ちかなんとーーー。   作:黄昏虎おじさん

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######[注釈]######

この話は[番外編]後編のifストーリーです。

################

これは、主人公が本編中で取り零したもの。

1人の少女の涙。
一滴一滴集めたそれは少女の憧憬、あったかもしれない物語のカケラ。
それは幻想、もし…少女の悲しい涙が流れることがなかったのならーー。

if….



ep3 涙の雫を集めて。[if story]

 

…。

バス停へとたどり着いた僕は、軽く目をこするようにして涙を拭う。

横目に向ける視線の先には、遠く離れたカーブからバスがやってきているのが見えた。

 

本当に、これでよかったのだろうか。

彼女との最後のデートを終えた僕は、彼女に見送られてこれから帰路へとつこうとしていた。

刻一刻と迫ってくる、別れの瞬間。

だんだんと近づいてくるバスの音に耳を傾けながら、迷える気持ちのまま、つい…僕は後ろを振り向いてしまう。

 

“私はここまで”

バス停から遠く離れたところで、そう言って別れたはずの彼女は…。

僕のすぐ傍までやってきていた。

ウルウルとした瞳でこちらを見つめる彼女は、とても別れを覚悟したようには見えなくて。

そんな様子が、すごくいぢらしくて…愛おしくって。

 

僕はーーー。

 

 

ーーー。

 

 

「お帰りなさいませ。」

 

帰国の手続きを一通り終えて、通路を歩んでいく。

久しぶりの日本。

到着ロビーへとついた私は、周囲を見回して待ち人を探す。

 

「カナン。」

 

私を呼ぶ声…、しばらく会っていなかっただけで、すごく懐かしいもののように感じた。

声の方向へと駆け足で近寄っていく、その足取りは軽く。

今すぐ、笑顔で待つあなたに…。

ハグしたい、そんな気持ちで彼に向かって飛び込んだ。

 

ボスッ。

 

主人公「ちょっ…カナンってばいきなり。」

主人公「い゛っ!?いっ痛いってば!」

 

彼の体をギュウッと強く抱きしめて、しばらく彼の胸元に顔を埋めたまま深呼吸する、…匂い。

ああ…間違いなく、彼だ。

締め付けていた腕を私は少しだけ緩めると。

 

主人公「…おかえり、カナン。」

 

彼の手が、優しく私の頭を撫でる。

とても心地いい…。

埋めていた頭を上げて、彼を見つめて返事をする。

 

カナン「ただいま…。」

カナン「主人公君。」

 

まるで、2人きりの空間にいるかのようなつもりで、私は再び彼をギュッとハグする。

ずっと…待ち望んでいた瞬間に、私はーー。

 

「ほっほーう。」

 

…ん?

近くから私たち以外の声…それも、全く知らないものではない声が聞こえる。

まさか…とおもって視線をそちらにやると。

にやにや、とても楽しそうな表情を浮かべる…幼馴染のチカが。

 

カナン「えっ!?チカ!?」

カナン「何でここにいるの?!」

チカ「ふっふーん!ご馳走様でした〜。」

カナン「っ〜!!」

主人公「あははは。」

 

思わず私は顔を真っ赤に染めて、主人公君を突き飛ばすように一歩引く。

でも、なんで…?

 

カナン「ねえ、なんでチカがいるのさ?」

チカ「カナンちゃん顔、怖いよ。」

主人公「チカちゃんは大学が同じで、偶然知り合って。」

主人公「友…。」

チカ「そう、私たち友達!」

主人公「妹だったかな…。」

チカ「違うでしょー!」

 

ふざけあう2人、距離感が近いその様子に私は少し顔をしかめて。

それに気づいた彼は、少し戸惑いながら言葉を繕うように。

 

