ちかなんとーーー。   作:黄昏虎おじさん

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ep2-2 Independent Future - 萌芽

 

機材を洗う手を止めて。

ホースから流れ続ける水を眺め、私は少しだけため息をついた。

 

やれやれーー。

ほっと胸を撫でおろす。

…危なかった。

 

いきなり彼と、あんなに急接近して、見つめ合っちゃったりするもんだから。

彼への気持ちが…行動に出そうになってしまった。

 

私は今でも、主人公君が好き。

忘れよう忘れようと、新しい出会いを求めたりもするのだけれど。

そうして得られた恋は…何かが違うーー。

私は…初恋の熱を、いつまでも忘れられないみたい。

 

ダメだよ…、今はチカの彼なんだからーー。

 

水が出っ放しの蛇口を捻りかけた、その手を…私は動かさないままで、また少しだけため息をついてから。

ーー再び作業に戻った。

 

ーー。

 

主人公「おまたせ、チカちゃん。」

 

私服に着替えた主人公君が戻ってきた。

 

チカ「おか〜えり!」

 

こちらへとやってくる主人公君を私は笑顔で迎える。

 

主人公「そういえば、チカちゃんもこの辺に実家があるんだよね。」

チカ「うん、そうだよ~。」

主人公「たまには帰ったりしてるの?」

チカ「んー、あんまり…帰ってないかなー。」

主人公「そっか。」

チカ「だって、今の私にはあなたがいるし!」

チカ「一人暮らしでも、心細く感じないから。」

主人公「ふふふ。」

 

そう言って…私はハッと思い出したかのように。

一つ頭に浮かんでいた心配事を主人公君に問いかける。

 

チカ「…そうだ主人公君。」

主人公「?」

チカ「さっき、カナンちゃんと何話してたの?」

主人公「…え?」

 

ーー何気ない言葉のつもりだった。

いままでにも、特にカナンちゃんと二人きりでいた後なんかには、よく問いかけていた言葉だったから…。

 

主人公「えっと、さっきのこと?」

チカ「うん。二人きりで居たときのこと。」

主人公「あは、えっと…手伝えること、何かないかな?って聞いてた…だけ。」

 

ーーキョロキョロ。

どうしてかな…今日は、ちょっと挙動不審な彼の動きが気になってしまった。

 

チカ「それだけ?」

主人公「…うん。」

 

彼は嘘が下手…。

何を隠しているんだろう。

何か…悪いことでなければいいんだけど。

 

チカ「そっか。」

チカ「ごめんね、突然。」

主人公「…。」

 

うんともすんとも言わず、彼は俯き加減に目を逸らした。

ーーわかりやすい人。

 

沈黙の訪れとともに風が吹いて、木々を揺らし音を立てるーー。

海原へと目を向けるその視線の先、遠い空には、灰色の雲が迫っていた。

 

ーー。

 

それからしばらくしているとカナンちゃんが戻ってきて。

 

カナン「んんーっ!」

チカ「カナンちゃんお疲れ様ー。」

カナン「うむ。」

 

一仕事終えたカナンちゃんは陽の光を浴びながら、背伸びをする。

カナンちゃん、スタイルいいから…そんな姿もすっごい綺麗。

…ちょっと見とれちゃった。

 

カナン「…はあ〜。」

カナン「2人とも、この後はどうするの?」

チカ「んー、ゆっくり休憩してから駅前に帰る予定〜…だったよね?主人公君。」

 

そう言って背後にいた主人公君へと目を向けると。

なんとなく虚ろな表情でボーッとしている。

ーー?

 

チカ「おーい?」

 

どうしたのかな…そう思って、果南ちゃんと顔を合わせようと前を向くと。

カナンちゃん、頬を少し赤くして…胸を隠すように。

え…?

