Clash Royale〜戦いの旅〜   作:青空 優成

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帰り道、異世界へ

「ふう……さて、と──」

30分ほど路地裏に腰掛け瞑想していたオレはゆっくりと深く息を吐いた。

そのまま顔を上げて周りの景色を見てみるも、先程と変わり映えもしないアンティーク感漂う古い路地裏の景色のままだ。

勿論、ここに来てから服装も変わっておらず、学校帰りの制服を着用している。

ワイシャツの袖を捲った状態と、制服ズボンの裾を捲り上げた状態だ。

その服装は、赤髪癖毛パーマ寄りの髪型と、平均的な身長、若干の筋肉質な体型が相まって一見不良のような見た目をしている。

あっちではこの服装でも嫌が付くほど暑かったが、こっちではそこまで暑くないのが救いではあるか…。

「──まぁ、ここに居ても進展はない…か」

スッと立ち上がり、若干手足が痺れていたのでプラプラと手首を揺らす。そのまま軽く屈伸などの準備運動をして、隣に未だ座ったままの親友に声をかける。

「リオ、もう大丈夫か?行くぞ?」

リオ、と声をかけられた少年もまた制服姿だ。ただしワイシャツを捲ったり、ズボンを捲ったりはしていない。

そんな彼だが、短めの黒髪に丸みがかった顔付きで、更に体型もそこまで男らしくもなく、身長もオレより少し低い。ちなみに口調も穏やかで優しい。

だが今はその丸みがかった顔を伏せて、ただ小さく唸った。

「ぅう…」

「いやまぁ確かに、なんでこんな事…って現実逃避したくのも分かるし実際今まで現実逃避してたけど、30分待って戻れないんだ…認めるしかないだろ?」

「──違うんだヨウ、違うんだよ」

「──ん?」

何やら真剣がかった声で何かが「違う」と言うリオ。

一体何が違うのか。オレ達は現に「この世界」に転移されてしまっている。そして「元の世界」に戻る方法も、誰がなんの目的で連れてきたのかも分かってはいな──

「足が痙って、動けないんだよ…」

「…──」

 

 

5分後

 

 

「ほら、これでどうだ?治ったか?」

「うん、大丈夫…ありがとうヨウ」

「いや、別にこれくらい」

なんとか足の痙りを治したリオは立ち上がり、改めて周りを見渡す。

だがオレと同じような結論に至ったのは顔を見れば分かった。

「はぁ、これはもう認めるしかないなぁ」

「ああ、これは───」

 

 

「異世界召喚ってやつだ」

 

 

───時は少々遡り、2時間前───

 

 

 

 

7月の後半、炎天下の中ハードル飛びをやらされたオレはなんとか帰路に付いていた。

今年で高校2年生になったオレ──岩犬 耀(いわいぬ よう)は人生について、ただのうのうと生きるだけのモノ『無意味・無価値』だと思っていた。しかしそう思っていたのも昔のこと。

今はとあるゲームに熱中し、人生は『面白い・楽しい』と思えるようになってきていた。

とあるゲームの名は『クラッシュ・ロワイヤル』。

『対人戦略型タワーディフェンスカードバトル』と、キャッチフレーズが長く、更に要素を詰め込みすぎ感が否めないこのゲームだが、中々どうしてオレはどハマりしてしまった。

78種類(今後も追加予定有)のカードのうち8種類だけでデッキを組み立て、3分間という制限時間の中で『バトル』を行う。

『バトル』は先に相手のキングタワーを壊せば勝ち。

もしくはキングタワーの両端に位置するサイドタワーをより多く壊して時間切れでも勝ち。

勝てばトロフィーが貰え、負ければ失う。

単純明快なゲームシステム。

元々TCGが好きなオレは『カードバトル』という点に置いて目に付きインストールしてみた。

しかし思っていた『カードバトル』とは全く異なり、これは果たしてカードバトルと呼んでいいのか?とさえ思ってしまうようなゲーム性であった。

最初のうちは「騙された」と思い、数戦やっただけでアンインストールしてみようかと思っていた。

だがやっていくうちに不思議と莫大な戦略性、豊富なやり込み要素。そして対人戦ならではの白熱したバトル。クランと呼ばれるコミュニティワークに見惚れ、今ではすっかり生き甲斐になっていた。

