METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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マザーベース:休日カフェ

 前哨基地 訓練施設

 

 広大な野外演習場と射撃場、屋内演習場が前哨基地のすぐそばにあるがそこはかつてないほどの訓練兵が集められ日夜厳しい訓練を課せられている。

 MSFがこの前哨基地を獲得した当時は、小さなアスレチック場ほどの大きさでしかなかった訓練施設は見違えるほどの広さと、充実した訓練施設がもうけられている。

 いまいち1970年代の訓練思想から抜けきれなかったMSFも、最新の訓練内容を学習しそれを新兵だけでなく古くから在籍するMSFのスタッフたちにも受けさせる……まあ、それでも厳しい訓練課程で脱落者も出てくるのだが。

 

 前哨基地併設の訓練施設とは離れた、もっと広大な軍事演習上ではちょうどFAL率いる新生戦車大隊と改良を施されたメタルギア・サヘラントロプスの演習が行われている。

 動力供給の課題は未だ残るサヘラントロプス…本体の稼働に必要な電力、防御性能の要となる電磁装甲、そしてレールガンに供給される電力は膨大であり充電式の方法では以前の戦闘のようにあっという間に電力が尽きてしまう。

 ピースウォーカーやメタルギアZEKE以上に電力を必要とするサヘラントロプスの動力問題…この時代の技術である原子力エネルギーに目をつけ、今は研究開発班が開発に躍起になっているのだが。

 

 

「よーし、いよいよ戦力が充実してきたな! この戦力があれば同規模の正規軍にも戦術次第では対抗できるぜ!」

 

 精強な部隊を見つめながら嬉しそうにそう呟くのは、連隊指揮官のエグゼである。

 性能強化されたヘイブン・トルーパー隊、戦術人形には劣るが経験から学ぶAIを搭載した月光、そして開発を終えていよいよ実戦配備が進められているハンマーヘッド・フェンリル・グラートの無人機。

 無人化されたヘリであるハンマーヘッドは空からの強力な攻撃を、フェンリルはその機動性を活かし偵察やレールガンによる狙撃にも対応、強固な装甲を持つグラートは戦車とはまた違った運用方法も考えられる。

 過剰といえるほどの戦力増強…同規模の正規軍ともやり合えるというのもあながち間違いではない、あくまで同規模の部隊と戦った場合であるが。

 

「まったく、ここまで強化する必要もないだろうに…お前のわがままで結構MSFの出費が激しいらしいじゃないか」

 

 喜ぶエグゼのすぐ隣でため息を漏らすのはハンターだ。

 エグゼの連隊とは独立した、降下猟兵大隊を指揮するハンターの部隊もエグゼの勧めで強化されてはいるが、新手の戦力を惜しみなくつぎ込む様な事はせず、あくまで所属する兵士の練度と戦術教練の分野に重きを置いていた。

 

「これからたくさん稼ぐんじゃないか! 鬱陶しい正規軍なんかほっといても、オレたちの軍事力を必要とする勢力は世界中に存在するんだぜ? アフリカ、中東、アジア、南米でな! オレたちの仕事場は欧州だけじゃねえ、世界中にあるんだからな!」

 

「アジアはもうこりごりだな、移動だけで疲れる。気候も合わないしな」

 

 先日、任務で東南アジアに出向いたハンターであるが、蒸し暑い気候と度々降る雨に嫌気がさした様子。

 それでも任務はしっかりこなし、ジャングルに潜むゲリラ勢力を狩りたててなかなかの報酬を持ち帰ってきた。

 ハンターがこなした任務のように、MSFに依頼される仕事は大規模な戦闘ではなくゲリラの掃討や軍事訓練、武器装備の開発やメンテナンス、そして兵站などが求められる。

 その点を踏まえると、エグゼの過剰とも言える戦力増強は無駄が多いと言わざるを得ないのだが……ほとんどごり押しに近い状態で戦力増強がなされた。

 

 何故そこまでして戦力を高めているのか?

 先の戦いで鉄血に敗北を喫したせいという理由を期待したハンターであるが、エグゼは一言…"かっこいいからに決まってんだろ!"とのこと、ハンターはそれ以上考えるのを止めた。

 まあ、エグゼの果てしない軍拡も先日査察にやって来たスネークに本格的に咎められたので一応終止符が打たれたわけだが…ちなみにエグゼが上機嫌なのは、その際交換条件にヴェルと一緒に家族旅行に行くという約束を飲ませたからだ。

 

「で、旅行にはどこ行くんだ?」

 

「うーん、この間ミラーのおっさんからいい無人島の話聞いたからな。そこ行くかな?」

 

「まあいいんじゃないか? 連隊のみんなもお前の軍拡が終わってホッとしてるだろうさ」

 

「ああ、MG5とキャリコの奴早速イチャイチャしてやがったぞ」

 

 MSF内で唯一?のカップルであるMG5とキャリコの仲は有名だ。

 再会した後はもはや隠す素振りもせずにいちゃついているのだ。

 

「さてと、私はやることがあるから…また後でなエグゼ」

 

「おう」

 

