した私と智世の右胸には八枚ではなく十枚花弁のエンブレムが施されており、イギリスの学院(カレッジ)からの留学生ということで見分けが付くように施された。
本来CADを必要とせずに魔法行使出来るため、大分渋ったものの、国からの要請もあって受け入れた。智世はあまりCADを使い熟せないが、其処はアンジェリカさんによって改造が施され、使えるようにしてくれた。
その為、従来型よりも非常にスムーズに魔法が行使しやすくなっている。
府中の家を出て、RAINBOWの護衛車に乗ってからその後は公共交通機関を使う。
個型電車(キャビネット)に乗り、立川まで行くのだが、智世がすっごくそわそわしている。
「智世、そんなにエリアスと離れるのが辛い?」
「え、い、いや、そうじゃないんだよ。ただ、大丈夫かなぁって。」
「エリアスが?」
「うん。」
「もう、二人して相互依存関係なんだから。家に帰ればまた一緒に寝れるでしょうに」
「(〃ノωノ)・・・知ってた?」
「いつもエリアスと寝ているのリチャードさんも知ってるよ。リチャードさんはエリアスを見ながら成長したな~みたいな感じで見てるし」
「(* >ω<)=3 最近のリチャードさんの顔ってそんな顔してたんだ。」
智世と私が乗るキャビネットが目的地に到着して、降りるとまだ朝早いためか、人はまばらで上級生たちが入学式の準備をしているくらいだった。
「あまりいい思い出もないのだけど。」
「それは・・・水に流してさ。行こう?」
私は、渋る智世に手を出す。
智世も、差し出された手を握り一緒に登校した。
第1高校は、魔法を学ぶだけに特化しているわけではない。その辺は学院に似ているが、学院は日本で云う小中高大が全て揃っているわけで、高校の3年間だけを日本で過ごすつもりだ。
門を潜り、私たち2人は真っ直ぐ向かう場所があった。
校長室と書かれた部屋の前まで来た私たちは扉をノックした。
近代化された校舎なのにこういうところはアナログだ。
「どうぞ。」
許可が下り、部屋に入るとそこには目当ての人がいた。
他にも人がいたが、眼中にすら止めずに
「おはようございます。そしてお久しぶりです。百山校長」
「おはようございます。よく来てくれましたね、三千院さん。羽鳥さん。」
「お、おはようございます。」
「正直なところ、反対している教員を押し切ってのことなのでやれることは少ないでしょうが、」
「いえ、こちらこそ。無理言って申し訳なく思いますが、此方で3年間と短いですがご教授頂ければ幸いです。」
「そう言ってくださるのなら、これ以上の謝罪は必要なさそうですね。ではそろそろ入学式が、始まりますよ。会場の方に。羽鳥さん」
「はい」
「あまりお話する機会はありませんが、何か困ったことがあればなんでも仰ってください。力になりますから。」
「あ、ありがとうございます。これほどの事は実はあまり無かったので少し緊張していますけど。」
「大丈夫、今日は入学式だけだから。終わったら、カフェにでも寄って帰ろう?」
「うん、そうだね。エリアスにもお土産買っていかないと」
私が智世の手を引いて部屋を出て行った。
部屋にいる、2人の眼中にすら置かれなかった男がいた。
「さて、分かって頂けたと思うが?」
「ええ、そのようで。イギリスからの留学生と聞いていましたが・・・日本人のようですが?」
「生まれは日本だよ。だが、訳あってイギリスに帰化したそうだ。」
「成る程。」
「言っておくが、彼女達への手出しは認めんよ。やれば学校は一切味方しないのですから。」
「・・・・・分かっている。」
「では、君も行くといい。十文字克人君」
校長室から移動した私たちは、会場へと歩を進めた。
入学式が行われる会場は、見事に二分されていた。一科と二科の隔たりについて聞かされていたが、ここまでとは思っていなかった。
