ちかなんとーーー。   作:黄昏虎おじさん

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三篇 プラトニック。

「あ!おっはよう〜!主人公”君”!」

ドスッ!

 

容赦なく飛び込んできたのはいつも通り、チカちゃんだった。

主人公「以前から注意してるけど、あんまり激しくタックルされると転けちゃうからね…僕が。」

チカ「えへへ♡」

 

チカちゃんと付き合い始めて一月…。

 

主人公「あと、これも前から言ってるけど…。」

主人公「できればもうちょっと…場所を選んでほしいな、大学とか人目につくところでは恥ずかしいから…ね。」

チカ「すりすり♪」

 

衆人環視を浴びて赤くなっている主人公はチカを引き剥がしてから、そそくさとその場を逃げ去っていった。

 

チカ「あ〜!待ってよお!主人公”君”!!」

 

あとを追ってチカが駆けてゆくーー。

周囲の人たちは”こいつら毎日イチャイチャしてるな…”と冷たい目を向けていた。

 

ーー。

 

チカ「というわけで、一緒に帰ろ?主人公”君”♪」

 

付き合い始めたその日から僕は主人公”さん”…ではなく主人公”君”と呼ばれるようになった。

チカちゃん曰く”愛情表現”なんだとか。

 

主人公「うん、購買行こっか。チカちゃん。」

チカ「うう…彼氏が優しくしてくれないよ〜…。」

 

外は雨が降っていた。

そう、以前にもあったこのシチュエーションで。

わざわざ傘を持ってこなかったチカちゃんは相合傘を要求してきた。

 

主人公「チカちゃん…そもそもね、僕らの住んでるところは大学からじゃ真逆。」

主人公「このあいだのそれは不可抗力だけど、いつもそんなにびしょ濡れになってまで、君を送ってあげることはできないよ。」

チカ「うう…神様はなんて残酷な試練を私たちに…。」

主人公「神様もとんだとばっちりだ…。」

 

チカ「あ、そうだ!」

チカ「私が主人公君の部屋の隣に引っ越せば、問題解決だね!」

主人公「うん、一人で頑張ってね、引っ越し。」

チカ「ひどいよ〜!私はこんなにもあなたを”好き♡”って伝えようとしてるのに〜!!」

主人公「はい、無駄口叩いてないで傘買いに行くよ。」

チカ「ぶー!」

 

慣れた手つきで主人公はチカの肩に手を乗せて、電車ごっこでもするように一緒に購買の方へと進んでいった。

 

流石に数週間もしたら、今のチカちゃんの扱いにもだいぶ慣れてきた。

普段は天井知らずに明るく無邪気なそれと、毎日付き合うのはなかなか苦労が絶えない…、かと思いきや。

思いのほか、まんざら悪くもないという気分が今の本音だ。

ーーーやはり不思議ちゃんだ。

 

購買の前まで行くと、ずっと仏頂面していたチカちゃんは突然パッと表情を明るくして。

 

チカ「そうだ、だったらあの時できなかったことをお願いしたいなあ〜!」

主人公「あの時できなかったこと?」

チカ「主人公君の部屋に”お泊り”!」

 

すかさずバッグからノートを取り出そうとしながら。

 

主人公「そういうのはカップルとか、…カップル?」

 

まてよ?

 

チカ「ふふっ、引っかかったね♪」

主人公「…っ、はあ〜…。」

 

思わず主人公は大きなため息をついた。

 

チカ「じゃあ今のでOKもらった!って事でーー。」

主人公「待ってチカちゃん、おかしくない?」

チカ「何が?」

主人公「増えてるよ、余分に。”お泊り”が。」

チカ「気のせいだよ〜気のせい。」

主人公「多分僕あの時言ったのは。”僕の部屋に行っても〜…”じゃなかったかな。」

チカ「細かいことは〜…えっと。アレだよ、これはアバンチュール?って奴だよ!」

 

チカの突飛な発言に主人公は思わず頭を抱える。

ーーそれは恋の冒険…火遊びとも言う。

 

