ちかなんとーーー。   作:黄昏虎おじさん

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短編一話で終わらすつもりでしたが…なんとなくカナンが可愛そう…。
と思ったら、すぐ走り書きを始めていました。

ということで、番外編です。
しかも番外の方が二本立てで、前半の時点で本編のボリューム超えました(

☆登場人物
主人公
カナン



[番外編]人魚の恋
前編


高校を卒業して、海外へ向かうことを決意したカナンは東京にいた。

なるべく1人の力でなんとかしたいと思っていたカナンは、海外への渡航費などを稼ぐため、実質フリーターのような形でバイトをしながら、英語教室に通う生活を送っていた。

 

カナン「おはようございまーす。」

 

いつもの飲食店へ出勤したカナン、そこには店長ともう1人の男性がいた。

 

店長「おはようマツウラさん。」

男性「おはようございます。」

 

カナン「店長、そちらの方は?」

店長「今日からバイト仲間になる主人公君だ。ほら、自己紹介して。」

主人公「主人公です。大学1年でこっちきたばかりなので、右も左も分からないですけど。一生懸命やりますんで、よろしくお願いします。」

店長「律儀でしっかりしてる子だろう。」

カナン「ははは、なんか可愛いですね。こちらこそよろしくお願いします。」

店長「マツウラさんは君と同い年だ。(ボソボソ)…彼女可愛いだろ?」

主人公「店長…。」

店長「仲良くなるのは許すけど、いきなり手を出したりはしてくれるなよ?」

主人公「て…店長…。」

カナン「あはは♪おちょくっちゃかわいそうですよ、店長。」

店長「ふふっそうだな。」

店長「とりあえずはこっちで研修するから、それが終わったらマツウラさんに任せてもいいかな?」

カナン「はい、わかりました。」

店長「それじゃ、いつものようによろしくね。」

 

上京してきてひと月ほど、新生活にも慣れてきた。

わざわざ地元を離れたのは、目標にしている海外での生活の模擬演習を兼ねているつもりだ。

今のところはほとんどのことがうまくいっている、バイト先にも恵まれて給与も時間も良いバランスで得られ。一人暮らしの家も何不自由なく暮らせている。

唯一うまくいっていないことがあるとすれば…。

ーーー英語教室。

もともと勉強はあまり得意ではなく。

自主的に学ぶようになれば、自ずと身につくだろうと思っていたのだが。

どうも肌に合わないようで初っ端から躓いている。

目標達成までの期間の中では、十分な時間があるとはいえ、このままではいけないと思っているのだが…。

 

カナン「ーーーお疲れ様。」

主人公「お疲れ様です。」

 

ーーー。

 

カナン「ーーーおはようございまーす。」

主人公「おはようございます。」

 

カナン「今日も元気〜?」

主人公「はい。あ、今日午後からは講義あるので僕は午前までですから。」

カナン「はーい。大学はどう?入学していきなりバイトなんて始めちゃって、勉強が疎かになったりしてない?」

主人公「まあ、勉強は問題ないですね。」

カナン「お、成績優秀君か。君は。」

主人公「はは、自慢ですけど。高校の時は結構成績上位者なんですよ。」

カナン「やるじゃん。私とは真逆だね。」

カナン「英語とかも得意?」

主人公「まあ、高校レベルくらいでしたら。」

カナン「おー、それは是非教えて欲しいくらいだね。」

主人公「そのくらいでしたらお安い御用ですよ。」

主人公「何か困ってたら相談してください。」

カナン「ははは、考えとくよ。」

 

ーーー。

 

英語教室のテキストに目を通す、書いてあることがまるでちんぷんかんぷんだ。

どうも受け入れ難いようで、頭が拒否反応を出しているような感じ…。

このままでは本当にどうしようもない…。

なら…あの子を頼ってみるのも1つの手段か…。

 

カナン「お疲れ様でーす。」

主人公「お疲れ様です。」

 

カナン「もう十分に慣れてきたみたいだね。」

主人公「ええ、なんとかかんとか…ですけど。」

 