目立つ行為をしたくなかったので、仕方なく前列席の空いている席に移動した。
恙なく式は進み、新入生総代の言葉を受け流しながら聞いていた。一科生にしては、随分と隔たりの無い平等を謳ったものだと思ったが、その目線が何故か二科生のいる後方に向いていたことから、想い人でもいるのかと感じた。
入学式が終わり、学生証を受け取った私たちが別々のクラスになることは無かった。
その辺り校長から手を回しているようだった。
「智世?どうしたの?」
「・・・・・・、あの総代。お兄さんが二科生みたい。」
「ああ、そのようだね。風向きが悪くなるだろうに。尤もその火の粉がこっちに降り掛かりそうで怖いけど。どうする?カフェに行く?」
「行く!」
最寄りのカフェに入ったら智世は、スイーツを見て眼を輝かしていた。
子供か!?って言いたいけど、その気持ちは同感だから何もいわない。
取り敢えず、ケーキを買って舌鼓を打ち、帰りにホールケーキを買って家に帰った。
家に帰ると、玄関先にエリアスが立っており、智世を見てすぐに抱き締めに行ってた。
倒れそうになる智世を支えながらもしょうがないと思いつつ、
「エリアス、さっきカフェでケーキ買ってきたのだけど要らない?」
「そうなのかい?」
「はい、一緒に食べましょう。」
智世がエリアスに笑顔で言うと、魔法で先に実家に戻っていった。
「はぁ、2人で先に帰らないでよね。」
「おや、帰ったのかね?エインズワース君は・・・」
「実家に智世を抱えて行きました。ケーキ買ってきたことを言ったら」
「はぁ、彼は智世にゾッコンだな。まったく、こちらの扉から実家に行けるというのに」
ガチャと開けた扉から先は実家にある最近作った扉に続いていた。
そして、丁度開けた先にいた智世がエリアスにアーンをしている真っ最中だった。
「ほう、これはこれは。」
「(○゚∀゚・;’ゴフッ)」
見られたくなかったであろう場面をリチャードに見られたエリアスが噴き出していた。
「うーむ、エインズワース君も成長したなぁ。わしは嬉しいかぎりだぞ。」
「な、なんで此処に。転移じゃなくて」
「エリアス、智世と一緒にケーキを食べれるって嬉しかったのだろうけど、此処の扉で実家に行き来出来るって今朝・・・・言ってたよね?」
「ガクガクブルブル((;゚Д゚))」
エリアスが震え上がる。そう、今朝リチャードがそう説明したばかりなのだ。
「それなのに、どうしてかなぁ?」
「智世、これは・・・」
「ごめん、私でも擁護出来ない。」
「さて、微笑ましい一面を見れたところでエリアスくん。久しぶりに模擬戦と逝こうか」
「ちょっと待ってくれ!字が違う!」
「なに、心配するな。死にはせんよ。」
リチャードさんの眼がキュピーンと赤く光ったように見えた。
後ずさりするエリアスの後ろでシルキーが玄関の扉を開けた。
「さて、シルキーくん。少しエリアスくんと殺し(あそび)に行ってくる。夕食時までには戻るからその間頼むよ」
シルキーが頷くとリチャードさんはいつものようにシルキーの頭を撫で外に行った。
「さて、私はこっちの家に戻るよ。留守にすると怪しまれるしね。」
「そう、分かった。じゃあ、私も・・・」
私も行くと言おうとして、遮られた。
目の前のモコモコの生き物
「綿蟲・・・ああ、ダメ。我慢できない!」
「え、ちょ、輝夜ぁ!?」
「ああ、この肌触り溜まらないぃっ!!!」
「あーも、輝夜も綿蟲と遊ぶの止めてって。」
「フィ~」
「あ、」
輝夜が抱き締める綿蟲と同じ綿蟲が智世の胸に飛び込んで来た。
智世は一度引き剥がすが、綿蟲の何とも言えない心地よい肌触りと足をジタバタさせている光景がなんとも言い難い母性を働かせ、再度胸の上に置くと、綿蟲も安心したのかフィ~と気の抜けた鳴き声を発しながら落ち着く。
結局のところ、リチャードさんとエリアスが帰ってくるまで綿蟲と戯れていた。
