ぐだ男「サーヴァントをデレさせないと出れない部屋?」 作:ふくちか
「…まーったく、どうして貴方と同じ部屋に閉じ込められなきゃならないんですかねぇ?」
「俺に言われてもなぁ……」
ハイ皆さんこんにちは。藤丸立香です。
今日も今日とてまた例の部屋に閉じ込められています。
「ったく……私だって暇じゃないのにあの芸術家は………」
今横でダ・ヴィンチちゃんにブーブー悪態をついているサーヴァントは、ジャンヌ・ダルク・オルタ。
フランスの聖女と同じ名前ではあるけど、実は彼女は本物のジャンヌではない。
……まぁ今は関係ないので割愛させてもらいます。
彼女はジャンヌ本人ではないにせよちゃんとここにいる、それだけで十分なんだ。
……っていうかこのジャンヌオルタをダ・ヴィンチちゃんはどうやってこの部屋に入れたんだろうか。
彼女の事だから絶対ブーたれて動かないはずなんだけど……
「どう言う事よ?アイツが言ってた漫画もゲームも全くないじゃない!おまけにこのお人好し馬鹿のマスターと一緒の部屋なんて……冗談じゃないわ!」
コロッと騙されたのね……まぁ彼女らしいか。
初めてフランスで会った時と比べると、随分人間らしくなってるので喜ぶべきなのか、また騙されるんじゃないだろうかと心配すべきなのか、判断には困るけど。
「あーあ、退屈だわ……あんた、何か面白い話でもしなさいよ」
「いや、それ話の振りとしては最悪だよ」
「気が利かないわね。……だったら早くこの部屋から出る方法でも考えましょ」
「うーん。それなんだけどさ」
「何よ」
実はここから出る方法は既に分かっている……そう、以前アンとメアリーにしたことをそっくりそのまま実践すれば良いのだ。
だけど……俺はどうも彼女から好かれてないみたいだから、そんな俺があれをしても意味がないような気がするんだよなぁ。
俺がそれを言いあぐねていると、ジャンヌオルタは痺れを切らしたかのように口を開いた。
「…何よ。言いたい事があるならさっさと言いなさい」
「でも、君にこれをするのは…」
「……何を躊躇っているのかは知らないけど、それが脱出に繋がる方法でしたら、私はどんな屈辱だって受けます。………一応、あんたのサーヴァントな訳だし」
「ジャンヌオルタ……」
…………そうだ、普段排他的な彼女がここまで言ってるんだ。マスターである俺が動かないでどうする!
覚悟、決めるぜ!
「……ジャンヌオルタ」
「な、何よ。改まって……」
俺がジャンヌオルタに面と向き合って座ると、彼女は何やら酷く慌てた様子だった。
けど、俺から体を逸らしてないって事は、一応は話を聞いてくれるという意思表示なのだろう。
俺は彼女のひたむきさに感謝しながら、言葉を紡いだ。
「何時も、俺達と一緒に戦ってくれて、ありがとう」
「…ハッ。何を言い出すかと思えば、そんな在り来たりな言葉ですか?そんなんじゃ…」
「君は何時も俺に文句や不満を言いつつも、ちゃんと指示を聞いて、実行してくれる。ホントは俺の事なんて嫌いなのに、俺の無茶にも応じてくれる。本当に感謝してる」
「ちょ、ちょっと……」
「俺の事が嫌いなのは分かってる。でも、それでも聞いてほしい」
俺は彼女の肩を掴んで、視線も逸らさずに告げる。
「俺は未熟なマスターだ。一人では何も出来ないし、何度となく躓いて、倒れる時もある。だからこそ、そんな時は何時もの罵倒で俺を立ち上がらせてほしい。君の声で、俺の背中を叩いてほしい。俺は、君の確かな優しさが、好きだから」
「~~~~ッ」
「他の誰かが君の存在を否定しても、俺は絶対に否定しない。君はジャンヌオルタと言う一人の女の子で、俺の大切な仲間だから。だからこれからも、俺と一緒にいてくれ!」