カナン「ところでさ、君って普段どのくらい自由な時間があるの?」

主人公「…と、いいますと?」

カナン「ほら、バイトに大学に。一緒にやってたら全然自由な時間なんてないのかなって思って。」

主人公「そんなこともないですよ。決まって何時間…みたいにはいいにくいですけど。結構自由な時間も取れるように考えてるんで。」

主人公「勉強も大事ですけど、やっぱり大学生だし多少は遊びも…って。」

 

ははは、と笑ってみせる主人公

 

カナン「ふーん。そっか。」

主人公「マツウラさんはどうなんですか?」

カナン「わたし?わたしは…結構自由人だからね。」

主人公「もしかしてフリーター?」

カナン「その通り、訳あってね。」

主人公「マツウラさんなら、すごいストイックな理由がありそうですね。」

カナン「な、なんだそりゃ…。」

 

カナン「そうそれで、君に時間があるのならと思って。ひとつお願いがあるんだけど…。」

主人公「英語ですか?」

カナン「…察しいいね。」

主人公「こないだ言ってましたもんね。」

カナン「そう、教室に通ってるんだけどどうにも肌に合わないみたいで。」

カナン「予習とか復習とかを手伝ってくれないかな?」

主人公「いいですよ。いつやりますか?」

カナン「今日とりあえずいい?この後とか。」

主人公「いいですよ。」

カナン「ありがとう!なにか奢ったげるよ。」

主人公「いいですよ、気遣いは。」

 

こうして2人はバイト以外でも会うようになり。

いつのまにか友達のような関係を築いていた。

 

 

ーーー。

 

 

カナン「やっほ。」

主人公「お待たせしました。早いですね。」

カナン「君が遅いんだよ〜?」

主人公「まだ20分も前じゃないですか。」

カナン「ふふっ、30分前行動は基本だよ。」

主人公「そのわりにバイトに来る時間は10分前ですよね。」

カナン「細かいことは気にしない、ほら行くよ?」

 

数日前ーー。

 

英語の”講義”を終えた2人はしばらく談笑をしていた。

 

カナン「へー、君水族館好きなんだ。」

主人公「うん、だから休みの日とか時間あるときは水族館めぐり。」

カナン「いい趣味してるね。わたしも好きなんだ、魚見るの。」

主人公「東京は水族館が多いから全然飽きそうにないよ。」

カナン「へぇ、そうなんだね。」

カナン「そうだ、だったらオススメの水族館教えてよ。」

主人公「オススメなら…」

カナン「っていうか、今度一緒に行こっか!」

主人公「んんっ?!」

カナン「ん?嫌だった?」

主人公「い、いえ…いいのかなって思って。」

カナン「女の子相手だからって意識しちゃったか。」

主人公「…否定はしませんよ。」

カナン「うふふ♪ごめんね、わたしあんまりそういうこと気にしないから♪」

カナン「じゃあ、いつ行く?」

主人公(行くこと前提になってる…)

主人公「近日ならーーとか空いてますけど…」

カナン「じゃそこで行こっか。」

 

当日。

 

主人公(マツウラさんの勢いでつい来てしまったけど…、本当に良かったのか。)

主人公(マツウラさん、彼氏とか…いないんだろうか…。)

主人公「そこですよ。」

カナン「へぇ、こんな都会の中にあるんだね。」

主人公「結構大きいですよ。こんな中でも。」

カナン「そっか、楽しみ!」

 

魚を見るのが好きと言っていた彼女は、魚のことはすごく詳しくって。

ただぼんやりと魚を見るだけが好きだった僕は、彼女からいろんな魚のことを教えてもらった。

 

主人公「ーーよく知ってますね。魚のこと。」

カナン「まあね、もともと海辺に住んでたし。」

主人公「そうなんだ。確かにそんな感じありますよね。」

 