その頃、府中にある家に訪問者が来ていた。
「此処に入ったのを確認済みなのだ。さっさと連れて来い。そうすればこちらも退くと言っているのだ!」
「随分と勝手な言い分ですね。人の敷地に入りこんで、十師族の関係者はそんなに偉い身分なのですかねぇ?法律にも憲法にも記されてないというのに。」
「貴様、さっきから言いたい放題に言いおって。」
「それに、此方が穏便に済ませようとしているわけですからね。何時でもあなた方の命は奪えると言っているのですよ。」
「何を・・・」
家の敷地に侵入した男達。出迎えたのは、サラリーマン風のスーツを着たカストルが対応していた。
そして、遂に男達の一人がCADを構えようとして気付いた。
屋根の上、三階窓、二階窓から覗く銃口。
更に、カストルの側に重く、身の丈はある大楯を持った装甲服で身を包んだ重装歩兵の姿
「ちっ、今日はこのぐらいにしてやる。」
「いいえ、逃がすわけないでしょうに。」
カストル自家製の御人形たちの腕が侵入者の足を掴み離さない。
「ご苦労様です。後は我々が。」
「ええ、お願いします。」
府中市に銃声が轟いた。しかし、警察は来ず、周辺住民も気付かない。
結界を敷いたことにより、彼らは助けを呼ぶことも出来ず、全員死亡した。
肉体的に死亡した彼等だが、カストルの能力によって魂だけ抜かれ、生き殺し状態に
その後、とある公園の石像群に魂が入れられ、一生動けぬまま過ごすこととなるのだった。
彼等は死にたいと思っても死ねないのでそのうち彼らは考えるのを止めた。
しかし、その石像公園は次第に増えていくことを誰も知らず、またその石像の中に魂が入って居ることなど知る由もなかった。
因みに言うと、エリアスと智世は夫婦であり、イギリスで簡単な結婚式のようなものを上げただけで、正式というわけではない。
ただ、年齢的にまだ満たないのでこちらではカップルのような状態だ。
ただエリアスより智世の方が積極的で、2人でいる時間はあるのだが、何かアクションがある時誰かに見られているという現実がある。大抵リチャードさんがそうなのだが。
次の日からオリエンテーションを含んだ履修登録を行うために学校に行く。
と、同時にクラスメイトとなる生徒たちと会うのだが、まあ目立つわけだ。
赤毛の子と淡藤毛の子であれば、染めていると思われるだろう。
しかし地毛であり、留学生扱いであるため、髪色についてそこまで指摘することも出来ないのだ。
1-Aクラスには総代の答辞をした女子生徒もいたが、私は特に気の留めず指定された席に座った。
HRが始まり履修登録をしていくのだが、私と智世は揃ってアナログ型。
周りがただこれとこれっていう感じにクリックしていく中、カタカタとタイピングしていくと自然と目立つものだ。しかし、両者そんな視線に異を介さず、さっさと終わらせた。
その後、クラスメイト全員と一緒に魔法見学となったが、見ている限り魔術師が使う魔法に酷似していた。
魔法使いというより魔術師
超能力とも言い難い。CADを使わないと魔法を使えない辺り魔道具を使う魔術師と似ている気がした。
その後移動していき、第1高校生徒会長七草真由美が競演しているのに誰もががっついて見ている中
私は・・・
「・・・・・・」
「輝夜」
「はっ、あ、またか。」
「ちょっと早いけどご飯に行かない?」
「いいけど、智世はいいの?」
「うん、あまり良い気がしない。此処は」
「・・・・・そう、だね。」
「それに、輝夜は笑っていた方がいいよ。」
「あ、んもう。それは智世にも言えることでしょう?(〃・ω・〃)ノ」
そう言いながら、集団から離れ食堂に行く。
2人が抜けたことに気付く者おらず。
それから、見学時間が終わったのかぞろぞろと食堂に生徒たちがやってくる。
食堂で先に昼食を取っていると騒がしい声が聞こえてきた。
