うずまきメンマ物語   作: サキラ

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第6話

「えっ?うちは君…なんで…?」

 

メンマの前に現れたのはサスケだった。

突如現れたサスケに呆然となりながらもメンマは尋ねた。

 

「…それはこっちのセリフだ。ここはうちはの森つっただろ。お前こそこんなとこで何してる?」

 

もしかしてサスケは今日もここで修行をしてたのではないか?

どうやらがむしゃらに逃げていくうちにいつの間にか入り込んでいたらしい。

 

「……私は食材調達で」

 

サスケの問いにメンマは咄嗟に嘘をついて返した。

うちはサスケは部外者だ。

助けてくれる義理もない。

味方になってくれるはずもない。

それにこんな事態、話した所で見捨てられるだけだろう。

それならば最初から突き放してしまう方が心が痛まずにすむ。

 

「里中の忍がお前を血眼になって探してるっつうのにか?」

 

しかしその嘘はすぐさま看過された。

気まずげにメンマはサスケから顔を背ける。

なんで彼が自分に関わってくるのかメンマには分からなかった。

他人のはずだ…いやむしろ嫌われていてもおかしくない。

だと言うのになぜサスケは関わろうとするのだろうか?

 

「うちは君には……関係ないってばね」

 

それだけ言ってメンマは痛む体を無理矢理起こす。

そしてヨタヨタと足を引き摺りながら森の奥へと向かい始めた。

 

「…………痛っ!」

 

だが10メートルも進まないうちに唐突にメンマの身体に激痛が走った。

力を失った足は体重を支えきれずに小さな体はそのまま前のめりに倒れ始める。

しかしその体が地面にぶつかることはなかった。

驚いたメンマが振り返るとすんでのところでサスケが腕を掴み身体を支えていた。

 

「ッ!離して!!」

 

暴れるようにメンマはサスケの手を振り払う。

そしてそのまま数歩後ずさりし敵意の篭もった目でサスケを睨んだ。

 

「ほんとに意味わかんない!なんで私に関わるんだってばね!?うちは君とは別に仲良い訳じゃないし!恩を着せてる訳でもない!何の関係もない赤の他人なのに、何が目的で私に関わろうとするんだってばね!!?」

 

胸の内の想いを吐き捨てるように一呼吸でメンマは叫んだ。

メンマの脳裏にミズキに裏切られた光景が浮かびあがる。

信じられるわけがなかった。

自分が里中に嫌われてるという事は嫌というほど分かってる。

それでも関わろうとする人間はミズキの様に何か企んでるに違いないのだ。

 

「…知るかよ。体が勝手に動いちまったから仕方ねえだろ」

 

その叫びに対するサスケの答えはどこか苦しげだった。

正直、サスケ本人も何故メンマに拘るのか分からない。

メンマの言うことはもっともだ。

どう見ても厄介事だと分かってるのに関わろうとする自分はきっと大馬鹿なんだろう。

だけど傷だらけのボロボロの体で目に映る全てに対し敵意を向けた目で睨むメンマを見ると何故だか心が痛んで仕方ないのだ。

 

「……ふ、ふざけないで!そんなの理由になんかなってないってばね!!」

 

そんなサスケの姿を見てメンマが叫ぶ。

ありえない。ありえない。ありえない。

サスケの言葉は綺麗事だ。

理由にならない答えで納得出来るはずがない。

 

「チッ…理屈じゃねえ事もあるだろうが」

「そんなのはない!!!」

 

サスケの言葉をメンマは必死に否定する。

ありえない。ありえない。

信じる訳にはいかないのだ。

信じたらきっとまた裏切られる。

あんな思いをするくらいならもう誰も信じない方がいいはずだ。

 

「お前がどう言おうが俺が来た理由はこれ以外ねぇよ。それにお前だってもう言ってること滅茶苦茶だろうが?」

「うっさい!!!」

 