主人公「つい最近、チカちゃんがカナンの幼馴染だって知って…びっくりしたんだ。」

主人公「それで一緒に迎えに行こっかって話になって…。」

主人公「えっと…チカちゃんとは、その…大学で会った時に話したりとか、一緒に遊びに行ったりとかするような仲で…。」

カナン「ふーん。」

カナン「私の居ない間に…ね。」

主人公「はっ…ははは…。」

主人公「なんか、言い方に棘があるね…。」

カナン「当然でしょ。」

 

私はふくれっ面で主人公君を睨みつける。

すると空気を読んだチカがオロオロし始めて。

 

チカ「え、えーと…。」

チカ「そ、それにしても〜、意外だったなー…なんて。」

チカ「まさか、あのカナンちゃんがあんなに甘々に甘えちゃってるなんて…。」

カナン「ーっ!」

 

放たれる矢が私に刺さる。

甘えてるとこ見られた…よりにもよってチカに。

恥ずかしさで今にも爆発しそうな私は、その場に居られない気持ちになって。

 

カナン「…私、帰る!」

 

真っ赤な顔を俯き隠すようにして、私は駆け足でその場から逃げ出した。

 

主人公「か…カナン!?」

チカ「ああ!待ってよぉ〜!」

 

 

ーーー。

 

 

駆け足で逃げだしたカナンを捕まえて、僕たちは空港内の喫茶店に入った。

 

主人公「ひとまずお疲れ様、カナン。」

カナン「うむ。」

チカ「海外どう?楽しかった?」

カナン「うん、楽しかったよ。」

カナン「やっぱり日本とは何もかも違って、毎日すごく刺激的だった。」

主人公「言葉とか、大丈夫だった?」

カナン「んー…。」

カナン「結局は向こうで、時間をかけて順応したって感じかな。」

カナン「現地の人たちとの会話は、最初は全然。」

カナン「なかなか聞き取るのもままならなかったね。」

主人公「やっぱり難しいか〜。」

カナン「うん、でも日常的に使える単語とか教えてもらってたお陰で。」

カナン「単純な意思疎通だけはできたから、事前の勉強は十分意味があったと思う。」

主人公「そっか、よかった。」

チカ「…ってことは、カナンちゃん今は英語ペラペラなの!?」

カナン「あはは、ペラペラってほどは、なかなかいかないけどね。」

カナン「それでも簡単な日常会話くらいは、できるようになったかな。」

チカ「すっ…すごい!」

チカ「これでカナンちゃんには”帰国子女”って肩書きがついたんだね…!」

カナン「肩書きって…しかも帰国子女ってのもなんかちょっと違う気もするけど。」

主人公「ふふふ、何にせよ海外での経験は、これから生きてくるんじゃないかな。」

主人公「これからはグローバルな人材が求められる時代だし。」

チカ「グローバルな人材…!」

カナン「うむ、海外ツアーなんかも、うちで企画できるようになるかもしれないしね。」

チカ「海外ツアー…!!憧れちゃうね!」

チカ「七つの海を股にかける、グローバルなダイバーになろう!…みたいな!?」

主人公「あはは、なんかすごいビッグなダイバーになれそう、それ。」

チカ「波止場でパイプを吸う姿がダンディーな、ひげのおじさまみたいな?」

主人公「はははは!それじゃまるで船乗りだよ、ふふふ。」

チカ「あはは!」

 

チカちゃんの話題の脱線ギャグに付き合って笑っていると。

ズズズーッ。

わざとらしく音を立ててコーヒーをすすりながら、カナンがこちらをジロリと睨む。

 

主人公「カナン…?どうかしたの?」

カナン「…。」

カナン「別に…。」

カナン「…本当、仲いいんだね、2人。」

チカ「うん、仲良しだよ!ね。」

主人公「うん。」

 

この顔は…カナン、すごくもやもやしてる。

ヤキモチ焼いてる…?