ハッとして、私は思わずーー。

 

チカ「ちょっ!」

チカ「ちょーっと!!主人公君、どこ見てるの?!」

 

再び背後へと向き直して彼を問いただす。

 

主人公「…え?」

チカ「え?じゃないよ!」

チカ「カナンちゃんのこと、ジロジロ見て…。」

チカ「確かに、カナンちゃんが魅力的なのはわかるけど…。」

 

まくし立てる私に対して、彼はボーッとしたまま、なんとなく状況を理解しきれてないのかな…あまり相手にしてくれていないみたい。

これは、…由々しき事態。

ぷーっと頬を膨らませて、私は不服をあらわにする。

 

カナン「お、落ち着きなよ…、チカ。」

チカ「ふん!」

カナン「主人公君も、ちょっと…ほら。」

主人公「あ…え、えっと…。」

 

仲裁に入ろうとするカナンちゃんを余所に、私は彼にそっぽ向く。

彼は少しだけあたふたとした様子を見せ始めたような気がしたのだけれど、…無反応。

…あれ?

ちらり、背後の様子を伺ってみると、彼は俯くようにまた虚ろな表情をしていた。

どうかしたのかな…そう心配した、その時。

ーー良からぬことが、私の頭の中では繋がった。

 

ーー。

 

チカ「ん〜っ!もう!」

 

怒ったチカは遠くの方へと歩いて行って…、海に向かって体育座り。

わかりやすく拗ねている、チカ。

はあ、何やってるんだか全く…。

 

カナン「こーら。」

カナン「チカ、拗ねてるじゃん。」

カナン「とりあえず、謝りにでも行ったら?」

主人公「…ごめん。」

カナン「私に言ってどうするのさ…。」

主人公「いや、なんか…ボーッとしちゃって。」

カナン「言い訳みたいなこと言わないの。」

主人公「…はい。」

カナン「ちょっと、あなたらしくないよ。」

 

妙に苦い顔をして黙り込む彼、どうしたんだろ…。

仕方ない、ちょっと茶化してやろう。

 

カナン「っていうかさ。」

カナン「さっき私の胸、じっと見てたでしょ?」

主人公「…否定はしないよ。」

 

彼は少し顔を赤くして目線を逸らした。

全く、可愛い奴め…。

 

カナン「もしかして、さっき私がくっついたので、久しぶりに…変なこと意識しちゃったのかな〜?」

主人公「…。」

 

まあ…そういう事なんだよね。

彼はーーー、いや考えないようにしよう。

 

カナン「ふふふ。ういやつめ〜!」

 

肘でトントンと彼の脇腹を突くと。

彼の表情は少し明るくなって、ふっと微笑む。

 

主人公「やめてってば、もう。」

カナン「うふふ。」

主人公「ごめんね、ちょっと…倒錯してたかも。」

カナン「とうさく?」

主人公「なんでもない。」

カナン「なにそれ〜。」

主人公「とにかく、チカちゃんのところに謝りに行ってくるよ。」

 

そう言って彼は小走りに、少し離れたところに見えるチカの元へと向かって行きかけて。

 

主人公「ありがとう、カナン。」

 

少しだけ振り返り、言葉を置き去りして行く。

彼のそんな素振りは、私に少しだけ隙を見せるみたいで意地悪。

手が届きそうで届くはずのない、その背中を眺めたまま、私は首を横に振ってから憂いを吐き出す。

…やれやれ。

 

その後、私は遠くから2人を見守っていた。

平謝りする彼と、それにプイッと顔を背けるチカ。

ふふふ、側から眺めているとなんか…楽しい。

 

しばしそうやって見ていると、突然2人は向き合ってから…キスをして、抱き合って。

仲睦まじい様子を、まるで見せつけられているかのように感じて。

チカの嬉しそうな表情が、ーーー。

 

妬ましく思えた。

 

胸をツンと刺す、そんな痛みがもたらした衝動的な感情に、思わず私は自分の口を塞いだ。

2人の関係を理解しているにも関わらず、私は…今なんて事を…。

 

でも、その感情は今までにも抱いていたはずの…、ずっと心の奥底に沈めてきていたものだと思う。

今までそれが直情的に湧き上がることは、一度もなかった。

だけどーー。

 

ーー。

 

2人、抱き合ったままの体を少しだけ緩めて、私は彼の耳元で囁く。

 

チカ「仕方がないから、許してあげます。えへへ。」

 