ゲームが生き甲斐とか笑止!と思われてしまうかもしれないが、

それまで『人生は無意味』と思っていたオレにとっては本当に何にも変え難いモノになっている。

 

 

──その『クラロワ』片手に田舎道を帰るヨウの隣には同い年の親友である亜南帆 理央(あなほ りお)もまた『クラロワ』をプレイしていた。

歩きスマホは悪いと思ってはいるが、こんな田舎道の周りを見渡しても人影が全くない路地通りくらい許してほしい。

「頼む!穴掘り師、あと100!削れぇ!!」

画面に食い入るようにクラロワをプレイするリオは懇願するように目を見開く。そして、

「──っ!やったー!!」

見事勝利を納めたようだった。

こうしてリオとクラロワをプレイしたり、アドバイスやクラロワに関する雑談をしながら帰るこの時間はとても楽しいもので、オレにとっては毎日の至福の時間だ。

「リオ、今トロフィーどれくらい?レジェンドアリーナには上がったか?」

「えっと──うわぁ!33トロフィーも貰えたよ今の試合!!──って事は…やっったーー!レジェンド!レジェンド来た!」

オレに画面が見えるよう、押し付けるようにレジェンドアリーナ到達を自慢してくるリオ。しかし素直にレジェンドアリーナ到達は記念すべき事なので拍手をしておく。

クラロワには『アリーナ』と呼ばれるフィールドが幾つかあり、それぞれトロフィー毎にフィールドが異なる。その最高位に位置するアリーナが『レジェンドアリーナ』だ。

レジェンドアリーナに到達すると、ショップにはウルトラレアカードが販売されるようになったり、レジェンドリーグに挑戦できるようになったりと…「クラロワのチュートリアルはレジェンドアリーナに行くまで」と呼ばれるくらい重要な事なのだ。

「にしても、本当におめでとう、リオ」

「ありがとうヨウ、いやあ穴掘り師強いよホントに!」

リオがこよなく愛するユニットの名前は『穴掘り師』

──レアリティはウルトラレア 地上タイプ 3コスト 体力も攻撃力もそこそこと普通型ユニット 特殊能力として『相手フィールドに直接召喚できる』効果を持つ (ただし相手のタワーに与えるダメージは少ない)

 

 

たまたま運良く穴掘り師を引き当てたリオはその日からずっと使い続け、そして今日遂にレジェンドアリーナへと到達した。

穴掘り師の能力を上手く駆使した結果だろう。

オレも実は穴掘り師は結構お気に入りのキャラで、オレ愛用のユニット『ラヴァハウンド』とも相性がいい。

「オレもレジェンドアリーナに早く行かなきゃな…」

「ラヴァハウンド強いし、それにヨウ上手いから絶対行けるって!」

「すぐ追いつくぞ?」

オレ達は2人何か通じたようなものを感じてニヤリと笑い合う。

この青春っぽい感じに内心すごくワクワクするが、これが陸上とかじゃなくてゲームなのが若干残念!と思わざるを得なかった。

「まぁラヴァハウンドの使い方も大分慣れてきた頃だ、本当にすぐ追いつく」

オレがたまたま巨大な宝箱から当てた愛用カードは『ラヴァハウンド』

──レアリティはウルトラレア 飛行タイプ 7コスト 体力が多いが攻撃力は皆無の超タンク型ユニット 特殊能力として『死んだら6体のラヴァパピィを排出する』効果を持つ(パピィは体力は少ないが攻撃力が高いアタック型ユニット)

オレはラヴァの使い方をようやく学んできた。ラヴァは本当に盾役として使うのが正しかった。攻撃を期待しては駄目だ。

「じゃあオレも1戦マルチ行くか」

と、『バトル』に挑もうとした瞬間だった───

 

 

──ギギギギギズズズズと謎の機械音がスマホから発生し、画面にはノイズが走り始める!

