リベルタドールはその日激しく後悔をしていた…。
感情表現に乏しく(と思われている)、終始無言で冷静沈着そうに見える彼女であるが、リベルタと親密に触れあう者ならば彼女の微妙な表情の変化に気付くはずだ。
腕を組むリベルタの隣でソファーに座っているのは、先ほどからゲラゲラ大笑いしているエグゼとアルケミスト、つまらなそうなハンター。そして涙目になってぶるぶる震えているデストロイヤーの姿がある。
共通点は鉄血ハイエンドモデル。
さて、この日一同が同じ場所に集まった理由というのがエグゼがみんなを映画鑑賞に誘ったからである。
曰く、スリリングなアクション映画貰ったから一緒に見ようぜ…とのことで、アクション映画ならということでリベルタもデストロイヤーもほいほいついてきたわけだが。
いざ映画鑑賞をしてびっくり…ジャンルはスプラッター映画。
開始早々人間が残酷な手法で殺されるという衝撃的な展開によって、楽しいアクション映画だと思っていたデストロイヤーは早くも泣きそうになり、リベルタも固まっていた。
ハンターは興味が無さそうではあるが、エグゼとアルケミストは大盛り上がりだ。
「ハハハハ! よくこんな殺し方考えるな、なあ姉貴?」
「いやいや、あたしだったらこんな場面指一本ずつ斬り落として絶望味あわせるね。ここで殺すのはもったいないだろう?」
「さすが姉貴だ。あ、また死んだ…もう少しもがけよな」
「うーん…演出はいいが、出血量が大げさすぎだな。頸動脈切ってもこんなに血は吹き出ないよな」
スクリーンで繰り広げられる惨殺劇を笑いながら鑑賞し、時に批評を交えながら二人は語り合う。
そのうちデストロイヤーはショックから失神してしまったようだが…。
「すまないなリベルタ、うちのアホどもに付き合ってもらってな」
つまらなそうに映画を見ていたと思ったのか、ハンターが気を聞かせて声をかけてきてくれた。
それに対しリベルタは無言で首を横に振る…実際には小声でそんなことはないと言っているのだが、映画の音響にか細い声がかき消されてしまっている。
「まあ、南米でシカリオをやってたお前からしたらこの程度楽しいものでもないだろう?」
「…………」
リベルタは少し考えた末に、小声で何かを囁いたが、スクリーンに映る女性の甲高い叫び声にかき消されてしまった…その叫び声があまりにも大きかったため、一瞬リベルタの身体がびくっと震えたが、ちょうどその時ハンターは視線を逸らしていた。
その後は映画が終わるまでの間、リベルタはひたすら無言で耐えていた…。
映画が終わると、ふらふらと会場を出ていくリベルタ。
ちょうど彼女の事を捜していたWA2000とばったり行きかうが、リベルタの微妙な表情の変化に気付けるWA2000はすぐにリベルタが疲弊しているのを見抜いた。
何があったのかわけを聞けば、エグゼらと映画鑑賞…スプラッター映画を見ていたのだと小声で話すが…。
「ああいうグロイの…実は苦手なんだ…」
「へえ、意外ね。あんたカルテルのシカリオとして色々残酷な拷問とかしてたんじゃなかったっけ?」
「やりたくてやってたわけじゃない……ただそうしなければならなかったんだ……私は旧式だ、あんな扱いを受けていたとはいえ廃棄間近の私を拾ってくれた恩というのもあった。だから嫌でも恩に報いるためにだな…」
「ごめんリベルタ、大事なこと話してくれてるのはわかるんだけど、声が小さすぎて何を言ってるか分からないわ」
「…………」
「だからって黙るんじゃないの! まったく、あなたのそれは結構問題よね」
愚痴をこぼすWA2000に対し、リベルタはぺこりと頭を下げて謝罪する。
本人が言う頑張って話すよりジェスチャーで伝えた方が早いというのも、今ではなんとなく理解はできる。
まあ、戦場では砲撃や銃声等で互いの声が聞きとりづらいという場面もあり、そのためにハンドサインを用いるのだが…ハンドサインに関しては、リベルタは唯一得意なコミュニケーション分野であるので頑張って覚えてくれたようだ。
「とにかくリベルタ、あんたグロいのが苦手ならそうエグゼに言えば良かったじゃない。なんでもかんでも合わせる必要はないのよ?」
「だが、せっかく誘ってくれたんだし……あの人たちとも友だちに…」