主人公(この子意味わかって言ってるのかなあ、あながち間違っちゃいないけど…。)

主人公(どこまで本気にしていいか分からない…。)

主人公「わかった…いいよ。」

チカ「やった♪今日はおうちデート♡だね。」

 

購買で傘を買うとルンルンと外に向かって。

 

チカ「それじゃ、また後で♡」

チカ「〜♪」

 

スキップしてそのまま消えていった。

 

主人公「…やれやれ。」

 

ひとまず嵐は去ったーー。

 

ーー。

 

ひとしきり片付けを終えて、軽く掃除をして。

 

家に備えてあるものを確認する。

 

マグカップーー。

まあ、どっちも僕のだし問題ないか…。

普段客人を招くことがないからいろいろ探さなくてはいけない…、そうこうしていると。

 

ピンポーン♪

 

主人公「はい。」

 

ドアを開けるとーーチカちゃん。

 

チカ「えへへー♪」

 

ニヤニヤ笑いながらいたので、ちょっと意地悪したくなってドアを閉めた。

 

チカ「もー!なんで閉めるの!!」

 

再びドアを開くと、さっきとは打って変わって頬を膨らませて不満を訴えるチカちゃん。

 

主人公「ごめんね、ちょっと意地悪したくなっちゃって。」

主人公「じゃ、入って。」

 

チカの表情はコロリと笑顔に一転して。

 

チカ「お邪魔しまーす♪」

 

主人公の部屋は整えた後ということもあって、小綺麗な部屋だった。

 

チカ「綺麗なお部屋〜。」

チカ「私今日からここに住んでもいい?」

主人公「だめ。」

チカ「もーいけず〜。」

 

チカが部屋を隅々まで眺めていると…目にとまる。

イルカのぬいぐるみ…。

なぜか既視感を覚えたような気がして。

 

チカ「ね、触ってもいい?」

主人公「…。いいよ。」

チカ「ふふふ♪」

 

手に取ってからギュッとする。

ふんわり香ってくる匂いが…主人公君のそれと。

何か懐かしい香りがわずかにしたような気がしたーーー。

 

チカ「こんな可愛いもの置いてるなんて♪」

主人公「ふふっ、なんでだろうね。」

 

主人公「さて。」

 

ドン!

 

積み上げられた本が卓上に置かれる。

 

チカ「え?」

 

主人公「ちょうどいい機会だし、勉強。しよっか。」

 

するとチカはおもむろに演技を始めた。

 

チカ「あっ…いたたっ…あーお腹痛いなあー。」

主人公「トイレはそっちね。」

主人公「逃げてもいいけど、その分僕は待ってるだけだからね。」

チカ「もー!ひどい!せっかくだよ?!せっかく彼女が遊びに来たっていうのに…なんで勉強なの!?」

主人公「チカちゃんのためを思ってあげるからだよ?留年しないようにってね。」

チカ「んんん…!」

 

本当にそれが必要なことだとわかっているから下手に反論ができないチカ

 

チカ「でも。彼女と…ほら、もっと…一緒だから、2人きりだからしたいこととか?あるんじゃないかなあ…?」

 

主人公「んー…。」

 

彼女と…かあ。

ーー。

流石に可哀想に思えてきた主人公は少し考えたが。

なにぶん遊び道具の少ない部屋なので。

 

主人公「…遊べるもの…あるとしたらトランプくらい?」

チカ「じゃあそれ!」

 

ーー。

 

主人公「ちょっと休憩しよっか。」

チカ「うん♪」

 

2人でするトランプゲームを繰り返してるだけだと飽きも感じてきたところで。

 

主人公「喉乾いたでしょ、何か飲み物でも飲む?」

チカ「飲む!」

主人公「えっと…こっちきて選んで。」

 

冷蔵庫の中を見せる。

 

チカ「あ、じゃあみかんジュース。」

主人公「オレンジジュースね。」

チカ「ダメだよ主人公君…。」

主人公「?」

チカ「オレンジじゃなくて、みかん!」

主人公「ははは。」

主人公「みかんジュース、ね。」

 

