METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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焔薙さん作【それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!】とコラボやで!


緊急合作案件!!"バーガーミラーズS09地区支店"

 MSF副司令のカズヒラミラーによる、個人的趣味から生まれたバーガーミラーズ。

 ミラーとその店の関係を知るものは未だ少なく、ボスであるスネークにも秘密にしたまま、個人的資産を用い運営していた…しかしミラーの努力にもかかわらず経営はおもわしくなかった。

 だが、スコーピオンの発案により戦術人形たちを巻き込んだ新商品開発が行われ、数種類の試作ハンバーガーが完成!

 さらに、バーガーミラーズは人間相手だけではなく、今や社会に広く浸透する自律人形相手に売ることも決定した!

 そしてニート小隊こと404小隊のコネにより、バーガーミラーズの新店舗を大胆にもグリフィン司令部のおひざ元の町へと新たに構えるのであった…。

 

 

「にしししし、ついにこのあたしも民間企業のトップ…店長に就任だね!」

 

 S09地区、グリフィンが統治する地区の中でも激戦区と呼ばれていたのも今は昔、ここ最近は地区の司令部の活躍により鉄血の侵攻を退ることに成功し、いまだ油断のできない状況は続いているが可住区域は広まりつつある。

 そこに404小隊の根回しによって土地を得たミラーは早速店舗を新設、彼の代理としてやって来たスコーピオンが期間限定ながら店長となるのだった。

 

「スコーピオン連隊副官殿! バーガーミラーズS09支店、開店準備整いました!」

 

「店長とお呼び! さーて、いよいよかぁ!」

 

 店長初体験のスコーピオンは今、他の戦術人形にその正体がばれないよう、変装をしている。

 とはいっても髪を下ろして首の辺りで一本に結い、バーガーミラーズの制服にエプロンを着ただけで、I.O.P製戦術人形に詳しい者から見ればバレバレなのだが…そして店で働くスタッフも、スコーピオンの権限で動員されたヘイブン・トルーパー兵ときたものだ。

 さすがにいつもの強化服スタイルではないが…。

 

「それにしても、グリフィンかぁ……なんか久しぶりだな」

 

 何気なく町の通りを見つめたスコーピオンは、以前自分が所属していたグリフィンを思いだし、郷愁を覚えていた。

 目を閉れば今でも思い返す…工場から出荷され、グリフィンの司令部に配属されたときのことを。

 その時は今ほど勇気があったわけでもないし、力も比べ物にならない…空元気でドジばかり、迷惑をかけることもしばしば…まあ、迷惑をかけてるところは変わらないが。

 そんなわけで、ただただ未熟だった当時、作戦に失敗して部隊は散り散り…自身も廃墟の町で孤立無援のまま隠れていたわけだ。

 そして、あの日スネークと運命的な出会いを果たす。

 同時に、スコーピオンはグリフィンからMSF所属となったわけであるが…。

 

「あの人も来てくれるかな? この間の祝辞、読んでくれたかな?」

 

「店長、そろそろ開店の時間です。ご準備を」

 

「はいはーい。さてと、気合を入れていきますか…!」

 

 この日のためにヘイブン・トルーパーの新人研修を行い、元々のメニューはもちろんのこと試作ハンバーガーの全てのレシピを叩き込んだ。

 接待のマナーもばっちりだ。

 しかし元々戦闘用に訓練されたヘイブン・トルーパー隊の動きが機敏過ぎて、民間仕様の自律人形に見えないのが難点だが…まあ、てきぱき動く自律人形として納得してもらうしかない。

 

「そんじゃ、元気よくバーガーをやってこうじゃん! 張りきっていこー!」

「「「おー!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「平和じゃのー」

 

「平和だね~」

 

 町の通りを歩く二人の少女。

 どちらも小柄で細身だが、一人は白い髪のゆるやかほのぼのを具現化したような少女、もう一人は白のコートと白の帽子をつけた金髪の少女だ。

 時たま声をかけられる二人が元気に返事を返す。

 何を隠そう、彼女たちこそこのS09地区を管轄するグリフィン支部の指揮官【ユノ】とその副官の【ナガンM1895】である。

 

 一見、貧弱そうに見える指揮官であるが、鉄血との戦闘で多くの勝利をもたらした経歴がある。

 指揮官個人としての戦闘力を見れば、良くて一般人より少し強い程度…軍人としての力を比べるなら、彼女を超える者はいくらでもいるだろう。

 だがグリフィンが指揮官に求めるのは個人の力量ではなく、グリフィンが主力とする戦術人形たちをいかに効率よく、そしていかに彼女たちを導けるかが重要なのだ。

 

