METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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目指すはフーバーダム

 旧アメリカ合衆国……大戦以後かの国へ好き好んで渡航を試みるものはほとんどいなかった。

 初期のころには、かの国が誇っていた科学技術を崩壊した廃墟の中から発掘しようと、物好きな探検家が海を渡って北米大陸の地に上陸を果たしたこともあるが、そんな彼らを待っていたのは制御不能に陥った戦闘ロボットや理性を失った略奪者、そしてE.L.I.Dに犯されていた凶暴な感染者たちであった。

 特に感染者と放射能汚染の脅威は凄まじく、最初に上陸した者の大半はそれらによって命を落とす…。

 命からがら欧州へ逃げ戻った生存者たちの証言により、初めて合衆国本土の実情が広く周知され、そしてあの超大国が崩壊したのだと認知されていた……最近までは。

 

 

 

 MSFには兵士及び兵器を載せて航海することのできる揚陸艦なるものがいくつか存在する。

 揚陸艦と言っても、MSFが元いた世界で運用されていたより大型の強襲揚陸艦などとは異なるもので、第二次世界大戦後除籍されていく護衛空母のいくつかを入手し揚陸艦へと改造したものだ。

 船体は古くシステム面も現代と比べ貧相なものだが、MSFによる近代化改修により目的を果たすのに十分な性能を持っている。

 なおかつ、この世界の海軍は核戦争による電磁パルスの影響で、大戦初期にほとんどが使い物にならなくなり海軍戦力自体が衰退しているため、揚陸艦やその他舟艇を有するMSFは組織としては小さいながらも海上兵器の保有数から、この世界ではそれなりの海軍力を持っていたりする。

 

 アメリカに上陸するために2隻の揚陸艦が用意され、ハンター率いる降下猟兵大隊の兵士たちが主体となって乗艦している。

 それ以外には、スネーク、404小隊、エグゼ、スコーピオン、デストロイヤー、アルケミスト……一個戦車中隊を率いるFALとVectorが乗艦している。

 

 以前デストロイヤー救助のためにアメリカに赴いた際に比べ、長期の任務が予想されることから海上の仮設司令部及び補給基地として揚陸艦が派遣されたのだった。

 

 

「それにしてもMSFに揚陸艦ってあったんだね?」

 

「マザーベースから距離の離れた地域で運用を想定していたんだが、そんな場面があまりなくてな。スクラップにしようとしてたんだが、残しておいて良かった」

 

 

 物珍しそうに揚陸艦を眺めているのはスコーピオンだ。

 ほとんどの戦術人形はヘリに乗ることはあっても船に乗る経験がなかったのか、マザーベースを出港する際に何人かは乗艦を拒否するという困った出来事があったが、スコーピオンは勇敢なのかアホなのか真っ先に船に乗り込んでいったのだった。

 

「でもテキサスまでしかいけないなんて、結局陸路が長いよね…」

 

「事前の調査でパナマ運河が崩壊してることが分かってるからな。あそこを通れれば、東海岸まで行くことが出来るんだが…」

 

「まあスネークの言う通り仕方がないよね」

 

 他にも南米を迂回して東海岸に到達するという手段もあるが、補給面や航海距離の長さの問題から除外されている。

 結局以前スコーピオンらが上陸を果たしたテキサス付近に揚陸艦を配置し、そこからヘリで目的地までおよそ2000km……果てしないこの距離の問題についてスネークとミラーは協議し、ルート上に簡易な補給基地を設営することを決めたのだった。

 未知の勢力との交戦も予想されるが、アリゾナからバージニアまでの広い領土を実効支配しているという南部連合の統治が敷かれているという情報を当てにした部分もある。

 南部連合との友好関係はスネークも疑問に思うところであったが、スコーピオンらアメリカに渡った人形たちの証言から彼らを信用することとした。

 

 E.L.I.Dの心配はないというが、今だ放射能汚染が残りインフラのほとんどが死滅したアメリカ本土での任務は困難が予想される…サバイバル術にたけているとはいえ、今までとは異なる任務にスネークは頭を悩ませていた。

