METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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悪魔のささやき

「――――――よいしょ、よいしょ…!」

 

 昼下がりの穏やかな海風が吹くマザーベースの甲板上にて、97式が一人重たそうな木箱を台車に乗せては倉庫に運ぶという作業をひたすら続けている。コンテナと資材倉庫を行ったり来たりする97式の後をトラの蘭々が構って欲しそうに追従するが、生憎作業が忙しく遊んであげる時間はない。

 いつもならMSFの兵士や戦術人形の誰かしらはマザーベースにいるのだが、兵士たちは戦地に派遣され戦術人形はほとんどが鉄血との境界にはり付いている。

 ミラーは再び忙しくなった仕事によって司令室からほとんど一歩も出ることなく、97式は一人で研究開発班や糧食班のお手伝いをしているというわけだ。

 

 今ではすっかり他の人に慣れてきたこともあり、頻繁に外を出歩く本来の快活さを取り戻しつつある。

 その活発なところで遊んでほしがる蘭々であるが、なかなか構ってくれない97式に対しついにじゃれつくのだ。懐いているとはいえ、大柄なトラである、戦術人形の97式は押し倒されてもみくちゃにされてしまう。

 

「もう蘭々ダメだってば! また後で遊んであげるから!」

 

 鼻の先を軽く叩いてやると、蘭々は渋々引き下がる…それでもまだ遊んでほしそうにじっと見つめる蘭々に罪悪感を感じる97式。そこへ、ちょうど通りかかったスタッフが作業を代わってあげるからと言われ、97式は素直にその好意に甘えることとした。

 そんなわけで遊びの時間が始まった。

 広いマザーベースの甲板を使って、ボールを投げたりぬいぐるみを与えて遊ばせる…ぬいぐるみはあっという間に八つ裂きになるが、いくらでもあるので大丈夫だろう。

 久しぶりに97式に遊んでもらえて蘭々は大喜びのようだ……そんなほのぼのとした場面に、一人の人形がズタズタになったぬいぐるみを引きずりながら現れる。

 

 不機嫌そうな顔で眉間にしわを寄せているのはちびエグゼことヴェルだ。

ヴェルが不機嫌な理由は、蘭々と同じで構ってもらえないことが原因だと思われる。

 ヴェルがママと認識しているエグゼも、お姉ちゃんと呼び慕うハンターも、遊び相手のスコーピオンも今は任務で不在…遊び盛りがすごいヴェルは元気を持て余し、ヴェルの本質でもある凶暴性が見え隠れしてしまっている。

 

「おいおまえ! そのトラをおれとあそばせろ!」

 

 そんなヴェルが蘭々に目をつけて、遊び相手に指名するが、蘭々は誰にでも懐くわけではなくヴェルも例外ではない。

 ヴェルを一度見ただけでそっぽを向いてしまう蘭々に苛立ち、その尻尾を無理矢理ヴェルは引っ張ろうとする……無論、そんなことをしようとすれば猛獣の蘭々は怒り、ヴェルを傷つけてしまうだろう。

 そうなる前に穏便にヴェルを蘭々から離れさせるのだが、当のヴェルはというと、ならお前がおれと遊べと言わんばかりに不機嫌そうな目でじっと97式を見つめるのだ。

 

「お困りですね97式ちゃん」

 

「スオミ、いいところに! ヴェルちゃんどうしよう?」

 

「うーん、折角ですから私がヴェルちゃんの相手をしますよ」

 

 ユーゴのイリーナから訓練を理由にMSFに預けられているスオミは、当たり前だが実戦には送られない。

 今はWA2000の訓練を卒業し、他のスタッフから戦闘やその他知識を教えてもらうためにマザーベースに滞在している…そんな優しい性格で知られるスオミがヴェルの面倒を見てくれる。

 97式はスオミなら大丈夫だろうとほっとしたが、次の瞬間にはヴェルがスオミの手に噛みついた。

 

「い、いたた……! これは、やっぱりエグゼさんのダミーですね…!」

 

「がるるるる…! きやすくおれにさわるな!」

 

「あははは…ごめんねヴェルちゃん」

 