……思わず感情的になってしまい、ハッとして彼女の様子を伺う。
当のジャンヌオルタは顔を俯かせ、何やら声にならない悲鳴を上げているようだった。
そして気付けば、扉は既に開いていた。
「~~~~ッ///」
ジャンヌオルタもそれに気付いたのか、バッと弾かれた様にして出ていった。
「あ、ジャンヌオルタ!」
慌てて彼女を追いかけるも、彼女の姿は既になかった。
「……もしかして、不味い事言っちゃったかな」
そう不安に駆られる中、俺の背後に近付く影が。
「…えいっ」
「えっ」
「…だーれだ」
突然目を塞がれ、下から声が聞こえた。
声はちょっと幼いものだけど、背中に感じるこの柔らかい物体……二人…………つまり。
「…目を塞いでいるのはアン、声を掛けたのはメアリーだね」
「「正解♪」」
漸く視界が元に戻ると、俺は何故かサンドイッチにされていた。
…詳しく説明すると、前後からアンとメアリーに抱きしめられていた。
「どうしたのさマスター、血相変えちゃって」
「え、えっと…」
「…また例の部屋に入れられたのですね」
言いあぐねている俺を見て、アンは俺が出てきた扉を一瞥しつつ、そう聞いた。
「相手が誰なのか凄く気になるけど……今は良いや」
「ではマスター。これから私達とお茶にしましょう?」
「えっ?」
「そうと決まれば行こう。ね?」
俺としては今しがた出ていったジャンヌオルタが気になるけど、そう可愛く甘えたれたら断り切れないと言うか……黙っていた俺を見て、二人は容赦なく俺を部屋に連行することにしたらしい。
「沈黙は肯定としますわ。メアリー」
「うん。じゃあ連れていこうか……僕らの
「えぇ♪」
そうして俺は抵抗する事すら許されず、ドナドナされるのであった。
ーーーー
一方その頃、ジャンヌオルタは――――
「~~~~~ッ///」
自室にて頭を抱えて悶えていた。
原因は言うまでもない、先程のやり取りである。
「…アイツ、こっちの気も知らないでっ」
そう恨めしそうに呟くジャンヌオルタの脳裏にはマスターである少年の笑顔が。
それを思い浮かべ、彼女はまたしても身悶える。
…実の所、彼女はマスターの事を嫌ってなどいなかった。
寧ろ好きと言うべき感情を抱いていた。
だが所詮自分は反英霊、まともに彼と過ごす事など出来るはずもないし、そもそも彼が自分の事など好いている筈もない……という、自分自身のルーツと卑屈な考え方から、彼を罵倒する事で遠ざけていたのだ。
認めてなる物か、という思いもあったのかもしれない。
「アタシは竜の魔女……災厄を齎す存在………だからあいつの事なんて…ッ」
そう自分を卑下するも、その時彼女の脳裏を過るのは、先程の彼の言葉。
「あいつは……私の事も差別しなかった。それに………」
自分の(認めたくはないが)優しさとやらも知っていて、あんな事を言ってのけた。
根は純粋で乙女な彼女の、卑屈な壁はいとも簡単に崩れ去った。(チョロい By騎士王オルタ)
「……ふ、ふふふ。上等じゃない」
そして彼女は、弾けた。
バッと、被っていた布団を取り払い、ベッドの上で仁王立ちになる彼女。
「そこまで言うのでしたら…………本当に地獄の底まで付き合ってもらう他ありませんね?――――マスター」
そう嗤う彼女の笑みは、何処までも純粋なものであった。
「……またマスターの女難の相が効力を発揮したか」
カルデアのキッチンにいる赤い弓兵は、マスターである少年のとある力の発動を察し、溜め息を吐いた。
――――だが、彼は知らない。
これはまだ、始まりに過ぎないと言う事を。
スカサハ「おいセタンタ。私の出番は何時だ」
クー・フーリン「そんな事、俺が知るk……あぶねぇ!!」回避