あの日の翌日、気まずい気分で2人は顔を合わせた…と思ったら。
世間話を始めた途端に、いつも通りのように振舞って。
まるで何もなかったかのように日常に戻ることができた。
2人の仲は変わらず…あえていうなら進歩もなく。
そしていつのまにか、年末を迎えようとしていた。
12月23日の夕暮れ時。
街はクリスマスの風景に染まり。
いたるところにオーナメントが施されて、街中が楽しい雰囲気を醸し出していた。
明日に控えるクリスマスイブ。
チカちゃんのためにプレゼントを用意しようと思って僕は適当なお店がないか探していた。
そして見つけた雑貨屋さん。
お店の扉には銀のリボンが飾られて、とても可愛いーー。
主人公君に似合うものはあるかな?
できれば、日常的に使ってもらえるようなものとか。
お部屋に置いて眺めてもらえるようなものがいいかな?
そんな風に思いながら商品を手にとってみる。
あ、そうだ。
チカちゃんはよく髪留めをしてる。
柊の葉を模したデザインーー。
これなんかいいんじゃないかな。
気に入ったプレゼントを握ってレジへと向かう。
目の前に背の高い男の人。
あれ?見覚えがあるような後ろ姿…。
チカ「あれ…主人公君?」
主人公「え?チカちゃん?」
チカ&主人公「ふっ、あははは♪」
こんな偶然あるんだーー。
2人は顔を合わせて笑った。
ちょっとレジの人と他のお客さんの注目を浴びてしまって、ハニカミ顔した私たちはレジを済ませて逃げるようにお店の外へ。
そしてお互いに握っているものを見せ合いっこした。
主人公「マグカバーか〜、ふふっかわいいトナカイのマスコットがいいね。」
チカ「でしょ〜♪主人公君よくマグカップでコーヒー飲んでるから、便利かなー?って思って。」
主人公「欲しいって思う時はあっても、案外わざわざ買いに行ったりしないんだよね、こういうの。嬉しいよ〜。」
チカ「ふふっ♪じゃあ、私の分は…。」
チカ「わあ♪可愛い髪留め!」
チカ「ね、早速つけてみてもいいかな?」
主人公「うん、つけてみて。」
チカ「…どうかな?」
主人公「うん、ばっちり似合ってる。可愛いよ。」
チカ「えへへ♡」
2人は微笑みあって。
チカ「クリスマスイブのフライングしちゃったね♪」
主人公「今日はクリスマスイブ”イブ”って言うのかな?」
チカ「なにそれ♪」
チカ「ありがとう♪主人公君。」
主人公「こちらこそありがとう、大切に使うよ。」
空を見上げると先程まで茜色に染まっていた空はもう暗くなっていた。
主人公「どうしようか、明日は一緒に過ごそうっていってたけど。」
主人公「偶然会っちゃったし、今日この後とか?」
チカ「うん、私は特に予定はないから。」
チカ「ご一緒しちゃおうかな♪」
主人公「ふふ♪この後は別の買い物に行こうって思ってたんだ。」
チカ「明日の準備?」
主人公「うん、ケーキの材料をね。」
チカ「手作りケーキ!!やっぱり女子力高いよね、主人公君。」
主人公「男の子だけどね。」
チカ「関係ないよ♪」
チカ「あ、じゃあ〜手作り料理は明日のお楽しみで〜。」
チカ「お買い物する前に、腹ごしらえしていかない?」
グゥ〜…
チカちゃんのお腹の音…。