 その点に関しての、この小さな指揮官はまさに天賦の才と言っていいのかもしれない。

 彼女が持つ不思議な魅力は何故だかどんな人形も惹きつけ、そして味方にしてしまう。

 個性豊か、悪く言えば癖のある戦術人形の信頼を勝ち取ることは案外難しいものだ。

 人形は命令で動き逆らえない、それは間違いない。

 だが、主である指揮官と信頼という名の絆で結ばれた戦術人形は時に、思わぬ力を発揮することもある…それを指揮官ができているからこそ、かつて激戦区と呼ばれたこの地区が、平和を取り戻しつつあるのだろう。

 

「それにしても、そろそろ小腹が空いてきた頃じゃな。お主、何か食べたいものはあるか?」

 

「うーん…あ、そう言えば最近ハンバーガー屋さんが出来たの知ってる? 確か今日がオープンの日だと思ったけど…」

 

「お主ハンバーガーなぞ食べたことはあるのか?」

 

「興味あるかも」

 

 では行ってみようと、二人は陽気な空の下、散歩がてらに最近オープンしたというハンバーガー屋さんへと向かう。

 さて、行こうと決めたはいいが場所が分からない。

 自信満々に指揮官が先頭を歩くのでそれについて行くナガンだが、いつまでも到着しないことに違和感を感じる。

 

「のう指揮官。お主、そのバーガー屋はの場所は知っておるのか?」

 

「え? あぁ…そう言えば知らなかったよ」

 

「何をしとるんじゃお主は! まったく、分からぬなら言えばいいものを…すっかり時間を無駄にしてしまったではないか」

 

「ごめんなさい…なんか、天気も良くて散歩日和だったし、えへへ」

 

「笑い事ではないわい。じゃが、お主はやはり持ってるようじゃの…見ろ、アレが捜していたハンバーガー屋ではないか?」

 

 通りの先にナガンが見つけた真新しい店舗、お店の看板にはバーガーミラーズと書かれており、既に店の前には何人かの行列ができている。

 お店の方からハンバーガーを調理する香ばしい香りが流れてきて、二人の空腹感を刺激する。

 

「わぁ、なんか素敵なお店だねおばあちゃん!」

 

「うむ。そうじゃの…いつの間にこんな店ができたのか?」

 

 不思議に思いつつもナガンは列に並ぶ。

 店から出てきた者の中には妙に発情した奴とかやる気に満ちた奴とか、あるいは飲んだくれて搬送される奴もいるがきっと気のせいだろう…。

 店の前に出来た列は結構な人数だったが待たされることもなくあっという間に進んでいく。

 店の中を見て見ればやたらと機敏な動きで動くスタッフの姿が…オーダーから調理配膳会計まで、流れるようにてきぱきこなす圧倒的回転率だ。

 作り置きでもしてるのではと思えるが、店を出ていく客の満足げな表情からそれはないと考える。

 

 

「あれ、おばあちゃんあれみて? なんか見覚えのあるひとが…」

 

「どれどれ? あー…なにしとるんじゃあのアホは?」

 

 

 店の外からガラス越しに見る店内。

 二人が見つめるのは、カウンターに立ち笑顔で接客をする眼帯をつけた金髪の女の子。

 二人がよく知る人物のいつもの服装・髪型とは違うが、あの顔は見間違えようもない…ナガンはため息を一つこぼし、今すぐ店内に殴り込みに行きたい気持ちをこらえるのだった。

 そしてようやく店内に入り、注文を受け付けるカウンターまでたどり着いたナガンは、カウンターを両手で叩き詰め寄るのだ。

 

 

「スコーピオン、お主こんなところで何やっとるんじゃ!? お主、今日は任務のはずじゃろうが!」

 

「はい? どちらさま?」

 

「とぼけるでない! お主の顔は説教で何回も見慣れておるわ、理由を説明してもらうぞスコーピオン!」

 

「あたしじゃないし!」

 

「認めたようなものじゃろう! まったく任務をサボってこんなところで…今日という今日は許さん!」

 

 怒り心頭のナガンがカウンターから身を乗り出しスコーピオンの胸倉を掴む。

 その瞬間、店内に冷たい殺気が張りつめる…自身に注がれる無数の殺気にナガンは咄嗟に腰のホルスターに手が伸びるが、寸でのところでスコーピオンの手がそれを止めた。

 先ほどまでとぼけていた様子のスコーピオンは素早くスタッフたちに目配せをすると、店内に張りつめていた殺気が消える。

 

「お主、うちのスコーピオンではないな? 何者じゃ?」

 