どうやら、一科と二科の席の取り合いのようだ。
先に座っていた二科生に籍を譲れと図々しく言う一科生男子。
よく見れば殆どがクラスメイト?というより1-Aのメンバーだった。
「(ああ、醜い。)」
「(同じ人間とは思えないなぁ。)」
「どうする?(一言添える?)」
「無視したいけどなぁ(逆に火の粉がこっちに来る。)」
「だよねぇ。(それは避けたいところ。)」
「終わったことだし、校内散策する?(さっさと離脱しよう?)」
「そうね。(賛成)」
以上、念話と口での会話終了。
食器とトレーを片づけて食堂を出る時、先ほどの二科生達とすれ違った。
一人の男子生徒がこちらを見ていたが何事もなく通り過ぎていった。
その二科生はというと
「どうしたの?達也君」
「いや、さっきの女子生徒。花弁の数多くなかったか?」
「え?そうでしたか?」
「ああ、一科生の場合8枚花弁だが、さっきのは10枚だった。あの二人」
「そういや、イギリスから留学生が来ているって聞いたな。」
「そうなのか?」
「だけど、どう見ても日本人だったね。」
「気のせいかな。行こうか」
といった感じだった。
そして、時は過ぎ放課後
昇降口と校門の中間のところで一科生と二科生が対峙していた。
どうやら、答辞をした女子生徒目当てのようだったが、その本人は二科生の兄と帰ると証言しており、それに駄々を捏ねているようだった。
「はぁ、まったくを以って醜い。」
口にせず、心に留めている予定だった言葉が自然と出ていた。
「なんだとぉ!」
それに反応して、一科生達と二科生達が此方を見る。
「彼等二科生側が正論を言っているのに駄々を捏ねているガキの集まりか?」
智世は気付く。いつもと口調が違うと、そしてこの時の口調はキレていることを知っていた。
因みに智世も怒ると穏やかだが、エリアスも直ぐ様謝罪するようになるほど怖いのだとか。
「お前らは、其処のウィードの味方をするのか!同じブルームだというのに!」
「同じ・・・ね。なら見せようか?貴方達ブルームとやらと私たちの次元の違いってものを。」
私の隣にいた智世が二科生たちの前に自分の使い魔を召喚した。
「オウカ」
その名と共に、智世の影から現れたのは、人。いや竜人種の者。
ロンドン上空でドラゴンを助けた後、可愛がられた智世だったがその者が使い魔になるという一言から始まり、種族内で説得が成されたが頑固に聞かない彼女に匙を投げ、死ぬまで智世を護るという命役を自分に課して晴れて使い魔となった。
竜人種は、半分人間であり、半分竜。
それ故、時と場合によって竜へと変貌することがある。
今回は場所が場所なだけに、彼女オウカは人として姿を現している。
自分が定めた主を護る為に己の鱗や甲殻などから作り上げた防具を纏って。
「なっ!?なんだそれは!!」
一科生達が驚く中、私も静かに魔法で作り上げた蜂を召喚した。
「ホーネット」
すると、何も無いところから、オオスズメバチを模した蜂が私を包むように表れ、臨戦態勢を取った。
裏世界のオオスズメバチはそこまで集団行動を取る事が多い。何故なら個々の能力値が低いから・・・ではない、中心となる女王蜂が少ないのだ。
そして、女王蜂となる者が現れると、我先と集まり、その者を守らんと行動するのだ。
現在の蜂達は正にその状態だった。
「だからなんだぁ!!」
同じ1-Aの森崎とか言う男子生徒が拳銃型CADを私に向けて魔法を行使した。
それを見て、二科生の女子生徒が飛び出そうとして智世に止められた。
「ちょっと、友達なんでしょ!なんで止めるの!」
「ええ、だってあの程度じゃ。輝夜に傷一つ付かないのを知ってるから。ねえ、オウカ。」
「はい。それになにかあればガルーダも飛んで来ましょう。」
輝夜と智世、2人の間には他の追従を許さないまでに圧倒的な信頼関係があった。
絶対に無いという自信は何処から来るのか?
