ちかなんとーーー。   作:黄昏虎おじさん

2 / 21
[改訂版本編]
一篇 笑顔と出会って。


夜のテラス。

二人。

 

「ーーちゃん、僕は…君のことがーーー。」

高層ビル屋上の一角で愛の言葉を交わした二人は、その日恋人になった。

 

 

ーーー。

 

 

私たちの出会いは偶然。

始まったばかりの新生活の中で。

大学サークルの勧誘に追いかけられてたその時に、彼とはじめて出会った。

 

彼は困っていた私を助けてくれて、その時はすぐにお礼を言って別れたけれど。

何かの縁があるようで、度々彼と居合わせては私のことを気づいてくれた。

 

ある日ーー。

 

チカ「あっ…」

チカ「こんにちは!」

「ん?こんにちは。」

「…何故だか君にはよく会う気がするね。」

チカ「エヘヘ。そうですね。」

 

彼は大人びた風貌で、とても落ち着いた人だ。

でも、何故か私の目には…とても淋しそうに見える時がある。

 

そんな彼はいつもポーカーフェイス。

でもまれに挨拶をした後や、助けてくれた後に。

少しだけ…口角が上がって微笑む。

素敵な笑顔ーー。

 

「ーーじゃあね。」

チカ「あの!」

「?」

チカ「私はチカ!タカミチカ!」

チカ「あなたの…お名前は?」

「…」

 

彼はポカンとした表情を浮かべてから。

 

主人公「僕は…主人公。」

チカ「主人公…さん。」

チカ「よろしくね!ふふふ♪」

主人公「よろし….く?」

 

ときめき?ちょっと違うのかな…?

でも私の気持ちは間違いなく、彼の第一印象に惹かれていた。

 

 

ーーー。

 

 

それからも彼とは度々鉢合わせて。

声をかけたり、少し話したり。

やがて、私たちは連絡先を交換して友達というような関係になった。

 

ある日、トボトボと廊下を歩いているチカ

チカ(今日の講義…何言ってるのかさっぱりわからなかったよ〜…)

チカ「はぁああ〜…」

 

行き場のない気持ちを大きなため息にして吐き出しながら歩いていると。

その先に主人公ーー。

よく鉢合わせるチカと主人公だが。

実は大体この時間帯、この場所に主人公は居る…という確信のもとで、チカはその場所を訪れている。

なんとなく彼の行動パターンを見抜いているのだ。

 

チカ「こんにちは〜…。」

主人公「こんにちは。…顔色が優れないようだけど大丈夫?」

チカ「あはは…。」

チカ「その、なかなか勉強についていけなくて…。」

主人公(この時期の段階で…かあ…)

主人公「教科は?」

チカ「色々〜かなぁ…。」

 

こういう話、困っていることを彼に伝えると。

大体彼は構ってくれる…助けてくれる。

 

主人公「…深刻?」

チカ「…うん。」

主人公「ははは…。」

 

苦笑いを浮かべて主人公は持っていたコーヒーを一口。

一間を置いて。

 

主人公「僕でよければ勉強教えてあげたりとかは、してもいいけど…。」

チカ「本当に!」

主人公「おっ…おう?」

チカ「できれば…お願いしたいなあ…。」

 

表情豊かなチカはウルウルと涙目を浮かべているかのように主人公に懇願する。

 

主人公「いいよ、教えてあげる。」

チカ「やったあー!」

 

無邪気に喜ぶチカを見て少しだけ主人公が微笑む。

 

彼の笑顔を見ると、何故だか少しホッとした気になる。

ちゃんと、笑えるんだーーって。

私はその表情を見たくて彼の気を引いてみせる。

 

チカ「ふふふ♪」

主人公「いつする?」

チカ「私はいつでもいいけど…」

主人公「この後とかでも?」

チカ「うん!もちろん。」

主人公「…じゃあ、場所は…喫茶店とかファミレスとか…」

チカ「どこでもいいよ♪」

主人公「それじゃ探しに行こっか。」

チカ「うん!」

 

ーー。

 

チカ「ンムムム…」

主人公「…」

チカ「はぁああ〜…」

主人公「ダメっぽい?」

 

おもむろにメニューを手に取り読み始めるチカ。

 

チカ「これ!美味しそう!」

 

デザートを指差してわざとらしくアピールするチカ。

ははは、と主人公は苦笑いする。

 