「まあアンタがいいって言うならそれ以上は言わないけどさ」
友だちが作りたくて色々頑張っているようだが、本人の絶望的なほどのコミュニケーション能力によって上手くは言っていない様子…この間などは、スプリングフィールドのカフェに入ろうとするもなかなか入ることが出来ず、カフェの入り口の前で挙動不審になっているところを警備のヘイブン・トルーパーに発見され警報を鳴らされてしまったこともある。
ぱっと見た第一印象は、鉄血のハイエンドモデルに相応しい威圧的な外見…切れ長の目は三白眼、ほとんどまばたきをしないこともあって、リベルタに見つめられると睨まれていると誤認する者も多いようだ。
それで一度エグゼと揉めかけたこともあるが…その時はスコーピオンが事情を説明し、エグゼもその後理解してくれて事なきを得たが。
「まあいいわ…ところでリベルタ、あんた今日はキッドと組みなさい。キッドの奴が任務に向かう仲間を捜してたから、あんたを推薦しといたわ」
「……?」
「キッドはまあ、いい奴よ。アンタのことも理解してくれると思うから、たまには私以外の人と任務を……って、なに泣きそうな顔してるのよ! そんなに不安なの!?」
いつもと変わらないように見えるが、リベルタの瞳がうっすら潤んでいるのをWA2000は見抜く。
友だちが欲しいとか言いながらこのありさまだ…結局、キッドのところまでWA2000が引っ張って行き、リベルタの事をキッドによろしく頼むのであった。
まるで引率者みたいだ、というのがその場面を見たスコーピオンの印象であった…。
キッドが抱えていた任務は、動物愛護団体から受けた任務であり、最近密猟者の密猟被害が後を絶たず行政機関もまともに対応しないということでMSFに依頼が来たのだ。
怒り狂う過激な動物愛護団体は、密猟者の生死を問わず自然界から叩きだせというもの。
動物愛護団体の中には家畜やペットの権利も主張するタフな過激派もいるが、今回の依頼主はそれとは別なもの……自然界の動植物を守り自然を愛するというのは自称だが、とにかく大戦と汚染で生息地を減らされてしまった動物たちを攻撃する者を攻撃する組織というわけだ。
色々と面倒な連中であるが、金払いはいいということでたまに依頼は請ける。
アルプスで密猟者を叩きのめしたキッドとリベルタ、そしてネゲヴ。
捕まえた密猟者は動物愛護団体の過激派へと手渡し、そこから哀れな密猟者たちは私刑にあうだろう。
「任務お疲れさん。ネゲヴもリベルタも、よくやってくれたな」
「お安い御用よ」
「お……おや…お安い、ご用……だ」
リベルタの小さな声はヘリの音でかき消されてしまっていたが、キッドはしっかり聞いていてくれたようで彼女に対しサムズアップで応えてくれた。
バンダナで口元を緩く覆っているせいで気付きにくいが、リベルタは嬉しそうに目を細めてはにかんでいた。
「それにしてもリベルタ、お前の武器…"HK CAWS"ってのは中々強力な武器だな。密漁者どものバリケードを真正面からぶち抜いちまった」
リベルタが用いる武器はブルパップ方式のフルオートショットガン。
タングステン製バックショット弾を猛烈な速度で連射するまさに鉄の暴風といった武器であり、リベルタと対峙した密猟者たちは哀れにも隠れ場所ごと吹き飛ばされてしまった。
「近距離戦とか屋内戦じゃリベルタに勝てる人はいないかもね。スコーピオン並みにタフで、油圧システムの力もすごい。まさに至れり尽くせりね……これでコミュニケーション能力もまともだったらいうことなしなんだけど」
途中まで気分よく聞いていたリベルタであるが、ネゲヴの最後の言葉がグサッと突き刺さる。
今回の任務では特に問題にならなかったが、小声でしか話せないのはいつかどうにか改善しなければならないだろう。
「まあいいじゃないかネゲヴ、口数が少ないのも個性だ。エイハヴを見てみろ、あいつも結構口数少ない方だぜ?」
「あれ、エイハヴさんてそんなに口数少なかったっけ?」
「うん? あれ、気のせいかな?」
「しっかりしてよキッド兄さん」
最近ボケてきたかなとキッドはぼやく…。
一仕事を終えた三人はこれから真っ直ぐ前哨基地へ向かい、そこからマザーベースに向かう予定だ。