私は彼にこう言ったのだ。

「やっぱり私よりも、カナンちゃんのことが好きなんじゃないの?」

「私が好きだっていうのなら、今ここで誠意を見せてください。」って。

そう言って彼を見つめて、おねだりしちゃった。

彼は、その願いに必ず応えてくれる。

知っているから、それが彼の優しさ、甘さ、…そして弱み。

でも、そうとわかっているからこそ、そんなことをした私には、喜びとともに少しだけ、虚しさが襲ってきた。

まるで、そうでもしなければ私は、彼に振り向いてもらえないのか…と、自己嫌悪するように。

 

私は2人のことが好きだったから、みんなで仲良くしたかった。

もちろん、今でもそうしたいって願ってる、つもり。

でもそう思って、3人の親交を深めていると、近づいてゆくカナンちゃんと主人公君がーー。

わたしの中には、徐々に疑心暗鬼が育っていた。

 

2人は、友達以上の何か…恋人にはなれない、歪。

それは私が2人にかけた、一種の呪いのようなものなのかもしれない。

 

ーーちゃん。

 

主人公「…カちゃん。」

主人公「チカちゃん?」

チカ「ん!?はい!」

主人公「大丈夫?ボーッとして。」

チカ「ああ〜…ちょっとだけ考え事してて、あっははは。」

主人公「…。」

主人公「そっか。」

 

時計を見る彼は、少し私の様子を伺うようにしてから。

 

主人公「時間…そろそろ、船が来るよね。」

チカ「うん。」

主人公「そしたら、帰ろっか。」

チカ「そうだね。」

 

私は主人公君の手を手繰り寄せてから握って、一緒に並んで歩く。

“ただそれだけの行為”に、純粋な幸福感を感じられなくなったのは…いつ頃からだろうーー。

 

ーー。

 

主人公とチカ、2人は歩いてカナンの元へ。

 

繋いだ2人のその手を一瞬、ーー見つめたカナンは。

 

カナン「おっ、熱いねえ〜。」

 

わざとらしく意地悪な表情を浮かべてみせる。

 

チカ「えへへ〜。」

 

チカは握っていた手を離してから、主人公の腕に抱きついて見せた。

主人公はそんな状況に、ちょっと苦笑いを零しつつ。

 

主人公「…僕たちはそろそろ帰るよ。」

カナン「うん。」

カナン「またダイビングしに来てね。」

チカ「うん。」

チカ「じゃあね、カナンちゃん。」

カナン「うん。じゃあね2人とも。」

主人公「またね。」

 

そう言って別れた、3人。

2人は船着場へ行き、タイミングよくやってきた船に乗って。

 

ーー。

 

帰り道。

先ほどまで保っていた秋晴れの空に、薄暗い灰色の雲が覆いかぶさる。

雨は降らないという予報だった空から、ポツ…ポツ…。

雨未満の水滴がわずかに滴り落ち、大地を濡らす。

 

 

これは、事の発端ーー。

3人が立っているその大地に、静かにその姿を現した。

不和の萌芽。

 

つづく。

 





難しいですね〜、というのが今のところ…です。
なんとなく3人いる内の誰かが、決まって悪いぞっていう風に事を運びたくないので、それとなりに慎重に書いているつもり…ですが。
たぶん、なるべく主人公君を悪者にしちゃいたいかな〜(((
…まあ、彼女たちをなるべく悪い子に仕立て上げたくはないよね。
っていう感じですかね。

そんなこんなで、-1と-2で事の起こりのエピソードでした。
なかなか普段、あまり想像しないジャンルの話(?)なので。
なかなか思いつきをまとめて〜、文字に起こすまでに時間がかかりますね。
かなり、今までの話以上に遅筆更新が予想されますかね。
もっともこの先、話の展開が今よりもアグレッシブになって、エキサイトしてくるとわかりませんけど(笑

案外この話長続きしそうで…、ひょっとすると-8とか-10くらいまで続けちゃうんじゃないかな〜って感じです。
完結すれば…ですけど(
まあ、気長に…頑張っていきます。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…

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  • 残しておいて欲しい
  • 書き続けて欲しい
  • 筆者の好きにすればいい
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