恥ずかしそうにお腹を抑えて。
主人公「お腹空いたんだね。」
チカ「えへへ〜…。」
チカ「ほら〜、腹が減っては戦はできぬ。だよ?」
主人公「ふふっ、それもそうだね。」
ーー。
食事をしてから買い物をして、たくさんの買い物袋を提げた2人。
チカ「たくさん買っちゃったね〜…。」
チカ「お財布大丈夫…?」
主人公「ちょっと軽いかも…。」
主人公「なんてね。」
主人公「まあ、僕はバイトしてるんだし、問題ないよ。」
チカ「私もバイトしたいんだけどなあ…。」
チカ「こっちくる前に、”あんたの学力じゃ、バイトなんてしてる余裕あるわけないだろー”…って言われて。」
チカ「実際、本当に勉強について行くだけで精一杯だからそんな余裕はないなあ…。」
主人公「ふふ、デート行く時間はあってもバイトする余裕はない、か。」
チカ「それは別♪必要な時間だもん♡」
チカは主人公を小突くようにしてぶつかってふざけながら、一緒に家路を行く。
主人公の部屋に着くと、買ったものをしまって。
しばらく荷物を持って歩き疲れただろうからと、飲み物を注いで2人は休憩することにした。
暖かいココアをすする。
座布団クッションの上、ベッドに寄りかかるようにして並んで、世間話をしながら楽しい時間を過ごす。
彼となら2人きりで居られる、ただそれだけでも幸せ。
だけれど、こうして笑顔で喜びを分かち合える瞬間は、より強い幸福感を感じられるようで、”彼が好き”…そういう気持ちがどんどん大きくなって、溢れてくる。
やっぱり彼と、もっと近づきたい触れたい…そういう願いが欲望を掻き立てて。
チカ「ねえーー。」
チカ「キス…」
つい発してしまうーー。
その言葉が聞こえた途端、彼は不安そうな顔をして少し視線を逸らす。
やっぱりーー。
彼は、何故そうなんだろう…俯いて落ち込んでしまう私。
私と仲良くするのが本当は嫌なのかな…、マイナス方向への思考が働いてしまって今にも心が曇ってしまいそうになる。
でも、…たぶんそうじゃないと思う、そう思い込んで暗雲を取り払って。
じゃあ、彼は何を思ってそんな表情をするのかな…。
彼の気持ちになったつもりで少し考えてみる。
以前彼が迫って来た時に、私を強く握る彼の手の震えが思い当たる…。
私のこと…私との関係のことで何か、怖いことでもあるのかな?
“僕は君を大切にしたいんだ。”彼の言葉…。
私のこと…”傷つけてしまうかもしれない。”っていうことなのかな?
私は今まで、自分なりの”好き”をずっと彼に伝えてきたつもりだった。
そうやって我を貫いて、それにいつも応えてくれる彼に甘えていた。
でも、今こうして彼との関係に一線を引かれて、立ち止まってしまう私、でも…それを受け入れられない私。
そんなことにイライラしたってしかたがない、きっと今は私が彼を分かってあげなきゃいけない時なんだ。
どうすればいいんだろう?
どうすれば彼の不安を取り除いてあげられるのかな…、彼に寄り添ってあげられるのかな。
頭をフル回転させて考えるけど、頭の中で点と点をつなぐ線はどんどんぐちゃぐちゃになって…。
ああ…もうどうしよう…。
こういう時は、押してダメなら…引いてみろ?
