ちかなんとーーー。   作:黄昏虎おじさん

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ep2-6 Independent Future - 約束

 

にんまりと微笑む男の子がいた。

私はその子の笑顔がとても好きだった。

優しくて、温かくて。

 

目の前の男の子は突然そっぽを向くと、急に淋しそうな顔をして私の元を離れて行こうとする。

 

「待ってーー。」

 

思わずその手を掴んだ。

すると男の子はこちらを向いて…また笑顔を見せてくれた。

…よかった。

私はそのままゆっくりと前へ向かって歩いて行く。

男の子も私に手を掴まれていることを嫌がることなく、私についてくるのだけれど。

少し歩いては後ろを振り返って、何もないところを何故か見つめる。

何度も繰り返すその行動に、私は首を傾げながら、一緒に歩いていると。

 

「ーーー。」

 

誰かが誰かを呼ぶ声がした。

その声につられて振り向く私たち。

そこには人影。

知っている人、女性ーー。

男の子は私の手から抜け出して、女性の方へと向かって行った。

私に見せたことがないくらいの笑顔で、まるでその人を…今まで待ち続けていたかのように一心不乱に。

私は、その様子に声もかけられず…ただ、呆然としたまま立ち尽くして。

 

「そっかーーー、うん、いいんじゃないかな…それで。」

 

そんな言葉を自分に言い聞かせるようにして、納得したつもりになっていた。

 

俯いた私はそのまま後ろを向いて、2人から離れていこうと思った。

その手を…何者かが掴む。

振り返った私の目の前には、男の子。

男の子は何かを伝えようとしてくる、一生懸命。

何を伝えられたのかは分からなかったけど、それに嬉しくなった私は。

男の子の手を引いて、また前へと歩みだした。

遠巻きに見ていた女性の手も引っ張って。

3人で、一緒に笑いながら。

どこまでも…そのまま歩んでいけると思っていた。

 

「うわっ!?」

 

私の視線は、突然何もない地面に向かって落っこちた。

繋いでいた手は咄嗟に離していたから、私1人転けてしまっただけみたい。

よかった。

視線をあげると、わたしの鼻先には…花。

その向こうに、2人。

男の子と女性。

2人は手を繋いだまま。ゆっくりと歩いて私を置いていこうとする。

 

「待ってよ…。」

 

立ち上がろうとする私の足には、植物の根のようなものが絡みついて私を捕縛する。

ーー目の前の花。

まだ蕾だったそれはゆらゆらと揺れながら。

突然、その動きを止めて。

私に見せつけるみたいに…じわじわとーーー。

 

ーー。

 

チカ「…。」

 

…夢。

目が覚めてもまだ周りは暗かった。

 

ハッと思い出したように感じた不安に、私は上体を起こしてからベッドの側を覗き見る。

…良かった、居る。

そこには静かに寝息を立てている主人公君。

 

ホッと一息ついてから、時計を確認して、少しだけ身震いする。

寒い、体が寝汗でビショビショになっているからかな…。

枕元に置いていたタオルで体を拭いてから、布団の中へと潜り込んで、再び眠りにつく。

 

午前2時。

 

 

ーーー。

 

 

ゴッ!

 

「…あいたっ!いったたた…!」

 

突然の物音に、僕は思わず飛び起きた。

体を起こして見た先には、転げたチカちゃんが…。

 

主人公「…大丈夫?」

チカ「いたた…うん、大丈夫。」

チカ「足が痺れてうまく歩けなくって…えへへ〜。」

主人公「お水でも欲しかったの?」

チカ「うん、喉乾いちゃったから。」

主人公「取ってきてあげるから、ほら。」

 

こけたままのチカちゃんを抱きかかえてベッドへと戻す。

チカちゃんは…笑顔。

 

チカ「ありがと。」

主人公「具合はいい?」

チカ「おかげさまで、だいぶ良くなったみたい。」

チカ「ケホッ…ケホッ。」

 

咳き込む彼女のおでこを撫でるように、熱を測る。

 

主人公「まだ熱もありそうだし。」

主人公「今日一日は安静にしておこうか。」

チカ「うん。」

 

素直に返事をしてくれる彼女の表情は、昨日に比べてとても柔らかく。

いままでの…いつもの、チカちゃんに戻ってくれたみたい。

よかった、ひとまず安心。

 

主人公「はい、お水。」

 

コップに注いだそれを手渡そうとすると、カレンダーを凝視するチカちゃんが心配そうに呟く。

 

