ちかなんとーーー。   作:黄昏虎おじさん

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五篇 二人の再会、ちかなんとーーー。

人でごった返しになっている神社。

田舎でもこの数日間だけは同じような光景が見られるが、やはり人の多い都会ではその規模も違って、大勢の参拝客が大行列をなしている。

”お正月くらい帰省しようかなー”っと思っていたチカだったが。

主人公も帰省する予定はないというので、一緒にいることにした。

 

チカ「こんなに沢山の人が一気にお願い事して…神様はきっと大変だよね〜。」

主人公「むしろ書き入れ時だったりして。」

チカ「なにそれ、お願いごとにノルマ制でもあるの?」

 

他愛ない話をしながら、歩く。

散々並び疲れた初詣を終えた帰り道。

 

チカちゃんのスマートフォンから通知ーー。

手に取ってそれを確認する彼女の表情がパアッと明るくなる。

何かいい知らせでも来たのだろうか。

僕はそんな彼女の横顔を眺めつつ、夜空を仰ぐ。

白い息が立ち昇る寒空、今年一年はどんな一年になっていくんだろうか…。

 

主人公「そうだ、結局人混みの中で新年迎えたからいいわすれてたね。」

主人公「あけましておめでとう、チカちゃん。」

主人公「今年もよろしくね。」

チカ「うん、あけましておめでとう♪」

チカ「今年もよろしくお願いします。」

 

ふふふ。

微笑みあいながら歩く。

2人の年越し。

 

 

ーーー。

 

 

もう何日かで冬休み明けの大学が始まるという頃。

チカは正月に来たメッセージーー、しばらく会えなかった友達が帰ってきたというので、久しく会うことにしていた。

待ち合わせ場所へ向かうと、そこには腕を組んで待つ友達の姿が。

それを見つけたチカは駆け足で接近して。

 

チカ「カナンちゃんおっかえりー!!」

 

タックルするように幼馴染のカナンの胸に飛び込む。

 

カナン「あはは♪ただいま、チカ。」

チカ「久しぶりだねー♪」

カナン「うむ、元気にしてた?」

チカ「うん!」

 

お互いに擦り寄る姿はまるで姉妹のようで。

しばらく抱き合った二人は顔を合わせてから。

 

チカ「じゃあお店に行こうよ♪」

カナン「うん♪」

 

2人は喫茶店へと向かった。

 

ーー。

 

しばらく会えなかった二人の会話は止まらない。

メッセージでもしばらくやり取りをしたり、電話もしたりしていたのだが。

やはり直接会って話すのは格別に楽しいようで、時間を忘れてしばらく喫茶店に長居していた。

 

チカ「ーーー。大学生活楽しんでるんだよ~♪」

カナン「ふふふ♪」

 

楽しそうに話すチカを眺めて嬉しそうなカナン。

一つの話題に区切りがついたところで、チカはハッと思い出したような仕草をしてから。

 

チカ「そうそう、カナンちゃん。」

チカ「ついに、ついに…!私にもできたんだよ!」

カナン「うふふ♪なに?」

チカ「ふふん♪そ・れ・は…」

チカ「カ・レ・シ♡」

 

その言葉が聞こえた瞬間、カナンの表情が凍り付くようになって。

時が止まった。

 

チカ「あれ?カナンちゃん?」

 

ワンテンポ遅れてから飛びあがるように立ち上がってカナンが驚く。

 

カナン「ええぇええええ!?」

チカ「うわあ!?びっくりした!」

 

立ったまましばらく固まるカナンは、周囲の視線に気づくと愛想笑いするようにしながら、すごすごと引き下がった。

 

カナン「え?彼氏…?できたの?」

チカ「うん♡できたよ~彼氏っ!」

カナン「へえ~…。」

 

満面の笑みでVサインをしてみせるチカ。

カナンは適当な返事をしながら、完全に上の空だった。

 

チカ「”この人だーっ!”って思う人に出会えたんだあ~♡」

カナン「そっそっかあ~…。」

 

カナン(ええ…チカに彼氏って…大丈夫なのかなあ…。)

 

カナン「ど…どんな人なの?」

チカ「優しくってね♪頭が良くて~、とっても…」

カナン「…とっても?」

チカ「かわいいの♡」

カナン「かわ…いい?」

チカ「うん、普段はかっこいいけど、2人きりだとかわいいの♡」

カナン「へっへえ~…。」

 

カナン(2人きりだと…?!)

 

浮かれたチカに過剰な心配をするカナン。

カナンの頭は今フル回転でチカから探るべき情報を選出していた。

彼氏ができた…”あの”チカに…ということは…。

頭の中をキーワードが行きかう、彼氏…2人きり…かわ…いい…?

 

カナン「え?もうどこまでしちゃってるの?」

カナン(何聞いてんの私っー!!)

 

カナンは完全に混乱している。

意図せず突飛なことを聞き出そうとしてしまい。

 

チカ「え!?」

 

その問いの意味を理解したチカは、急に頬を染めてしおらしくする。

 

チカ「えっと…それは…。」

 

カナン(え?何何何何!?)

 

チカ「一人じゃできない…、イケナイことまで…かな♡」

 

チカのオブラートに包んだつもりの言葉が、かえって過激に”それ”を示した。

ーーカナンに電流が走る。

ダンッ!