サスケの言葉を振り払う様にメンマは首を振る。

ありえないはずだ。

滅茶苦茶なのはサスケの方だ。

理由もなしに助けるなんてそんな綺麗事あるはずない。

自分に関わってくる人間はミズキの様に何か企んでるに違いないのだ。

だって、さり気ない優しさも、理由のない親切も、温かな友情も、分け隔てない愛情も、なにもかも……

 

「だって…だって…私は、そんなの…知らないってばね…」

 

クシャクシャに髪を乱してメンマの口からポツリと一言、どうしようも無い想いが零れ落ちた。

これまでに向けられたのは悪意だけだった。

昨日まで遊んでいた子ども達に次の日には無視された。

苛められ独りで泣いていた時も誰も気にも止めてくれなかった。

だからそんなのはあるはずない。あってはならない。

そんなのを認めてしまったらメンマの中に残るのはソレを受けられなかった空っぽな事実しかないのだから。

 

「それでも…俺はお前をほっとけねぇんだよ」

「っ…!」

 

絞り出すように先程と変わらぬ答えをサスケは口にした。

それを聞いて思わず息を呑むメンマ。

それを受け入れればどれだけ救われるだろう。

もしかしたら初めて本当に心の許せる人間が出来るかもしれない。

だけど……

 

「サスケくんは……私の事、なんにも知らないから…そんな事言えるんだってばね」

 

……そう。結局サスケは知らないだけなのだ。

知ればきっと軽蔑する。

里の大人みたいに厄介者を見る目で、敵を見る目で、化け物を見る目で見てくるに違いない。

それがしょうがない事だって分かってる。

だけど一度心を許してしまった人間にそう見られるのはきっと耐えられない。

そんな想いをするくらいなら始めから誰とも……。

 

「前にも同じ事を言ったよな?」

「え…?」

「何も知らない癖に何が分かるんだって」

 

サスケに言われてメンマは思い出した。

確かに数日前、河原でそう言い放っていた。

 

「…確かにお前の言う通りだ。お前がなんだって里の奴らに嫌われてるかなんか分からない。なんでそんなにボロボロなのかも俺には分からない」

 

けど…。と真っ直ぐメンマを見据えてサスケは続ける。

 

「……孤独。その痛みだけは分かっちまうんだよ」

「……!」

 

そう言ってサスケは目を伏せる。

その脳裏に浮かぶのは全てを変えたあの夜の出来事だった。

 

「だから……っ!」

 

言葉を続けようとしたサスケだったが咄嗟に振り返り身構えた。

その動きにつられてメンマがサスケの向こう側に目をやると森の奥から人影が現れる。

 

「ったく、こんな所まで逃げや…っ!…君はうちは君?こんな夜中に森の中でなにしてるんですか?」

「ミズキ…か」

 

苛立ち気に茂みから出てきたミズキだったがサスケの姿が目に入った途端、アカデミーで見せる柔和な笑顔を貼り付けた。

 

「おいおいミズキ先生だろ?まぁもう卒業するんだし別にいいけどね」

 

出てきたミズキを見てサスケが構えを解く。

一方、今までミズキに追われていたメンマは短く息を飲むことしか出来なかった。

 

(ど…どうしよう…早く…早くサスケ君を逃がさなきゃ…)

 

意を決してサスケに伝えようとしたメンマだったがミツキに睨まれ身体が動かない。

 

(どうしたら…このままじゃサスケ君も…)

『……おい。なんでそうなる?』

(えっ?な、なにがだってばね…?)

 

悩み続けていたメンマに寝そべっていた九喇嘛が見かねたように声をかけてきた。

その不満気な口調に戸惑いつつメンマが聞き返すと九

 

『サスケとか言ったか…なんであのガキを逃がさなきゃなんねぇんだ』

(なっ!?なにを言ってるんだってばね!?そんなの当たり前だってば…!)

『ケッ…当たり前ねぇ』

 

答えた九喇嘛は呆れた様子だった。

その言い方がメンマの琴線に触れる。

 

(そうだってば!サスケ君は何も関係ないっ!これは私の問題だから無関係なサスケ君は巻き込めない!)

『お前はあのガキに関わるなと言ってる。それでも首を突っ込んできたのはアイツだろうが?』

(だけどっ…!)