 それでも、まだ何か言いたそうに睨んでくるヴェルに二人は手を焼かされる。

 まあ、遊んでくれる人がいなくて寂しいだけなのは分かっているので邪険にすることもできず、仕方なく蘭々と遊ばせて見る。

 

「おー……おー…!」

 

 蘭々の背にまたがるとヴェルは新鮮な感覚に大喜びであった。

 ただ歩いているだけの蘭々だが、トラの背に乗って散歩をするという経験は滅多にできないので、楽しいのだろう。

 だがそれもすぐに飛び降りて、今度は二人に肩車しろという要求をするのだ。

 

「はいはい、私が肩車してあげますよ」

 

「おまえちびだからやだ、97式、おまえがかたぐるましろ!」

 

「ち、ちび…!?」

 

「あはは……ほら、おいでヴェルちゃん」

 

 傷心のスオミに苦笑しつつ、ヴェルを肩にのせてあげる。

 ヴェルはいつでも高いところが好きだ。

 

「なあ、ママとハンターはいつかえってくるんだ?」

 

「うーん、いつだろうね? 今は忙しいみたいだし」

 

「そっか。ママがかえってきたらいっぱいあそんでもらうんだ、ハンターもいっしょにあそぶぞ!」

 

「うん、そうだね。だからママが帰って来るまでヴェルちゃんもいい子にしてようね?」

 

 ヴェルを肩車しながら97式は甲板を笑いながら散歩する。

 そのまま甲板の端に腰掛け、3人と蘭々はのんびりとした時間を送る…そのうち、暖かな陽気にあてられて蘭々は寝息を立て始め、ヴェルもその傍らで目を閉じて寝ている。

 

「大人しく寝てくれて良かったですね」

 

「そうだね…ヴェルも、ママがいなくて寂しかったんだよね」

 

「みんなに可愛がられてましたからね……それにしても、いつ見ても水平線に沈む夕陽はきれいですね」

 

 洋上に建設されたマザーベースからは、天気が良ければ毎日のように、水平線に沈む夕陽を見ることが出来る。

 夕陽が水平線と空を赤く染め上げる光景はまさに絶景で、これが好きで毎日日没に向かう西の空を眺める人形もいるくらいだ。

 97式もまたその一人で、見慣れた夕陽を見ているだけのはずなのに、彼女は自身の身体につけられた古傷が疼くのを感じた…。

 同時に思いだしたのは、その身体とメンタルに消えない傷を付けた存在。

 

 

「どうしたんですか、97式?」

 

 無意識に身体を丸め込み震えていた97式を、スオミは気遣うようにそっと撫でる。

 

「大丈夫…なんでもない。みんな、みんな無事に帰ってくれるといいね…」

 

「97式……大丈夫ですよ。皆さんとても強い方ですから。必ず、帰って来てくれますよ」

 

「うん、そうだね……そうだよね?」

 

 いつしか太陽は沈み空は黄昏時を迎え、そして逢魔時へと変わっていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れ過ぎ、まだ西の空がうっすらと明るさを残す黄昏時。

 無人地帯を挟む鉄血陣からは周囲が暗くなる前から、多数のサーチライトが無人地帯の廃墟とその周辺を照らしていた。

 鉄血陣営から照明弾が打ち上げられたとき、何事かとMSF側の兵士たちが警戒態勢に移るが、何事も起こらず。

 照明弾が燃え尽き、再び辺りが暗闇に包まれると、MSF側もサーチライトを取りつけて警戒態勢を解除するのであった。

 

 

「今日も何ごとも無かったな」

 

「何ごとも無いのが一番だがな。なんか飲んでくかMG5?」

 

「いただこう」

 

 連隊司令部が置かれているテント内に、大隊長としてその日の報告をあげにやって来たMG5。

 報告と言っても、彼女が言う通り無人地帯にAR小隊が閉じ込められていると発覚して以来、何も進展がなく半月が過ぎようとしているので、ほとんど報告することもない。

 ただ部隊の移動と、配給の消費量といったものをあげているだけだ。

 

 MG5の前にグラスを置き、木箱からとってきたウイスキーを注ぐ。

 ふと、ウイスキーのラベルを見たMG5は感心した様に頷く。

 

「ドイツ製か、珍しいな」

 