 そうしていると、なにやら甲板の一画が騒がしくなる…。

 何事かと振り返ってみれば、エグゼが背の高いツインテールの戦術人形に挑んでいって返り討ちにあっている場面であった。

 

 

「ちくしょう! このちびの癖に!」

 

「あはははは! もうちびじゃないもんねー!」

 

 

 ツインテールの戦術人形は愉快そうに笑う…その隣ではなんとも言えない微妙な表情で成り行きを見守るアルケミストと、ハンターの姿がある。

 エグゼを返り討ちにした戦術人形の正体は、なんとデストロイヤー。

 鉄血の研究所から持ち帰ったとされるデータから義体の情報を発掘したストレンジラブが解析し、デストロイヤーのために開発したというものだ。

 性能はおそらくかなり高く、一緒に開発された専用装備のグレネード発射装置の威力も極めて高い。

 

「くっそこのチビ助め! 新しい義体貰ったからって調子に乗りやがって!」

 

「こらエグゼ、いい加減にしないか」

 

「スネーク! いや、だってよぉ…」

 

「へへーん、新しいボディーに感謝だね!どうスネーク、新しい私の体は? 凄いでしょ?」

 

「ほほう……確かにすごいな、いいセンスだ…」

 

「スネーク……どこ見て言ってんの?」

 

「やれやれ、男は結局みんな一緒か…」

 

「おいスネーク、デストロイヤーから目を逸らしな!」

 

「オレのだって大きいぞ! 直に見て比べてみろよ!」

 

 胸を張って自慢するデストロイヤーのある一部分を見て元気になるスネークを、スコーピオンらそこに集まる女性陣が白い目で見つめる……デストロイヤーに張り合って大きさを競おうとするエグゼであったが、そばにいたハンターによって阻止された。

 

「やあみんな、調子はいかが?」

 

 そこへUMP45が416を従えてやって来たのだが、大変タイミングが悪い……キレたエグゼがこの場で一体誰が一番大きいのかで言い争いになり、その不毛な言い争いに416も巻き込まれる。

 そしてこの手の話題になると、途端に蚊帳の外に置かれてしまうUMP45がいる。

 

「生まれ変わった私の魅惑のボディーに敵う人なんていないよね!」

 

「均整の取れた肉体美こそ最高だ、オレ様の引き締まったボディーを見やがれ!」

 

「なんで張り合ってるか知らないけど、私はあらゆることで完璧よ」

 

「ハンター、お前もなかなかのものじゃないか、混ざって来たら?」

 

「アンタが言うと嫌味に聞こえるよ、アルケミスト」

 

「あはははは、みんなアホだね!」

 

 スコーピオンもこの手の話題に参加するようなキャラではないが、彼女はUMP45と違い小ささにそこまで悲観的になることは無い。

 開き直っているのか前向きなのか、内面で勝負だというのがスコーピオンの主張である。

 しかし、UMP45はそれは見事な笑顔を浮かべているのだが…目が全く笑っていない。

 

「気落ちすることないよ45姉! 巨乳などただの脂肪です、お偉いさんにはそれが分からんのですよ! 巨乳なんて見かけだけで、狭いところは通れないし服選びは面倒だし、ろくなことがない! あえて言おう!カスであると! 貧乳こそこの世で最も尊き、至上なるものなのである! 45姉万歳! 貧乳万歳!」

 

いきなり湧いてきてなに言ってんだお前は!!

 

「ぐふっ!?」

 

 突然現れUMP45のメンタルを抉る言葉をマシンガンのようにはき散らしたジョニーは、即座にUMP45の見事なハイキックを側頭部に受けて轟沈する……Aegisを凌駕する装甲を持つジョニーを打ち倒す怒気の力に、それまで誰が巨乳かで言い争っていたエグゼらも一瞬で黙り込む。

 

「いいジョニー? こんど余計なこと言ったら、その発声器を無理矢理引きちぎってやるからね?」

 

 倒れたジョニーの顔面を踏みつけ冷たい目で見下ろす…。

 腐ったゴミを見るような凍てつく視線、だがそれすらジョニーにとっては…。

 