 

主人公「ごめんごめん、ついつい話が横道逸れちゃって。」

主人公「それで…。」

 

ーー。

 

しばらく談笑を続けた僕ら。

ふと時計を見ると…。

時刻は夕暮れ時が迫っていた。

 

主人公「あ、もうこんな時間だ。」

カナン「ん、本当だ。」

チカ「それじゃあ、そろそろ帰る?」

チカ「…って、カナンちゃんここから内浦に帰るの?」

カナン「ううん、今日は東京で一泊してから帰るって言ってあるから、とりあえず…。」

 

僅かに頬を染めて、チラッとこちらに目配せするカナン。

僕はそれに微笑んで合図を返す。

その様子を見たチカちゃんは、何を察したのか少し紅くなって。

 

チカ「そっか…。」

チカ「そしたら、途中まで一緒に帰れるね。」

カナン「うん。」

カナン「一緒に帰ろっか。」

主人公「ふふふ。」

 

ーー。

 

空港から電車で移動し、マンションの最寄り駅まで着いた。

僕たちが駅近くで夕飯を済ませた頃、外は暗く、辺りはイルミネーションの灯りで彩られた、この季節特有の賑やかな雰囲気に包まれていた、12月の夜の街。

ここから僕とチカちゃんのマンションへは、それぞれ別方向に帰るようになる。

 

チカ「じゃあ、私はここで。」

カナン「チカ、また明日2人で喫茶店にでも行こうよ。」

チカ「うん!」

カナン「いろいろ…話したいこともあるし。」

チカ「…?」

チカ「うん。」

チカ「じゃあねカナンちゃん、主人公さん。」

主人公「うん、バイバイ。」

カナン「またね、チカ。」

 

チカちゃんは可愛らしく手を振って別れていった。

 

主人公「それじゃ、僕らも帰ろっか。」

カナン「うん。」

 

カナンと2人、肩を並べて。

僕はカナンのキャリーバッグを、片手で転がして歩く。

長期滞在用の大きくて重たい荷物…。

 

主人公「カナン、疲れてない?」

カナン「ん?私は平気だよ。」

カナン「ふふふっどうしたの?」

カナン「私のキャリーバッグ、重かった?」

主人公「ううん、そういうわけじゃなくて。」

主人公「これからまだしばらく歩かなきゃいけないから。」

主人公「帰国していきなり、辛くはないかなって思って。」

カナン「ありがと、大丈夫だよ。」

カナン「私が体力に自信あるのは、よく知ってるでしょ?」

主人公「そうだね、ふふふ。」

 

いらぬ気遣いだったみたいだ。

しばらく彼女を横目に見ていると、手遊びしながらもじもじしてる。

 

主人公「カナン?」

カナン「…気遣い。」

カナン「して欲しいことがあるとしたら…。」

主人公「うん?」

 

カナンは僕の目の前に片手を差し出して何かを訴える。

これは…ふふふ、可愛いことするなあ。

僕はその手を握って応えた。

すると彼女は少し恥ずかしそうにしながらも、満足げな笑顔を浮かべる。

 

カナン「久しぶりだね。」

主人公「うん。」

 

キュッと握ったその手をお互いに引き寄せあって歩く。

そこに、2人の会話は必要なかった。

 

ーー。

 

マンションへと着いた2人。

 

ピピッ…ガチャッ。

 

主人公「さ、入って。」

カナン「…。」

 

彼女は開いたドアの前で少し立ち止まってから。

 

主人公「ん?カナン?」

カナン「ただいま。」

 

こちらを向いて微笑む。

僕は思わず、にやけてしまった。

 

主人公「おかえり。」

 

部屋に入るなり、カナンは辺りを見回して。

 

カナン「変わってないね、あなたの部屋は。」

カナン「相変わらず整ってて。」

主人公「どうも。」

主人公「荷物は適当に置いていいよ、とりあえず一息つこっか。」

カナン「うん。」

 

ベッドの縁に座った彼女は、側に置いてあったイルカのぬいぐるみを抱きかかえて愛でている。

僕は、戸棚の中のマグカップを出しながら彼女に問いかける。

 

主人公「何か飲む?」

カナン「んー、コーヒーでももらおっかな。」

主人公「うん、わかった。」

 