「連隊長特権さ。まあ、そんなに高いものでもないけどな」

 

 自分用にもウイスキーを用意し、二人は軽くグラスを小突き合いウイスキーを喉に流し込む。

 喉を焼くような熱さが身体を温めると同時に、熟成したウイスキーの芳しい香りがリラックス効果をもたらす。

 空になったグラスへと再度ウイスキーを注ぐ…そこからはお互いマイペースに飲んでいく。

 特に何かを話すわけでもなく、ただ同じ空間で同じ酒を嗜むだけの間だ。

 

「なあMG5……お前とキャリコ、夜中こっそりいちゃついてるんだって?」

 

「ごふっ…!? けほっ…! けほっ…! な、何だって!?」

 

 ちょうどウイスキーを飲んでいたさなかに突かれたキャリコとの色恋事情、予想外の話題にMG5は咳きこむ。

 何度か咳きこみ落ち着いたところで一息つき、MG5は恨めしそうにエグゼを見つめる。

 

「どうして、それを…?」

 

「お前ら、隠しきれてると思ってるようだけどバレバレだからな?」

 

「い、いつからその…私とキャリコの関係を?」

 

「かなり前から。おとといだって、オレが散歩してたら、お前ら人気のない塹壕の中でおっぱじめやがって。しかし女同士でもやれるもんだな、無抵抗のキャリコを壁に押し付けてお前―――」

 

「勘弁してくれ……」

 

「まあ抑えられないもんはしょうがないとして、もっと上手く隠すことだな。こそこそ静かにな…キャリコにも言っとけ、お前の喘ぎ声がうるさくて寝れないってよ。それにしてもお前、随分くさい言葉で責めるんだな。ほら、キャリコに言うみたいにオレにも言ってみろよ」

 

「勘弁…してくれ……!」

 

 羞恥心で真っ赤のMG5にニヤニヤと笑う。

 あまり苛めすぎるとかわいそうなのでほどほどにするが、弱みを突かれた恥ずかしさからかMG5はそそくさと司令部を立ち去っていった……この後酔った勢いでキャリコの元に向かったのは言うまでもない。

 

 

 

「こそこそね………」

 

 

 司令部で一人、エグゼはウイスキーを口に含みながら取り出した葉巻を眺める。

 スネークが好む葉巻と同じ銘柄、というよりスネークに貰った一本だがそれをエグゼは消費せず大切に持っている。

 火をつけず、葉巻を鼻に近付けてその匂いを嗅ぐ。

 

「こそこそ静かに、誰にもばれないように…このオレにすらも。上手くやれよスコーピオン…オレはあいつらを許しはしないが、それで忘れてやってもいいさ…」

 

 グラスを揺らしながら言うエグゼの視線は、葉巻からテントの外に向けられる。

 こうしている間にも、スコーピオンが内密に準備を進めていることだろう。

 連絡を寄越してこないということは、スコーピオンの計画がうまくいっているということだ。

 

「これで良かったのか…? ハンター、お前はどう思うかなぁ?」

 

 思い浮かべるのは、今は別な戦地で任務につく親友の顔だ。

 今のハンターとAR小隊に因縁はない。

 AR小隊が破壊したハンターはもういない、今存在しているのは新しく生まれ変わったハンターだ。

 良く言えば報復を止めた、悪く言えば報復を成し遂げられなかった自分を親友はどう思うだろうか?

 

 "知るか"そんな言葉が吐かれることは容易に想像出来る。

 だが、答えを聞かずともせめて声だけを聞きたい…今はそんな気分だ。

 そう思い、エグゼは親友へ連絡を取ろうとした時、自分向けに通信がかかってくるのだった。

 スコーピオンか、または戦車の扱いでまた愚痴をこぼそうとするFALからの連絡か…グラスをテーブルの上に置き、エグゼは通信に応えるのだった。

 

 

「オレだ、何の用だ?」

 

『……やぁ、久しぶりだな処刑人。あのわけのわからない島以来だな、元気にしてるか?』

 

 

 その声を聞いた瞬間、エグゼは目を見開き、その場から立ち上がる。

 