カナン「わたしの知ってる魚は自由に泳ぐ自然の姿が多いから。」

カナン「まるで額縁に入れた絵画みたいに、飾られた魚を見るのは珍しくって。水族館とか来ると、こういう魚を見るのも好きだなって思う。」

主人公「そうですね。」

 

大きな水槽の前に佇む2人。

沈黙ではない、静かで心地よい時間が流れた。

 

ーーー。

 

カナン「今日はありがとね。それから突然誘っちゃってごめんね。」

主人公「いいですよ、僕もすごく楽しかったです。」

カナン「あ、今度お礼にいいところ連れてってあげるよ。」

主人公「え?そんな、いいですよ。」

カナン「こういうのは、断るもんじゃないよ?」

カナン「いつも英語教えてもらったり、愚痴聞いてもらったりしてるしね。そのお礼。」

主人公「わかりました、っていうか愚痴聞いたことってありましたっけ?」

カナン「いつも言ってるじゃん、”教室の先生何言ってるかわかんない〜”とか。」

主人公「ははは。」

カナン「まあ、そういうことだからまた今度暇なとき教えてよ。」

カナン「あ、”1日”空いてる日。だからね。」

主人公「わかりました。また連絡します。」

カナン「あ、あと、身長体重と足のサイズと…またメッセージで送るね。ふふふ♪」

主人公「???」

主人公「…わかりました。また…今度…。」

カナン「バイバイ♪」

 

楽しそうにカナンは離れて行った。

いまいち状況の読めない主人公は呆然と手を振りながら。

しばらくしてその場を去った。

 

足取り軽やかに1人帰路を歩むカナン。

いつもより浮き足立っているような気がするのを自分でも感じていた。

 

カナン「わたしあの人のこと、好きなのかな?」

 

ふと頭に思い立った言葉を声にしてみる。

 

カナン「可愛い彼…か。」

 

立ち止まって少し考える。

 

カナン「悪くないかも…ふふっ♡」

 

 

ーーー。

 

 

準備期間のうちに彼女にいろんなことを聞かれた。

身長は、体重は?水着持ってる?などなど…

一体何をしようというのだろうか、海に行くにしてもまだ6月。時期にしては少し早いと感じるのだが…。

そう悶々と考えていると当日を迎えた。

朝早くから駅で落ち合い、電車に揺られる僕は行き先をまだ知らない。

 

主人公「あの、マツウラさん、結局どこに向かってるんですか?」

カナン「何度も聞くよね。ミステリーツアーって楽しみじゃない?」

主人公「それは…楽しいかもしれませんけど…。」

 

電車は南へ、西へと向けて走って行く

東京を遠ざかって行くことが楽しみなような、不安なような。

正直のところ、不安の方が大きいのだが…。

毎度のことながら、彼女のいいなりになっていることには、正直嫌な気はしないのだ。

いつのまにか僕の中では。

“彼女が僕を招いてくれた。”

それだけのことが、とても大きな意味を持つようになっていることを感じていたから…。

 

カナン「まあ、そろそろいっか。」

カナン「今向かってるのは静岡県沼津市。」

主人公「そこに何が…。」

カナン「わたしの実家。」

主人公「!?!?」

主人公「え、これマツウラさんの実家に向かってるんですか!?」

カナン「うん、そうだけど。」

 

思わずあんぐりと口を開いて驚く主人公を見てカナンは笑う。

そして、ちょっとおちょくってやろうと悪巧みした。

 

カナン「ふふふっ♪これから何しに行くと思う?」

主人公「え、何って…なんなんですか!?」

カナン「実家に帰らないとできないこと?」

カナン「実家で…あなたと2人でしたいこと?」

主人公「い、いきなり実家はマズイでしょ…。」

カナン「何考えてんの?君。」

 

あわあわと慌てふためく主人公を尻目にクスクスと笑うカナン。

 

主人公(な…なんなんだ、急展開すぎて…。)

カナン(ふふっ♪思い通りに反応してくれるから楽しいんだよね、この子。)

 

アナウンス[次は〜熱海〜熱海〜…]