 

 

「っあ!?なんだ…これッ」

「分かんな───って僕のスマホも!?」

 

ギギギギギズズズズ、不快音とひた走る画面に酔い、スマホをすかさずポケットにしまい込んで耳を塞ぎ目を瞑る。

すると、なにやら頭の中に声が響いてきた──

「我は汝、我、汝の中に憑依せし存在。我…汝に『空を飛行する能力』と『肉体を溶岩質に変質出来る能力』と『死亡時6体に分裂する能力』を与えん。汝、その『能力(チカラ)』をもって世の調和を望まんと──」

「っは…あ?!…意味分かん…ねぇ」

──にしても今の能力って……。

 

 

 

 

それから鳴り続ける機械音は鳴り続け、頭痛さえも催し始めたが、大事に至る前に機械音は止まった。

ノイズ音が鳴りやんだのを確認すると、耳を解放する。

「目も開けて、いいよな?」

「た、多分…?」

「──」

恐る恐るも言った感じで何が起こったのか確認するため、目を開く。

そこに映っていたのは───

「なぁ…っ」「え……?」

───今まで帰宅していた路地通りと違い、見たことない建物の広がる大通りだった。

「おい退けよ」

「痛っ!」

ゾロゾロと人溢れる大通りで、呆けた顔で突っ立っていたオレ達2人を肩で押し退け進んでいく人混み。現実認識すらままならないまま、オレ達は流されるように押されていった。

 

 

そして───

 

物語は冒頭へと繋がってゆく。

 

 

 

 

「──ってなわけでこれは異世界召喚に決定だ、なんでなんで三昧だが、ひとまずは情報収集でもするとしよう」

場所は戻って、アンティーク感漂う古びた路地裏。

人混みに流される途中、抜けるためにひとまず路地裏へと逃げ込んだ。外の様子を見たのはあの1度だけ、大通り以外は何も分からなかった。ただひとつ言えるのは──

「日本じゃない…よな」

「だねぇ、観光客にしては、ちょっと派手な髪色の人が多かった」

「でも…車みたいなのは走ってたよな。外国って説もまだあるか?」

「いや、どうだろ…。外国でも空飛ぶ車はまだなんじゃ?」

「ああ…確かにちらっと見えたけど、空走ってたな」

現代ではまだ発明こそされているのかもしれないが実用はされてないはずの飛行車の存在を確認していた。空飛ぶ車とか明らかに男心くすぐる存在だが、今は心から嬉しいと思える状況でもない。

オレ達は少しの間沈黙するが、沈黙していても何も始まらないと切り替えたオレがリオの手を掴んで路地裏から出ようとする。

「ちょ!ヨウ待って!待って!」

あと少しで大通り、といった所でリオからストップが入る。

「どうした?」

「いや、どうした?じゃなくてこの手!」

と掴まれた手を若干あげて、抗議してきた。

「いや、この人混みだぞ?はぐれたらどうする。さっき確認してみたがスマホは圏外だった」

スマホが圏外といった点からもここが日本ではないという証拠になっていた。先程の経験から分かるとおり、この大通りは人の行き来が激しい。下手にはぐれでもしたらこの未開の地では一生の終わりかもしれない。そう考えての手繋ぎだ。