机をたたくようにして再び飛びたつように立ち上がるカナン。

 

チカ「うわあ!カナンちゃん!?落ち着いて!!」

カナン「あっ…ごめん。」

 

席に座りなおしてからしばし放心状態だったカナンは、ため息を吐き出してから重そうな頭をあげて、口を開いた。

 

カナン「そ…そっかあ…、いくところまでいっちゃってるかあ…。」

チカ「あ、あんまり言わないで…、ついこの間初めてだったから…まだ恥ずかしくて♡」

 

色気づいたようなチカに、カナンは少し目が潤むような気がした。

”お姉ちゃん…心配だよ”

…決して実妹ではないのに。

そんな過保護なカナンだった。

 

カナン「え、どのくらい付き合ってるの?」

チカ「う~ん、4月に出会ってから…付き合い始めたのは8月だから、5か月くらい?」

カナン「へえ、結構ちゃんと付き合えてるんだ。」

チカ「ふふっ、私ももう大人の仲間入りをしたってことだよ♪」

 

妙に得意げなチカ。

 

チカ「そういえば、カナンちゃんって彼氏とかいないの?」

カナン「私?」

カナン「私は…今はいないかな~。」

チカ「今は?」

カナン「うん、それまではいたよ?ちょっと前までね。」

チカ「へ~、…カナンちゃん彼氏いたんだね。初耳だよ!」

カナン「チカ、調子に乗ってるでしょ?」

カナン「馬鹿にしないでよ~?チカが経験しているようなことは、私のほうが先に経験してるんだから。」

チカ「カナンちゃんこそ、私のこと年下だからって見下してるでしょ?」

カナン「ふふ♪ごめんごめん、話聞いてると妬けちゃってさ♪」

チカ「ふん。」

チカ「…ところで、カナンちゃんの彼氏ってどんな人だったの?」

カナン「わっ私の?」

カナン「んー…可愛い彼…かなあ…。」

チカ「へえ〜!あのカナンちゃんが!」

カナン「チーカ?」

チカ「えへへ♪お返しだよー。」

カナン「ふん。」

チカ「それで、付き合っててどうだったの?」

カナン「どうって…どう?」

チカ「ん〜仲よかった?」

カナン「良くないと付き合わないでしょ。」

チカ「そうだね…、じゃあ…じゃあ…。」

チカ「愛し合ってた?」

カナン「…ふふっ、そりゃあね。好きだったよ、ずっと彼のこと。」

チカ「え?じゃあカナンちゃんふられたの?」

カナン「え?んーふった…かな?」

チカ「え??好きだったのに??」

カナン「うん、だって私、海外行ってたし。」

カナン「遠距離恋愛なんて性に合わないからさ、そこでバッサリ。」

チカ「ええ〜!」

チカ「え、でもこれからはずっと日本にいるんでしょ?」

カナン「まあ、また行く予定は今のところは…。」

チカ「だったら、またその元彼氏?に会ったりしないの?」

カナン「んー…そこらで新しい彼女でも作ってるんじゃない?」

チカ「そうかもだけど…好きだったんでしょ?カナンちゃん。」

カナン「ん〜…。」

カナン「もー、私のことはもういいよ。もう…別れたんだし…。」

カナン「そんなことより、チカたちが出会ったのはどこで?きっかけは?ーー?」

 

ーー。

 

カナン「…そっかあ。」

チカ「あ、そうだ。たぶん彼も今日は暇してるだろうから…。」

チカ「会ってみない?私の彼♪」

カナン「自慢する気だなあ~?」

チカ「させてよ~♪」

チカ「私が大人になったんだ!ってところ、見せつけてあげるから!」

カナン「ふふふ♪会うだけならね。」

チカ「えー、せっかくだし一緒に遊んだりしようよ~。」

カナン「いいの?」

カナン「チカより大人な私がいたら、その彼、私がとっちゃうかもよ~?」

チカ「えーっ!?ひどい!彼は私だけのものだもん!」

カナン「ふふふ♪」

 

カナン(まあ、心配してたけど聞いてる限りだったら大丈夫そうかなあ…。)

カナン(なによりチカが幸せそうだし。)

 

カナン「まあいいよ、チカの好きになった人がどんな変わった人なのか気になるし…。」

チカ「なにそれ~、私は変な人が好きみたいじゃん!」

チカ「ち・が・う・よ!普通に素敵な彼だから!」

 

ぷりぷりと怒るチカはスマートフォンを片手にメッセージを打ってから、しばらくするとすぐ返事が返ってきた。

 

チカ「うん、彼来てくれるって♪」

カナン「うむ。」

チカ「はあ~早く会いたいなあ♡」

カナン「ふふっ。可愛いね、チカは♪」

 

ーー。

 

お店を出た二人は待ち合わせ場所へと向かった。

チカの彼より先に着いた2人は、その場で世間話の続きをしながら待っていた。

カナンが周囲を見渡していると、1人の男性がこちらへ向かってくるのが見えた。

“あ、あれがチカの彼氏かな…?”そう思いながらじっと見ていると。

 

カナン「んんん?!」

チカ「どしたの?カナンちゃん。」

カナン「もしかして…チカの彼氏って…あの人?」

チカ「え?あ、そうそう!」

 

チカは彼に向かって可愛らしく手を振りながら。

 

チカ「すごいねカナンちゃん、良くわかったね。」

カナン「いっ…いやあ〜なんでだろうねえ〜。」

 

呆然とするカナンを見て不思議そうな顔をするチカ。

そこへ主人公がやってくると。

 

主人公「…。」

チカ「あれ?」

 

こちらも呆然とする…。

なぜか見つめ会っているカナンと主人公を交互に見て、チカが混乱する。

 

チカ「え?おーい、2人とも〜?」

 

チカの声かけに反応して、主人公が先に嬉しそうな笑顔になってカナンに声をかける。

 