カナン「あ、ここで一旦降りるよ。」

主人公「え?は、はい!」

 

カナンに振り回されることしばらく、たどり着いたのはカナンの実家のダイビングショップ

 

主人公「マツウラさんの実家…って。」

カナン「そ、ダイビングショップ。」

カナン「だから、”実家で2人でしたいこと”っていうのはダイビング。」

カナン「魚見るの、好きでしょ?」

主人公「なるほど…。」

 

妙に疲れたようにため息を漏らす主人公、カナンはふふっと笑う。

 

カナン「それじゃわたしはちょっと話つけてくるから。待っててね♪」

 

ショップの中へただいまーと言って入って行く彼女。

その様子を少し離れて見ながら、周囲を見回す。

綺麗な海、豊かな自然。

穏やかな空気が流れるこの場所で彼女は育ったのだと。

思いを馳せていた。

 

主人公(なんか、我ながら気持ち悪いこと考えてる気がする…。)

主人公(ここ最近、マツウラさんからのアプローチが過激になっているような気がする、そのせいか…。)

主人公(なんなんだろう…僕は…、誘われているってことなのか…?)

主人公(僕が…マツウラさんの彼氏に…?)

 

悶々と考えながら無意識に二へっと口が捩れる。

 

カナン「主人公君おまたせー…、なんか気持ち悪い顔してるよ?」

主人公「!?」

主人公「ご…ごめん。」

カナン「なんで謝るの。」(クスッ)

カナン「とりあえずこっち来て。まずは話があるから。」

 

ダイビングの準備をして水着で待機、思えば…彼女の水着姿が見られるのか…、と思うとドキドキしてきた主人公。

更衣室を出たその時ーー。

 

び…ビキニーッ!

思わず顔を真っ赤にして過剰反応したのは主人公

カナンは何食わぬ顔でその様子を眺めていた。

 

カナン「着替えるの遅くない?」

主人公「い…いや、ちょっと…心の準備に時間を要して…。」

主人公(直視できない…何故だか…!)

 

カナン「まあいいよ、ウエットスーツ着てみよっか。」

 

説明される言葉が頭に入ってこない。

見せられてる景色が刺激的すぎるんだ…。

真っ赤になった顔を冷ますことができない…。

ふと横目をそらすと外に1人の老人がいた。

何故か僕を見るなり手を合わせる。

…僕は神仏ではない…。

 

 

なんとかウエットスーツを着て器材を運び、装着する。

体が重い、こんな状態で海に入って大丈夫なのか?

そんなふうに思いながら一歩二歩と波打ち際へ近寄って、海へと入って行く。

 

呼吸を確認して、体の動かし方を確認して、海底を這うように進み、耳抜きをする。

ーー水に顔をつけてもう5分以上も経つ。

一度も地上の空気を吸うことなく、水の中に滞在するその感覚は、恐怖心を伴うような不思議なものだった。

 

3m、5m…と水深は深くなるが、透明度の高い海はどこまでもキラキラと輝く光が差し込んで。

濃く、美しい青色の世界が広がっている。

あたりに目を向けると水棲生物がチョロチョロと動く。小さな魚たちの群れや、ヒトデやウニ、ウミウシ。

水槽に入れられているものとは違い、同じ空間の中で様々な生き物たちの生を直に感じる。

 

そして、目の前で僕を誘導してくれる彼女は、海の世界へと誘ってくれる人魚のようで。

水棲生物を見つけては、指差し教えてくれて、時折魚たちと一緒に泳いで見せてくれたりする。

とても美しく、しなやかに。

彼女もまるで…魚のように。

ーーーただただ、魅せられていた。

 

 

ーーー。

 

 

海から上がって昼食をとる2人。

 

カナン「どうだった?初めてのダイビング。」

主人公「なんていうか、言葉に表しきれないですね…。」

主人公「もっと海の中に居たかった。」

カナン「ふふっ良かった。気に入ってくれたみたいで。」

 