「確かに、そう考えると妥当なのかも…いやでも流石に恥ずかしいよ!?」

「…まぁ、そりゃそうか。高2の男子同士が手を繋いでるとか、流石に気持ち悪い光景かもな」

「まぁ、ヨウと手を繋ぐのが嫌だ!って訳じゃないけど」

「え、お前まさか…」

「いや違うからね!?あくまでもヨウが嫌いだから手を繋ぎたくないとかじゃないよって言いたかっただけだよ!?」

「そうか、良かったよ」

リオにまさかの性癖が芽生えていなくて良かった。

でも確かに恥ずかしさっていうのは冷静に考えてみるとあるかもしれない。

オレは掴んでいたリオの手を離し、後ろの人混みをもう一度見る。

「──そうだな、もし人混みに流されて迷ったりでもしたら…」

と、そこで思い出す。

「そういえば──オレ、『空を飛行する能力』を……」

目を瞑っている時に脳内に直接語りかけてきていたような声確かにそんな能力をオレに与えてくれていたはずだ。

「え?ヨウも…声が聞こえたの?」

「──まさかリオも!?」

「うん、僕の場合は『穴を掘る能力』を与えるとかなんとか言ってたような気がするけど…なんなんだろうあの声」

そうか、リオも『何者』かの声が聞こえ、『能力』を与えられたのか。このことは、この異世界に召喚されたことと関係が深そうだ。

「オレは『空を飛行する能力』と『肉体を溶岩質に変質出来る能力』と『死亡時6体に分裂する能力』を与えられたな」

「多っ!?」

「だけどこの能力…使い方がイマイチ分からない。さっきから飛べ!飛べ!アイキャンフライ!って脳内で呟いてるけど、飛べてないしな」

「にしても、なんかラヴァハウンドの『能力』に似てる気がするなあ」

「それはオレも思っていた事だ、そしてリオの『能力』は穴掘り師に似ている」

「あっ!確かに!」

「まあもしはぐれたら、オレがなんとかして空飛んでリオを見つけるから安心してはぐれてもいいぞ」

どうやって飛ぶ事が出来るのかは全然分からないが…。

「さっき使い方が分からないって言ってなかったかなぁ!?」

「……まぁここでこうやって軽口叩いてるのも悪くないが、今は少しでも情報収集するのが先だ。行くぞリオ」

「はぐれても知らないからね!?」

オレはリオが付いてくるのを確認して、いよいよ大通りへと進み出る。

大通りは石造りで出来ていて、建物はコンクリート製だ。

歩道は石瓦を敷き詰めたような模様をしているが、人が混みすぎて地面が見えてるようで見えてない。

道には屋台や出店が出ていて、果物屋から雑貨屋と色々な店が見える。幸いなことに看板や値段は全て日本語で書いてあるので、良かった。異世界あるあるとして謎の言語があるのだがこの世界は大丈夫みたいだ。

「ぐっ、リオ…付いてきてるか?」

「ヨウ、大丈夫!なんとか!」

「とりあえず大通りを抜けて、開けた場所に出るぞ!」

「分かった!はぐれないように付いてく!」

ワイワイガヤガヤとしてる中では騒音に負けないように、それでいて迷惑にならないような声量が求められる。だが少しばかり大きくなってしまうのは仕方ないことだと思うので、オレがリオに話しかけるたびにいちいちしかめっ面で舌打ちしてくる目の前のおっさんに若干イラついた。

そうして人混みに揉まれたまま、なんとかあと少しで大通りを抜ける──といったところで後ろから声をかけられた。

「あの!すいません!!ちょっといいですか!?」

「───リオ、付いてきてるか?!」

「───大丈夫!!」

「あの!!すいません!!!」

「え?オレ?!」

「そうです!あの!聞きたいことが!」

オレが振り向くと、そこには黒髪ポニーテールで清楚系を思わせる服を着た、見た感じ同い年のような美少女が居た──が、立ち止まって話をしてられるほど悠長な場ではない。

「悪いが、ちょっとそこまで行っていいか?」

「あ、うん。どうぞ」

リオと謎の美少女を連れて、なんとか大通りから抜けて噴水の立つ広場のような場所に出る。大通り人溜まりのせいでむさ苦しく暑かったので、涼し気な噴水を見ると気力も回復した気になった。

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