それまで機内で他愛のない会話をし、時々キッドが気を効かせてリベルタにも話を振ってあげる……相変わらずリベルタの声は聞き取りにくいが、キッドもネゲヴもそれを理解してくれていた。
「ワルサーから聞いたぞ、リベルタは友だちが欲しいんだってな? オレやネゲヴで良ければいい友人になれそうだ」
「MSFは友だちというか家族だけど…まあ、リベルタにはまだ早いかしら?」
「友だち……友だちか、いいものだ…」
リベルタは口元を隠していたバンダナを少し下げると、気恥ずかしそうに微笑むのであった。
普段のクールでおっかなそうな見た目とのギャップに、キッドとネゲヴは揃ってやられかける。
そんな時、ヘリに備え付けられていた警報装置が鳴り響く。
何事かとヘリのパイロットに問いただすキッド……どうやら機体の不備があったらしく、少しの間機体制御に問題が生じてしまったが、キッドの手助けも合ってヘリの異常は解決される…。
だが問題はそこからだ。
パイロットは、機体の異常に対処しているうちにヘリが鉄血支配地域の上空に侵入してしまっていたことに気付いたのだ。
急ぎ離脱しようとした矢先、キッドは眼下の地上より一発の地対空ミサイルが発射されたのを見た。
熱追尾ミサイルは加速し一気にこちらのヘリへと接近、回避運動も虚しくテールローターに被弾した。
「ちくしょう! みんな掴まれ!」
損傷を受けたヘリをなんとかパイロットは立て直そうとするも、機体は次第に制御を失って高度を下げていく。
制御を失ったヘリは回転しながら荒野の中に不時着、不時着の衝撃でヘリは横転し大破した。
「あー…いてぇ……みんな無事か?」
「うぅ…なんとか…」
運よくキッドは無事、不時着時弾き飛ばされたネゲヴもキッドが受け止めたことで無傷だ。
リベルタはまともにヘリの壁に叩き付けられたようだがぴんぴんしている…さすがはオセロットの散弾銃を至近距離で受け、なおかつハンヴィーで轢かれながらも生きていただけはある。
しかし問題はパイロットだ。
大破したヘリの操作席がひしゃげ、パイロットの足は挟まれて裂傷を負っていたのだ。
「大丈夫か! リベルタ、手を貸してくれ! ネゲヴは救難信号を出すんだ!」
ネゲヴには救難信号を任せ、キッドとリベルタは一度大破したヘリの外に飛び出してパイロットの救助を試みる。
真横に横転したヘリはローターが吹き飛び、操作席の扉もひしゃげて開かない。
割れた窓からパイロットを出そうとするが、挟まれた足がどうしようもできず、あまりの痛みに悲鳴をあげる。
「少しずつ解体してくしかない。リベルタ、サンダーを持ってきてくれ」
ヘリの工具箱からサンダーをとりだし、急ぎパイロットの救出を阻むか所の解体を試みる。
手の空いたリベルタは操作席に入ってパイロットの怪我の具合を見るが、出血が多く危険な状態であった。
動脈が切れているのかどうかも分からない状況だ。
「よし、もう少し待ってろよ。すぐに助けてやるからな」
「あぁ……不味いよキッド兄さん…! 鉄血の兵士が来る!」
「連中よっぽど暇だったみたいだな! ネゲヴ、リベルタ! 任せられるか?」
「ええ、任せなさい!」
「任せろ……返り討ちにしてやる…!」
鉄血の人形たちはあちこちから現れヘリを狙い集まってくる。
キッドたちが生きていることを知った鉄血の人形たちは途端に攻撃を仕掛けてきたため、ネゲヴとリベルタの二人も即座に応戦した。
鉄血の部隊はまだ小規模だが、ここは奴らの領域であり、いつ大部隊が来るかも分からない状況だ。
二人はキッドがパイロットを助ける時間を稼ぐために接近する鉄血の人形を狙い撃つ。
「チッ…わらわらやってくる…!」
「頑張れネゲヴ、お前たちが頼りだ!」
「頑張ってるわよ! リベルタ、12時の方向から敵が来てる!」
敵の接近を察したリベルタは大破したヘリのドアを地面に突き刺し遮蔽物とし、接近する鉄血人形を散弾の連射でもって粉砕する。
100メートル程度の距離ならリベルタのバックショット弾は十分効果を発揮する。
タングステン製バックショット弾をまともに受けた鉄血の人形は身体を抉られ吹きとばされる。
小銃の一発二発被弾した程度では全く意に介さないリベルタに鉄血の攻勢も押しとどめられる……ネゲヴもまた周囲の状況を見極め、ヘリの内部を忙しく動き回って襲い掛かる敵を迎撃する。