主人公「カナン…だよね?」

カナン「ち…違うよ、たぶん…。」

チカ「え?え?」

チカ「カナンちゃん、何嘘ついてるの?」

チカ「じゃなくて…。」

チカ「なんで主人公君もわかるのー?!」

チカ「っていうか、なんで名前知ってるの?」

チカ「え?もしかして、2人は親戚だったー!とか?」

カナン「いやあ〜そういうのだったら良かったんだけどねえ〜…。」

主人公「その、チカちゃん…。」

 

説明しようと思って口を開くも、重いーー。

助け舟を求めようとしてカナンのほうへと視線を向ける主人公だったが。

カナンにはふいっと顔を逸らされてしまった。

“気が重いなあ…”そんなふうに思いながらも、主人公は言葉を絞り出す。

 

主人公「あのね、チカちゃん。」

主人公「僕とカナンは…その…。」

主人公「チカちゃんと僕が付き合うより前に…付き合ってたんだよ。」

チカ「へえ〜、そうだったんだあ〜…。」

 

まだチカは言葉の意味を理解していない。

主人公の発言から3カウントでチカが驚愕する。

 

チカ「えぇええええええええ!?」

チカ「え??主人公君は…カナンちゃんの元カレ?」

主人公「うん。」

チカ「カナンちゃんは…主人公君の元カノ?」

カナン「う、うん。」

 

チカ「ど、どうしよう〜…。」

カナン「どうするもこうするも…でしょ。」

主人公「ね…。」

 

あわあわと狼狽するチカを余所にして2人は話す。

 

主人公「帰ってきてたんだ…、カナン。」

カナン「う、うん、つい最近ね。」

主人公「僕らのことは…」

カナン「うん、さっきチカからある程度、聞いたかな…。」

主人公「元気にしてた?」

カナン「まあね。」

主人公「海外どうだった?」

カナン「すごく刺激的だったよ、毎日。」

カナン「楽しかったんだけど…でもやっぱり私は日本が安心するし、慣れた場所の方が居心地はいいよねって思ったかな。」

主人公「ふふふ、そっか。」

 

微笑み合う2人、そんな様子を眺めてボーッとしているチカに気づいた主人公。

 

主人公「チカちゃん、カナンは友達って言ってたけど…。」

チカ「え?あっ…えっと、カナンちゃんは幼馴染なんだ。」

チカ「物心ついた頃から一緒だったから、一番付き合いが長い友達かなあ…。」

主人公「…そっか。」

 

会話が途切れると、途端にバツの悪い空気が漂う。

これはすなわち、三角関係?

そんなことを3人とも考えながら。

一番に痺れを切らしたのはカナン。

 

カナン「えっとお…それじゃ私は2人の邪魔するのもなんだし…。」

カナン「帰ろうかなあ…?」

チカ「えっ!カナンちゃん帰っちゃうの?」

カナン「散々話したし、また会えるんだしさ…。」

チカ「でも、…主人公君と話していかないでいいの?」

カナン「…それ、チカが言う?」

チカ「え?ダメだったかな?主人公君。」

主人公「え?えーっと…。」

主人公「うーん。ははは。」

カナン「ははは、じゃないでしょ。」

主人公「ごめんなさい…。」

チカ「ちょっと…カナンちゃん。」

カナン「あのねチカ、2人は付き合ってるんでしょ?だったらさ。」

カナン「チカは自分の彼氏に元カノが近寄ってきてもいいの?」

チカ「えっと…。」

チカ「だって…カナンちゃんだから。」

カナン「私だったらいいの?」

チカ「良くないかもしれないけど…。」

チカ「でも、カナンちゃんだって主人公君のこと…。」

カナン「とっちゃうよ?」

カナン「主人公君。」

チカ「カナンちゃん…。」

カナン「…ごめんね、ちょっと乱暴なこと言うみたいで。」

カナン「でもね、こういうことなの、今の私たちの関係は。」

カナン「チカの前ではそんな風じゃないかもしれないけど。」

カナン「私だって主人公君とは…愛し合ってたんだから…。」

 

辛そうな顔をしているカナンを見て、チカは何も言えなかった。

 

主人公「えっと…。」

カナン「いいよ、君は何も言わなくて」

主人公「うっ…。」

カナン「こういう時に一番頼りないっていうことは良く知ってるんだから。」

主人公「はい…。」

カナン「ごめんね。」

カナン「じゃあ私は帰るから。」

 

カナンは背を向けて遠ざかっていった。

チカが一瞬引き止めようと手をのばしかけたが、届かないーー。

 

主人公「…チカちゃん。」

チカ「あはは、びっくり…びっくり…。」

 

チカの表情は笑ってなかった。

何か言葉をかけようと思った主人公だったが、その様子を見て思いとどまった。

今はきっと…触れない方がいい。

むしろ彼女の混乱を増長してしまうだけになると思ったから。

 

チカ「私も…今日は帰ろうかな。」

主人公「…送ろうか?」

チカ「ううん、大丈夫だよ。えへへ。」

 

作り笑いーー。

 

チカ「じゃあね。」

主人公「…うん。」

 

離れて行くチカが見えなくなって、残された主人公。

彼女が苦しんでいるとわかっているのに、うまく言葉をかけることもできず、慰められもせず。

ただ、何もできないことが悔しかった。

僕はーー。

 

 

ーーー。

 

 

はあ…思わずため息が出る。

あれから数日たった。

まさか、私のいない間にあんなことになるとは…。

予想もしていなかった出来事に、私は戸惑っていた。

 

あの子はーー。

あの子は、私よりもっと複雑な気持ちでいると思う。

 

鳥かごを開けたのは私。

主人公君は自由になったから、チカと恋をしたんだ。

この事態を招いたのも私自身が蒔いた種。

落とし前くらい自分で…つけなきゃ。

 