結局最終的にはシンプルに。
今は、怖がっている彼を安心させてあげるべきなんだーーそう思って。
私は口から出しかけた言葉を飲み込んでから、ぐっと決心をして。
チカ「主人公君。」
主人公「?」
座ったままの彼を膝立ちして抱き寄せる。
私の胸元に彼の頭がきて、いつものように彼に抱きついたりするのとは違う…。
主人公「!?」
主人公「チカちゃん?!」
彼は一瞬私の体を引き離そうとして、慌てるように抵抗しかかったが。
私がそれに微動だにせず、じっと彼を包み込んでいると。
彼はこちらの様子を伺うように、動きを止めた。
私は…あなたとわかり合いたい、こんなところで立ち止まっていたくない。
あなたとの愛をもっと、育んでゆきたい…。
だから。
チカ「…怖がらなくていいんだよ。」
主人公「え…?」
まるで彼を諭すように私は、精一杯の彼への気持ちを込めてーー。
チカ「えへへ。」
チカ「私がキスをねだったら、主人公君、いつもすごく不安そうな顔して見えるから。」
チカ「…だから、怖がらなくてもいいんだよ?」
主人公「…うん。」
彼は神妙な面持ちで私の言葉に相槌を打つ。
チカ「私には、うまく言葉にできないんだけど…。」
チカ「たとえあなたが、私にどんな姿を見せたとしても。」
チカ「いつかみたいに…、突然怖いことをしたって。」
チカ「私はあなたを、嫌いになったりはしないから。」
チカ「私は、何があってもあなたと、ずっと…一緒にいたいから。」
チカ「主人公君。」
主人公「うん。」
私の言葉に絆されてゆくように、彼はゆっくりとこちらに身を委ねてきて。
私の腰に腕を回して抱きついてきた。
その様子は、まるでちっちゃい子が甘えてくるみたいで、私はつい彼の頭を撫でながら。
しばらくしていると、彼の目尻からツゥーッと…。
チカ「主人公君…泣いてるの?」
主人公「えっ?…あはは、情けないとこ見られちゃった。」
主人公「…弱いなあ僕って。」
涙を拭う彼の頭を撫でながら私は。
チカ「いいんだよ、弱くても。」
チカ「…きっとそれは、あなたの優しさだから。」
チカ「私は、あなたのそいうところが好き。」
チカ「ありのままのあなたのことが…大好きだから。」
私の胸の中にいる主人公君はその言葉を聞いてから、満足気な顔をして目を瞑って。
より一層、私を強く抱きしめるようにーー。
ゆっくりと…時間が過ぎていった。
ーー。
主人公「…ごめんね、明日も一緒に居るって予定なのに、なんだか長く引き止めるようになっちゃって…。」
チカ「ううん、いいの。」
瞼を少し赤くした彼を見つめて、私は微笑んで。
チカ「じゃあね、おやすみなさい。」
主人公「うん、おやすみ。」
彼を抱きしめていた、…ただそれだけだったけど。
わたしから抱きついていただけの今までとは違って、初めて彼と、対等になって分かり合えたような気がした。
私の気持ち…彼に伝わったかな。
きっとーー。
ーー。
“何があってもあなたとずっと一緒にいたいから。”
その言葉を聞いて、僕の心の中のわだかまりは、スッと消えていったように思えた。
たぶん、チカちゃんとの愛が深くなっていくことが怖かったのは…トラウマのせい。
愛し合ったあの子と、訪れた別れ、それを受け入れられなかった僕がいつの間にか壁を作っていた。
チカちゃんは、僕のことを本気で愛してくれているんだ…、僕自身が気づかないうちに作っていたそれを見抜いていたように、僕を優しく解いてくれた。
ずっと彼女のことは、自分よりも”幼い子”のように感じていたけれど。
そんなことはない…むしろ僕の方がずっと子供だったんだ。
今日彼女と本当の意味で向き合うことができて、彼女から注がれる純粋な愛情が、何より心地良いとわかって。
今までそれを拒んでいた自分自身が恥ずかしく思えてーー涙が出た。
僕も…彼女のことが好き、いままで壁越しにあったのかもしれない、”大好き”の気持ちに初めて気づけた。
彼女の愛に”応えてあげたい”じゃない、彼女を。
愛したい。
一途にそう思った。
ーーー。