その種は簡単だった。奇跡と呼ぶ魔法だが、それをオリジナルにアレンジして、魔法師に近い魔法を作り上げ行使してみたところ、純粋な魔法に対し機械を媒介した魔法が一切効かなかったのだ。そして、魔法師の作り上げる障壁をいとも簡単に破壊突破できると分かっていたのだ。だから、2人の間に問題は無かったのだ。
行使された空気圧縮弾が輝夜を襲うが、全て蜂によって相殺された。
「そんな・・・」
「なんなの。なんなのよ!」
「おい、ちょっと待て。あの女子の花弁おかしくないか?」
「え、なんで?なんで10枚あるの?」
一科生達は騒めくが、2人は見向きもしない。
輝夜はしっかりと森崎を含めた数人の生徒を見据え、智世が障壁を展開すると
オウカが楯を出し、智世の前に立った。
あまりに異常な光景だった。2人はいつでも攻撃出来るようにしていたが、輝夜が警戒をいきなり解いたことで、智世も障壁を消し、オウカを影へと下がらせた。
そして、そこに
「止めなさい!自衛目的以外での魔法攻撃は、校則違反以前に犯ざ・・・あれ?」
騒ぎを聞きつけやって来た生徒会長は誰一人として魔法を使っていないことに気付いた
後から来た風紀委員長も唖然とするが、直ぐ様気を取り直して
「風紀委員長の渡辺摩利だ。1-Aと1-Eだな。話を聞く。ついて来てもらうぞ。」
風紀委員長の眼光に肩を落とす一科生達だったが、
更なる介入者によって事態は変わる。
「それには及びませんよ。渡辺君」
「こ、校長先生!?どうしてこちらに。」
「なに、イギリスからの留学生にちょっかいを出している一科生がいると風のうわさで聞いてね。警告しに此処にきたわけだよ。」
「留学生?ですか。」
「其処に居る、花弁が10枚の子がいるだろう。彼女達は英国学院からの留学生だ。3年間の間日本に滞在するのでね。魔法先進国のイギリスからよろしくと頼まれているのだよ。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
校長の衝撃の言葉に2人以外何も話せないというより唖然としている。
「校長、入学式の時にすれば・・・」
「そうなのだがね、色々大人の事情があるのだよ。だが、君らについては生徒会を通して伝えるように言っていたのだがね。」
「真由美ぃ~?」
生徒会長と風紀委員長が問答している間に校長は、森崎達一科生達の前に来ていた。
「さて、彼らをウィードと蔑んでいたそうじゃないか?誰が決め、誰が言っていいと言った?」
そう、校長は入学式の際、一科生と二科生にある隔たりについて言及しており、発言した学生に対し厳正に処分すると明言したのだ。その矢先にこれなのだ。
尤も、校長先生の話の後で答辞だったから薄れていたのかもしれないが
「さて、君らはまだ入学式仕立ての新入生だ。これが2年3年なら、停学又は2科に繰り下げという処分が下るわけだが、今回は警告で済まそう。以後次が無いように。
君らの顔は覚えた。何か悪い事をすれば風が噂をするから気を付けるようにな。」
そう言って、校長は校舎へと戻っていった。
風紀委員長も今回は校長に免じて次が無いように釘を刺した。
帰り道、案の定彼等二科生達と1-Aの司波深雪さんと光井ほのかさん、北山雫さんと一緒に帰ることとなった。
「だから、10枚花弁だったのですね。」
司波さんがそう言うが、制服自体は特注で作られているとは言えない。
「それもあるけど、魔法自体がちょっと違うのだよねぇ。」
「俺から一つ聞いてもいいか?」
「何かしら?」
「何故、日本人なのにイギリスからの留学生なんだ?」
「ああ、私と智世は日本人だった。過去形だよ。
今はイギリス国籍を取得しているから留学生というふうに出来るの。」
「なら、尚更分かんないなぁ。どうしてなんだ?」
「日本が信じられないから、というのがあるかな。母国であり祖国だった。けど今はそんなに思い入れも愛国心も無い。だって、一度私は死んだことにされているから。」
「死んだって・・・どういうこと?」
「その言葉のままよ。碌な捜査も行われずさっさと戸籍は抹消。三千院家は元から無かったことにされたわけ。尤も、それが罷り通るわけないのだけどね。