 ナガンは背後の指揮官をかばうように立ちふさがりつつ、周囲のスタッフに目を向ける。

 スタッフたちは先ほどと同様に接客をしているが、その意識はナガンと指揮官に向けられていることが分かる。

 

「はぁ…折角バーガーミラーズの華々しいデビューが台無しじゃん。ま、いつまでも隠せもしないか…奥の部屋に来て、教えてあげるからさ」

 

「指揮官、下がっておれ…わしが話をつけてくる」

 

「おばあちゃん、どうしたの?」

 

「ありゃ? もしかして、あんたがここの指揮官さん? ということは…結婚したのはあんたか! あたしが出した祝辞、読んでくれた!?」

 

 スコーピオンのその言葉を聞いた瞬間、ナガンはすぐさま察し、有無を言わせず指揮官を店の外へと退避させる。

 そして自身は扉の前に立ちスコーピオンを睨むのだ。

 

「そうか、お主の正体が分かったぞ…まさかこんな堂々と入り込んでくるとはな。のう、国境なき軍隊(MSF)よ」

 

「なはははは。ばれちゃったね~、こりゃミラーのおっさんに怒られそうだよ」

 

 観念したスコーピオンはその場で笑い声をあげると、パンと手を叩く。

 するとスタッフたちはそれを合図として、店に並ぶ列に規制線を張り、本日終了のプラカードを店の前に設置した。

 店に並ぶお客さんからはブーイングが起こるが、そこはスコーピオンがぺこぺこと頭を下げて謝罪するとともに、値引き券を手渡し今日のところは帰ってもらう。

 店内のお客が全ていなくなり、一息ついたところでスコーピオンは店の奥に二人を招くのであった…。

 

 

「ほんじゃ、どーも初めまして二人とも。MSF所属、スコーピオンだよ、よろしくね~」

 

「あ、初めまして。ユノです」

 

「こら、呑気に自己紹介するでない!」

 

「なはははは! ばーちゃんツッコミのセンスあるねぇ!」

 

「お主にばーちゃん言われる筋合いはないわ! それで、お主らは何故ここにおるのだ!? 事と次第によっては…!」

 

「ユノちゃんハンバーガー食べに来たんでしょ? これ、美味しいから食べてきなよ」

 

「わぁ! おいしそう、いただきます!」

 

「いただくな! そしてバカサソリはわしの話を聞け!」

 

 真剣な様子のナガンをそっちのけできゃっきゃうふふと戯れる二人。

 しまいには一人で躍起になってるのがバカバカしくなるが、以前から警戒していたMSFが目の前にいる状況で、油断することは無かった。

 

「それで、なんだったっけばーちゃん?」

 

「もう怒鳴るのも疲れた…。お主は何しに来たんじゃ、MSFの侵攻計画でも立てとるのか?」

 

「あー…MSFとこのお店は関係ないよ。副司令のおっさんの個人的趣味のハンバーガー屋さんだからさ」

 

「それを信じさせる説明はあるんじゃろうな?」

 

「もう、そんな人のこと疑ってばかりでいると、しわが増えるよ?」

 

「余計なお世話じゃ! まったく、スコーピオンという戦術人形はどうしてどいつもこいつもこう…アホなのじゃ!」

 

「えへへへ、そう褒められましても~」

 

「褒めとらんわ!」

 

 ゼェゼェと息を乱している傍らで、指揮官はハンバーガーを美味しそうに頬張り、スコーピオンがそれをにこやかに見つめる…もう本当にバカバカしくなってきたので怒るのも気を張り詰めるのもやめにするナガンであった。

 

「まー、ばーちゃんが心配する理由も分かるよ。逆の立場だったらあたしも同じ反応するだろうしさ。このお店がMSFの活動と関係がないのは本当だよ、まあ信じるも信じないもばーちゃん次第だけどさ」

 

「おばーちゃん、スコーピオンは嘘を付いてないと思うよ」

 

「なぜ分かるんじゃ?」

 

「なんとなく…だけど。それに、なんだかいい人そうだし」

 

「わお」

 

 言われたスコーピオンも驚く指揮官の言葉。

 根拠のない指揮官の勘にナガンはジト目で睨むが、本人はいたって真面目な様子…こういうところがお人よしなのだろうが、逆にこういうところが部下たちに慕われる理由なのだろうなと改めてナガンは思う。

 

「ありがとユノちゃん、嬉しいよ。なんか思いだすな~、レイラさんは元気にしてる?」

 

「え?」

 

「お主一体どこまで…いや、レイラは…指揮官の母親はもう」

 

 ナガンのその言葉ですべてを察したスコーピオンは一瞬目を見開いたかと思うと、すぐにうつむき目を伏せる。

 その仕草はまるで哀悼の意を示しているかのようにも見えた。

 沈黙が少しの間続いた後、スコーピオンは再び顔をあげると懐かしむ様子で窓の外の景色を眺めるのだ。

 

