ぐだ男「サーヴァントをデレさせないと出れない部屋?」 作:ふくちか
クー・フーリン「それ言うのは普通青い騎士王様じゃね?」
つい最近アニメUBW完走して、エミヤのやさぐれっぷりとFGOでのエンジョイっぷりのギャップにびっくりしました。(夏イベ前だったので余計に)
「やぁ、おはようマスター」
「マーリン、珍しいね。食堂に来るなんて」
食堂で軽い食事をとっている所に現れたのは、花の魔術師こと胡散臭い魔術師、マーリンだ。
確か夢魔との混血だから食事はしないって聞いたけど……。
「ふふん、この場所で感じる感情の味というのも中々乙なものでね。美味しいものを食す時の感情のエネルギーというのも、悪くないのさ」
「…俺、マーリンが、アルトリア達に嫌われる理由が分かった気がする」
そういうところだぞ、宮廷魔術師。
『あ~、現在食堂で食事中の藤丸君、藤丸君。至急例の部屋まで来てくれたまえ~』
と、カルデアのアナウンスからダ・ヴィンチちゃんの声が聞こえた……例の部屋って。
「おや、モテる男はつらいねぇ~」
「いや、俺がモテるって……サーヴァントの皆に比べたら俺なんて平々凡々なつまらない顔だよ?」
そう言うと、何故か食堂のキッチン方面から大きな衝突音が響いた、と同時に食堂にいた何人かの男サーヴァントがずっこけていた。
「ど、どしたのエミヤ君?」
「ワハハ! まさしく猿も木から落ちる、ならぬキャットも塀から落ちるだな。さては何やら女難の気配がする故猫缶をかすめ取る猫の如くキッチンのシンクにヘッドスライディングを決めてランニングホームラン! を決めたエミヤボーイ、如何したか?」
「…何でもない」
どうしたんだろう? そう首を傾げるが、至急と言われた事を思い出し、俺はトレイを返すと早速向かっていった。
「グリーン、どう思う?」
「…ありゃ本気で気づいてないっしょ。分かっててあんな態度なら相当策士だぜ?」
「例の部屋っつったか? あれが出来て以来スカサハもなんか挙動不審ぎみで気持ち悪いんだよなぁぁぁぁぁぁあっっぶねぇぇぇぇ!!!!」
「ちっ、躱したか。相変わらず運が良いな、セタンタ」
「そりゃ俺への皮肉ですかねぇ!?」
「さーて、俺達は邪魔にならない様に移動しますわ」
「また後でね~」
「さぁーて……」
今日も今日とて騒がしいカルデアの食堂の喧騒をBGMに、花の魔術師は微笑む。――――普通の人間が見れば美しく、知る人が見れば心底イタズラ気にほくそ笑むその笑顔を。
「今日は誰を落とすのか、楽しみにしてるよ? 藤丸君」
ーーーー
「失礼しまーす……って、ジャンヌ?」
「どうも、マスター」
部屋に入って最初に目に付いたのは綺麗な金髪、そしてその頭部を守る三又の鉾みたいな形の兜?のような防具。
フランスの聖女――――ジャンヌ・ダルクだ。
「もしかしなくても…」
「はい、ダ・ヴィンチに呼ばれてここに馳せ参じました」
ジャンヌは成程聖女だと納得してしまえる、綺麗な笑みを浮かべそう答える。
「えっと、じゃあ」
「はい、宜しくお願いしますね」
ジャンヌの隣に腰掛けると、俺は何時ものように感謝の気持ちを伝える。
「ジャンヌは結構最初の頃からの付き合いだよね」
「はい。貴方がオルレアンの特異点を解決した後、私は貴方に召喚されました」
冬木の次に訪れたフランスの特異点、そこが俺と彼女との出会いだった。
「色んな冒険や戦いを繰り広げて来たよね」
「はい。毎日が絵本の物語の様に壮大な冒険や、戦いがありましたね。でも、それを繰り返している中でも、貴方は貴方らしさを失っていない。私はそれがとても嬉しいです」
「ありがとう。……俺みたいな平凡なマスターに召喚されて苦労してると思うけどさ、ジャンヌの力は本当に背中を押してくれるって感じがして、凄く頼もしいんだ」
「…マスター」
ジャンヌはちょっとむすっとしながら、俺の両手を握ってきた。
「貴方は決して平凡だからと言って、無能ではありません」
「無能とは言ってないよ」
「言外にそう言っています……あなたとは長い付き合いなのですから、これぐらい分かっちゃいます。貴方のその平凡さはなくてはならないものです。どれだけ辛い旅路でも、身を削るような戦いでも、貴方は貴方らしくいる……私はそれが何よりも嬉しい」
「ジャンヌ……」
そう言い聞かせるように微笑むジャンヌは、世界中のどの美術品よりも美しく映った。
だからだろうか、
「……凄く、綺麗だ」
「…えっ?」
思わず、そんな事を呟いてしまった。………って、今のもしかして聞こえてた? あ、この反応は間違いなく聞こえてらしたな!
