METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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マザーベース:目覚めの時

 入手したデータの解析に二日、そこから修復計画を半日かけて話しあい、同時に必要な資機材等の調達に取り掛かる。

 MSFがこれまでの活動を通して関わっていた他社PMCや企業、そしてユーゴの連邦にも連絡し必要なパーツや機材等を急ピッチで調達し、そこに投入する資金を惜しむことは無かった。

 そして全ての用意が終わり、傷付き自己修復が不可能なほどに追い込まれていたエグゼの本格的な修復作業へと取り掛かるのであった。

 

 データが運ばれてからというもの、研究開発班はその解析と修復作業のために不眠不休の作業が続けられる。

 研究に命をかける研究開発班のスタッフは、通常過労の心配から本人たちが遠慮しても休息を与えられているが、今回はエグゼを救うためという名目もあり24時間彼らは休むことは無い。

 

"これでずっと研究してられる、やったぜ!"

"我らに休息という概念などないのだ!"

"諸君、私は研究が好きだ"

"研究すればよかろうなのだーーッ!"

 

 心配せずとも、研究したくて仕方がない連中であるため、ほっといても勝手に研究を進めて勝手に過労から医療班の世話になる彼らである。

 そういうわけで、才能をフルにつぎ込む彼らとはまた別に、ストレンジラブが単独で取り掛かるのは…人形にとっての心臓とも言うべき、コアの製造だ。

 戦闘でコアを損傷したエグゼに何よりも必要なものであり、これが無ければエグゼは以前のように動くことは出来ない…。

 

 そうしてストレンジラブ及び研究開発班の奮闘が続いていた……そして、その時はついにやって来たのだ。

 

 

「やった…ついにやったぞ…!」

 

 

 不眠不休で修復作業に当たっていたストレンジラブは、最後の仕上げを施した際に力尽き、コーヒーを一口だけすすった後に死んだように眠りにつく…研究に命をかけるスタッフたちもまた、過労が祟り残らず医務室送りになるのであった。

 まあ、何人かは起きて引き継ぎを行い、研究から得られたデータは医療班へと送られて、今後はそこで人形たちの修復のために利用される。

 

 

「うーん……?」

 

 

 気だるさを感じながら、エグゼは目をぼんやりと開く。

 ぼうっと白い天井を見ていると、彼女の視界に微笑みを浮かべるUMP45が写る。

 

「おかえりなさい、エグゼ…」

 

 いまだ覚醒しきれていない様子のエグゼの横髪を、UMP45は優しく撫でる…彼女の細い指がエグゼの頬を滑っていくと、くすぐったさからかエグゼは目を細める。

 そんな仕草も、エグゼが生きている証と喜ぶUMP45…普段の取り繕った仮面はなく、ただただ、大切な友だちの目覚めを喜んでいた。

 

「やっほーエグゼ、気分はどう?」

 

 エグゼの視界にスコーピオンが飛び込むと、エグゼは気だるい身体に力を入れてゆっくりと起き上がる…。

 元の身体をベースとし、欠損した部位を新規に製造して修復させているため、腕や指先の動きにやや違和感を感じているようだ…腕を伸ばしたり、手を開いたり閉じたりを繰り返し、新しい自分のボディーの調子を確かめている。

 

「どこか動かしにくいの?」

 

「いや、前の義手よりははるかにマシだよ……それになんだか、眼も良く見える」

 

「眼も損傷してたからね。新しくしたことで視覚はよくなってるかも…あーあたしも眼球入れ直してもらおうかな?」

 

「お前の頭じゃ、眼球二つ分の情報整理しきれないだろ?」

 

「あー、言ったなエグゼ? こりゃまたマザーベースもうるさくなるね、あと一か月くらい寝てればよかったのに」

 

 エグゼの冷やかしにスコーピオンはすかさず冷やかし返す…それから小さな笑い声をこぼす、やがてその声は大きくなり、二人とも腹を抱えて大笑いするのであった。

 二人の皮肉交じりのやり取りに、その場にいた416などはヒヤリとしたが、この二人にとっては単なるジョーク……優しい言葉などかけるつもりもないし、期待してもいない。

 ただ前と同じように、バカを言って笑い合う……再会を喜びあうベタな言葉は、二人の間には不要なのだ。

 