ダイビングの感想を話したり、カナンの経験したダイビングの話を聞いて過ごした。

話しても話しきれないくらい、楽しく会話がはずむ。

 

時計を見てカナンはそんな談笑に一区切りを打つ。

 

カナン「さて、わたしは少し片付けしてくるから。ちょっとその辺でも散歩してて。」

主人公「あ、僕も手伝いますよ。」

カナン「ダーメ、今日は私が招待したんだから。もてなされてよ。」

主人公「わかりました。」

カナン「山の上の神社にでも行ってきなよ。」

カナン「ちょっとした山登り気分が楽しめるから。」

主人公「うん。」

主人公は言われた通り散歩に出た。

 

「こんにちはー!」

「あれ?カナンちゃん!?帰ってきてたの!?」

「あ、ーー。ただいまー。」

「おっかえりー!カナンちゃん!」

「ははは♪」

 

 

ーーー。

 

 

カナン「あ、お帰り。」

主人公「つ…つかれた。」

カナン「登ってきただけなのに?貧弱すぎない?」

カナン「高校のときはあの山、走って登ってたよ。」

主人公「走っ?!えぇ!?」

主人公(フィジカルおばけ…。)

カナン「片付けも済んだから。あとは帰りの時間まで自由、どうする?街に出る?ゆっくりする?」

主人公「ここでゆっくりしたい…かな。」

 

静かな時間が流れる。

虫や鳥の鳴き声がして、海風に触れる。

 

主人公「…贅沢ですね、このひととき。」

カナン「ここで暮らしてた頃は特に何とも思わない日常だったけどね。」

カナン「でも今は…確かにって思う。」

 

カナン「本当はせっかく帰ってきたんだし、明日までとか居たいところだけど。」

カナン「今日は遅くならないうちに帰らなきゃね。」

カナン「ここからだと、都会に比べて星とかもすごく綺麗に見えるんだよ。」

主人公「いいですね。また今度機会があったら見せてもらいたいな。」

 

そんな話をしながら、主人公の頭にはひとつ雑念がよぎる。

 

主人公(…今、チャンスなのでは…。)

主人公(やっぱり最近のマツウラさん、妙に思わせぶりだし…、強引に僕のこと引っ張って行くし…。)

主人公(気があるんじゃないか…なんて…、勘違いか…。)

主人公(しかし、今日も日帰りとはいえ2人旅行…。)

主人公(…なんか動機が邪だな…。)

 

カナン「おーい、主人公君?」

主人公「へ?!はい!」

カナン「ボーッとしてるよ、さっきから。」

カナン「考え事?」

カナン「…っていうか、また気持ち悪い顔してたよ?」

主人公「気持ち悪い顔って…。」

カナン「ニヘラ〜って笑ってるような口してるの。」

主人公「気が緩むと、口が緩むんですよ…。たぶん。」

カナン「なにそれ、ふふっ♪」

 

カナン「あ、もうーー時か…。」

カナン「もうしばらくしたら帰り支度でもしよっか。」

主人公「はい。」

 

主人公(つい普通に話しするのが楽しくって…、タイミングがつかめない…。)

主人公(そんなこと考えてたらいつまでもダメそうな気がする…なら、いっそのこと…。)

 

主人公「ま…マツウラさん!」

 

主人公(ええい、当たって砕けろー!)

 

カナン「ん?どうかした?」

主人公「今日は、ダイビングに誘ってくれてありがとうございました。」

カナン「あ、終わった気でいるな?」

主人公「え、まだ何かあるんですか?」

カナン「遠足は、家に帰るまでが遠足だぞ〜。」

 

ズコーッ!心の中で僕はスライディングをして出鼻を挫かれる。

めげない…。

 

主人公「は…はは…、そうですね。」

主人公「それで、えっと…」

 

気の利いた言葉が思い浮かばない…、

告白って何言えばいいんだ?