翌日。
クリスマスイブの当日。
今日は素敵な日になりそうーー。
昨日のことを思い返しながら、私は荷物をバッグに詰めて行く。
お泊まりセット。
それは1つの決心のような…、博打のような。
でも、ありえるのかもしれない。
そんな風に思って必要最低限のものだけ備えて。
そんな自分の行動に、少しドキドキと胸を鳴らしながら。
彼とのクリスマスの…淡い期待を抱いて。
部屋を出た。
ーー。
ピンポーン。
主人公「はい。」
扉を開けると。
チカ「メリークリスマス!」
チカ「イブっ!」
元気なチカちゃん。
主人公「こんにちは。」
主人公「メリークリスマス、イブ…ふふっ。」
主人公「さあ、上がって。」
チカ「お邪魔しまーす♪」
クリスマスイブ、チカちゃんとーー。
この日の過ごし方は人それぞれあるだろう。
恋人と2人きりであれば、例えばいいお店の予約を取ってディナーをしたり。
雰囲気の良い場所でデートしたり。
僕たちの場合は、お家パーティーを選んだ。
今日は僕の部屋で一緒にケーキを作って、料理を食べて…。
二人きりでクリスマスイブを過ごすんだ。
早速僕たちはケーキ作りを始めた。
今日は本格的にスポンジから、2人分にしては少し大きいホールケーキ。
一緒に生地を混ぜたり、クリームをスポンジに塗って飾りをつけたり。
…口元にクリームをつけたチカちゃんを見て。
笑ったりーー。
最後の仕上げにイチゴを乗せて…。
チカ「完成!」
主人公「うん、いい感じ。」
主人公「そしたらこれは食事の後でって事で、とりあえず冷やしとこうか。」
オードブルは作り置いていたものと買い物してきたものを並べて。
準備万端。
2人だけのクリスマスパーティー。
シャンメリーを片手に乾杯して、食事を始める。
チカ「ターキーだあ♪」
主人公「残念、チキンでした。」
チカ「…だよねえ。」
主人公「本場はチキンなんて食べないっていうけどね。」
主人公「でも日本でターキーなんてなかなか売ってないっていうか、買わないよね。」
チカ「うん、どんな味がするんだろう?」
主人公「う~ん、鳥は鳥…なんだろうけどね。」
チカ「きっと…ターキー!って感じなんだろうね~。」
主人公(…どんな?)
主人公「ターキー!」
主人公「ううん…これじゃわかんないな。」
チカ「きっとターキーの気持ちが足りないんだね。」
チカ「ターキー!」
主人公「タ…ターキー!!」
チカ「ターキー…。」
チカちゃんは自己暗示を始めるようにして目をつむってチキンを一口…。
チカ「…チキン。」
主人公「どんなに頑張ってもターキーにはならないと思うよ。」
チカ「今度買ってきてみようよ、ターキー♪」
主人公「百聞は一見にしかず、ってことだね。」
チカ「うん♪」
チカ「あ、このポテトサラダおいしい♪」
主人公「よかった、結局オードブルもだいたいスーパーのものになっちゃったけど…。」
主人公「簡単なものだけ僕が作ったんだ。」
チカ「う~ん、やっぱり料理上手いよね〜。」
主人公「そんなに手を込んだものでも無いけどね。」
チカ「胃袋つかまれちゃった。私♪」
主人公「ははは。」
チカ「ち・な・み・に、これはチカが作ってもってきたの!」
主人公「お~」
チカ「食べてみて!」
主人公「うん、おいしいよ。」
チカ「やった!胃袋つかまれた?」
主人公「ふふふ、これだけじゃ足りないかな?」
チカ「ええ~♡」
ーー。
食事をひと段落した僕らは、借りてきたDVDで映画を見て。
二人の時間をゆっくり過ごす。
映画が終わったころ。時計の針はクリスマスまであと3時間ほどといったところを指す。
主人公「そろそろケーキ食べる?」
チカ「うん、食べよ〜♪」
ケーキを出してきて切り分ける。
6つ切りにしたケーキを1つずつだけ取ってお皿に乗せて。
主人公「美味しくできてると良いな〜。」
チカ「じゃあいただきまーす♪」
途端にチカちゃんはフォークでケーキをグサッ!
串刺しにしたかと思えばそのまま持ち上げて口へと運んでいく。
主人公(うおおおー!?)