揺れる列車の中でスマートフォンをあそばせるようにしながらーー。

 

ーー。

 

あの子が帰ってきた。

そのことはすごく嬉しく思えた。

 

でも僕の彼女は今は…チカちゃん。

カナンは元カノ。

そして2人は…幼馴染。

 

僕はどうすればいいのだろう…。

選ぶべきものはすでに見えている。

今、選ぶべき答えはーー。

それによって得られるものも…取り零すものも…。

わかってるんだ。

でも、だからこそだろう、決心ができない。

秤にかけて、決められるものじゃないから。

僕は、臆病者だから…。

 

ティロリン♪

 

通知の音でスマートフォンを手に取ると。

メッセージーー。

 

ーー。

 

わたしが今まで知らなかったこと。

カナンちゃんは主人公君と付き合っていたということ。

主人公君がカナンちゃんと付き合っていたということ。

2人は愛し合っていたということ…。

 

そして今、私は主人公君と付き合っていて、彼と愛し合っている。

カナンちゃんのことも好き、これはもちろん友人として、幼馴染として。

カナンちゃんもきっとーー。

3人揃って好きで溢れている関係…そのはずなのに、これを三角で表すと縺れた関係であるかのように感じる。

 

2人は…、うん、なんとなく。

この間、すごく短い時間だったけど、2人で話しているのを見ているとすぐわかった。

2人ともすごく嬉しそうで、お互いに愛おしいものを見るような表情をしていた。

2人の愛は、今もきっとーー。

幸せそうな2人を想像していたら、それでいいんじゃないかなって思ってしまった。

でもそれと同時に、…心の奥がキュッと締め付けられるように痛む。

いつものように笑顔でいようって思えば、次第に瞳が濡れて…私の表情は曇ってゆく。

こんな顔してたら…会えないよ。

2人に会うのが怖い、大学の中でも主人公君を避けてしまうし、連絡を取ることもまだ…、私の気持ちの整理はつかない。

 

…そうだ、今日はお買い物するつもりだったんだ。

いつまでもくよくよしてちゃダメーー。

私は勢いをつけてベッドから飛び起きて、支度する。

溢れてきた涙を拭って、笑顔を作ってから外へと出ていった。

 

ーーー。

 

人通りを眺めて待っていた。

繁華街のように、たくさんの人が往来する場所を見ているわけではないが、チラホラと通るそれを眺めて。

その中に、知っている人はいないか?と探していたが。

一向にそんなものが現れる様子はない。

私の知り合いと私の知り合いが鉢合わせる確率って、どんなもんなんだろう。

 

取り留めのないことを考えていると、人の気配がして振り返った。

 

カナン「やっほ。」

カナン「急に呼び出しちゃってごめんね。」

主人公「ううん。」

主人公「僕も…ちょっと話したかったし。」

カナン「そっか。」

 

お互いに顔を合わせずに、遠くを眺めながら喋りはじめる、カナンと主人公。

 

カナン「あの日、あなたと別れた日から。」

カナン「私はずっと…後悔してた。」

カナン「あなたみたいな人、なかなか出会えるわけじゃないのにって。」

カナン「…あなたはどうだった?あの日から。」

主人公「僕は…。」

 

僕もたくさん後悔したーー。

 

主人公「君に会えなくて…ずっと、寂しかった。」

主人公「君がいなくなって、僕は君に依存していたんだって、そう痛感したよ。」

カナン「そっか…。」

 

彼女は少しだけ嬉しそうな表情を浮かべながら。

 

カナン「こっちに帰ってきて、真っ先にあなたにメッセージを打とうか悩んだ。」

カナン「やっぱり…私もあなたに会いたかったから。」

カナン「でもやめたんだ。」

カナン「そんなことをしなくたって、あなたにはきっとどこかで鉢合わせるんじゃないかって思ってたから。」

カナン「そうしたら…びっくりしちゃった。あはは♪」

主人公「…ごめんね。」

カナン「何言ってんの、もう。」

主人公「カナン…。」

 

笑顔をしていた彼女は一転して、僕に対して訝しげな表情を浮かべる。

 

カナン「…ねえ。」

カナン「チカのこと…どう思ってるの?」

主人公「え?」

カナン「あの子は私の幼馴染で、私にとっては妹みたいな子だからさ、やっぱり気になるんだよね。」

カナン「主人公君、チカのこと…ちゃんと見てあげてるの?」

カナン「彼女として、愛してるの?」

主人公「うん、今はチカちゃんのことを愛してる。」

主人公「だから、カナンにはごめんって…。」

 

はあー…。

カナンはわかりやすいように大きな身振りでため息をついた。

 

カナン「あのね、その”ごめん”が余計なの。」

カナン「心配するじゃん?」

カナン「まるでチカを、私の代わりとして付き合ったとか、そういう遊びみたいな関係のつもりなのかって。」

主人公「そんなつもりはないよ、今はあの子のことに本気だよ。」

カナン「それならいいの!」

カナン「…それでいいの。」

カナン「私はあの日、あなたと別れて。あなたと、違う道を歩む幸せを選んだんだから。」

カナン「あなたはあなたの幸せを見つけたんだったら、それでいいの。」

 

彼女は満足げな笑顔で僕を見つめる。

 

主人公「…ありがとう。」

主人公「そっか、僕は帰ってきた君に会えて、すこし後ろめたさを感じていたんだね。」

主人公「君のことを裏切ってしまったんだってーー。」

主人公「…君がそう言ってくれるなら、安心した。」

カナン「ふふふ、本当相変わらずって感じだね、君は。」

 