そんな風に思考が堂々巡りするも、時間は経つ。

間を空けると変に思われる…切り出さなきゃ…。

 

主人公「と、…突然になってしまうんですけど…。」

カナン「ん?」

主人公「…好きです。」

 

思わず”何言ってんだー!脈絡がなさすぎるだろーっ!”という怒声が自分の中をこだまする。

彼女もいきなり出てきた言葉にあっけにとられているのか真顔で固まっている。

ーー失敗した…。

 

カナン「っ…ふふっ…♡」

カナン「頭いいくせに、いざって時に君ってなんだか不器用だよね。」

主人公「…はい。」

 

意気消沈としている主人公を見てカナンは微笑む。

 

カナン「今のは告白?」

主人公「その…つもりで、ございます…。」

カナン「ふふふっ♡」

カナン「嫌いじゃないよ、そういうところ♡」

主人公「えっ…?」

 

面を上げる主人公にカナンは問いかける。

 

カナン「ねぇ、あなたの気持ちって。どういう気持ち?」

主人公「それは…つまり?」

カナン「私のこと…いつも強引に構ってくるから。”気があるのかな?”って思っちゃった?」

 

主人公(心を読まれている気がする…。)

 

カナン「それで告白しようって思っちゃったとか?」

主人公「…否定はできません。」

 

主人公(でも、僕は…)

 

主人公「…でも、”しなきゃ”とか”したら成功するから”って思ったからしたわけじゃないですよ。」

主人公「僕は…マツウラさんの…。」

主人公「言いなりになることも悪くないかな…って思ったから…。」

 

へ、変なこと言った…。

 

沈黙が流れるーー。

彼女が目をひん剥いて固まっている。

 

カナン「…っ…ぶふっ!」

カナン「…君自分で言ってること…分かってる?」

カナン「…っ…くっ…ふっ」

 

必死で笑いをこらえる彼女

恥ずかしくて死にそうだーー。

 

カナン「ご、ごめん…っふふ。」

主人公「…もういいです…、なかったことにしてください…。」

カナン「ふふっ…いじけちゃって、本当に可愛いな君は♡」

 

ギュッ。

カナンが主人公にハグをした。

 

カナン「下手な言葉だったけど、あなたからそうして言ってくれるのを…私は待ってた気がする。」

カナン「私も好きだよ。…あなたのこと。」

 

抱き寄せられたまま、横目に見ると彼女の耳は真っ赤だった。

ハグをされている間、何故だか僕はすごく落ち着いていて。

 

彼女の背中に手を回し、抱き返す。

そうすることで彼女の熱を…一心に受け止められる気がした。

 

主人公「僕は…臆病者なんです。」

主人公「自分から動き出すことが苦手で…下手くそで…。」

主人公「つい、誰かの動きに合わせて動こうとしてしまう。」

主人公「だから、マツウラさんみたいに引っ張ってくれたりする人には。逆らえないというか…」

カナン「それで”いいなり”になっちゃうんだね。」

主人公「恥ずかしい言葉蒸し返さないでください…。」

主人公「…でもそうやって、マツウラさんに引っ張られることは、全然嫌な気はしないというか…。」

主人公「嬉しいんです。マツウラさんが僕を…誘ってくれることが。」

 

主人公「本当はこういう自分が嫌いで、直したいって思ってるんですけどね。」

主人公「誰かに合わせてしまうとこ、他人にはそういうところが君の”優しさ”だ、なんて言われたりしますけど。」

主人公「…そうじゃないって、違和感感じて…。」

カナン「でも、君がコンプレックスに感じてるとこ。私は好きだな。」

カナン「それは優しさというか…甘さっていうか。」

カナン「私としては、そこに癒されちゃうなって思うから。」

カナン「あなたはあなた、そのあなたの甘さは。素敵だって思うよ。」

主人公「マツウラさん…。」

 

自分の嫌いな自分を受け入れてくれる彼女の言葉が嬉しかった。

すごく、今。

彼女にキスしたいーー。

唐突に感じたその思いは、僕の体を動かして。

抱き合っていたその体を少しだけ離して。

 

カナン「あっ…」

 

僕は彼女の唇を奪った。

 