思わず心の中で驚愕する主人公。
チカ「おいしい〜♡」
主人公「ワイルドだねえ…。」
チカ「ん?」
チカちゃんはやっぱり変わってる…。
ははは、と愛想笑いをしながら。
自分の分をフォークで一口大に切って口に入れる。
主人公「うん、おいしい。」
チカ「うんうん、おいしいね♪二人で作った…ケーキ♡」
ニヤニヤしながら、そう言ってチカちゃんは二口、三口…とあっという間にケーキをたいらげる。
チカ「残りのケーキどうしよう?」
主人公「余力があれば今日食べてしまってもいいかなって思うけど…。」
主人公「なんだったら、お持ち帰りする?」
チカ「そうしようかな。」
主人公「はーい、そしたら二つ適当な箱でも用意しておいて…。」
主人公「さて…これから、どうしよう?」
主人公「何かして遊ぶ?」
そういいながらトランプを用意しにいこうとしていると…。
返事がないだけなんだけど…、チカちゃんが妙に静かだと感じた。
チカ「ねえ、主人公君。」
主人公「何?」
チカ「えっと…ね。」
もじもじしながら、何かを言いだそうとしてる。
なんとなく予測がつくような気がしたけど、僕は彼女の言葉を待つ。
チカ「その、今日。」
チカ「お泊り…していってもいいかな?」
ーーそう来たか…。
そんな彼女の要求を拒む気持ちはなくって。
主人公「うん、いいよ。」
すぐさま了承。
するとチカちゃんはお得意のタックルで僕の背中にぶつかってくる。
チカ「えへへ♡」
僕はこけないようにチカちゃんを受け止めてから、彼女に向き合うように方向転換する。
僕たちは自然と見つめ合って、しばらく黙って。
それからチカちゃんが、少し息をためるようにしてから言葉を発する。
チカ「キス、しても…いいよね?」
期待するような瞳をこちらに向けてくる、僕はそれに…応えるように笑顔でハグする。
チカ「あはは♡」
彼女は背伸びして僕に寄りかかるように頬ずりしてきて。
合わせていた頬を離してから、キスをする。
お互いに求め合うように何度も何度も、彼女と唇を重ねて。
しばらくしたら彼女が唇を離して、ご満悦の表情で僕に抱きついた。
チカ「…こうやって、あなたにたくさん触れたかったの。」
呼吸をする彼女の肩がゆっくりと大きな動作で上下する、少しだけ彼女の息は荒い。
心を許したから余計に…か、そういった彼女の所作がすごく魅惑的に映って。
つい、衝動的な感情を揺すられてしまうーー。
主人公「チカちゃん。」
抱き合っている体を少し緩めてから屈んで、いじわるするように彼女の耳たぶを甘噛みするーー。
チカ「ひゃっ!?」
意表を突かれた彼女の可愛い鳴き声…。
僕は彼女の頬に手を添えるようにして。
主人公「ごめんね、いきなり意地悪して。」
主人公「君とキスしたり…触れ合ったりしていると。」
主人公「僕はどうしてもああいう風に、君のこと…自分のものにしたいって行動に出ちゃうんだ。」
彼女を試すつもりで挑発的に。
僕は彼女の頬に当てていた指を沿わせるようにして首元の方へと動かして、鎖骨に触れる。
彼女の顔に自分の顔を近づけて、威圧するように…囁く。
主人公「いつかの時みたいに、僕がこうやって迫っていったら。」
主人公「チカちゃんは…怖い?」
そうするとより一層赫らむ彼女は、少し目をそらすようにして。
いぢらしくこちらを見上げる。
チカ「それは…やっぱり、怖いよ。」
彼女は目を細めて上目遣いにこちらを見上げて。
それを合図と受け取った僕は、両手を彼女の後ろ頭に添えて、優しくキスをする。
唇を離してから彼女は。
チカ「でもね、そうしてくれる方が嬉しいのかも…。」
チカ「あなたが、本心から私を愛してくれてるのかなって、思えるような気がするから。」
覚悟は…できてるっていうことなのかな…。
僕が添えていた手を離すと、彼女はおもむろに上着を捲り上げて。
少し躊躇うようにしながら。
チカ「〜っ。」
チカ「いざって思うとちょっと…恥ずかしいね。あはは♡」
そう言って背を向いてから。
グイッと勢いをつけて、上着を脱ぎ捨てる。
上半身だけシャツ姿になった彼女は、今度はスカートに手をかけて…。