「よし、切れたぞ! もう大丈夫だ!」
そうしていると、障害物を切断し終えたキッドがパイロットの救出に成功する。
挟まれていた足は裂傷による出血で真っ赤に染まっているが、銃弾が飛び交うその場での処置は難しく、キッドはパイロットを抱えあげる。
「二人ともここから退避するぞ!」
機密保持のため、不時着したヘリに時限爆弾をセットしたのち三人は後方へと撤退しようとするが…。
「リベルタ、危ないっ!」
ネゲヴの声に振り返るリベルタ。
鉄血の近距離戦闘用戦術人形ブルートが、凄まじい速さで接近しリベルタに対しその刃を振りかざす。
振り上げられた刃がリベルタの首筋に突き刺されたが、その刃は数センチ彼女の肉体を刺し貫いたところで止まる……リベルタは他の多くの戦術人形と違い、金属パーツを多く利用し、複合チタン合金の頑丈な骨格がブルートの刃をはじき返したのだ。
すぐに跳び退こうとするブルートを捕まえたリベルタは、ブルートの頭部を掴み力任せにねじ切る。
もう一体跳びかかって来たブルートもいたが、それは容易くリベルタに捕まえられた挙句、頭部を握り潰されれるという無惨な最期を遂げた。
グロイのは苦手とは何だったのか…?
だが時間が経てばたつほど追い込まれるのは目に見えている。
まともに銃撃戦に応じていればいつかは包囲されてしまう……鉄血の領域外に逃れようと3人は走るが、敵も同様に追いかけその数を増やしていく。
そんな時だ、ネゲヴは遠くの空に二機のヘリを見る。
救難信号を発してからずいぶんと早いが、きっと近くを飛行中の友軍機に違いないと確信し、3人はその場で鉄血の迎撃を行った。
高度を下げて接近するヘリ…その違和感に真っ先に気付いたのはキッドだ。
「MSFにあんなヘリあったか!? ネゲヴ、救難信号の周波数は何にしたんだ!?」
「知らないわよ、適当に押したから!」
つまり、適当に押した救難信号で鉄血に墜落位置を悟られた可能性もある…まあ墜落したのは鉄血領内なので発見されるのは時間の問題だっただろうが。
接近するヘリがせめて鉄血じゃないことを祈るキッドであったが、低高度を飛行するヘリの側面に描かれていたマークを見た瞬間、それが何者であるかを察した。
「グリフィンだ! グリフィンのヘリだ!」
MSFとグリフィンは深い付き合いはないが、藁にもすがる気持ちでキッドは発煙筒を焚いて救援依頼の合図をとる。
それが通じたのか何なのか、二機のヘリは三人のすぐそばに着陸し、ヘリから複数の戦術人形が飛び出してきた。
「待て、おぬしら何者じゃ!? ここで何をしておる!」
「事情は後で説明させてくれ! 重傷者がいるんだ、全部で4人だ!」
「せめて所属を明らかにするんじゃ! 誰かも分からぬ連中を無条件に助けるわけにはいかぬ!」
「
「MSFじゃと!? ええい、なんだってこんな急に…!」
「副官! 鉄血の部隊が近付いてきています!」
仲間である"一〇〇式"にそう警告をされた副官"ナガンM1895"は一瞬迷った末に、覚悟を決めた様子でキッドらを受け入れる。
「けが人はもう一機のヘリにのせるのじゃ! 救護用のヘリじゃ、そっちの方がマシな手当てを受けられる!」
「恩に着る! リベルタ、ネゲヴ撤退するぞ! ところでアンタらの方はグリフィンのどこの支部なんだ!?」
「S09基地じゃ! まったく何の因果か…おぬしらがバーガー屋を開いてからいつかこうなると思っていたぞ!」
「バーガー屋だって!? あぁ…ということはスコーピオンが勝手に店開いた場所か…どうも、お世話になってます」
「うん? いや、こちらこそ……って、悠長なことを言っとる場合か! さっさと乗るのじゃ、離脱するぞ!」
シリアスって思うじゃん?
でもこれ、コラボ回なのよね…(錯乱)
はい、というわけで以前もバーガーネタでコラボしていただいた焔薙さんとこの【それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!】とまたまたコラボです!
コンセプト的には、これを機にいい加減Youグリフィンと仲良くなっちゃいなよということで、焔薙さんの手を借りることになりました!