主人公「寄り道始まっちゃったね…。」

チカ「だって難しいよお…。」

主人公「ははは…。」

主人公(チカちゃんって大学入試どうやって合格したんだろう…)

主人公「それでもできるようにならなきゃ、来年も同じ一年生したい?」

チカ「したくないけど…。」

主人公「じゃあ頑張るしかないね。」

チカ「うう…。」

 

机にグデっとうなだれるチカを見て主人公はやれやれとため息をつく。

 

主人公「仕方ないな…なら、問題が解けたらそのデザート注文して一服しよっか。」

チカ「やったー!よおし、頑張るよ!!」

主人公「あはは…。」

 

デザートがかかっているとなると途端に目の色が変わるチカ。

最初っからその意気込みでやってくれればいいのに…なんて思いながら。

集中して問題を解いているチカを眺めていると、主人公は少しウトウトと…船を漕ぎ始めた。

 

どうしてだろう…急に。

そんなに夜更かししたわけでもないのに。

落ちる瞼を誤魔化すように少し目尻を擦っていると、チカが気づいた。

 

チカ「…もしかして主人公さん、眠い?」

主人公「…あっごめんね。ちょっとウトウトしちゃって…」

 

クスッ、少しだけチカは微笑んでから主人公に一言。

 

チカ「眠っててもいいよ、終わったら声かけるから。」

主人公「んー…。」

主人公「ごめんね、じゃあお言葉に甘えて少し…。」

 

こんなところで…とも思ったけど急激な眠気にかられて、主人公は机に寄っかかってうつ伏せにして少し眠った。

 

ーー。

 

「ねー、この例文はなんて訳すの?」

 

声が聞こえる、聴き慣れた声。

彼女のーーー。

ふわふわと曖昧な空間の中で。

僕は彼女と会話をしている…。

 

「…」

「もー、教えてくれてもいいじゃん。」

「…」

 

ムスッとした表情をしたかと思えば、コロリと反転して笑顔を見せる。

 

「あ!そうだこの間ね!…」

 

話を逸らしてきた…その手には乗らない…。

 

「…」

「固いこと言わないでよ〜。いいじゃん、私と話すの…嫌?」

 

咄嗟に思わず首を横に振ってみせる。

 

「…」

「にひひ♪」

 

嬉しそうに微笑む彼女が思い浮かぶ。

 

そう…、ちょっと前までもおんなじように…。

彼女と一緒に…。

 

主人公「…ぁ…なん」

チカ「寝言言ってる…ふふふ♪」

主人公「ん…あれ、ああそっか。」

チカ「あ、おはよう♪」

主人公「…おはよう、ごめんね。」

チカ「ううん♪寝言言ってたよ?」

主人公「えっ恥ずかしいな…。」

 

夢…彼女の…。

断片的に覚えている夢の記憶を手繰って。

ーーフラッシュバックする。

今、目の前にいるのはチカちゃんなのに。

僕は未だに、ーーー彼女に依存している。

 

チカ「よおし!解けたよ!」

主人公「…うん、正解。」

チカ「やったあ!」(ポチっ)

注文ベル[ピンポーン♪]

 

ーー。

 

玄関を開けて自宅へと入る主人公。

暗い部屋。

何故だか電気もつけずトボトボと入っていって床に横たわる。

 

うたた寝をした時に想起した記憶…。

 

二月ほど前になるか、僕はそれまで付き合っていた彼女と別れた。

彼女とは仲違いをしたわけでもなく、もう会うことはできない…そんな別れをしたわけでもない。

 

彼女は別れを決意した時に。

「また会って、また恋をして。付き合えればいい。」

そう言ってくれた。

当時その言葉はとても自分を救ってくれた気がした。

でも、今は呪縛…。そうとも感じてしまうような気がする。

 

忘れられない彼女、…今は会えない。

どうしているのかもわからない、そんなもどかしさが心を蝕んでいる。

 

彼女に会いたいーー。

たくさん話をして。

ハグしたい。

 

“初恋”という熱病に冒されていた僕の心は、

それを失って、少しだけ壊れていた。

 

ティロリン♪

 

スマートフォンの通知を受けて閉じかけていた瞼が開く。

 

チカ[今日は勉強教えてくれてありがとー!]

チカ[またお願いしたいな〜!!]

チカ[また会った時にお願いしちゃうかも♪]

チカ[その時はよろしくね!]