チカ「…ねえ、主人公君。」

主人公「ん?」

チカ「今日、バイトじゃない…かな?」

 

ああ、そういうこと。

 

主人公「代打を立ててるから大丈夫だよ。」

主人公「まだチカちゃんの具合も良くないだろうからと思って。」

チカ「…ありがとう。」

チカ「ごめんね、心配かけちゃって…。」

 

申し訳なさそうなチカちゃん、でもチカちゃんが風邪引いたのは。

一昨日、僕を待っていたから…。

 

主人公「ううん、それは…謝るのは、僕の方っていうか…。」

チカ「あ、うっ…えーっと、ご飯!」

主人公「?!」

チカ「お、お腹空いちゃって〜あははは。」

 

話題をそらされた、なんでだろう。

でも、まだ触れて欲しくないってこと…なんだよね、きっと。

 

主人公「…。」

主人公「うん、わかった。」

主人公「お腹、空いてるんだったらどうしよう、ちゃんとした物なら…。」

主人公「また昨日と同じレパートリーになるけど。」

チカ「昨日のおうどん、美味しかったから、また食べたいな。」

主人公「ふふっ、じゃあちょっと待ってて。」

 

ーー。

 

主人公「おまたせ、チカちゃん。」

 

座卓テーブルにお皿を置いてから座る。

チカちゃんは上体を起こしたまま、指を遊ばせてモジモジ。

 

主人公「どうかしたの?」

 

チラチラ、はにかみ顔でこちらを見ながら。

 

チカ「…あのね。」

主人公「…うん?」

チカ「その、よかったら。」

チカ「ご飯…食べさせてほしいな、…なんて。」

 

昨日とは打って変わって…甘えたがりなチカちゃん。

どうしたんだろう、ふふふ。

なんだか僕は、ついつい嬉しくなって。

 

主人公「うん、わかった。」

 

座卓テーブルをベッドに寄せてから、僕たちは朝ごはんを一緒に食べた。

 

 

ーーー。

 

 

食器を洗う主人公君を眺めながら、私はベッドの上で安静にしていた。

風邪の症状は、昨日に比べると随分楽なので、少し退屈な気持ちの方が勝るような、そんな気分。

 

…。

一昨日のこと…。

主人公君…気にしていた、当然だろうけど。

どうしよう、私はーー。

その日は、裏切られたという思い、怒りや悲しみで、心はいっぱいいっぱいだった。

だけど…。

今感じているのは、彼との関係に抱く、気持ちの悪い焦燥感。

彼の気持ち、彼の目に私は…どう映っているのだろう。

そんなものはわからない…。

 

取り留めのないこと、考えれば考えるほどに、私の心は不安定になっていく。

そんな中で私は、ひとつの思惑を浮かべるようになっていた。

それは、今の私を保つための…ひとつの願い。

約束。

 

それを、彼に願ってしまえば…今の3人の関係は、壊してしまうことになる。

…そんなこと、許されるのかな。

カナンちゃん。

 

ブッブー…。

 

私の近くでスマートフォンが振動した、これは…主人公君のだ。

持って行ってあげよう、そう思って主人公君のスマートフォンを手に取ったら。

 

[新着メッセージ : マツウラ カナン]

 

見えてしまった…その通知を凝視しながら。

主人公君の元へと持って行った。

 

チカ「主人公君、メッセージきてるよ。」

 

 

ーーー。

 

 

主人公「あ、ありがとう。」

 

手渡しされたスマートフォンのロックを解除して、内容を確認する。

カナンから…か。

 

カナン[貸した防寒着はまた機会がある時に返してネ]

 

そっか、危うく忘れるところだった。

次会った時にでも返せるかな…。

 

とりあえず返事も打たずに、スマートフォンから視線を外して、ポケットへと仕舞おうとしていると。

隣に来ていたチカちゃんが、俯いたままこちらを向いて止まっていることに気がついた。

 

主人公「チカちゃん?」

チカ「…えっと。」

チカ「メッセージの相手、見えちゃったの。」

 

ひやり…。

 

主人公「…うん。」

チカ「見せてっては言わないけど、ちょっと…気になるなって。」

主人公「…。」

 

少しだけ躊躇った。

でも、チカちゃんの部屋に来た段階で…それらの覚悟はできているつもりだったから。

ゆっくりと深呼吸してから、僕は。

 

主人公「一昨日のこと…。」

 

スマートフォンのメッセージをチカちゃんに見せながら。

 