日本政府に三千院家のことが上がった頃にはイギリスで戸籍と国籍を取得してたから。まあ、色々あるのよ。」
「すまない、何か聞いてはいけない事を聞いた。」
「問題無いわ。何れは聞かれる事でしょうし。けど、魔法については答えることは出来ないわ。」
「ああ、分かった。」
「智世、今日は乗らないよ。」
「あれ?そうだっけ。」
「ほら、あそこ。」
第一高校前駅の駅前に止められた3台のレクサス
今日は、いつものように帰るのではなく、皇居へ用事があるためだった。
「あれって、SPのと同じじゃない?」
「それじゃ、私たちはこれで。千葉さん、私たちの詮索は止した方がいいですよ。」
「え?どういうこと。」
「智世の言う通り。あまり調べようとしない方がいい。目を付けられるよ。うちの情報部にね。それじゃ。」
3台のうちの真ん中の車に来ると、助手席からSWATの隊員が出てきてドアを開ける。
両サイドからもSWAT隊員が出て周囲の警戒をしている。
私たちが乗り込むと、彼等も乗り込み車列は発進した。
3台のレクサスが発進すると他の場所で待機していたランドクルーザー4台、メルセデスベンツ2台が合流した。全て黒塗りであり、乗るまで魔法で誰にも見られていないので誰が乗り込んだか全く知らない。さっきの1年生集団以外はだが。
9台の車列が町中を通ると、警察は通達通り車列が動きやすいように交通整理をしながら、高速まで警護していき、そこから別の管轄らしく入れ替わりの警察車両が入る。
「皇居までそう時間は掛からないかと。」
「そうですか。」
「輝夜、ちょっと寝てもいい?」
「いいよ。ほらおいで。」
ポンポンと太腿に手を置き、智世はゆっくり私の股を枕に眠りに入った。
智世が眠りに入ったのを見た後、私は皇居までの空を見ていた。
その時、ふと後ろを見て
私は、座席にあったヘッドセットを付けて
「ねえ、なんか後ろ」
車列全体が一気に行動を開始した。
異常接近していた乗用車に向けてランドクルーザーから身を乗り出したSWAT隊員が銃口を向けて威嚇する。
その乗用車は、威嚇に臆さずスピードを上げ、車列の中に入り込んできた。
ノートの乗用車の中にCADを構えた人がいて、それを私たちが乗るレクサスに照準を向けたが、その時には、周りの護衛車から攻撃が行われていた。
一般的な乗用車には装甲が無いといっていい。
其処に対装甲車用の弾丸を撃てばどうなるか。
対人に向けていいものでは無いが、敵である以上そんなものは無い。
更に言えば、彼らは過去の国籍のまま。つまり国際法に則る必要がないというのが言い分だ。
容赦なく放たれたアサルトライフルの弾丸が車体を貫き、乗用車の中で弾丸が跳ね捲る。
どうやら障壁魔法を慌てて使用し、車内に障壁を張ってしまったようだ。
結果、車内で弾丸が跳弾し見事に運転手を含む全員が死亡した。
車両は、後で取り調べられることとなった。後日知りえたことは十師族からの刺客ということ。
派手に事故った車両を無視して車列は進む。
高速道路上での銃撃戦で智世が起きたかというとそれは無い。
寝ている智世を起こさない為に、風の精シルフに頼み智世の周りを一時的に防音空間にしてもらったのだ。
その為、智世は何が起きたのか知らないが、知らなくていいと私は思う。
その後の皇居までの道のりに何も問題は無かった。
そう問題は
皇居についてから、私はさっさと帰りたい衝動に駆られた。
いつもはこんなんじゃないのに
「輝夜?」
「ごめん智世。なんかヤバい気がする。」
「じゃあ、私に凭れ掛かってもいいから行こ?」
「そうする。」
智世に凭れながら案内されたところに行くと、其処には何故か義父リチャードと名も知らない老人が居た。
「おお、来たか。輝夜、そう嫌そうな顔をしなくていい。何かすればこいつの首が物理的に飛ぶだけだ。」
「それならいいですけど。」
用意されていた椅子に座り、冷たい日本茶が注がれる。
智世も私を見ながら、注がれたグラスを持ち、匂いを嗅ぐ。
「慎重だな、特に問題無いと言うのに。」
「慎重にもなるわ、馬鹿者。貴様らのせいだぞ。」