 

主人公「ふふっ、なんだか強引だな…。」

 

主人公[受けて立つ…]

 

チカちゃんからのメッセージ。

あの子は…なんとなく見ていると放っておけない気がして。

妹ができたみたいな…、そんな感じ。

 

失恋に傷心していた僕は日々なんとなく俯き加減な生活を送っていた。

でも今は少しだけ明るくしていられる。

あの子のおかげなのかな…。

 

横になったままでいると、意識が遠のいていきそうな気持ちになったので、力を入れて立ち上がる。

明日の準備をしなきゃ…、電気をつけて。

ベッドの横を通って、置いてあるイルカのぬいぐるみの頭をポンポンと軽く叩いてから微笑む。

我ながら気持ち悪いことをしているーー、そんなふうに思いながらお風呂のスイッチを入れて歯磨きをし始める。

 

明日はバイト。

 

 

ーーー。

 

 

主人公「チカちゃん、こんにちは。」

チカ「あ!こんにちは!」

 

お昼前、いつも2人がよく居合わせるところとは違うところで2人は出会った。

 

チカ「あれ?今日はいつもと違うんですね。」

主人公「いつもと違う?」

チカ「この場所、主人公さんとはあんまり会わないところだなあ〜って思って。」

主人公「まあ、確かにね。」

 

トートバッグを肩に掛けて現れた主人公、この道は食堂に向かう途中。

 

チカ「お昼食べにきたの?」

主人公「うん、昼過ぎにまた講義があるからね。」

チカ「そうなんだ。」

チカ「じゃあ、一緒に行きませんか?」

主人公「いいよ。」

チカ「やった!えへへ♪」

チカ「おっ昼♪おっ昼〜♪」

 

無邪気にスキップしながらチカは食堂に向かった。

 

主人公「じゃあ席とって待ってるから。」

チカ「?」

 

周囲を見渡し、はてな、首をかしげるチカ。

お昼の時間だが、いつもより人は少なくチラホラ席の空きが見られる。

 

チカ「先に抑えなきゃいけないほど混んでないけど…。」

主人公「ああ、僕弁当だから。」

チカ「なるほど〜。」

 

昼食を調達して主人公の元へ行くと、主人公は小さな弁当袋を出して待っていた。

 

チカ「手作り!?」

主人公「うん。」

チカ「弁当男子!すごい…」

主人公「簡単なものしか詰めてこないけどね。」

 

箱を開けるとシンプルな料理が綺麗に整頓されて収まっていた。

品数は少ないが白、茶、黄、緑、赤。

彩よく装われて、主人公の几帳面さが伺えるお弁当。

 

チカ「わあ!綺麗!」

チカ「美味しそう…」

主人公「ははは。」

 

主人公が箸を出して食べようとするも、向かい側に座っているチカが目を光らせているのが気になって仕方ないという様子で。

 

主人公「…何か欲しい?」

チカ「プチトマト…」

主人公(料理じゃないんだ…)

主人公「あげるよ。」

 

主人公がトマトを箸で持ってチカの食器の上に置こうとすると。

 

チカ「あーん♪」

 

口を開けて雛鳥のように食べ物をねだるチカ。

ざわざわ…周囲がざわつくのがすぐわかった。

流石に主人公は恥ずかしくなって一言。

 

主人公「チカちゃん、ちょっとそれは恥ずかしいな…。」

チカ「え?」

 

目配せして、周囲の様子に気づいたチカははにかみ顔で引っ込む。

 

チカ「あはは…ごめんね、つい。」

チカ「わ、私女子校出身だから。こういうのって普通っていうか当たり前くらいに思っちゃってて…」

主人公(女子校の当たり前…?本当にそうなのかわからないけど…僕らには知る由もない世界か…。)

 

やれやれと思いながら主人公は苦言をこぼす。

 

主人公「気をつけてね。僕はあまり気にしないけど…他の人にすると、いろいろ誤解とか生みかねないから。」

チカ「誤解?」

主人公「…」

 

頭を抱えて主人公はため息を漏らす。

 

主人公「無自覚って…怖いなあ…。」

チカ「?」

 

食器の上に置かれたプチトマトを食べてご満悦のチカ。

 

チカ「ん〜おいひ〜♡」

チカ「でも、本当すごいね。朝作って持ってきてるの?」

主人公「朝ごはん作るからその残りを弁当箱に詰めてる…って感じかな。」

チカ「朝ごはんを、作る!?」

 

驚愕するチカに主人公はついビクッとする。

いちいち反応が大きいチカに苦笑い。

 