彼女も…彼女だった。

やっぱり変わらない、思いやりがあって優しいところとか。

 

カナン「ね、聞かせてよ。」

主人公「…何を?」

カナン「チカとの馴れ初めとか。」

 

意地悪な表情をする…こんなところも、変わらない。

 

主人公「ええ…チカちゃんからある程度聞いてるんじゃないの?」

カナン「あなたの本心は聞いてないし。」

主人公「どこまで話せばいいの…、それ。」

カナン「ふふふ♪まあいいから私に聞かせてよ♪」

主人公「…しょうがないなあ。」

 

主人公「チカちゃんとは…最初はサークル勧誘に追い回されてるの見かけて、助けてあげたところからかな。」

カナン「らしくないことするよね。」

主人公「らしくないって…」

主人公「それからなにかとチカちゃんと大学で顔を合わせることがあって。」

主人公「チカちゃん、よく話しかけてくるから。」

主人公「連絡先交換して…一緒に遊んだりするようになって。」

主人公「…。」

主人公「…チカちゃんは、笑顔の恩人なんだ。」

カナン「笑顔の恩人?」

主人公「僕、ずっと暗い顔してたからさ、しばらく。」

主人公「チカちゃんは、よく話しかけてくれて、いつも笑顔で、僕を励ましてくれてるみたいで。」

主人公「嬉しかった。」

カナン「ふふふ♪」

主人公「最初、告白はチカちゃんの方から…僕はその時まだ…、彼女のことを好きって思う自分の気持ちに気付いていなかったから。」

主人公「…邪な気持ちだったと思う。」

主人公「でも、付き合い始めてチカちゃんのこと、よりたくさん知って。」

主人公「チカちゃんの気持ち…チカちゃんが僕を思ってくれる気持ちが温かくて、心地よくて。」

主人公「僕は…好きなんだって、チカちゃんのこと。」

主人公「今度は…チカちゃんに依存しちゃうのかも、ははは。」

主人公「やっぱ僕ってダメみたい。」

カナン「…ふっ♪」

カナン「本当、ダメダメだね。」

 

複雑そうな気持ちを顔に浮かべて、彼女は。

 

カナン「ああー、妬けちゃうなあ。」

カナン「私から聞いといて、なんだけど。」

主人公「ふふっ。」

主人公「こんなびっくりするような出会いって、あるもんなんだね。」

カナン「そうだね。」

カナン「もう…チカが”彼氏できた”なんて言い出した時には、私は飛び上がってびっくりしちゃったよ。」

カナン「”あの”チカに彼氏がーっ!?ってね。」

主人公「ふふふ♪」

カナン「しかも蓋を開けたら君が出てきたんだからさらに驚きだよ!」

カナン「…でも安心した。チカの彼氏があなたで。」

主人公「カナン…。」

カナン「あなたにだったら、あの子を任せてもいいかなって。」

カナン「…あの子はとっても純粋だよ。」

カナン「言わなくてもすぐわかってるだろうけど。」

カナン「きっとあなたのこと、この世の誰よりも愛してるって思ってくれてるはずだから。」

主人公「うん。」

 

そう聞いて、つい顔がほころんでしまう。

ああ、なんだか…会いたくなってきちゃった。

チカちゃんーー。

 

カナン「…さて、あなたの面接も済んだことだし。」

主人公「面接だったんだ…。」

カナン「今度はチカのところでも行ってきますか♪」

主人公「僕も一緒に…。」

カナン「だーめ。それしたら話がややこしくなりかねないからね。」

主人公「…そっか。」

主人公「ありがとう、カナンとチカちゃんのこと…話すことができて、モヤモヤしてた気持ちがすっきりした気がする。」

カナン「うん。」

主人公「…また、会えるよね。君とは恋人じゃなくなったけど、友達として、また君と話ができたら嬉しいな。」

主人公「今度は、チカちゃんも一緒に…。」

カナン「…うん。」

主人公「じゃあ、行ってらっしゃい。」

カナン「うん、行ってきます。」

 

手を振ってから彼女が離れて行くのを見守っていると。

なぜか少し離れたところでこちらを振り返った。

何か忘れ物でもあったのかな?

周囲を見渡してみるが、特に…。

こちらに近寄ってくる彼女は、何故だか困ったような表情をしたまま、じっとこちらを睨むように見つめて。

 

カナン「ひとつ…忘れてた。」

 

そう言って彼女は、突然僕にハグをしたーー。

 

主人公「うわっ!カナン!?」

 

とっさに彼女を引き剥がそうと手を出してしまうが、彼女はギュッと腕を締め付けて頑なにそれを拒んだ。

 

カナン「ごめん。わかってるつもりなんだけど…やっぱり。」

カナン「私の気持ちは…本心は、こう…みたい…あはは。」

 

僕はそれ以上手が出なかった、彼女を引き剥がすこともできず、抱きしめることもできないで…。

ただ手をグーに握りしめて、堪えるだけーー。

 

カナン「ねえ。」

カナン「もし私が今…。」

カナン「やっぱりあなたが好きって言ったら。」

カナン「あなたと、もう一度恋をしたいって言ったら。」

カナン「あなたは…どうする?」

主人公「…。」

 

気持ちは揺れた、でも。

ここで曖昧な返事をするのは…チカちゃんにも、カナンにも残酷なことだってわかったから。

僕は意を決して、きっぱりとーー。

 

主人公「でも、僕はやっぱり。今はチカちゃんが好きなんだ。」

主人公「チカちゃんだけを見つめていたいんだ。」

カナン「…あはは、分かってたんだけどね。」

主人公「ごめん…。」

カナン「ごめん禁止。」

カナン「そんなこと言ったら…諦められなくなっちゃうんだから。」

 

