Another Century's Episode:The X 作:天羽々矢
その後トーヤは少女、レナから自分の正体を聞かされるがそれを気に留めず彼女を仲間として迎え入れる。
OP:DREAMS/ROMANTIC MODE
未だルヴェラに潜伏しているトーヤとレナ。
別にこれからどうするかは問題ではないのだが、トーヤの方に問題があった。
「・・・これ、どうすっかなぁ・・・」
そう言ってトーヤが見るのは、主兵装であるガトリングガンポッドを失った状態のVF-19A。
先のデルフィニウムとの戦闘で損失してしまったのだ。これでは真っ向からの先頭は不可能だ。
「無理するから・・・」
そしてそれをジト目で見るレナ。
今の彼女は手術服ではなく、裏地がチェック柄の黄色いコートにグレーのミニスカート、首にはゴーグルをかけている。
これは変装の意味も込めトーヤがレナに買った物だ。
「へいへい、何とか手に入れる算段つけねぇとな」
レナの言葉にうなだれるトーヤ。
何とかしてVF-19Aの兵装を入手したい所ではあるがフリーのメカ屋にそのような物を取り扱っている所を見た事が無い。
つまりは連合から奪うしかない。
「・・・やるしかねぇか」
「え?」
トーヤの独り言に反応するレナ。どうやら聞こえたようだ。
「連合の奴らとぶつかるしかないって事だ」
「・・・また戦うの?」
「・・・わりぃ」
レナの嫌そうな声に謝っておくトーヤ。今回は完全にトーヤの私情で行動しレナはそれに巻き込まれたのだ、当然と言えば当然だろう。
だが問題は都合良く連合の輸送計画を察知できるかだ。
「リン、ハッキングで連合の輸送計画とか暴けないか?」
【現在調査中です】
2人の会話を聞いていたリンは既にネットワークに侵入し輸送計画を調査し始めている。
【トーヤ様、第3世界ヴァイセンにて連合の陸送部隊が駐屯しているとの情報を掴みました】
「またヴァイセンか?」
リンが情報を見つけるも、ヴァイセンという言葉に嫌そうな顔をするトーヤ。
唯でさえあそこで騒ぎを起こしている身としてはあまり居たくない世界ではあるが四の五の言っていられない状況でもあるのも事実だ。
「ヴァイセンと縁があんのかね俺・・・」
「トーヤ?」
「何でもねぇよ。それよりリン、陸送隊ってヴァイセンの何処だ?」
思考を切り替えリンに連合の輸送隊の所在を確認する。
返答はすぐの帰ってきた。
【ヴァイセン首都より北方。フォートノートン丘陵地帯です】
***
フォートノートン丘陵地帯、そこに南のヴァイセン首都を目指す大型トレーラー3台を護衛するかのように部隊が展開している。
そして彼らのすぐ右には運河、その更に向こうには山がそびえ立つ。
その山より高い高度を飛行すればレーダーに探知される、その場合はすぐに目の前にあるトンネルに逃げ込める為彼らは安心しきっていた。
物事に絶対は無いという事も忘れ。
「レーダーにアンノウン捕捉!クソ、斥候からは連絡なかったぞ!」
峡谷を抜けトレーラー目掛け迫る2機の不明機。
黒地に黄色いラインと赤いワンポイントのVF-19と赤い装甲の戦闘機のような兵器。
トーヤのVF-19Aとレナのテオドーラだ。
「まさか、峡谷を抜けてきたのか!?」
「急げ、スピードを上げろ!」
いきなりの襲撃に混乱する部隊。
その間にも2機が接近し、遂にミサイルの射程に捉えマイクロミサイルを発射。周囲の護衛車両を破壊していった。
「クソ!早くしろ、早く正面のトンネルに逃げ込め!」
トレーラーは正面のトンネルへ逃げ込もうと増速するがその直上をレナのテオドーラが飛び越え、機体下部のビームライフルをトンネル上部へ発射。それによりトンネルの入り口が崩落し逃げる事ができなくなった。
それに気付いたトレーラーの運転手はすぐさまブレーキをかけ停車するが、周囲を見れば護衛は全滅、更にこちらをロックしているVF-19A。自分達は完全に逃げ場を失くしている事を理解するのにそう時間はかからなかった。
***
「こんなもんだろ」
そう言ってトーヤは両手のゴミを払うように手を叩く。その正面にはロープで拘束されたトレーラーの運転手と生き残っていた連合の兵士達。
そしてトーヤは確保したトレーラー内の物資を物色していく。