主人公「待って、そんな焦らなくてもいいよ。」
彼女の動きが止まる。
主人公「いきなり恥ずかしいでしょ、ゆっくりでいいから。」
チカ「う…うん。」
主人公「それに…。」
主人公「僕が脱がしてあげるから。」
その時、既に僕の中の変なスイッチはたぶん壊れていた…。
チカ「うん、わかっ…え?」
こちらを向きかけて真っ赤になる彼女はすぐ背を向けなおした。
チカ「…もう、すけべ。」
小さな声で吐き捨てられる。
主人公「うっ…。」
チカ「…なんちゃって♪」
チカ「うん、いいよ。あなたが脱がせて…。」
主人公「だったら。」
主人公「ベッド、行こっか。」
チカ「うん。」
ベッドに座るチカちゃんと、再びキスを繰り返してーー。
お互いに期待や不安で緊張しているからか、どんどん息を荒くして、2人は見つめ合う。
彼女は蕩けたような表情で恍惚とし、僕はそんな彼女に野生的な欲望をそそられてしまう。
もう我慢できないかもーー。
僕は彼女をギュッと抱きしめて。
そのあとはあんまり理性的ではいられなかった。
僕は一心不乱に、彼女との愛に溺れた。
ーー。
チカ「あなたとこんな風に愛し合えるなんて…。」
チカ「なんだか本当に夢を見ているみたい。」
チカ「あなたはどう?」
主人公「僕もあんまり、こんな風になるなんては思っていなかったかな。」
主人公「でも、君とちゃんと向き合えて…愛しあえた事…とっても嬉しいよ。」
チカ「ふふふ♡」
チカは主人公に頬ずりする。
向き合って2人、ベッドの中で。
主人公「不思議な気持ちになるよね…こういう経験って…。」
チカ「…。」
チカは少し口を開けて、躊躇いながら言葉を発する。
チカ「ねえ、主人公君。」
チカ「…聞きにくいこと、聞いてもいい?」
主人公「なに?」
チカ「その、主人公君って…こういう風な恋を
…。」
チカ「私以外ともしたことあるの…?」
その問いに、すこし戸惑うような気持ちにもなったが。
主人公はゆっくりと口を開いて。
主人公「うん、あるよ。」
チカ「そっか…。」
主人公「チカちゃんと出会う…少し前まで、他の彼女がいてね。」
主人公「でもその彼女には目標があって、そのためには離れ離れになってしまうから、…寂しくなるのは嫌だからって言われて。」
主人公「振られちゃった、のかな?ふふっ。」
チカ「なんだか…かっこいい人なんだね。」
主人公「うん。」
チカ「その彼女さんのこと…主人公君は、嫌いになって別れたわけじゃ無いよね。」
主人公「…うん。」
チカ「今でも…その彼女さんのこと…好き?」
あの子の後ろ姿、揺れるポニーテールがふっと頭に浮かんだ。
僕はずっとあの子と育んだ愛に囚われていた。
でも、今は目の前にいる…この子のことだけを考えていたい。
愛していたい。
ーーそう、思えたから。
主人公「多分…お互い嫌いになって別れたわけじゃ無いから。」
主人公「好きか嫌いか?なんて言われたら好きなんだろうけどね。」
主人公「でも、僕が今見つめているのは…君だけだから。チカちゃん。」
チカ「えへへ♡」
ほっと安堵するようにチカちゃんは笑顔を咲かせて、再び僕にすり寄ってきた。
チカ「ごめんね、意地悪なこと聞いて。」
主人公「ううん、気にしないで。」
主人公「気になったら…どうしても知りたくなっちゃうもんね。」
主人公「気持ちはわかるから。」
チカ「うん。」
僕は彼女を優しく抱き寄せて。
腕の中へと包み込む。
主人公「でも、チカちゃんって察しがいいよね、こういう時。」
チカ「うふふ♪だってあなたのことはもうお見通しだもん♪」
チカ「…心は、一つになれたんだから♡」
ニンマリと笑う彼女の無邪気な笑顔。
すごく眩しい、太陽のようなーー。
主人公「ふふふ♪」
そんな表情をされたら、こっちだって無条件で笑顔になってしまう。
そんな優しいピロートークを交わしながら、僕らは2人きりで夜を越した。
ーー。
パチっ。
瞬きとともにハッと目が覚めた。
すると、目の前には誰かの体が…。
そうだ…主人公君だ…。
昨夜の出来事を思い返しながら、少し頬を染めて。
上体を起こしてから時計を凝視する。
まだこんな時間、すごく珍しい早起き。