「しかしだな、スレイ・ベガもスレイ・スピカも実に興味深いことは、リチャードも分かっているじゃろ。」
「それとこれは違う。なんだ?貴様らは珍しいものを見つけたらなんでも解体するというのか!?」
「そうは言っておらん。」
「そうとしか思えんのだがな、九島。」
「今回は、彼女達に用があって来たわけだよ。」
「だから?魔法を使って連れ去ろうなど魂胆は丸見えだ。」
「ちっとも信用しとらんというのか?」
「ええ、少なくとも貴方方十師族には一度滅んでいただく必要がありますし。」
「!?」
九島は驚愕した。まさかそのような言葉が出て来るとは思ってもいなかったからだ。
「容赦はしません。私も大事な母を貴方方によって奪われたのですから。」
「・・・・・、リチャード。」
「それが回答だ。もういいだろう。わしも抑える事は出来る。だが、敵が目の前にいて抑えられない奴も居なくなくてな。そうだろう?エインズワースくん」
智世の影から出て来たエリアスは、いつもの骨の顔で九道という老人と対面した。
エリアスは出てから直ぐに輝夜の背面に立ち、目と口を覆い隠した。
「輝夜、それ以上は駄目だ。怒り任せに魔法を使ってはいけない。」
輝夜の周囲に具現化していた剣や槍が霧と消える。
輝夜は必中の攻撃を九島にしようとしていた。
九島は、動くことは出来なかった。何故ならリチャードが逃がさんばかりに睨み付けていたからだ。さながら彼は心臓を握られているような状況だっただろう。
「智世、輝夜を頼めるか?」
「はい。輝夜、大丈夫?」
私は、恐らく顔色を悪くしているだろう。今までに使っていなかった能力を使ったからか、全身に血液が巡っているのがよく分かる。それも通常よりも早く。
智世が優しく抱き締めてくれたおかげで大分息も整ってきた。
「ありがとう。智世、エリアス。」
「エリアス、私は輝夜と先に帰ります。」
「ああ。輝夜、前に言っていた綿蟲のベッド、アンジェリカが納品してくれてたから部屋に置いといたよ。そこで休むといいよ。智世も」
「うん、それじゃあまたあとで。」
智世が転移魔法を使い、私と一緒に3人の目の前から消える。
九島は、その光景を見て驚愕するがそうも言ってはいられなかった。
「何やら騒がしいのぅ。」
「へ、陛下!?」
2人が転移した直後、部屋に入って来たのは、日本国天皇陛下(皇后)だった。
「おや、エインズワースとブラッドレイじゃないか。息災か?」
「ええ。最近は緊急特例で養子を取りまして」
「そうか、そうか、して誰なんじゃ?」
「輝夜にございます。」
「!!・・・・・・そうか、輝夜がリチャードの庇護に・・・なら安心じゃな。それで九道、お主ら何を考えとる?」
「・・・・・・・」
「どうせ、人間のすることだ。智世と輝夜を連れ去って研究するつもりだったのだろうよ。そして、最後には解体か?」
「解体ぃ~?どういうことじゃ、しっかり説明せい。事の次第によっては容赦せんぞ!!」
天皇陛下は、九島を問い詰め、過去にあったことの大半を吐かせた。そして、天皇は大事な重臣を失ったと悔やみ、十師族に当てていた特例事項を全て撤廃すると宣言したのだった。
「どうかご再考を。」
「くどい!!お主ら十師族連帯責任じゃ。文句は遣った奴らに言え!」
「そういうことだ。さて、輝夜の様子も気になる。わしらは此処でお暇頂くとしよう。」
「なんじゃ、もう帰るのかえ?ブラッドレイ、エインズワース。家にはシルキーがおるじゃろうし。いざという時にオウカとガルーダがおるじゃろう。付き合え。」
そう言って、連行されていくリチャードとエリアス。Orzになっている九島をおいて
その後、ベロンベロンに酔った2人が帰ってきたとか。
その間、ガルーダとオウカがシルキーの手伝いをしながら炊事洗濯をしていた。
九島がどうしても九道になっていますがご容赦を。
出来る限り確認してますけど、人名誤変換はご容赦ください。(十師族だからえっか)
百山校長と輝夜は面識ないです。
百山校長と父方が友人という関係で知り合っている程度です。
ところで、綿蟲可愛いです。
非常に癒されます。
ストレス解消出来る最高の生物だと私は思います(作者の感想じゃねぇか!!)