 ハンターとはそこで別れ、エグゼは暇を持て余す。

 ヴェルがそばにいれば散歩にでも連れていこうかと考えていると、ちょうどそこにヴェルにしがみつかれているスプリングフィールドがやって来た。

 ヴェルは嬉しそうにはしゃいでいるが、スプリングフィールドの方はヴェルに頬を引っ張られて痛そうにしている。

 

「ママー!」

 

 しかしエグゼを見かけると、ヴェルはぴょんとスプリングフィールドの手元から飛び降りぱたぱたと母の元へと駆け寄っていった。

 

「おーよしよし、悪いなスプリングフィールド面倒見てもらっちゃってな」

 

「いえいえ、大したことじゃありませんよ」

 

 と言いつつも、つねられていた頬が痛むのか目に涙を浮かべて頬をさする。

 

「ママ、スプリングがねかくれんぼにつきあってくれたんだよ! ダンボールにかくれてたらみつからなかった!」

 

「おーそうか、ダンボールが好きとは将来有望だな! ヴェルはスプリングフィールドが気に入ってるんだな」

 

「うん! おっぱいおおきいからすきだ!」

 

「えぇ……なんだそりゃ?」

 

「おっぱいおおきいほうがだっこしてくれたときふわふわしてきもちいいんだ! だから45みたいなおっぱいないやつはきらいだ!」

 

「あぁ…そう。あんまりそういうことは言うもんじゃないぞ?」

 

 ちらっと建物を影を見つめてば、会話をがっつり聞いていたのかUMP45が薄ら笑いを浮かべて壁を殴っていた…おそらく関わってはいけないと悟ったエグゼとスプリングフィールドは、ヴェルを抱えてその場を逃げるように立ち去った。

 

「それにしても忙しくさせて悪かったな、もう軍拡はストップだ」

 

「でもおかげさまでいい経験になりましたよ。部隊の訓練を通して、自分自身の鍛錬にもなったと思います」

 

「相変わらず真面目だな、そこがお前の良いところなんだろうけどさ。少し落ち着いたから空けてたカフェも開くのか?」

 

「そうですね、ここ最近はずっと顔を出せなかったのでカフェに行っても―――きゃっ!?」

 

 建物の壁を曲がろうとした際、スプリングフィールドは何かにつまずいて転倒してしまう。

 打ちつけたひじをさすりつつなんだと思い見て見ると、そこには力なく倒れているPKPがいるではないか。

 

「PKP!?大丈夫ですか!?」

 

 慌ててスプリングフィールドとエグゼはPKPを抱き起す…その顔色は悪く、目も虚ろだ。

 

「大丈夫ですか? 私の声が聞こえますか?」

 

「う、うぅ……スプリング…?」

 

「良かった、意識はあるようですね…どうしましたか?」

 

「すまない…急に気分が……頭が酷く痛むんだ…それに目まいもする」

 

「そうですか、他に症状はありますか?」

 

「うぅ……指先が震える…力が入らないんだ。それに、胃痛が酷い…」

 

「エグゼ、これは…!」

 

「ああ、間違いねえなスプリングフィールド…!」

 

 

 二日酔いである。

 

 一気に助ける気力を失くした二人は抱えていたPKPをどさっと落とす。

 その際後頭部を地面にぶつけてPKPが呻いたが、微塵も同情心が湧かない…。

 

「おう、なんか水でも持って来るか?」

 

「まったく、どうせスペツナズのみんなもどこかで酔いつぶれてるんですよね? ほら、これでも飲んでください」

 

「いや、大丈夫だ……二日酔いを治す方法は…知っている、そしてそれは…一つしかない」

 

 

 そう言うと、どこからかPKPは透明の液体の入ったボトルを一本取り出すとぐびぐびと飲み始める。

 ラベルにウォッカと書かれたそれをあおるとみるみるPKPの顔に生気が宿る。

 二日酔いを治す方法…迎え酒である。

 

 

「よし、治った。迷惑かけたな」

 

「えぇ……」

 

「お前らほんとどうしようもねえな。ヴェル覚えとけ、こんな悪い人形になっちゃダメだぞ?」

 

「何を言っているんだエグゼ、お前とスコーピオンも大概だろう。ところでスプリング、カフェに顔を出すのか?」

 

「あのですね、またカフェで大騒ぎしたら承知しませんよ?」

 

「細かいことは気にするな。酒と仲間がいればそこが墓場であろうと飲み場となるが、やはりちゃんとした空間で飲むのがいい。よし、カフェに行くか」

 

 

 

 

 

 そんなわけで、半ば強引に押しかけられてしまったスプリングフィールド。

 まずはPKPと一緒に前哨基地の各地に散らばった飲んだくれスペツナズを見つけることから始まる…。

 戦車の砲塔の上でいびきをかいて寝ていたヴィーフリを見つけ、訓練用のマネキン相手に延々語りかけているグローザを拾い、野外演習場で空ボトルを抱き枕に寝ている9A91を発見…9A91は演習中の戦車に危うく轢かれかけていた。

 

 そんなわけでみんな迎え酒で覚醒した後に始まる飲み会…場所はもちろんスプリングフィールドのカフェだ。

 久しぶりにスプリングフィールドが顔を出すということで、なじみのスタッフが訪れるのだが、スペツナズの面子が強烈すぎるためにほどほどに滞在し店を出ていってしまう。

 

「スプリングフィールド、何度もすみませんね」

 

「そう思うなら、もうちょっとみんなを教育してくださいよ9A91……もう、スオミがいてくれた頃はこんなんじゃなかったのに…」

 

 今の9A91を見たら親友のスオミは果たしてどう思うだろうか?