主人公「作るって言ってもそんなに凝ったことはしないよ。」

主人公「簡単な調理だけ自分でやって、冷蔵の惣菜とか冷凍食品を並べたりするだけだし。」

チカ「へ〜。」

チカ「それでも私には難しそう…朝苦手だもん。」

主人公「…チカちゃんたまに朝走って来てたりしてない?」

チカ「見られてる!?」

主人公「やっぱり、チカちゃんか。」

主人公「廊下から外眺めてたら…たまにね。」

チカ「っ〜!恥ずかしい…。」

チカ「たくさんアラーム鳴らしてるのに全然起きれないんだもん…。」

主人公「ふふふ。僕も朝は苦手なほうだったけどね。」

主人公「でも僕の場合は、朝ごはん作るぞって意気込んでやり始めたら、結構起きれるようになったかな。」

チカ「へ〜。」

主人公「もともと、”自炊した方が安上がりに済む”って聞いて始めたのがきっかけだったんだけど。」

主人公「料理するのが楽しいって気づいて。」

主人公「挙句、つい凝った料理を作るようになったり、食材費用がかさんで本末転倒なんてこともあったね。」

チカ「ふふふ♪」

チカ「そっか〜、弁当男子のきっかけは”節約のため”かあ…やっぱり大学生活では大切になってくるんだね。」

主人公「まあ、遊びたいからそのお金を確保するため…だけどね、あはは…。」

チカ「ふふふ♪」

主人公「朝ごはん作れば…って言うわけではないけど。」

主人公「何か朝にする予定とか作れば、僕みたいに朝苦手も克服できるかも?」

チカ「うう〜ん…。」

主人公「こういうのはまず挑戦してみることが大切。だよ?」

チカ「そうだね…そうだ!体を動かすことがあんまりないし。」

チカ「朝ランニングとか…してみようかな。」

主人公「いいんじゃない?」

チカ「うん!今度やってみよう!」

 

チカ「あ!」

主人公「何?」

チカ「ご飯冷めちゃう…。」

主人公「ははは…、食べよっか。」

チカ「うん!いっただきまーす!」

 

ーー。

 

チカ「ご馳走様でしたっ♪」

 

食事を終えて一息。

講義の時間までにはまだ時間があるのでゆっくりする主人公。

チカはその様子を少し伺いながら声を掛ける。

 

チカ「あ、そうだ。」

主人公「?」

チカ「週末の予定って、主人公さん空いてる?」

主人公「んー…。」

 

主人公はスマートフォンのカレンダーを確認する。

 

主人公「日曜の午後なら空いてるけど?」

チカ「もしよかったらお買い物に付き合ってほしいな〜なんて…。」

主人公「どうかしたの?」

チカ「父の日のプレゼントを買おうかなって思ってるんだけど。うちは三姉妹だから男の人が貰って喜ぶものがいまいちわからなくて…エヘヘ。」

主人公「なるほどね。」

チカ「母の日ならカーネーションって、相場が決まってるからいいけど。」

チカ「父の日っていまいちそういうものがわからなくて…困っちゃうんだよね。」

主人公「ふふっ確かにね。」

主人公「いいよ、特別な予定は何もないし。」

チカ「ありがとう!」

主人公「ーー時くらいからだったらたぶんフリーだから。」

主人公「どこに集まる?」

チカ「じゃあーーー。」

 

ーー。

 

主人公「あ、時間。講義行かなきゃ。」

チカ「はーい。」

チカ「そうしたら、後はまたメッセージで連絡するね。」

主人公「うん、よろしくね。じゃあ。」

 

トートバッグを提げて主人公は席を立ち。

軽く手を振って去って行く。

 

チカ「いってらっしゃーい♪」

 

可愛らしく手を振って見送るチカ。

主人公が去ったのを見届けてから、手元にあったコップのお茶を飲み干して。

ーーくふふ…と嬉しそうに含み笑い。

 

チカ「…やった♪誘えた♪」

チカ「楽しみだなあ♪」

 

トレイを返却してチカは、るんるんと飛び跳ねるように食堂を後にした。

 

 

ーーー。

 

 

当日を迎え、待ち合わせ場所に主人公は予定時間の30分前で到着した。

 

主人公(出かけのその足で来たら…ちょっと早く着きすぎちゃったな。)

 