そう言ってからも彼女は抱きしめた体を離さないで、ずっとそのまま。

しばらくしてから僕の耳元に、彼女は静かに囁いた。

 

カナン「本当は…会ってすぐに、あなたに抱きしめて欲しかった…。」

カナン「”おかえり”って。」

 

彼女の声が震えているように思えた。

大きく早く脈打つ彼女の鼓動と、少し荒い吐息。

…鼻をすする音がする。

 

つい手がそんな彼女を抱きしめようとして、動いてしまうようで。

僕は、彼女の腕が少し緩んだ隙に肩を持って引き剥がした。

 

彼女に…目を合わせられない、横向きにそらした目線をなるべく遠くにやると。

橙色の髪のーー。

 

主人公「チカちゃん…?」

カナン「え?」

主人公「さっき…あの辺小走りしてたように見えたんだけど。」

主人公「もしかして…さっきまでの見てたのかな…。」

カナン「あちゃー…それはまずいねえ…。」

カナン「そうだ。」

 

カナンは突然、僕の肩を思いっきり叩いた。

バシッ!

 

主人公「痛っ!」

カナン「だったら、チカのとこへはあなたが行って来なよ。」

主人公「え?」

カナン「ほら、急いで行かないと。愛しの彼女が泣いてるかもよ?」

主人公「う…うん。」

 

カナン「あ」

 

僕が駆けだそうとすると、彼女はなぜかその裾をとっさにつかんで、引き寄せられた。

 

カナン「やっぱりまって。」

主人公「え?」

 

すると彼女は、背伸びするようにして、静かに僕の頬に唇を当てて…。

 

主人公「…。」

 

僕はキスされた頬を抑えて、少しだけ迷惑そうな顔を彼女に向けた。

 

カナン「隙だらけで優しい君が悪いんだよ?」

主人公「意地悪だな、カナン…。」

カナン「ふふふ♪」

カナン「だって、大好きな子がいるんだったらさ、少しくらいは他の子に厳しくできないと。」

カナン「いろいろ損しちゃうよ?」

主人公「肝に銘じとくよ。」

カナン「…私のこと邪険にしたって、悪びれる必要はないんだからね。」

主人公「…うん。」

 

彼女は矛盾している。

でも、それが隠しようもない彼女の本心なんだ。

僕だって、心の片隅にはずっと君を思う気持ちがあるんだから…、似たようなものだろう。

心はアンバランスな状態かもしれない。

でも、今僕が愛しているのは…、チカちゃんだと思うからーー。

 

主人公「ありがとう、カナン。」

カナン「チカのこと、よろしくね。」

主人公「うん。」

主人公「じゃあ、いってくるよ。」

カナン「バイバイ。」

 

今度は引き止めることなく走り去っていく主人公。

その背中が見えなくなってしまう頃に、カナンは静かにつぶやく。

 

カナン「あなたならチカを任せられるかも…って思ったけど。」

カナン「やっぱり…心配かも。」

カナン「本当、君は隙だらけなんだから。」

 

私は緊張で胸に溜まった息を吐きだしながら、思わず座り込んだ。

少し、滲んだ瞳をハンカチで拭きながら。

 

カナン「…失恋しちゃった。」

 

落とし前を付けてくるなんて、変なこと言ってきたくせに。

私は自分が籠から飛ばした鳥を、また捕まえようとした。

そんなことをして、結局満たそうとしたのは私自身の未練でしかなかったんだ。

 

カナン「かっこ悪いなあ…。」

 

気持ちの整理ができていないのはーー私。

しばらくは自分と向き合おうかな…、2人に関わればまた迷惑をかけるだけになりそうだから。

そんなことを考えながらも、次々とあふれ出てくる涙を、私は止めることができなかった。

 

ーー。

 

なんとなく小走りでその場を去った。

あれはーー遠目にだったけど、間違いなく主人公君。

そして、カナンちゃん。

2人は抱き合っていた。

 

私を余所にして…。

 

路地に身を隠すようにして、立ち止まる。

ーーいいんじゃないかな。

私じゃなくて、カナンちゃんで。

2人が幸せだったら、それで…。

 

でもなんでだろう、意に反して私の体は言うことを聞かない。

呼吸は、大した運動をしたわけでもないのに、すごく荒く途切れて。

胸がズキズキと痛い…。

熱くなる瞼を腕でぬぐうと、服が濡れて…。

苦しいーー苦しいよ、…なんで?。

信じたからなのかな…こんな気持ち。

主人公君…、カナンちゃん…。

 

私は冷静ではいられなかった、周りのことなんて目に入ることなく。

すべて塞ぎ込んで、マイナス方向に沈んでいく思考の渦に飲み込まれて。

自分をひたすら無意味にすることしかできなくなっていた。

 

ーー。

 

遠くに見えた人影、橙色の髪をしたそれが本当にチカちゃんだったのか。

そんな確証は全くないのに、僕はひたすら走っていた

人影の見えた場所から、彼女の足取りを予測して当てずっぽうに回る。

そしてしばらくして、もう息が上がって走れない…そんなことを思った瞬間。

見えた後ろ姿ーーチカちゃん。

やっぱり、あそこを通っていたのはそうだったんだ…。

僕は一旦息を整えるようにして決意を固めて、彼女のほうへと走ってゆく。

 

主人公「はっ…はっ…、チカちゃん!」

チカ「わっ!?…あれ、どうしたの?」

チカ「こ…こんなところで偶然だね〜。」

主人公「はあ…はあ…、うん…。」

チカ「大丈夫?走ってきたの?」

主人公「ん…まあね。」

 