 別れてからも9A91とスオミは文通でやり取りをしているらしいのだが、きっとスオミはこんな乱れ切った9A91のことは知らないだろう。

 

「今日はあまり強いお酒は出しませんからね……って、グローザ何やってるんですか!?」

 

「ビールにヘアスプレーをかけると手軽に酔った気分になれるのよ。知らない?」

 

「カフェでは変な飲み方しないでくださいよ! まったく……ヴィーフリとPKPは冷凍庫の前で何をしてるんです?」

 

「いや、接着剤からどうにかアルコールを抽出できないかと…」

 

いい加減にしてください!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、スプリングフィールドのカフェは閉鎖され力尽きたスプリングフィールドが力なく客のいなくなったテーブルに突っ伏していた。

 あの後、酒の匂いに誘われたスコーピオンがやってきたことで場はさらに盛り上がり、カフェのアルコールすべてを飲み尽くす勢いであった。

 一応他のお客に対する迷惑行為はしていなかったが、なんとなく精神的な疲労が積み重なり本来予定していた時間よりも速く切り上げて店を閉めてしまった。

 バイトのミニチュア月光がカフェを掃除する音だけが、今は鳴っている。

 

 そんな時、来客を知らせるベルの音が鳴った。

 疲れた様子で顔を見上げたスプリングフィールドであったが、カフェを訪れた人物を見るとむくりと起き上がる。

 

「カフェはもうお終いだったか?」

 

「あ、いえ…ちょっと休憩していただけですよ、どうぞ座ってください、エイハヴさん」

 

 やって来たのはエイハヴ、前哨基地で指揮をとっているために普段は滅多に顔を出さないお客だ。

 エイハヴには何かと世話になっていたため、スプリングフィールドは疲れた表情をひっこめ、いつもの柔らかな笑顔で彼を迎え入れる。

 

「ご注文は何になさいますか?」

 

「コーヒーを、それから…マフィンはあるかい?」

 

「はい、出来立てではありませんが…」

 

「それで構わない」

 

「分かりました、少々お待ちください」

 

 ここ最近、飲んだくれ相手に酒を提供していたが、本来なら落ち着いた雰囲気の中でコーヒーを提供しのんびりくつろいでもらうはずなのだ。

 久しぶりのコーヒーと、珍しく来てくれたエイハヴに俄然やる気をだし…しかし落ち着いた様子でコーヒーを淹れていく。

 コーヒーが作られる過程を、エイハヴは静かに眺める。

 一杯のコーヒーが出来上がる……出来立てのコーヒーの芳醇な香りを嗜み、エイハヴはコーヒーを口に含む。

 

「やはりスプリングフィールドが淹れてくれたコーヒーは美味いな。この味と香りがいつまでも記憶に残るんだ」

 

「ありがとうございます」

 

 エイハヴのありのままの感想に、スプリングフィールドは嬉しそうな微笑みを見せる。

 冷えてしまったマフィンをレンジで温めたものを出せば、それも美味しいと言ってくれる……飲んだくれ共の相手で疲れていた気持ちも今は感じていない。

 

「エイハヴさんもお休みですか?」

 

「今日だけだな。エグゼがやっと軍拡を止めてくれたおかげで、少しは休めるかもしれないが」

 

「あまり無理はなさらないでくださいね?」

 

「お前もなスプリングフィールド…っと、こんな時間にやって来たオレが言えたセリフじゃないな」

 

「そんなことないですよ、いつでもいらしてください。皆さんがここにきて、穏やかに楽しんでいただければ私は満足ですから……最近は穏やかじゃありませんが」

 

「聞いたよ、スコーピオンやスペツナズの人形が押しかけてくるんだって? まったく困った人たちだ」

 

「まったくですよ……でも、なんだかんだ来てくれると嬉しいから出禁には出来ないんですよね…」

 

「そうか…優しいな、スプリングフィールドは」

 

 その言葉に、彼女は少し気恥ずかしそうにはにかんだ。

 薄暗い店内のおかげで、彼女が少しばかり頬を染めたことはエイハヴに気付かれることは無かった…。

 

 それからも二人の静かな夜は続く…。

 時折笑い声をこぼしながら、二人は穏やかな時間を過ごすのであった。




9A91「二日酔いで手が震えて手紙が書けないであります…!」(酒グビー)

スオミ「9A91ったら、寂しくて字が震えちゃってるよ…会いたいなぁ」
イリーナ(手紙から酒の匂いがするとは言えない…!)



おら…ようやくかけたぞスプリングフィールド✕エイハヴ……!

まあ、以前からそんな気はあったけどなかなか書けなかった…。
スペツナズの飲んだくれ共のおかげやな!
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