用意したマグカップにコーヒーを淹れて、ベッドの縁に座っている彼女へと手渡す。

 

カナン「ありがと。」

 

僕は彼女の隣に一人分のスペースを空けて座ると、彼女がその隙間を詰めるように寄ってくる。

今日はずっとこんな感じ…久しぶりだから、甘えたいのかな。

可愛い…。

 

そうして僕たちはしばらく喫茶店の続きの話をした。

海外での出来事や、大学生活のこと、お互いのことを語り合って。

2人の間の空白の時間を埋めていった。

 

カナン「ーーー。」

カナン「そうだ、チカのことだけど…。」

主人公「うん。」

カナン「これからは、チカと2人きりでは遊びにいったりしないで。」

主人公「う、うん?」

カナン「別に…チカとの関係を疑ったりしてるわけじゃないけど。」

カナン「単純に嫌なの、その…2人が仲良しなところ見せられるのも、そういう話を聞くのも。」

カナン「チカには…私からも、言っとくから。」

主人公「…ふっあはは、ふふふふ。」

 

彼女が可愛くて、つい笑みが溢れてしまった。

 

カナン「何?何かおかしい?」

 

彼女は怪訝そうな表情でこちらを睨む。

 

主人公「ごめんごめん。」

主人公「君がそんなに嫉妬深いなんて、ちょっと意外だったから。」

カナン「…私もそう思ってる。」

主人公「ふふ、それどういうこと?」

カナン「私は…自分のこと、あんまり物事にこだわらないタイプだって思ってたから。」

カナン「こういう恋愛ごとでも、細かいことはそんなに気にしないのかなって思ってたけどさ。」

カナン「いざ、チカとあなたが仲良いとかそんな話を聞いたら、もやもや…しちゃうし。」

カナン「あなたのことになると、私は…。」

 

愛されてるんだなって、そう思えたら嬉しくなって。

僕はギュッとカナンを抱きしめていた。

 

主人公「嬉しいよ。」

主人公「君が僕のこと、思ってくれてること。」

カナン「うん…。」

カナン「チカとは…何もないんでしょ?」

主人公「うん、友達だからね。」

主人公「…。」

主人公「まあ…告白紛いの言葉は、かけられたことあるけど…。」

カナン「…。」

 

いじわるするためにわざと地雷を踏んでみた、事実ではあるけどーー。

カナンの顔色を伺うと、予想通り…というか、今まで見たことないくらいムスッとした顔をして不服を露わにしていた。

 

抱きしめていた僕の体を、彼女は突き放すようにするので、流石に意地悪が過ぎたか…と思った矢先に。

彼女はそのまま、僕に覆いかぶさるようにして、僕を押し倒した。

 

主人公「おわっ。」

主人公「か…カナン?」

 

怒って…る?

 

カナン「…。」

カナン「チカに手を出したら、許さないから。」

主人公「ご…ごめんよ、ヤキモチ焼いてるカナンが可愛いから…つい。」

カナン「…嘘だったの?」

主人公「ううん、嘘ではないけど…。」

 

彼女はムスッとした表情のまま。

 

カナン「まったく、私のいない間に…。」

主人公「はっははは…。」

カナン「これは…お仕置きが必要だね。」

 

そういって彼女は、平手をあげるので、僕は思わず覚悟を決めて目を瞑っていると。

唇に優しく触れる、暖かい感覚が…。

目を開けると彼女にキスされていた。

しばらく重ねたままだった唇を離して、はにかむ彼女。

 

主人公「…随分と、優しいんだね。」

カナン「今のうちはね?」

カナン「でも、もし次があるとすれば…。」

主人公「あっ…ははは、次は…無いように気をつけます。」

カナン「うむ。」

 

ほっと一息吐いて、起き上がろうとすると。

彼女が僕の体を手で押さえつけてくる。

 

主人公「?」

 