 

言い返そうとしたメンマだったが言葉が続かなかった。

九喇嘛の言う通りかもしれない。

勝手に関わってきたのはサスケの方だ。

必死に拒否したのに何も知らない癖に出しゃばって来た。

だから……自己責任のはずだ。

 

『お前も本当は分かってんだろ?今考えるべきなのはどうやって奴から逃げるかだ。違うか?』

(…………)

 

胸中を見透かされて押し黙るメンマ。

九喇嘛の言う通りだ。

勝手に関わってきたサスケよりまずは自分の事だ。

一度は諦めたがやっぱり死にたくない。

なんとか隙をついて逃げ出さなくては。

 

『どの道あのガキは目撃者だ。生かしておくつもりはないだろう。いっそのこと囮にすればいい』

(それはダメっ!!!)

 

それは咄嗟に出た叫びだった。

 

『さっき言ったこと覚えてるよな?だったらなんでそうしない?』

(そんなのっ!そんなの…そん…なの……分かんないってばね……)

 

返す言葉が見つからずようやく絞り出した答えはぐちゃぐちゃな心情そのものだった。

合理的に考えれば九喇嘛は何も間違ったことは言っていない。

この状況でおかしいのは自分の方だって事くらいメンマにも分かっている。

 

……それでも、

 

(サスケ君に分かってもらえたから……)

 

少し前まで生きるのを諦めていた。

けれどこんなところまで探してくれて、

拒絶した手を握ってくれて、

独りぼっちの辛さを分かってくれて、

 

傷だらけの身体以上に心が痛くて、もうだれも信じないと決めてにいたのに、

堪らなくどうしようもないほど

 

──嬉しかったのだ。

 

「っっ!サスケ君逃げてっ!!」

 

なんとか、恐怖で震える喉になんとか空気を送り込んで破裂させるようにメンマは叫んだ。

 

「チッ!」

 

その言葉に最初に反応したのは無情にもミズキだった。

ミズキもサスケも一瞬呆けたがミズキは舌打ち一つで我に返りクナイを取り出した。

 

「やめてっ!!」

 

咄嗟にメンマはミズキに掴みかかった。

 

「逃げてサスケ君!早く!!」

 

クナイを持つ手を両手で抑えながらメンマは叫ぶ。

勝てっこない。だけどせめて逃げる時間くらいは稼がなくては。

 

「ぐっ…離せこの化け狐がっ!」

 

メンマを振り払おうとミズキは拳を振るう。

両手の塞がってるメンマにそれを防ぐ術はない。

それでも離してしまわないようにと必死でメンマはしがみつく。

 

「グッ…逃げてっ…逃げてぇ…!」

 

──ごめんなさい。

目の前の状況が理解できてないであろうサスケにメンマは心の中で謝った。

──嘘をついてごめんなさい。

──酷い態度をとってごめんなさい。

──傷付けるようなこと言ってごめんなさい。

──信じなくてごめんなさい。

──巻き込ませてごめんなさい。

 

「鬱陶しいんだよ化け狐がっ!!そんなに先に死にてえなら望み通り先にあの世に送ってやるよ!!」

 

空いてる手にクナイを握りミズキが振りかぶる。

それでもメンマはミズキを離すことはしなかった。

自らの死を覚悟して最後にどうしても謝りたかったことをメンマは口にする。

 

「ありがとうって…言ってなくてごめんなさい」

 

その言葉と共にミズキのクナイが振り下ろされた。

 




息抜き小説でしたのに沢山の方に評価や感想を頂けて嬉しい限りです。
だと言うのにこっちも詰まって投稿遅くてごめんなさい。
両方の作品に言えることなんですけど書きたいことは沢山あるのに文章力がないから地の文の度に詰まっちゃって困ってます。

俺祝が詰まる→メンマ書く→メンマ詰まる→俺祝書こうとして詰まる→仕方がないから新作プロット作る→プロットも詰まる

どないせぇちゅうんや!!

完全にデッドロック状態になってます。
何か参考になる物を知ってる方いらっしゃれば教えて頂けると幸いです。
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