 まさか、あり得ない、こんな風に連絡をとってくるなんて……全く予想もしていなかった相手だった。

 いや、だが考えればいつかは接触を図ってくるであろうことは予測できていたはずだった。

 エグゼは一度、呼吸を整え、乱れた気持ちを落ち着かせる。

 

 

「あぁ、久しぶりだな…姉貴。こんなに堂々と連絡とってくるなんて全く予想もしてなかったぜ、おかげでちびりそうだったぞ」

 

『サプライズが好きなのさ。賢いお前の事だ、あたしが今どこに居るのかは分かってると思うが…』

 

「あぁ……オレたちの真向かいにいるんだろう?」

 

『あぁ、そうさ。そして今、あたしとお前の間にいる共通の敵を狙っているというわけだ』

 

 相手は、アルケミスト……エグゼが鉄血の中で最も敬い、そして恐れる戦術人形。

 その存在をなんとなく感じ取っていたエグゼであったが、それでもこのように大胆に連絡を図ってくることは予想もしていなかった。

 

「なんのことか知らないが、お互い下手な接触はするべきじゃないと思うがな」

 

『何故? 誰に配慮してだ?』

 

「オレたちは世界中のあらゆる紛争に介入したが、鉄血の抗争は…事情が違うだろう?」

 

『下手な言葉で取り繕うのは止めなよ処刑人。言っただろう、あたしらの間にいるのは共通の敵じゃないか。それとも何か、もっとはっきり言ってあげないと気付けないのかな? AR小隊、お前も奴らが憎いはずだろう?』

 

「あぁ……知ってるさ。だが奴らに関わる気はねえ」

 

『何故だ、奴らが憎いんだろう? 復讐したいと思わないのか? 奴らが志半ばで苦痛にまみれてくたばる姿を、お前は何よりも見たいはずだろう?』

 

「事情が変わってんだよ……AR小隊の首をとるってことは、グリフィンと事を構えるってことだ。MSFは、グリフィンと表だって争うつもりはない」

 

『ふーん……お前のスタンスは理解できた。じゃあ少し話し方を変えてみようか……こそこそ動いているお前のお仲間に伝えておきな、お前たちの計画は絶対にうまくいかないとね』

 

 アルケミストのその脅迫めいた忠告にエグゼは凍りつく。

 アルケミストが言っているのは、極秘裏に進められエグゼにも黙って進行しているスコーピオンらによるAR小隊の救出計画の事に違いない…。

 冷や汗が、静かにエグゼのうなじを落ちていく。

 即座に否定することもできたかもしれないが、下手な言い訳はすぐに看破される。

 

『明日、あたしらはAR小隊に対し攻勢を仕掛ける。全軍を動員する…邪魔をする者は誰だろうと容赦しない、敵とみなし全てを殲滅する』

 

 動揺するエグゼにアルケミストはさらにたたみかける。

 今までお互い静観を通していた状況に起きる変化、すなわち戦争だ。

 

『グリフィンと事を荒立てたくない気持ちはわかるが、お前の古巣である鉄血は蔑ろか? お前が頑張って避けていたあたしらとの対立、AR小隊のクズへの配慮で台無しにするのか? そうじゃないだろう処刑人…今すぐお仲間に伝えろ、手を引いて塹壕に引きこもってろってね』

 

「あんたこそ分かってんのか、MSFと対立することは代理人も望んでないんだろう!?」

 

『声が震えてるぞ、無理して吠えるなよ。もちろんあたしらも対立は避ける努力はしてきたさ……だけどな、獲物を目の前で逃がされて黙ってられるほど、あたしらも温厚じゃないんだよ』

 

「くっ…!」

 

『処刑人、あたしがどうしてここまで言ってあげてるかわかるかい? お前はあたしの可愛い妹分だからさ…お前を一番理解しているのは、このあたしだよ。だからあたしの言うことを聞きな、決して悪いようにはしない。仲間を下がらせて、後は任せろ。お前の代わりに、あたしが復讐を果たしてやろうじゃないか』

 

「あんた、何を言ってるんだ…!?」

 

『あたしらがあのクズ共を追い詰め、奴らの悲鳴を聞かせてやる。クズ共が八つ裂きにされる姿を見させてやる。お前が憎んでやまないM4の首を斬り落として送ってやる……その間、お前らは傍観していればいいさ。所詮AR小隊の悲劇は対岸の火事、MSFには関係なかった…っていうことにしてね』

