ぐだ男「サーヴァントをデレさせないと出れない部屋?」 作:ふくちか
ジャンヌオルタの件から数日後――――
『僕は生きるために戦う!生きる事を素晴らしいと思いたい!!』
カルデアにある映像資料から、俺が子供の頃に見ていたヒーローの映画を見ていた時だった。
「失礼します、先輩」
「ん?…どうしたの、マシュ?」
俺のマイルームに、後輩であるマシュがやって来た。
何か用事かな?
「ダ・ヴィンチちゃんから先輩を呼んでくるように言われまして」
「ダ・ヴィンチちゃんが?」
……また例の部屋なのかなと思いつつ、俺は映像を消して彼女の元に向かうのだった。
ーーーー
やはり、用事の内容はまた例の部屋だった。
「またこの部屋か…」
『もうじき相方のサーヴァントが入ってくるよ~』
そうアナウンス越しに言うダ・ヴィンチちゃんの声は実に楽しそうだ……全く、下手すれば嫌われかねないと言うのに。
「失礼します……マスター?」
「あ、アルトリアさん」
入ってきたのは、かのブリテンの騎士王の側面が一人、ランサーのアルトリア・ペンドラゴンだった。
アルトリア……分かりやすく言えばアーサー王だ。
だけど目の前の彼女は聖剣エクスカリバーではなく、聖槍ロンゴミニアドを携えた、正史の騎士王とは異なる存在だ……まぁ大本は同じらしいけど。
「ダ・ヴィンチちゃんに呼ばれたの?」
「えぇ、この部屋に来るようにと。マスターもですか?」
「うん」
そう答えた時、後ろの扉が閉ざされた。
「っ、マスター!これは一体……」
「あー、落ち着いて。そんなに危険な事じゃないから」
「?そうですか…貴方がそう言うのでしたら」
そう言うとアルトリアは手に構えた聖槍を消した。
危なかった……こんな閉所で宝具ぶっぱされたら俺も消し飛んでた……。
「実はね――――」
取り合えず俺はアルトリアに事情を説明した。
「成程、サーヴァントをデレさせる……ですか」
「うん。そうすれば扉も開くから」
「…随分詳しいですね」
「え、うん。もう二回ぐらい巻き込まれてるから」
三回目にもなるとこっちも落ち着けるってもんですよ。
そうしみじみとする俺に、アルトリアは首を傾げる。
「しかしマスター。デレさせるとは一体、どの様な事なのでしょうか…」
「あー…アルトリアはそう言うの知らないんだったね。まぁ掻い摘んで言えば、照れみたいなものかな」
「照れ、ですか」
「うん。別に危険な事はしないから、安心して?」
初めての事だろうと思い、安心させようと俺は笑いかける。
だけどアルトリアはふるふると首を横に振った。
「不安はありません。敬愛すべき貴方がする事です、何も危険はないと私は信じておりますので」
「そ、そっか。じゃあ……アルトリア」
「…はい」
思わぬ返しにこっちが照れてしまうが、気を取り直して俺はアルトリアに向き合う。
「…何時も危険な戦いに身を投じてくれて有難う。皆や、アルトリアが戦ってくれるから、俺も安心して前に出れる」
「有難う御座います。ですが当然です、この身は貴方にとっての槍、ですから」
「それに……俺は人になろうとする君の姿勢が、とても愛しいと思うよ」
…彼女は、普通のサーヴァントとは少し違う。
彼女の霊基は、その聖槍によって神に近い存在に近いのだ。
だから彼女は他のサーヴァント達と距離を置くような態度をとる。
自分の半神であるのを気にして、疎外感を抱いたりしていた。
でも、ある事を切っ掛けに彼女は人に歩み寄ろうとしている。
少しずつではあるけど、彼女は徐々に人らしい感情を得ていると、彼女のマスターとしてそう思っている。
「君の困った顔、そして君の笑顔……それは全部、君を人足らしめているって断言する。君が周りと少しずつ打ち解けていくのを見ると、俺は凄く安心するんだ。君は王でもあるけど、一人の女性でもある。だから、もっと他の人に甘えていってほしい。そうして、人と言うのを学んでいって、君が本当に人らしい、一人のアルトリア・ペンドラゴンになれる様に、俺も力になるよ」
「あ、ぅ………。わ、私は、」
「うん?」
「私も、人になれるのでしょうか……神霊である、この私も」
アルトリアはそう、不安そうに聞いてくる。
「――――勿論だよ」
「……ッ」
俺は彼女の不安を吹き飛ばせるように、笑顔で断言した。
すると――――
「~~~~ッ」
アルトリアは頭から煙を出して、その場に伏せてしまった。
時を同じくして、部屋の扉も開かれた。
「あ、アルトリア、扉開いたよ……?」
何故か悶えるアルトリアに対し、俺は円卓の騎士達に手伝ってもらって何とか自室に戻したのだった。
ーーーー
一方、自室に戻ったアルトリアは。
「……マスター」
布団を被って、マスターである立香の事を思い耽っていた。
彼は、神霊に近しい存在である自分に対して、何も変わらない態度で接してくれた。
そればかりか、自分の事を好きだとも言った。
そんな疎外感から作り出した壁を、彼は壊してくれた。
私を、外の世界へと誘ってくれた――――
『私は、人に近付きつつある……だけど』
それは、きっと……
「貴方のお陰ですよ。マスター」
そう呟いた彼女の微笑みは、とても柔らかいものだった。
セイバーオルタ「次は私だな」もっきゅもっきゅ
ランサーオルタ「何を馬鹿な事を」もっきゅもっきゅ