「あ、その、今のは……!」
これセクハラになっちゃう! そう思いつつ何とか弁明しようとした俺だけど、ジャンヌは顔を赤くしながらも、こっちを見つめ続けている。
「じゃ、ジャンヌ……?」
「……」
ジャンヌは何かに引かれる様に徐々にこちらに顔を近付ける……肝心の俺はと言うと、ジャンヌの端正な顔が視界一杯を支配しているためか、金縛りにあったかのように動けないでいた。
そうしてお互いの距離が無くなりそうに――――なった所で、鍵の開く音が聞こえた。
「ッ!? あ、その……」
その音に漸く我に返ったジャンヌはバッと離れると、頭から湯気が出る勢いで顔を真っ赤にすると、そのまま俯いてしまった。そして暫くすると……
「し、失礼しましたっ!!!」
脱兎のごとく部屋から飛び出してしまった……扉を粉砕しながら。
「……」
「…マスター? ルーラーが凄い勢いで走り去っていったが、どうかしたのか?」
その場でボーっと座り込んでいると、偶然通りがかったらしいジーク君がひょこっと顔を覗かせてきた。
「あ、うん。大丈夫だよ」
何がだよ。そう自分で突っ込んでしまうがジーク君は「そうか」と言うと、それ以上の詮索はしてこなかった。
「そうだマスター。これからレクリエーションルームでゲームをするんだが、トモエとマンドリカルドとコタロウの他にメンバーを探していたんだ。良かったらどうだろうか?」
「うん、良いよー。精いっぱいやろう!」
この後、俺、ジーク君、マイフレンド、巴さん、小太郎君、黒髭、エルメロイ先生とゲームをした。
ーーーー
ジャンヌの自室。
「わ、私ったらなんてはしたない事を……!」
例の部屋から逃げるように出て行ったジャンヌは現在、自室にテ布団を被って悶えていた。
「この気持ちは…………違う私の感じたものと同じ……なのでしょうか?」
ジャンヌには座に持ち込まれた別のジャンヌの記憶も持っている――――嘗ての聖杯大戦に於いて、邪龍となったホムンクルスの少年に恋をしたという記憶もある。
だがそれは今ここに召喚された自分のものではない、確かに記憶は持っているが、この気持ちはその時のジャンヌのものだと、ジャンヌは自分の中で区切りをつけていた。
だからこそ、恋というのがどういう感情の類なのか、ここにいるジャンヌにも理解してしまえる。
「私は、マスターを…………立香を」
その先は恥ずかしくて言えなかった、口を噤むジャンヌだったが、先程のマスターの言葉は今も脳裏にこびり付いている。
聖女としての自分じゃない、素の自分を見ている目をした、平凡な少年が口にした言葉が。
「おやおや、どうやら新しい風が吹きそうですね」
「師匠、どうかしましたか?」
「何でもありませんよ、リリィ」
ここでの独自設定として、ジャンヌはapoで召喚されたジャンヌとは別人です。でなきゃ書けませんでしたので、ご了承ください。
実際ゲームに於いてはちゃんと対応台詞あるんですよね、ジャンヌ→ジークへの。ただジーク君本人の意向もあってあんまりゲーム上だと絡み少ないので、どういう風に過ごしてるのか
別にぐだジャン推しても良いじゃない、好きなんだもの