 

「昔はあたしもグリフィンにいたんだ。色々事情があって今はMSFにいるけどさ。グリフィンにいた頃は、あたしみんなにバカにされたり指揮官にも叱られたり失敗続きでさ。もうなにもかも嫌になってた時、模擬訓練の時にユノちゃんのお母さんに会ったんだ。会ったのは一度きり、だけどレイラさんは落ちこぼれのあたしを褒めてくれたんだ。嬉しかったよ、誰にも褒められたことなんてなかったからね」

 

「それは驚きじゃな…それで、祝辞を寄越したというのか。お主、案外律儀じゃの」

 

「あはは。噂で聞いたからね、レイラさんの子どもが結婚するって。本当はあの時褒めてくれたお礼をレイラさんに言いたかったんだ…ありがとうって。だからかな、さっきユノちゃんがあたしをいい人って言ってくれた時、レイラさんと被って見えたんだ」

 

「お母さんと、あたしが?」

 

 指揮官の呟きに、スコーピオンは微笑み頷く。

 スコーピオンとの意外な接点にナガンは驚くとともに、目の前のスコーピオンが決して嘘を付いているわけではないことも察する。

 

「なーんて、すっかり辛気臭い空気になっちゃったね。一応バーガーミラーズの社訓は、お客さんの笑顔が何よりの褒美なのにね」

 

「ほう。じゃあ、笑ってればいくらでもハンバーガーを食べさせてくれるのか?」

 

「お、言うようになったじゃんばーちゃん。お生憎、代金はいただくよねぇ。折角だからハンバーガー食べてってよ、ほんとはもっと売るはずだったからいっぱい余っちゃってるし」

 

「うむ、お主に敵意が無いことがはっきりしたし構わぬだろう。じゃあ――――」

 

 

 ドカーンと、突如閉められていた店の扉が開かれる。

 異様な物音にスタッフたちが包丁を片手に跳び出してきたが、現われた金髪少女はそんなことお構いなし。

 ハンバーガーを目当てにやって来た少女はきょろきょろと店内を見回すと、ハンバーガーを食べる指揮官とナガンを見つけると大声をあげる。

 

 

「あー! 指揮官とナガンばーちゃんこっそりハンバーガー食べてずるいよって、あたしがもう一人いるよ、なんで!?」

 

 現われたのはこのS09地区所属のスコーピオンだ。

 

 店内に現われる同一の戦術人形、一応服装が違うので見分けがつくが…。

 

「ちょっとちょっとちょっと! あたしなにやってんの!? どこのあたしなの!?」

 

「うわ、凄い遭遇だね! あたし? あたしはMSF所属のあたしだよ! 今はここの店長だけどね!」

 

「うわ、あたし店長になったの!? あたしも偉くなったなぁ! ねえ、あたしにも店長やらせてよ!」

 

「いいよいいよ! サイズもあたしと同じだしすぐに同じ制服持って来るから!」

 

「ありがとー! まさかあたしが隊長になる前に店長になれるなんて! あたし、今日からバーガーミラーズで働くね!?」

 

 

「ええいやかましいわ! というかスコーピオン!」

 

「「はい?」」

 

「揃って返事するでない! そして早速着替えるな、見分けがつかん!」

 

 ダミーリンクよりも息の合った二人の行動に、ナガンは思考が追いつかない…しどろもどろになりながら基地のスコーピオンを問い詰めようとするも、マシンガントークでぎゃーぎゃ騒いでいるので、そのうち諦めてしまう。

 

「よろしくね、MSFのあたし!」

 

「おうさ! そうだS09地区のあたしさ、折角だからみんな呼んで来なよ! ばーちゃんのクレームのせいでハンバーガー滅茶苦茶余っちゃったからさ、今回はなんと大サービス全部無料で食べさせてあげるよ!」

 

「わーお! さすがあたし、やっぱりあたしは大物だと思ったんだ! これはあたしの太っ腹を基地のみんなに知らしめるチャンスだね! というわけで、あたしみんな呼んでくるねー!」

 

 

 そいじゃ、そう言って来た時と同じ勢いで出ていったS09地区所属のスコーピオン。

 この茶番劇で残り少なかったナガンのライフにとどめを刺したようで、彼女はぐったりとテーブルに突っ伏すのであった…。




シリアスとギャグを行ったり来たり、スコピッピの才能がなせる業ッッ!

コラボ先のそれいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!は200話を超えるお化け小説!
こうしてコラボの輪が広がってくんやなって…(夢叶えたり)

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