チカ「でも、さすが料理する人って感じだね。」

チカ「冷蔵庫の中。」

主人公「まあね。」

チカ「そういえばお夕飯はどうするの?」

 

そうか、この子お泊まりって言ってたな…。

 

主人公「せっかくだから作ろっか?」

チカ「うん!だったら私も手伝うよ♪」

主人公「よし、なら…あり合わせのものでっていうのも楽しくないから。買物しようか。」

チカ「うん♪」

 

ーー。

 

買い物をして一緒に料理して、一緒にご飯を食べて…。

 

チカ「…なんだか、夫婦になったみたい♡」

主人公「どうしたの、急に。」

チカ「ふふふ♪」

チカ「あなたと一緒に肩を並べていられる事が嬉しくて♡」

主人公「”夫婦”っていうのはちょっと気が早すぎるかな。」

チカ「私は…」

主人公「?」

チカ「ううん、なんでもない。」

 

チカ「ごちそうさまでした♪」

主人公「ごちそうさまでした。」

 

主人公は食器を持って流しへ行く。

 

主人公「洗い物はするから、ゆっくりしてていいよ。」

チカ「あ、じゃあ洗ったもの拭くね。」

主人公「…ありがとう、じゃあよろしく頼むよ。」

 

パタパタと足音を鳴らして洗い物をしている主人公のそばにチカが寄ってくる。

 

チカ「でも本当、こうやって…さっきもだけど。」

チカ「台所に2人で一緒に立つのって….なんだか特別な気分♪」

主人公「たしかに、普段しないことだよね。」

主人公「はい、お皿。」

チカ「うん♪」

 

チカ「でもこの後はもっとーー♡」

チカ「一緒にお風呂…はまだ恥ずかしいけど、一緒のお布団で寝たりー♪」

 

チカちゃんの妄想が口から漏れてきてる。

彼女がこうして好意を寄せてくれていることは、とても嬉しい。

でもなぜだか僕は、自分のペースを乱されていると言うつもりなのか。

ちょっと早すぎるんじゃないか、そんなふうに思いつつ。

 

チカ「うわわっ!」(つるん)

 

ボスッ!

 

チカちゃんの手を飛び出した食器がマットの上に落ちた。

 

主人公「あっ…、僕が拾うよ。」

チカ「ごめんねー。」

 

僕は跪いてチカちゃんの足元にあった食器を手にして。

ふと上を向いたら…チカちゃんが。

 

チカ「主人公君。」

 

僕の肩に手を乗せて。

 

主人公「っ…!?」

 

チカちゃんは突然、僕の唇を塞いだ。

 

チカ「えへへ♡」

チカ「初めてのキスは…もうちょっとロマンチックな方がいいかなって思ったけど…。」

チカ「好きって気持ちがいっぱいになったら。」

チカ「…なんだか我慢できなくなっちゃった♡」

 

なんとなく避けていた唇のキス。

チカちゃんとは初めてのそれを突然。

 

主人公「チカちゃん…。」

チカ「なあに?」

 

なんとなく頭がボーッとして、衝動のまま体が動く。

チカちゃんの肩に手を当ててから、少し力を入れて押し倒すようにーー。

 

“ダメだーー。”

 

チカ「わっ!」

 

壁にもたれかかるようになった彼女に一歩ずつ近寄っていき。

彼女の肩をしっかりと握って、片足は股下のすぐそこまで迫る。

 

戸惑っているようにあちこち視線が逃げる彼女をじっと見つめたまま。

ゆっくりと顔を近寄せて…。

 

“僕が彼女と望むのはーー。”

 

唇はすんでの所で、鼻を軽く彼女の鼻とくっつける。

しばらくそのままでーー、気が落ち着いたところでチカちゃんから離れた。

 

チカ「へ…?」

 

主人公「ごめんね、いきなり。」

チカ「う…うん。」

 

それだけ言って僕は止めていた作業に戻った。

 

ーー。

 

チカ「やっぱり今日は…お泊まりやめとこうかな…。」

主人公「ん、そっか。」

 