チカちゃん…普通にしてる、しらを切るつもりかな…。

万が一そうじゃないってこともあるだろうとは思うけど…。

 

主人公「単刀直入に聞くね。」

主人公「さっき、…見てた?」

チカ「…。」

チカ「なっなんのことかなあ〜?」

 

うん、ーー嘘つき。

だけど、チカちゃんの瞳はだんだんと潤んで行って。

彼女自身の気持ちを物語っていた。

 

チカ「…2人でいるところなんて…見てないよ。」

主人公「うん。わかった。」

主人公「…さっきね、カナンと会ってたんだ。」

チカ「…うん。」

 

言葉を続けようかと思ったが、ポロ…ポロ…と。

俯き加減なチカちゃんの瞳からはだんだん大粒の涙が溢れ出してきて。

それどころではないという状況になっていた。

 

主人公「チカちゃん…大丈夫…?」

 

ハンカチを出して彼女の方へと寄ると一歩下がられた。

僕が近づくのは嫌みたい…。

 

チカ「私は…ね…。」

 

グスッ…。

溜め込んだ気持ちが堪えられなくなったんだ…チカちゃんは脈絡なく気持ちを吐露し始めた。

 

チカ「…あのね、さっきのは嘘。」

チカ「見てたの…私、2人が、カナンちゃんと主人公君が会ってるところ。」

チカ「それで私思ったんだ、…抱き合ってるところを見て。」

主人公「…うん。」

チカ「やっぱり、2人はお似合いだなあ〜って。」

チカ「…大人っぽくて、素敵な2人。」

チカ「やっぱりそういうのが理想的な恋愛だよねって。」

主人公「チカちゃん…。」

チカ「私なんて、いつまでも子供だし、チカだし…。ついこの間…主人公君とあんなことがあったから。」

チカ「大人になれたのかな…、なんて思ったりしたけど。」

チカ「やっぱりわたしには背伸びでしかなかったんだ、恋なんて…。」

チカ「私はあなたの恋人じゃなくていいの、友達で…妹みたいなものであればいいの…。」

チカ「だからね、主人公君、チカじゃなくてカナンちゃんを選んで。」

チカ「その方がきっと、あなたは幸せにーー。」

主人公「チカちゃん。」

チカ「…。」

主人公「チカちゃん、聞いて。」

 

チカちゃんは俯いたまま黙った。

聞く耳を持ってくれてるかわからないけど…。

伝えるんだーー。

 

主人公「さっき、カナンと会っていろいろ話した。」

主人公「別れてからのこと、チカちゃんのこと。」

主人公「カナンはさ…いや、カナンだけじゃない…僕も。」

主人公「好きだったから、お互いに愛し合ってたから。」

主人公「カナンはやっぱり僕のことが好きだからって…、僕に抱きついてきたんだ。」

チカ「うん…。」

主人公「チカちゃんに…こういうこと言うのはどうかと思うけど、たしかに僕も嬉しかった。」

主人公「カナンが帰ってきてからも、まだ僕を好きでいてくれてたこと…。」

主人公「その気持ちは否定しない。」

チカ「じゃあ…。」

主人公「でもね。」

主人公「カナンが僕を呼び出したのは、もともと違う理由で。」

主人公「僕がチカちゃんのことをどう思っているのか…本気なのかって、確かめに来てたんだ。」

チカ「え?」

主人公「カナン、チカちゃんに彼氏ができたってこと、すごい心配していた。」

主人公「だから、チカちゃんの彼氏が僕でよかったって言ってくれたんだ。」

主人公「”あなたにだったら任せてもいいかな”って、”チカをよろしく”…ってね。」

チカ「カナンちゃんが…。」

主人公「…カナンはさ、僕とは別の道を選んだんだから、僕は僕の幸せを選べばいいって言ってくれた。」

主人公「今の僕にとっての幸せはーー。」

主人公「チカちゃん、君と一緒にいることなんだ。」

主人公「君と一緒に過ごして、2人で笑顔でいたい。」

主人公「僕にとって、チカちゃんは笑顔の恩人…。」

主人公「僕を笑顔にしてくれる、太陽だって思ってるから。」

主人公「だから、2人で笑っていたいんだ。チカちゃん。」

主人公「…ダメかな…。」

 

チカ「…。」

 

チカちゃんは少しだけ顔を上げたけど、僕の方は向いてくれなかった。

 

チカ「あはは…なんでかな。頭のいい主人公君だからかな…、なんだか言葉巧みに騙されてるんじゃないかなって、思えちゃうみたい…。」

 

チカちゃんは困惑してるんだ…。

僕は一歩踏み出すーー、彼女は逃げない。

姿勢を低くして、両手を彼女の肩に優しく触れてから。

彼女の顔を覗き込むようにして、僕は彼女にささやく。

 

主人公「じゃあ、騙されてくれるかな?」

チカ「え?」

主人公「僕の言葉に、騙されたって思って。僕と一緒にいてくれないかな?」

チカ「それは…」

主人公「嘘でもいいよ、ゆっくりでいい。」

主人公「君が安心してくれるまで、僕を疑ってくれて構わないから。」

主人公「僕と一緒にいて欲しい。」

 

主人公「チカちゃん。」

主人公「僕は、君のことが大好きだ。」

 

緊張するーー。

まるで初めて彼女に告白したみたいだ…。

僕の本気の気持ち、伝わって欲しいーー。

 

彼女は…再び俯き直して、それから黙ったまま。

涙を流して…。

僕は抱きしめたい気持ちをぐっとこらえたまま、彼女の言葉を待ち続けた…。

 