でも、そのおかげでいいものが見れた。
私の隣に視線を落とすと。
無防備な彼の寝顔。
つい、彼の前髪をかき分けるように手を出すと。
彼はゆっくりとまぶたを動かして、声を漏らす。
主人公「…っ」
主人公「?」
言葉にならないような唸り声を上げるように。彼が半分寝ぼけたまま目を覚ます。
チカ「あはっ、ごめんね。起こしちゃった。」
主人公「んぅ…おはよう…。」
チカ「おはよう、主人公君。」
いつものシャキッとした彼の様子からすると、すごくだらしない寝起きの彼。
そんな姿がすごく愛おしく見えて、つい私は自分の胸に彼を抱き寄せてしまう。
すると、ふふっと笑う彼の鼻息がくすぐったい。
彼を抱きしめていると、すごく心が満たされるようで。
彼の頭を撫でながら、慈しむように見つめる。
目を瞑っている彼は静かに呼吸を繰り返しながら、だんだんとそれが弱くなっていって…。
あれ?寝ちゃったーー♡
私に抱きついてくる彼は、本当にちっちゃい子のようで可愛くて。
彼を起こさないように、小さな声で呟く。
チカ「私と一緒であなたも、甘えん坊さんだね。」
チカ「ふふふ♡」
幸せな朝ーー。
そのあと私もつられてそのまま眠ってしまった。
いつも通り、二度寝。
ーーー。
パンポンパンポーン♪
英語のアナウンスが聞こえてくる。
流石にその音にも慣れてきたみたいで、音が頭の中で言葉に変わって、理解できるようになった。
行きの便に乗る前は…勉強していたはずなのにちんぷんかんぷんだった。
でも流石に1年近くも海外に身を置けば、それなりには身につくということだろう。
ゴロゴロと大きなキャリーバッグを転がしながら空港の中を行く。
「ーーーお帰りなさいませ。」
入国審査、税関を通過して。
ロビーへと着いて。
「ただいま…日本。」
誰も迎えにきてくれているわけでは無いけれど。
なんとなく空中にその言葉を投げてから。
夕暮れ空を眺めてーー。
さあ、帰ろうか。
読んでいただきありがとうございます。
元々、遅筆更新…ではありますが。
私事ですがリアルの仕事が忙しくなってきて、なかなか執筆の進み具合が悪いです。
次の話もしばらくかかるかもですね。
今回の話ですが…チカちゃんにバブみを感じt(ry
という、故に主人公君にはオギャ…はしませんが甘えてもらいました(
アニメの話とかでも、チカリコのシーンとかで結構慈しみの感じられるような風貌があると思うので、そんな感じもアリかな?
ここに来て元々の本編と同じ話の部分になってきましたけど、起こったことだけ同じにして、結構内容は一新しました。
元本編の時のクリスマスシーンとかはチカちゃんがかなりうぶな印象でしたけど、今回の改訂版の話の繋がりからだと、あんまりそういう印象じゃないよなーっと思って、ざっくり改変。
もうちょっと少女以上の恋がしたい感を醸したかった気もしましたけど(
あと今回は少し話のネタの作り方を、ドラマCD風にしてみてるところがあります。
伝わっているかな…?
こういうぶっ飛びネタ系をちょこちょこ挟みたくもあるんですけど(
なかなか難しいですね。
ダジャレチカちゃんとか、なのだチカちゃんとか、チカ二等兵とか(
おそらく次の話で改訂版もラスト?になると思います。
まあ、本編の雛形があるんで結末は見えてるんですけどね。
なんとか最後まで楽しんでいただけるような文章を書けるように…頑張って行きたい所存であります。
そんな感じでまた後書きがダラダラ続きそうなのでここらで。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…
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消したほうがいい
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残しておいて欲しい
-
書き続けて欲しい
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筆者の好きにすればいい