「んで、このオレ様が寝てる間になんかあったか?」

 

「教えて欲しかったら、さっきあたしをバカにしたことを謝るんだね」

 

「いーから教えろアホサソリ」

 

「まったく、可愛げがないんだから。えっとね、まずは何から教えようか……やっぱり、あの後どうなったか…アルケミストの事が気になるんじゃない?」

 

「そうだな…ドリーマーのカスに邪魔されちまったからな……いいぜ、全部教えろよ」

 

 スコーピオンの表情から、悪いニュースがもたらされることを察したのだろう…さっきまでの緩んだ気を、エグゼは引き締めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね…そいつはうまくねぇな。ちくしょう、ドリーマーのアホんだら…」

 

 スコーピオンから全てを聞かされたエグゼは、あの戦いの結末、そしてアルケミストの現状を知ることになる。

 あの戦いは敗北が目に見えていたことはエグゼも分かっていたが、最後に憎しみに取りつかれていたアルケミストを、あと少しのところで救えたのをドリーマーに邪魔された…狙撃され、ジュピターの砲撃で吹き飛ばされ、今日までまともに動けない状態に追い込まれていたのだ。

 宿舎の通路を歩きながら、エグゼは仇敵ドリーマーへの悪態をこぼす。

 

 そんな時、宿舎の通路の向こうから、見覚えのある姿を見るやエグゼは花が開くかのようにぱっと笑顔を浮かべると、凄い勢いで走りだしたではないか。

 

「スネークッ! おりゃー!」

「おいエグゼ、落ちつ――――うっ!」

 

 突っ込んでくるエグゼを制止させようとするスネークだが、逃げ場のない通路で猪のように突っ込んできたエグゼを避けることは出来なかった…仕方なく飛びついてきたエグゼをしっかり受け止めたが、勢いに乗ったエグゼにそのまま押し倒されてしまった。

 

「スネーク、スネークだ! ヘヘヘヘ…」

 

「こらこのメスゴリラ! スネークから離れろ! こいつめ、この!この!」

 

 目覚めてから初めて会ったスネークを押し倒し、猫がそうするように身体を擦り付ける…自分の匂いをこすりつけているのか、あるいはその逆か。

 最近はなりをひそめていたが、前のような激しい愛情表現に404小隊のメンバーはドン引きした様子……そしてスコーピオンは大好きなスネークを盗られたことで発狂し、身体を擦り付けるエグゼをげしげし踏みつけるが、エグゼはお構いなしだ。

 

「ヘヘヘ、なんかまた身体が熱くなってきたぜ……スネーク、オレちゃんと生き返ったんだぜ? ほら、触って感じてくれよ…な?」

 

「いい加減離れろメスゴリラ! こうなりゃ天誅だ!」

 

「うるせえ! スネークは今はオレのもんだ!」

 

「なにをこの!! ぐえ……」

 

 跳びかかって来たスコーピオンにカウンターを決めると、当たり所が悪かったのか、スコーピオンは目を回して気絶した。

 邪魔者を排除したところで、エグゼは再度スネークに身を寄せた。

 

「スネーク、オレの気持ちいつまで放っておくんだよ……ずっと好きだって言ってるじゃん。スネークだって女は好きだろ…? オレも女なんだぜ?」

 

 艶かしい表情で笑みを浮かべ舌なめずりをする……普段見ることが出来ないエグゼの妖艶な仕草に、UMP9などは顔を手で覆いつつ指の隙間からはらはらした様子で一部始終を観察している。

 CQCの達人であるスネークも拘束しているのには驚きだ…これぞ愛のなせる技ということだろうか?

 そんな時である…宿舎の扉が勢いよく開かれ、ちびエグゼこと愛娘ヴェルが登場だ。

 

 豪快な物音にハッとした時には、ヴェルは先ほどエグゼが仕掛けたように勢いよく突っ込んでいた。

 受け止め切れなかったエグゼは、みぞおちのあたりにヴェルの強烈な頭突きを受けて悶絶する…しかし、ママと再会できたヴェルはそんなことお構いなしにエグゼに抱き付くのであった。

 

「ママー! たいいんおめでとー!」

 

「ゲホ…! ケホッ……このちびっこめ、よくもやりやがったな…!」

 

「いひゃい、いひゃい! わーん!」

 