チカ「ずるいよ…。」

主人公「うん。」

チカ「そうやって、私を…カナンちゃんもたぶらかして…主人公君は。」

主人公「うん。」

チカ「でも、答えなんて一つしかないもん…。」

 

チカちゃんは僕に体当たりするみたいにして。

 

チカ「私も…主人公君が大好き…。」

主人公「ありがとう。」

 

チカちゃんを優しく腕で包む。

彼女は泣き始めて、つい僕もつられて涙を流して…。

しばらくずっとそうやって抱き合っていた…白昼の街路。

僕たちは人目もはばかることなく、2人きりのつもりでーー。

 

ーー。

 

2人から少し離れたところ。

カナンは1人ーー。

 

カナン「あーあ、みちゃった。」

カナン「あんなところで、見せつけちゃって…。」

 

肘つきしていた上体を起こして振り返り、それからゆっくりその場を後にしながら1人ごとをつぶやいた。

 

カナン「離しちゃダメだよ。」

カナン「大好きだったらね。」

 

ちょっと残念そうに眉をひそめながらも、上を向いて嬉しそうに。

カナンは2人から遠ざかっていった。

 

カナン「お幸せに、ーーー。」

 

 

END

 

 

 

ーーー。

 

スマートフォンが鳴った。

メッセージーー。

 

カナン[今日は意地悪してゴメンネ]

 

…本当、すごく困ったんだから。

 

チカ[もー!!]

カナン[仲直りできた?]

チカ[うん]

チカ[おかげさまでね]

カナン[よかった]

チカ[今度]

チカ[また会おうよ]

チカ[主人公君も一緒にね]

カナン[宣戦布告かな?]

カナン[言っとくけど]

カナン[私だって諦めたわけじゃないからね?]

チカ[ええー怖いよー]

チカ[ーーー]

 

よかった、いつも通りにカナンちゃんとも話せそう。

やっぱり私は3人で…みんなで仲良くしたいからーー。

 

でも、恋は…彼との関係は。

誰にも譲れない、私だけのものだって思ったから。

負けないよ。

いつでも受けて立つからね…カナンちゃん♪

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

これにて完結…です。ついに。
最後の話は予定ボリュームをはるかに超えて1.5倍くらいになってしまいました。
仕方ないよね。(

さて、ひとしきり書き終えて、ですが。
いい感じに”大人っぽい恋愛をする彼女ら”をかけたのではないかな?と思ってます、個人的にですけど。
大人っぽい…というべきなのか、大人になりたいというべきなのか…。
ラブライブを原作に二次創作で恋愛ものを書こうって思った段階で。
高校生、そしてアイドルな彼女らに恋愛…?というものがやはり自分の中では結びつかなくて。
結局、彼女たちのその後、本編からいえばアフターの話として書くことに落ち着いたわけですが。
まー、まあ当然なんですけど、別キャラですね(
本当にこれをラブライブ二次創作で書く必要があったのかな…?とか感じつつ(
でもやっぱりベースがあったからこその話ができたのかな?とは思ってます。
…まあ、キャラ設定がしっかりしたベースがある方が書きやすいですしおすし…(

登場人物、特に今回の話ではチカちゃんと主人公君ですが。
チカちゃんの会話文は最初っから最後まで悩みました。
うまく言葉を組み立てにくいというか、なに言わせていいのかよくわかんなくなります。
そしてチカちゃんの会話文には音符だとかハートマークだとかを多用したくなってしまうという。
なんとなく言葉の抑揚を表現するのに、特にチカちゃんの楽しそうな雰囲気とか、ラブな雰囲気を醸し出すため…にはそれが必要不可欠に感じてしまって(
なんかギャル小説っぽい感じになってしまいました((
あの天真爛漫っぷりは、エクスクラメーションとクエスチョンでは表現しきれんのです(

そして主人公君なんかは当初の短編一話のそれからいうとかなり設定的な要素が増えて…。
やっぱり、恋愛ものを書こうって思ったら彼氏役を空っぽ人間にはできないよねって思いました。
そんでもってセリフがめちゃくちゃ臭い…、自分で書いといてなんですけど(
主人公君、結構こじらせてるタイプです、たぶん(

今回の話については、やっぱり前回にも書いたように短編一話のそれを踏襲しつつ、かなり新規に書き換えて新しい話になってます。
3人がちょっとだけ言い合いをするようなところがあったり…、ラストシーン後?にメッセージとして3人仲良く終わったよって安心感(新たな戦いのゴングかな?)を出せるようなものを加えたり…。
わりと変えてます。
ラストシーン後のそれはいらんかったかなーって思いましたけどね(
なんとなくつけてます(

なかなかこうして、ここまで書くとそれなりに長編っぽくなってしまって。
自分の中でもようやっと?彼ら彼女らのキャラクターが定着してきたのか…という気分になってきたので。
改訂版本編としてはこれで終わりではありますが、まだまだ何か続く”かも”しれません。
性懲りも無くね(

さて、あとがきがまたまた長くなってしまいました。
最初の頃に書いてたそれに比べると自分がこうやって書く口調もかなり砕けてきたような気がします(笑
あんまりせっせと小説書くって気持ちはなかったんですけど、思いのほか楽しくて仕方ない!って思えたりする節があるので。
今後も別の形で浮上してきたりするのかもしれません。
私の国語力の怪しい稚拙な文章ではありますが(
また、読んで頂ける機会があれば幸いです。

ここまであとがき書いといて、短編一話とかその他にも書いたようなことをずっと反復してるんじゃないかな?とか思ってきたところで(
ここらで流石に締めくくろうかと思います。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

乞うご期待…?

[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…

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