幸か不幸か、その物資の中にはVF-19の追加武装・高機動用オプション装備であるファストパックの他、VF-19のガトリングガンポッドも積まれていた。
当面の問題はこれで解決した。
・・・と思いきやそこでトーヤの視線が別の物に移った。
それはボルトアクション式スナイパーライフルの銃身下部に銃剣のように着けられたブレードが目を引く武器。
そのブレード部分には「959」というナンバリングが施されている。
恐らくトレーラーが急ブレーキをかけた時に荷崩れして落ちたのだろう。
「何だこれ?こんな武器初めて見たな・・・」
トーヤは興味本位でその武器に右手を伸ばそうとするが、
「触っちゃダメ!!」
突然レナが声を荒げた事に驚き手を引いた。
「びっくりした・・・、何だいきなり?」
「ごめんなさい、驚かせて・・・。でも絶対それには触らないで」
レナは断固としてスナイパーライフル調の武器には触れないようにトーヤに釘を差す。
だがトーヤにはそうまでする理由が分からない。
「何で触ったらダメなんだ?」
だからこそレナにその理由を問う。
そしてレナからの返答は・・・
「それに触れたらトーヤが死ぬかもしれない。もし死ななくてもトーヤが殺戮者になっちゃう・・・」
その返答にますます理解が難しくなってくる。
武器1つ触れただけでそこまで変貌するのだろうか、と。
そこでレナは更に言葉を続ける。
「・・・それはある殺人ウイルスの感染源。トーヤも少しは聞いた事あるでしょ?・・・
「!?」
その単語にトーヤは戦慄した
ECウイルス、正式名称「エクリプスウイルス」。
新暦81年にその存在が認知され、連合が設立された99年頃でも有効な治療法が見つかっていないとされる、感染すれば即座に死ぬ殺人ウイルス。
恐ろしいのは、感染者の中でも飛び抜けて能力の高い「適合者」と呼ばれる存在。
適合者は通称「EC
また、何らかの手段でその衝動に耐えたとしても発狂するレベルの肉体的苦痛に襲われ最終的には死亡する。
特筆すべきはその適合者の対魔導能力だろう。
適合者は魔力中和フィールドを身に纏い、魔力エネルギーの結合を分断する事で魔力による運動エネルギーをほぼ全て無効化できる。
また感染が進めばウィルスが宿主を生き残らせようとする力が作用し、高い再生能力等を宿主に与える。
だがウイルスに適合する確率はとても低く、感染した場合はほぼ確実に死亡する。
そんな恐ろしいウイルスの感染源が自分の目の前にあるというのだ。
「・・・分かったよ、これには触らない」
「うん・・・」
レナの言いたい事を理解したトーヤは素直に武器から手を引く。
彼とてまだ死ぬつもりはないが、治療法が分からない物とはいえウイルスで死んだなど洒落にならない。
「とにかく欲しい物は手に入ったな。あとはリンを呼んで運ぶだけなんだが、まさか横取りしようと考えてる連中なんざ・・・」
「残念ながらいるんだよなぁーっ、ここに!!」
トーヤの思慮に応えるように周りに響く声。それはまだ若さのある男の声だ。
それを聞きトーヤとレナは周囲を見渡し声の主を探す。
「トーヤ、上!」
レナがその声の主を見つけたか、川を超えた先の山の上を指さしトーヤもその方角を見る。
そこから来たのは黒いVF-1が1機とVF-11Cが3機。先頭のVF-1には両主翼に炎を模したペイント、機体背面にドクロマークが描かれている。
「ハッハァ!グレンデル一家のお出ましだぜェー!!」
「堂々と名乗んな、アホ大将っ!」
「イィィーヤッハァー!!ロロさんの超電磁フライト!!」
「・・・」
先頭のVF-1に乗っているであろう青年の声に後続のVF-11C3機に各々乗る女性らしき声(約1名は無言だが)が続く。
4機編隊は真っ直ぐトーヤとレナへ向かってくる。そうなれば取る手段は1つしかない。
「レナ、お前は下がってろ、俺が相手する」
「4対1なんて無理もいいとこ!私も戦う」
「・・・そうだったな、なら背中は任せたぞ!」
「任せて!」
トーヤとレナは各々の機体に乗り込み臨戦態勢を整える。
バルチャー同士の戦いの幕が上がる。
ED:トリカゴ/リーナ・レヴェントン(CV:水瀬 いのり)。イチゴ・テスタロッサ(CV:市ノ瀬 加那)、レナ(CV:佐倉 綾音)
今回もこの趣味全開の駄文にお付き合いいただきありがとうございました!