 懲らしめるのにヴェルの両頬を引っ張ると、声をあげて泣く…それからエグゼから逃げたヴェルはスネークの足元に駆け寄り、涙ぐむ顔でエグゼをじっと見つめるのであった。

 スネークの咎めるような視線に怯んだエグゼは、ため息を一つこぼすと両手を広げてヴェルを招く……おっかなびっくり近寄ってきたヴェルをそのまま抱きかかえると、ヴェルはその腕の中で嬉しそうに微笑むのであった。

 

「あー、なんかこれが一番生き返った気がするわ」

 

「ママのにおいだ…エヘヘ」

 

「ふん、やっと見慣れた顔に戻ったわね。エグゼ、あんたにはそのアホ面が一番似あうわ」

 

「うるせえよ416、ぶち殺すぞ」

 

「やっちゃってよエグゼ。416ってば最近また人使いが荒いんだよ、ニートのくせに……って、痛い! なにするんだよ!」

 

「ごめん、手が滑ってついスパナで殴ってしまったわ」

 

 相変わらずの416とG11のやり取りにエグゼはおもわず笑みをこぼす。

 それからヴェルを抱きかかえながら、スネークと対面する…先ほどの乱れた表情とは打って変わり、凛とした表情で向かい合う。

 

「スネーク、オレはまたアンタに救われちまったな。オレの命も、未来もさ」

 

「お前ならきっと立ち上がると信じていたからな。今を勝ち取ったのは、お前自身の力が大きい」

 

「ヘヘ、大したこと言いやがって……スネーク、オレは前に言ったよな。もう一人じゃ生きていけないって、弱くなっちまったって……でもあんたはそれを弱さじゃないって言ってくれた。今ならその時の言葉も分かる、オレは一人じゃない…そうだろう?」

 

「そうだ。お前が他の誰かを必要としているように、お前を必要とする者がいる。互いの弱さをカバーし合える戦友を、お前は手に入れられたんだ。エグゼ…スコーピオンはきっとお前に厳しい言葉を言った事もあったはずだ。だがな、優しくするだけが友情じゃない。仲間のためを思い、時に厳しさを見せることも大事なんだ」

 

「よく分かったさ。こいつがいなければどうなっちまってただろうな…オレは今も、腐ったままだったかもな。サンキューな、スコーピオン……って、いつまでこいつ気絶してるんだ?」

 

 いまだ目を回して大の字で伸びているスコーピオン…しまりの悪さに微妙な空気が流れてしまう。

 呼びかけたり小突いたりもするが、よほど強烈にノックアウトされてしまったのか一向に起きる気配はなかった。

 

「ったく、こんなバカが恩人なんて恥ずかしいもんだな……なあスネーク、ヴェルを頼めるか?」

 

「ああ。行くんだな、アルケミストのところに?」

 

「おう。記憶が逆戻りしてようが関係ねえ、あんときアイツは確かにオレの手を取ろうとしてくれた…簡単さ」

 

「そうか…だが気をつけるんだぞ。同じやり方で救えるとは限らない…大事なのは…」

 

「やる気、元気、気合…だろ? 悪いなスネーク、これ以外にオレは知らねえよ」

 

「そうか、そうだな。行ってこいエグゼ、みんなで彼女の目を覚まさせてやれ…お前たちなら、必ずできるだろう」

 

「任せとけって、やる気があればなんだってできるんだ。このバカがオレに教えてくれたんだからよ…」

 

 エグゼはしゃがみ込み、いまだ目を回して気絶するスコーピオンの髪を撫でる。

 いつでも本気、気合と根性であらゆる困難を乗り越えてきたスコーピオンの勇気がエグゼを変えた一因といってもいい…それは本人も自覚していた。

 

「スコーピオン、お前にもお願いするかもな。オレと仲良くなれたみたいに、姉貴とも仲良く付き合ってくれよな……そんじゃ、行ってくる」

 

 

 

 




展開が早い気がするが、ワイははやくエグゼを活躍させたかったんや、文句は全部G11に行ってください

たった一話でシリアス・ギャグ・えっちぃ・ラブコメ・ママができるエグゼの万能感よ…。


次回、アルケミストと対決?
まあ、覚醒したエグゼの敵じゃないな……やる気、元気、気合です!
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