外は真っ暗闇。

 

主人公「外暗いし、送ってあげるよ。」

チカ「え?!あ、いっいいよ〜真夜中だって、もう1人で歩けるから!」

主人公「ふふ、本当に大丈夫?」

チカ「うん。」

 

持ってきたカバンを手にとって、忘れ物がないか周囲を確認して。

 

チカ「じゃあ、また明日♪」

主人公「うん、気をつけて帰ってね。」

 

チカちゃんが部屋の外に出て、廊下を歩く足音が遠のいてから、僕は壁に寄りかかるようにして倒れこんだ。

 

…失敗した。

なんであんな風に迫ってしまったんだろう、怖かっただろうな。

 

僕は…チカちゃんを大切にしたい。

でも、会うたびにチカちゃんは僕との距離を詰めてくる。

付き合ってるんだし当然のこと…ではあるのだろうけれど。

 

そうやって彼女から迫られるごとに感じる、ふつふつと沸き立つような衝動。

今日のような行為…。

下心からの愛に、僕は支配されたくない。

 

…そんな時にふと、一瞬だけフラッシュバックするように、過去の記憶が頭をよぎる。

 

ーーーとの別れの瞬間。

 

僕は…何を感じているんだ?

 

ーー。

 

夜道を歩く中。

 

今日の主人公君、どうしちゃったんだろーー。

迫ってくる彼は…正直怖かった。

でも私の肩を握る彼の手、すごく震えていた。

もしかして…彼も怖かったのかな。

 

でも強引な彼の行為は…実は少しだけ嬉しかった。

彼の本心からの愛が垣間見えたようでーー。

 

付き合い始めてしばらく経って。

彼とはよく会うし話もするし、デートもするし…仲良くしていると思う。

でも、何故だろう…違和感。

好き合っているはずなのに、彼から注がれる愛は私の望む形ではないと感じてしまう。

普段の彼のそれは慈愛ーー。

どこまでも優しくて…どこまでも残酷な、一線を越えることのない愛。

 

恋人になれば満足できると思っていた。

付き合い始めてからの数週間は、満ち足りたものを実感していた、でも。

今は少し…足りないみたい。

 

 

ーーー。

 

 

立冬を迎え、外はますます寒くなってきた。

チカは厚手の服に身を包んでニコニコ。

そして日差しが強いわけでもないのに、何故かサングラスをかけてマスクをして…不審者のような格好をして飲食店の前に仁王立ち。

 

チカ「ここ…だね。」

チカ「ふっふっふ…。」

 

入店

 

主人公「いらっしゃいま〜…せ。」

主人公(うわ、チカちゃんだ。)

 

チカの格好に思わずドン引きの主人公。

 

チカ「〜♪」

 

カウンター席に座ってチカは主人公のほうをチラチラ見ながら。メニューを確認する。

 

チカ「すみません。」

 

声のトーンがいつもと違う。

バレてないつもり…ということか。

 

主人公「はい、ご注文お決まりですか?」

チカ「コレと…コレを、あと…」

 

チカ「あなたを…テイクアウトで♪」

主人公「はあ?」

 

チカ「じゃーん♪」

 

サングラスとマスクを外してセルフSEを奏でる

 

主人公「…こんにちは、チカちゃん。」

チカ「こんにちは!」

主人公「じゃあね、チカちゃん…。」

チカ「え!まっ待ってよ〜!!」

主人公「僕バイト中だからさ。」

チカ「ん〜!」

 

主人公君は店員としてテキパキと仕事をこなす。

いつも以上に真面目な顔して、真剣に働く姿をニヤニヤしながら見て待っていると。

 

バイト「はい、お待たせしました。ーーーです。」

チカ「はーい。」

バイト「…もしかして主人公さんの彼女さん?」

チカ「えへへ♪」

バイト「…ふーん。ごゆっくりどうぞ!」

 

バイト「…今度は可愛い系かあ。」

 

去り際に何か独り言を言って厨房の方へと戻っていった。

 

チカ(可愛い系って言われた…。)

 

“彼女”、”かわいい”と嬉しい単語を思い返して照れ照れしながら。

“今度は”…。少し引っかかった。

あんなに素敵な人なのだから、一度や二度の恋があっても不思議ではないだろう…。

そう思いつつ、彼は今までにどんな恋を経てきたのかな…?