ーーどれだけ時間が経ったかわからない、そんなふうに思いながら重ねていた唇を離して彼女の目を見る。

 

予想に反して彼女はワナワナとした様子で焦っていた。

でも、こんなウブなところも…可愛いなと思った。

 

主人公「ごめんなさい、つい。」

主人公「キスしたくなって…。」

カナン「な…なにそれ…。」

カナン「ずっ…」

主人公「ず?」

 

カナン「ズルイよ…。」

 

カナンの方から今度はキスをする。

2人きりの空間で…何度も。

 

これ以上すると…、エスカレートしそうだ…。

仮にもここは彼女の実家の近く…。

高まった熱の中で、少しだけ冷静を取り戻した主人公はカナンを引き離す。

 

少しだけ彼女の表情が、切なさを感じているように思えた。

 

主人公「…時間、そろそろじゃないかな…。」

カナン「…うん。」

 

物憂げな表情をするも、グッとこらえてカナンは。

 

カナン「…それじゃ、今日は帰ろっか。」

主人公「うん。」

 

2人は帰路につく、何故かお互いにしおらしくなって

帰り道ではあまり会話は弾まなかった。

 

 

ーーー。

 

 

半ば放心状態のまま歩いていると、目の前には見慣れた建物があり。

カナンは、その中へと入っていった。

 

いつもと変わらぬ部屋についたはずなのに、なんとなく夢の中にでもいるかのような感覚で現実味がない。

すかさずベッドへ横たわる。

ああ、お風呂の用意しなきゃーーそんなふうに思いながらも体は徐々に布の中へと沈み込んでいった。

 

ふと今日の出来事を思い返す。

そして、体の火照った部分に指を当てる。

ーーまだ少しだけ…温もりを感じる気がする。

その形を確かめるようになぞってから…。

途端に恥じらいが爆発した。

 

カナン(何やってんの私は…!)

 

手元にあったイルカのぬいぐるみを抱きしめる。

…たぶんイルカから痛いって言われてる。

そんなふうに思いながらも、力強く抱きしめて悶えて、我に帰る。

 

カナン「明日もバイトじゃん…。」

カナン「今日…眠れないかも…。」

カナン「そうなったら…、あなたのせいなんだから。」

カナン「…主人公君。」

 

そう言いながら、意識はだんだんと宙に浮いて。

いつのまにかぐっすりと眠っていたーー。

 




最後まで読んでくださってありがとうございます。

今回の話は導入とか諸々のそれも、特に何かから着想を得て書き始めたものではないです。
アニメの終わりからカナンちゃんの進路はこうなる…こうなのか?と自分なりに想像する形で舞台設定をして。
そこでカナンちゃんが恋をするなら…というので主人公君との絡みを作りました。

筆者の中のカナンちゃんの勝手なイメージとして、おねいさん系でありながら実は甘え上手なところがあるのでは?というのがあるので、結構誘い受け的なカナンちゃんになっています。

そして恋愛描写をする上では、やはり相手があまりにも薄っぺらいと、独りよがりな話になってしまう…と思ったので。
思いのほか主人公のキャラが立ってます。
そのかわり無駄なオーディエンスは出来る限り省略してますけど…。


後半はまだ執筆中ですので、またしばらく期間はかかると思うのですが…ここまで読んでいただけたのなら。
ぜひ後半も読んでいただきたいです(蹴

前回と同様に2chSSテイストの会話劇で。
文章はあまり良くできたものではなかったかと思いますが…。
(実のところ、小説とかって全然読まないので…テヘッ)

あと、公開当初から少しずつ誤字を直したりいろいろしてるんですけど。
告白の部分の話とかを少しずつ書き換えたりするかもしれません。
今ひとつ…ピンときてないような、短くまとめきれてないような感じがあるので。
他にも後半との整合性合わせとかで、要所要所に修正入れて行ったりすると思います。

改めまして、最後まで読んでくださってありがとうございました。

[数日間のみこっそりアンケート]ep2やっぱり…

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