彼女ははにかみ顔のまま、押さえつける僕の体に跨がるようにして伏さってくる。

体をすり寄せるように抱きつく彼女は、耳を赤くして少し大きな呼吸繰り返しながら、僕を…誘惑するようで。

 

主人公「カナン。」

 

なんとなく察したつもりに、彼女の名前を呼ぶ。

振り向く彼女、恥じらいと期待感に蕩けるような表情に、僕はそそられて、そのまま唇を重ねる。

濃く、深く、彼女に浸かって交わるように。

2人、重ねていた唇を離して、荒く息をする顔を見合わせてから微笑み合う。

 

カナン「あなたは…私のトリコでいてもらわなきゃ、困るんだから。」

主人公「…ふふっ、とっくにそのつもりではあるんだけど。」

カナン「でも私には、それが伝わってるかどうかは…、確かめてみなきゃ、分かんないんだから。」

 

可愛い彼女を、僕は優しく口づけをするように抱き寄せて。

優しく転がるように、彼女を仰向けに寝かせる。

 

カナン「私…久しぶりだから、優しくしてね。」

主人公「それは君次第じゃないかな?」

主人公「それと、久しぶりなのは僕も一緒だよ。」

カナン「…そっか。うふふ。」

 

僕の首筋を触れる彼女の手、ひんやりとしたその手を包むように握る。

 

カナン「もう、離さないから…。」

カナン「シアワセにしちゃうからね。」

カナン「うふふ。」

 

 

ーーー。

 

 

あの日、あなたが私を抱きしめてくれたから。

私は遠い地で1人になっても、寂しい思いをすることはなかった。

 

たとえ今は遠く離れていても、私が帰るあの場所に、あなたは居る。

いつまでも、変わらない気持ちで私を待ってくれている。

そう思えるだけで、私は勇気をもらえた。

 

そんな風に思えること、私は想像もしていなかったから。

あなたの珍しいわがままが、私の心を潤してくれたおかげで、涙の向こうの幸せを知ることができたんだ。

 

ありがとう、愛してるよ。

 

 

ーーー。

 

 

僕は、彼女のことを抱きしめていた。

 

カナン「ちょっ…ちょっと、主人公君バス。」

 

僕の背後で止まったバスは、扉を開いてからしばらくして、再び閉めて走り去っていった。

 

カナン「いっちゃった。」

主人公「…うん。」

 

無抵抗なまま、僕に一方的に抱きしめられているカナン。

僕は呼吸を整てから言葉を綴る、僕の本心で。

 

主人公「カナン。」

主人公「やっぱり…嫌だ。」

カナン「…。」

主人公「僕は、君と別れたくなんかない。」

主人公「君としばらく会えなくたって、きっと僕はいつまでも…変わらない気持ちのまま、君を想い続ける。」

主人公「君のことを忘れられずに、後悔し続ける。」

カナン「主人公君…。」

主人公「…本当に寂しいのは、君のことを忘れなきゃいけないって思ってしまうことなんだ。」

主人公「だから僕はいつまでも、君を…君との関係を忘れたくない、変わらない関係で、変わらない気持ちのまま、君を待ち続けたい。」

主人公「離れ離れになってしまっても、僕は君の恋人で居たいんだ。」

カナン「…。」

主人公「…カナン。」

 

僕が抱きしめている耳元で、彼女が静かに鼻をすする音がする。

 

カナン「…もう、仕方ないなあ。」

 

震えている声。

彼女の手が、僕の背中を優しく撫でるように抱き寄せる。

 

カナン「君がそこまで言うのなら。」

カナン「いいよ、一緒で…今まで通り。」

カナン「恋人で。」

 

そう言って彼女は、抱きしめていた体を少しだけ離してから、僕と見つめ合う。

彼女の瞳、瞼に溜めた涙は、悲しみではなく優しい笑顔と一緒に、一滴一滴零れ落ちて、抱き合う僕らをしっとり濡らした。

 

これから離れる2人の心が、乾いてしまわないように。

 

 

ーーー。

 

 