そんな疑問が頭に浮かんでくるようになった。

 

ーー。

 

もともとバイトの後に会う約束をしていた2人は待ち合わせ場所にて。

 

主人公「お待たせ、チカちゃん。」

チカ「お疲れ様ー♪」

 

主人公「でもよくわかったね。どこで働いてるっては言ったことなかったと思うけど…。」

チカ「ふふ、調査したもんね。」

主人公「え?」

チカ「主人公君が意地悪なこと言うからだよ。”働いてるところにわざわざ来て欲しくないし”なんて。」

主人公「もしかして、つけてきたとか…?」

チカ「ふふふ♪」

 

主人公(そういう努力は惜しまないよね、この子。)

 

主人公はスマートフォンを片手に格好だけ電話をしている風にして。

 

主人公「もしもし、警察ですか?ええ、ストーカー被害にあってまして…。」

チカ「ああ!待ってよお!」

チカ「本当は、お店の近く通った時にたまたま主人公君がいるのが見えただけでーー!」

 

主人公「うそうそ。」

チカ「んー!」

 

地団太踏むようにチカは憤る。

 

チカ「結構主人公くんって頻繁に意地悪するようになったよね。」

主人公「ごめんね、チカちゃんの反応がいいから。ついつい。」

 

主人公は適当にチカを宥めてから。

 

主人公「じゃあ、ご飯食べに行こっか。」

チカ「うん!」

 

チカちゃんと外食。

家で料理を振る舞うようになってから、割とデートの時に外食をしなくなったので。

たまには、ということでネットで話題の凝った料理を出すお店へ。

“話題のお店”と言うだけあってしばらく入店待ちをした後に、ようやく店内へ入ることができた。

 

チカ「おお〜♪”映え〜”って奴だね!」

主人公「ふふ、写真撮る?」

 

注文した見た目の良い料理が並ぶ。

ここは一品料理とお酒が少したしなめるお店。

ただ、居酒屋のようにお酒が飲めないと入りにくいようなところではない。

 

チカ「ん〜美味しい!」

チカ「これは、これがお酒が欲しくなる味だね…!?」

主人公「ははは、飲んだことないから分かんないや。」

チカ「飲めたらもっと美味しいのかなあ。」

主人公「そうかもね、飲めるようになったらまた来てみよっか。」

チカ「うん!お酒かあ〜。飲めるようになったら、居酒屋とかバーで朝まで飲み明かす…なんてこともできるようになるんだよね!?カッコいい…!」

主人公「酔ってるチカちゃんなんて、想像もしたくないけどね。」

チカ「酔ってる主人公君はちょっとみてみたいかも♪」

主人公「え〜?」

主人公「ーーー。」

 

いつものように楽しく談笑をしながら食事をする。

主人公君はなかなかにおしゃべり好き。

話をし始めると時間を気にせず、いつまでも話してしまうことはよくある。

 

彼との付き合いももう3ヶ月ほど経つ。

今も、彼の印象はそれ以前と大差なく。

とても優しくて、大人っぽくて。

でもたまに、ちょっと抜けているようなところがあるってことがわかってきたくらい。

ーー私はそんな主人公君が好き。

 

主人公「ごちそうさま。」

主人公「どうしよう、すぐ外に出る?」

チカ「うん。待ってる人まだたくさんいるみたいだし。」

主人公「すごい人気だね〜。」

 

お店の外へ出る。

ここのところますます寒くなってきた、吐き出す息が微かに白くなって、もう冬なんだと実感する。

 

チカ「はー…」

チカ「あったかい料理を食べた後だから余計に出るのかな?」

主人公「ふふふ。いつのまにか、もうすっかり冬って感じだね。」

 