主人公「防寒着をカナンから借りちゃったから、それを返さなきゃって話。」

チカ「…うん。」

主人公「えっと…。」

主人公「チカちゃん、その一昨日のこと…なんだけど。」

 

チカちゃんのこと、真っ直ぐ見つめて。

しっかり頭を下げる。

 

主人公「ごめんなさい。」

主人公「君を…裏切るようなこと、してしまったこと、反省してる。」

チカ「…うん。」

 

 

ーーー。

 

 

深々と頭を下げた主人公君はしばらくして面をあげて。

少し俯き加減にこちらを見ている。

私の返事を待っているみたい。

 

私は少し躊躇いながらも、湧き上がっていた思い…願いをひとつ。

 

チカ「主人公君。」

チカ「ひとつだけ、お願いしてもいい?」

主人公「うん。」

チカ「できれば…。」

 

これを言ってしまえば、もう。

あの頃の3人には、戻れなくなってしまうかもしれない。

だけど私の意思に、そんな迷いは生まれることなく…。

 

チカ「カナンちゃんには、あんまり会わないでほしいの。」

 

淡々と、告げてしまった。

 

主人公「…。」

チカ「酷いこと言ってるっていうのはわかってるの、でも。」

チカ「そうでも言ってくれないと、私…信じられない。」

 

あなたを…カナンちゃんを…私自身を…。

 

チカ「…。」

チカ「あなたの気持ちがまだ、私に向いてくれているのなら。」

チカ「それだけ、約束してほしいの。」

チカ「他の言葉も、何も…要らないから。」

チカ「私だけのあなたであって欲しいから。」

チカ「だから…。」

 

ああ、ーーー。

 

主人公「…。」

主人公「…うん、わかった。」

主人公「約束するよ。」

主人公「カナンとは…会わない。」

 

戸惑いを見せながらも、彼はしっかりと返事をしてくれた。

 

チカ「…ありがとう、主人公君。」

チカ「…。」

 

私の願いに、彼は応えてくれた。

それは、嬉しいことのはず…なのに、胸がズキっと痛んだ。

 

ーー。

 

”約束”は、これから…私を縛り付ける新たな足枷になって。

私の中で花開いた不和の感情は、ーーー。

 

…今思えば、彼を思う感情はすでに、義務感に等しかった。

彼と付き合っているのだから、その関係を保たなければいけない。

私の頭の中は、そんな考え方で、彼との関係を続けていた気がする。

彼を思う、純粋な気持ちは、いつのまにか…。

その関係が、幸せだったということと共に、忘れていたのかもしれない。

 

ーーー。

 

揺れ動く、私の目の前で開花したその花は…。

黄色いバラのようだった。

 

 

前半おわり

後半へつづく…。

 





やっとこさ更新です、お久しぶりです。

一応これで前半終わりになります。
後半も同じくらいのボリューム…になるのかどうかは、また描き進めていかないとちょっとわかりません。

長いことひとつのテーマで書き続けていたので、すこし合間の休憩を入れようか、とか思いつつ。
おそらくこれの次の話は、またしばらく時間をおいて、更新するではないかと思います。
その際は前半をまた見返して、いろいろ辻褄合わせとかで、文言だったり流れだったりを少しいじるかもですね〜、その辺はかなり気分次第です。(
まあ、何分なれない物語展開に、頭の中がごちゃごちゃになっているので、結構すでに書いてる文も、変なことになっているのではないかと思いつつ…ですね。

また後半開始の際には、前書きにいろいろ書こうかと思うのですが。
今までの話の展開的にも、原作乖離もさる事ながら、かなりキャラクターの関係だったりをヒン曲げていたり、衝突させるようなことがあったりするので、[アンチ・ヘイト]タグをつけた方が適切ではないかな?とか思ってます。
この話に限って言えば、”ちかなんと”なんて銘打っておいて、ちかなんちゃんが衝突しちゃう話ですからね(
とんでもない((
なので、タグ付け云々とかもまたまた見直して行こうかな…と。
その辺のマナーは結構、蔑ろにしているつもりはないのですが、疎いので「こうした方がいいですぞ!」みたいなことがあれば、是非教えていただきたいです。(笑

思うところは…色々あるのですが。
だらだら書いていると、下手すると本文を超えてしまうという、ブログ感覚のあとがきをつけてしまうので。(既になってますけど
ここら辺で終わりにします。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
また後半を読んでいただけたら幸いです。

[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…

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  • 書き続けて欲しい
  • 筆者の好きにすればいい
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