そう思って主人公は近くにコンビニを見つけて飲み物を買って一服していた。

すると、軽快な足音共に上機嫌そうな人が通り過ぎて行く。

橙色の髪の毛にアホ毛がピョコピョコと、まるで彼女の心境を体現しているかのように動いてるその後ろ姿。チカちゃんだーー。

 

スキップしながら鼻歌交じりに集合場所の方へと向かってる。

…この子、傍目にすごく目立つ。

正直そのテンションのまま隣にいられるのは、恥ずかしいような気もするが、不思議と本人と共にいると、癒されるという気持ちの方が勝る。

なかなかの不思議ちゃん…。

 

集合場所に着いたら辺りを見回して。

ニコニコしながら近くのベンチに座って待っていた。

 

正直眩しい。

燦々と輝く太陽のような彼女に真正面から向かうと目が眩んでしまいそうに思った僕は、わざと回り道をしてチカちゃんの背後から接近する。

トントンと指で彼女の肩をつついてー。

 

チカ「わっ!」

主人公「こんにちは、チカちゃん。」

チカ「びっくりしたあ…。こんにちは!」

主人公「今日はひときわ楽しそうだね。」

チカ「エヘヘ♪楽しいよ〜♪」

チカ「一緒にお買い物、楽しみにしてたもん♪」

主人公「ふふっ、それじゃ行こっか。」

チカ「うん!」

 

プレゼントを探してウインドウショッピング。

チカちゃんにいろいろ話を聞いて、お父さんの喜びそうなものを見繕う。

 

チカ「ーーうん。決めた、これにする!」

主人公「いいんじゃないかな。」

主人公「きっと、喜んでくれるよ。」

主人公「そうしたらチカちゃん。これも一緒に…。」

 

手に提げていたレジ袋をチカに渡す。

 

チカ「さっき買ってたもの…?」

チカ「レターセット…。」

主人公「女の子なら持ってそうって思ったけど。」

主人公「日々伝えにくい気持ちは手紙にしたためて…。」

主人公「やっぱり、感謝する気持ちを伝えてあげるのが、一番大切だと思うからね。」

 

わあっ…とチカの表情が輝く。

 

チカ「うん、そうだね!」

チカ「ありがとう!うふふ♪」

チカ「…あ〜でも、そうしたらなんだか、お母さんにはそんなことしてあげなかったから、不公平みたいになっちゃうなあ…。」

チカ「来年してあげよ…ふふふ♪」

 

アレコレとチカの頭の中が口から漏れてくる。

その様子を見ているとなんだか微笑ましくて、自然と笑みがこぼれる。

 

主人公「ふふっ」

チカ「ありがとう!主人公さん!お陰でステキな父の日のプレゼントができるよ。」

主人公「お役に立てて嬉しいよ。」

チカ「じゃあ、レターセットのお金…」

主人公「そんなのはいいよ。」

チカ「でも…。」

 

困ったような表情を浮かべてから、チラリ。

チカは周囲に目を向けてから閃く。

 

チカ「ふっふっふ…。」

主人公「?」

チカ「じゃあ〜お礼だけさせてよ。」

チカ「チカが奢ってあげるよ〜♪」

 

何が始まるんだ?と主人公は少し苦笑い。

 

チカ「ちょっと待っててね♪」

主人公「うん、いってらっしゃい。」

 

チカはパタパタと駆け足でコンビニに向かう。

数分ほどしてレジ袋を提げて帰ってきたチカは、アイスを1つ取り出して。

 

チカ「パ○コ!ーーしよ?」

 

…。

この子、本当にかわいいなあーー。

そんなことを思いながら口元が綻ぶ主人公だった。

 

主人公「ふふっ。」

主人公「うん、ありがとう。」

 

ーー。

 

チカ「期間限定で出た甘夏みかん味!」

チカ「みかん好きとしては…はずせないよね…!」

主人公「ははは…。」

主人公(チカちゃんが食べたかっただけ…みたい。)

チカ「パピ○って〜2つが繋がってるやつが好きなんだけど。1人で食べるとなんだか物足りない気がするんだよね。」

チカ「やっぱり○ピコは2人で食べなきゃね♪」

チカ「ーーー。」

主人公(真面目に聞いてたらきりが無さそうだ…)

 

会話が自己完結するチカのマシンガントークを小耳に挟みながらのんびりする。

夕暮れ時…すこしひんやりしてくるのにアイス…。

でもなんだかとっても美味しい。

 