歩きだしてからちょっとして。

彼の手元にわざと自分の手を差し出して、視線で合図する。

すると彼はすぐそれに気づいてくれて手を握ってくれる。

暖かい、大きな手。

 

チカ「ふふふ♪」

 

満開笑顔で夜道を歩く。

夜空を彩る星は見えなくても、街には煌びやかに輝く明かりが灯っていて。

周囲を見渡せばいろんな人の往来に、小さなドラマがたくさん転がっていて、まさしく混沌という空間。

 

私たちもそのドラマの一片。

できれば、ロマンチックで素敵な恋愛ものだといいな。

彼の手を握りしめて、体を少しすり寄せる。

そんな私の仕草に、彼は微笑みを返して。

その素敵な笑顔で私は蕩ける。

ーー恋に恋をしていた私だったら、それで満足だった。

 

私は最近欲深くなった。

彼の笑顔を見るだけでは飽き足らず、彼に触れることを欲して。

彼と手を繋いで歩いたり、彼に抱きついてみたり。

彼にーーキスしてみたり。

今まで通りより、もっと深く彼を知りたい。

そんな情熱が私を少しだけ大胆にさせるようになった。

 

帰り道の途中、夜の公園を横切ると。

ほんのりと灯りが配された道が見えてきて、なんだか雰囲気がよさそうに見えたので、そこを通ることにした。

街の明かりから少し遠ざかるように、暗がりを行く。

こじんまりとした園内の中で自動販売機を見つけて、一服。

 

チカ「暗くて寒いんだけど。」

チカ「なんとなく居心地いいって感じ。」

主人公「ちょっとわかるかも。」

主人公「なんだか、孤独な気持ちだよね。」

チカ「今は2人きり…って気持ちかな♡」

主人公「ふふふ。」

 

街灯が照らすベンチに2人。

手にはあったかい缶ジュース、ココアとコーヒー。

肩を合わせて寄り添いあって暖をとる、至福のひととき。

こうしてポカポカした時間を過ごしていると。

どんどん彼に対する情熱と欲望が大きくなって行く。

彼に触れたい…。

 

彼の胸に、手を当てる。

彼は少しギョッとするようにこちらを見てから、なんとなく少し困ったような顔をして私の肩を抱く。

そんな彼の優しさに甘えて、手に持っていたココアを置いてから彼に抱きつく。

ギュウ〜。

体に伝わる彼の温もりと感触、彼の匂い。

それを堪能してから、彼に問いかける。

 

チカ「キス…してもいいですか?」

 

突然すると、彼もびっくりしちゃうから。

そう思っていつも、キスしたい時には彼に問うようにした。

 

主人公「…うん。」

 

そうすると、いつも彼は断らない。

たぶん断れないんだと思う。

彼の肩に手をかけてから背筋を伸ばして。

彼の唇をめがけてぶつからないように、ゆっくりと近づいて。

 

ちゅっ。

 

唇を重ね、彼の形を確かめる。

頭が彼を感じるほどに麻痺していって、私の中は彼一色に染まって行く。

好き…好き…彼が好き…主人公君。

溢れる愛おしさが、どんどんエスカレートして行って、ーー止まらない。

 

主人公「っ…はっ。」

 

彼は突然唇を離した。

 

主人公「チカちゃん、ちょっと…タイム。」

 

やだーー。

もっとあなたと一緒でいたい、一緒になりたい。

高まった欲望はわたしをどんどんわがままにして。

 

チカ「やだ…主人公君。」

チカ「もっとキス、していたいの。」

 

そう彼に懇願すると、彼はすこし私から目をそらして困った顔のまましばらく。

そしておもむろに彼は私の方を見つめて、ゆっくりと近寄ってきて。

キスしてくれるーー、そうかと思ったらおでことおでこをコツンと合わせて。

目を瞑ったまま。

 

主人公「僕は…君を大切にしたいんだ。」

主人公「これ以上…その、キスされたら…。」

主人公「いつかみたいに…、だからーー。」

 