翌朝。

朝の身支度を済ませた僕たちは、玄関にて。

 

主人公「忘れ物ないかな?」

カナン「うん、大丈夫だと思う。」

主人公「ごめんね、今日も一緒にいれたらよかったんだけど…。」

カナン「仕方ないよ。」

 

久しぶりに帰ってきた彼女との束の間を惜しむ間も無く。

海外から戻ってきて、今度は実家暮らしをする彼女との関係は、依然として遠距離恋愛を保つこととなる。

せっかく戻ってきたのに、すぐに離れ離れになってしまうことが、寂しく感じられた。

 

カナン「うふふ、そんな可愛い顔しないでよ。」

カナン「頑張ってね、バイト。」

主人公「うん。」

カナン「ま、今日中には家に帰らなきゃいけないし。」

カナン「あなた以外にも、久しぶりに会いたい人はたくさん居るから。」

主人公「いいね、友達がたくさんいて。」

 

彼女はバッグに手を掛けてから。

 

カナン「あ。」

カナン「そうそう、昨日すっかり忘れてて…危うく渡しそびれるところだった。」

主人公「ん?」

 

彼女はバッグから、小さな紙袋を取り出して。

 

カナン「これ、お土産。」

カナン「あんまり旅先とは関係ないようなものだけど…。」

主人公「ありがとう、中…見てもいい?」

カナン「うん。」

 

紙袋の中身を取り出す。

 

主人公「これは…ネックレス?」

カナン「うん、守り石。」

カナン「あなたに似た石だから…身代わりにでもなってくれるんじゃない?」

主人公「それ、どういう意味…。」

カナン「うふふ。」

カナン「まあ、それは代用品なの。」

カナン「本当は、本物の石がついたものにしたかったけど…。」

カナン「流石にそれには手が出ないからね。」

主人公「本物の石?」

カナン「…とにかく、できれば肌身離さず持ってて欲しい。」

主人公「うん、ありがとう。」

主人公「大切にするよ。」

 

綺麗な海色の石がついたネックレス。

控えめなデザインではあるけど、ちょっと僕がつけるには可愛すぎるような気がする。

でも、”彼女が僕のために選んでくれた”それだけで、特別なもののように思えて、すごく嬉しかった。

 

主人公「…。」

主人公「本物の石は…。」

 

…彼女が言っていた、本物の石。

それはきっとーー。

 

カナン「ん?」

主人公「きっといつか。」

主人公「僕が、君にプレゼントするよ。」

カナン「…。」

カナン「…期待してる。」

 

海色の宝石。

アクワマリン。

それは…”人魚の涙”とも呼ばれるらしい。

 

END

 





やっぱり、こういう展開の話の方が性に合ってる気がしますねー。(

意図的にこうするつもりではなかったのですが、奇しくも果南ちゃん誕生日に更新することとなりました。
Happy birthday.

ep2が途中ですが、小休止として番外物語のその先、本編のifストーリーを書いてみました。
着想はもっぱらep1より以前にありましたけど、書くタイミングをどうしようかと思っていた話です。
ep2がなんとなくもやもやした話で、今までの書いてきた話に対して、かなり異色を放っているというか、自分らしくない感じなので…。
ちょっと雰囲気取り戻そうかな…と思って。(

もっぱら今回の物語の中身としては、番外編のエピローグのようなものなので、深い内容はなく、ただ単にカナンちゃんが甘々な感じで恋を続けていたら…というようなシチュエーションを重視したものになってます。
サバサバ系おねーさんの子が2人っきりになると甘々で依存っぽいとか…そういう感じのギャップ萌えってやっぱ大切ですよね。(筆者の趣味
それについては、SNS等でいろんな方々の二次創作系の絵とか見て、すごく触発されてる感あります。(笑

さて毎度ながら、ここにうだうだブログをつけても仕方ないのでここら辺で…。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…

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  • 残しておいて欲しい
  • 書き続けて欲しい
  • 筆者の好きにすればいい
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