チカ「…やっぱりみかんは最高だよ〜♡」

主人公「みかん好きなんだね。」

チカ「うん!大好き♡みかん自体ももちろんだし、みかんを使ったものならなんでも大好き♡」

 

ほんと…楽しいな、この子。

 

主人公「…ふっあはは♪」

 

微笑ましいチカの反応に、主人公はいつになく自然体で、幸せそうな笑みをこぼす。

 

…ドキッーーー。

 

こんな表情もできるんだ…。

彼の普段見られない表情を一瞬ーー。

それが私にとっては、胸を射抜かれたような衝撃になって。

キュウッと…心を締め付けた。

 

チカ「っー///」

 

私…感じてる、これはきっと…

恋心ーー。

 

少しだけ、頬が朱に染まって。

次第にほっこりと心が暖かくなる。

なんて…心地いいんだろう…。

 

チカ「…エヘヘ♡」

 

お互いに微笑みあってから、一間。

 

主人公「…流石にアイス食べ切ったら、ちょっと寒くなってきたかも…。」

 

体を少しさすってみせる主人公を尻目にチカは意味深な口ぶりで。

 

チカ「私は…少し…」

チカ「あったかくなってきた…かな♡」

 

主人公「?…大丈夫?」

 

ふと、主人公は腕時計を確認して。

 

主人公「今日はもう、いい時間だね。」

主人公「用事も済んだことだし、そろそろお開きにする?」

 

少しだけチカは口をパクパクさせるようにして…言葉を飲み込んで。

 

チカ「うん、今日は帰ろう…かな…。」

 

ちょっと濁した言葉で返事する。

少しだけしおらしくなったチカを見て、主人公は違和感に気づいた。

 

主人公「チカちゃん…」

チカ「?」

 

でも…今はまだ…。

 

主人公「…ううん、なんでもない。」

主人公「それじゃ、チカちゃん帰り道…方向は?」

チカ「あ、とりあえずーー駅の近くまで。」

主人公「なら駅まで一緒だね。」

主人公「それじゃ、帰ろうか。」

チカ「うん♪」

 

2人は歩いて駅まで向かった、簡単な会話を交わしながら。

斜に降り注ぐ夕日の光に2つの並んだ影を落としてーー。

 

ーー。

 

チカは1人になって今日の出来事を思い返しながら歩む。

 

ステキなプレゼントに。

ステキな思い出…彼の笑顔。

 

初対面から感じていた彼への好意は、まぎれもない恋心の燻りだったのだと気づいた、今日。

 

一目惚れ…初恋…。

 

ーーもっと彼を知りたい。

彼のいろんな表情を見たい…。

彼をもっと笑顔にしてあげたい…。

 

そんな欲望が、ふつふつと湧き上がり胸を焦がしてゆく。

行き場のないその衝動に身を任せて、弾むようにスキップ。

ルンルンーー♪

心踊るその気持ちは。

そのまま空に飛び上がりそうなほど高揚して。

 

ーー彼が好き。

 

一思いにそう思うことができた。

 




ソロモンよ、私は帰って来た(爆
そんなわけで改訂版本編の執筆開始です。
あいも変わらず気持ち悪いあとがき付きと言う不要な二本立てでお送りします。

膨らみすぎた番外に負けないボリュームで、チカちゃんとの出会い〜本編までの話を膨らましていきます。
今回の執筆はわりと、本腰を入れているわけではないので、ゆっくり更新する予定です。
おそらく3〜4編くらいになるのであろう?とプロットの段階で考えてはいるのですが。
なにぶん書き溜めをそこまでせずに進めているので。
更新しながら内容も、ゴリゴリ書き加えたり書き換えたりして、更新して行くと思います。
わりとチェックとかも甘い状態で更新するかもしれないので、内容がわけわかんなくなってたり、誤字脱字が目立ったりするかもしれません。ユルシテ(

さて、とりあえずの一編を執筆して、ですが。
(チカちゃんの会話文を考えにくい…)
と言うのが今のところの所感です(蹴
アニメや…ドラマCDなんかでみられる狂k…暴走気味なチカちゃんの自然体をどのような話の流れで、どの程度表現できるのか…と言うのが個人的な、挑戦だと思っています。

…それではあまりクドクドとあとがきをしたためるのもアレなので。
これからの更新もまた…すこし遅筆にはなると思いますが、お付き合いいただければ幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…

  • 消したほうがいい
  • 残しておいて欲しい
  • 書き続けて欲しい
  • 筆者の好きにすればいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。