そう言って静かに彼は身を引こうとする。

彼のそういう態度に、なぜだか私はとてもムカついてきてしまって。

私は、その彼の胸ぐらを掴んでから。

首元にーー、キスをした。

 

主人公「!?」

 

分からず屋な彼に、私の中の沸き立つ衝動を訴える。

 

チカ「私を大切にしたいっていうんだったら…。」

チカ「私の望みを叶えてよ。」

 

声がすこし上ずるようになって震えて。

少しだけ、瞳が涙で滲んで行く。

 

チカ「あなたのその優しさは…あなたの身勝手だよ…。」

 

再びキスをしようと彼に迫って行くと。

咄嗟に彼は力を入れて少し強引に私を引き剥がした。

 

主人公「っ…!」

主人公「ごめんっ…チカちゃん。」

 

苦虫を噛み潰したような表情をした彼は。

そのままベンチを立ってしまった。

 

彼にとって、私と言う存在はどういうものなのだろう。

彼女…?

彼の中で一定の線引きを敷かれた2人の関係に、私は正直のところ不満を感じている。

私は彼に、”少女”としてあしらわれているのだと…。

そう考えると少しだけ、涙が出た。

 

チカ「ううん、いいよ。私こそ…わがままでごめんね。」

主人公「…。」

 

その日、彼はそれっきり私と目を合わせてくれなかった。

家の前まで送り届けてくれた後に、トボトボと帰る彼の背中を眺めていた。

 

彼は優しい。とても、残酷なほど優しい。

そんな彼が大好き…そして大っ嫌い。

 

私の中の気持ちが彼の色に染まって行くほど。

彼の優しさを疎ましく感じてしまう。

もっと強引なところを見せてくれていい。

もっと、私を傷つけてもいい…だから。

本気で私を見て、彼の真実の愛でーー。

 

ーー。

 

足取りが重い。

帰り道。

 

仲違いをしたというつもりではない。

彼女との関係は、決してうまくいっていないわけではないと。

そう思っていたのだが。

ここ最近の彼女の要求には、うまく返事を返すことができない。

何より、彼女との愛が深くなって行くことがだんだんと怖くなっているように感じている。

…あの子の愛に僕は、応えられなかった。

 

2人の恋は未だキス止まり。

プラトニックラブーー。

 




波風が…立ってまいりました(

書いててすごく楽しい気分になれました(
でもそれと同時に感情を表す文章の辻褄が合っているのか。
よくわからなくなってきました(

でもやっぱり恋愛って、一筋縄にはいかない紆余曲折したようなもどかしさがたまらないですよね…と。
毎話毎話の事ですが、筆者の趣味全開にてお送りしております(笑

執筆のほうは楽しく描けるシーンになってくると段々とペースが上がって行くものなのですが。
ここのところアイポンが不調で、ゴーストタップに苛まれているため。
なかなか書きたくても書くことに集中できないという事案に悩まされています。
まったく困ったものですよ、ついついイライラしてスマホパンチし始める始末です(

そんなこんなで今後の更新としては、おそらく後2話?(3話になるかもぉ…)で完結させるかな、というところです。

なかなかやはり書き連ねているとどんどん話が膨らんで行くので。
何をどこまで表現するか、というのを慎重に考えつつ…。
大胆に中抜きして前後のキーシーンばかりを繋げているような…そんな感じです。
なのでチカちゃんの感情表現が場面が飛ぶほどにすっ飛んでいくというか、マッハで心変わりします(
なかなか筆者自身もこれは…と思いながらなのですが。あんまりダラダラとした話になって行くのもアレなので。
カンベンシテ(

キスシーンの文章に”啄ばむ”って言葉を入れてたんですけど。
あれ鳥が突っつくようにして餌を食べる仕草のことだって、
どんなキスしてたんだ…って思って修正しました(

と、いうことでいつまでもあとがきをダラダラ書くのもアレなので(
今回はこれにて、また次回をおたのしみに…?
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…

  • 消したほうがいい
  • 残しておいて欲しい
  • 書き続けて欲しい
  • 筆者の好きにすればいい
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