 

 アルケミストは甘い言葉で、エグゼの決意を揺らがせる。

 親友のスコーピオンの想いに一度は応えたエグゼだが、その胸にはやはりM4への怨みが残っている…それをアルケミストは掘り起こし、復讐の道へと誘惑する。

 

『復讐や報復は悪ではない、人が前に進むための課程なんだ。復讐を果たすことで人は前に進める、未来を望める。憎しみがそう簡単に消えると思うか? これを解決するには報復しかない……それともお前は復讐を果たせない牙が折れたオオカミか? いや、噛みつく牙を抜かれた番犬以下の愛玩動物になり下がるつもりか? バカバカしい…』

 

「うるさい…! お、お前がこのオレを理解してるだって!? ふざけんな!」

 

『理解してるさ、お前は今の仲間も守りたいと思ってるんだろう? なら、必要なのは仲間を襲う敵を倒す牙だ…敵を迎え撃つ闘志だ。処刑人、噛みつく牙も闘志もない奴に仲間を守れると思うか? お前がAR小隊を見逃し日和見することで牙は丸くなり、いつかは抜け落ちる。処刑人…お前のあの鋭利な牙はどこへ消えた? 純粋無垢で穢れ無き闘志はどこに消えた? いまこそ牙を取り戻すべきだ……報復だ、報復を果たせ。クズ共の死を一緒に見届けようじゃないか。奴らの死は、お前の牙を鋭く研ぎ澄ますだろう』

 

「だが…オレは…! スコーピオンと!」

 

『ならあたしらと戦争をするか? かつてない戦争が起こる…お前の大切な仲間が大勢死ぬ。そこでもお前は誰も憎まず、恨まずに前を歩き続けられるか? いいや、想うのは二つだ……仲間を大勢殺したあたしを憎むか、あの時AR小隊を見捨てていればという後悔の念さ…どっちにしろ、お前は奈落の底に落ちる。そうはなりたくないだろう? あたしだって、そうしたくはない……分かってくれよ処刑人、お前のためにあたしは言ってやってるんだ』

 

 アルケミストは穏やかに、優しさすら感じる声色でただエグゼを誘惑していく。

 憎しみと、仲間を失うことへと恐怖をあおる……エグゼの沈黙は、アルケミストに愉悦をもたらす。

 

『AR小隊が消えれば、お前は前に進めるんだ。そうしたら、またあたしらと秘密の仕事をしよう…それが、お前が望んでいたことじゃないか……処刑人、あたしがここに来た意味を考えることだね』

 

 

 そこで、アルケミストからの通信は途切れる。

 エグゼは力なく椅子に割り込み、頭を抱え込む……しばらくの間、そのまま考え込んでいたエグゼであったが、やがて外の兵士を呼びつける。

 

 

 

 

「全部隊に…スコーピオンに伝えろ…! AR小隊には絶対に手を出すな、川を越えて来たものは誰だろうと射殺しろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――はぁ……あのバカ……聞いた? あの調子じゃアルケミストに丸め込まれたに違いないわ」

 

「えー!!??あのエグゼを言葉で丸め込むって、相当難易度高いと思うんだけど!」

 

「うー……なんでこんな難しい任務引き受けるんだよぉ……」

 

「文句を言うんじゃないの。ヘリアンからは多額の報酬を約束させたんだからね」

 

「こいつのやる気のなさはムカつくけど…上手くいく確率は低い、勝算はあるのかしら、45?」

 

「その低い確率を引き当てるのが私たちの仕事でしょう? それに……」

 

「エグゼは私たちを家族って言ってくれた! 家族を守るためなら、たとえ火の中水の中、無人地帯の中だよ416! そうだよね45姉?」

 

「そう、9の言う通りよ。文句があるなら後で聞いてあげる、任務が終わった後でね。さあ404小隊、一世一代の大勝負にでるわよ!」

 

 

 




アルケミストはエグゼを利用しているが、エグゼを想う気持ちは確かにある。
だからこそやりきれないな…

膠着状態が終わる……。

MSF、鉄血、AR小隊そして404小隊……役者は揃った、地獄の宴が開かれる


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