「ぐ…我々の業界では、ご褒美……! あと45姉、今もノーパn-―――」

 

 足を振り上げ、勢いよくジョニーの顔面を踏みつける。

 その一撃で完全に機能停止したジョニーの赤く光る眼光が消えていく……ほっといても数十分後には復活するので大したことではない。

 

「なによ?」

 

「いや、なにも……」

 

 自身を見つめる複数の視線を睨み返すと、一斉に目を逸らす。

 この状態になった時のUMP45はある意味オセロット並みに恐ろしい…本能的に彼女のヤバさを感じ取った人形たちはそそくさとその場を立ち去るのであった。

 

「それでスネーク、作戦はどうするの?」

 

「まずはテキサスとニューメキシコの州境まで部隊で移動する。そこに駐屯地を設営し、そこからフーバーダムまで偵察に向かう」

 

「大がかりな任務だね。もしも南部連合の兵士たちに出会ったらどうするの? 一応話しあいはできると思うんだけど…」

 

「なるべく穏便に済ませたいところだ。できればだが、友好的な関係を結べればいいが…」

 

「もしも45の話が本当なら、南部連合はただアメリカ本土の復興を願ってるだけだよね。そうなった場合、MSFは南部連合に協力するの?」

 

「なんとも言えん。南部連合とオセロットやエグゼたちが遭遇した米軍の残党が、どういう関係にあるのか分からないからな。慎重に、行動しないとな…スコーピオン、お前は昔から一人で突っ走りやすいところがある。注意するんだ」

 

「大丈夫だってば。それにあたし全然怖くないよ、なんたってスネークが今回はいるからね!」

 

 スネークの腕に抱きつき、スコーピオンは頬を擦りつけて甘えて見せる。

 ここ最近エグゼとヴェルにとられっぱなしだったスネークに、猫が匂いを擦り付けるかのように頬擦りを行う…エグゼが見たらおそらく発狂してしまうだろう。

 

「偵察には是非ともあたしを指名してね? 最近色々勉強したからさ…前みたいに迷惑をかけないよ」

 

「まだまだ先のことだ、まずは駐屯地の設営を済ませて補給線を確保しないといけない。その後は、状況次第だな」

 

「もー、スネークってばそこは嘘でも連れてくって言ってくれなきゃ! 女の子がこうしてお願いしてるんだぞ?」

 

「スコーピオン…遊びに行くわけじゃないんだぞ?」

 

「分かってるよもう……変なところで真面目なんだからスネークは。でも、是非ともあたしをよろしくね!」

 

「その時は頼む。テキサスまではもう少し時間がかかる、それまで休んでおけ」

 

「ラジャー!」

 

 目的地まではまだ時間がある。

 着いたあとは激務が待っていることだろう、それまで英気を養い任務に備えるのだ……だがスコーピオンはじっとしているより動いていた方が元気になる、ということでエグゼと一緒に遊び始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アメリカ合衆国 東海岸 カリフォルニア州ロサンゼルス  ハリウッド

 

「ついに来ました! 映画の中心地! 旧世界の輝かしい晴れ舞台! ついに私たち鉄血もハリウッドデビューだーっ!!」

 

 サンタモニカ丘陵に飾られるHOLLYWOODのランドマークを背景に、かつて映画産業の中心地として繁栄したこの地に足を踏み入れた"アーキテクト"声高々に叫ぶのだった。

 廃墟と化したお店から入手した星形サングラスと海賊帽子を身に付け、人ひとりいない廃墟の中で楽しそうにはしゃぎまわる。

 

「おいアーキテクト! むやみやたらに騒ぐな! 敵がいたらどうするつもりだ!?」

 

(ヴィラン)はこのヒーロー、アーキテクトウーマンが華麗にやっつけるのだ! というかゲーガー、ハリウッドだよハリウッド!? 興奮しない!? あっちに行けばチャイニーズシアター、そっちに行けばビバリーヒルズだ! それにちょっと足を運べばネズミーランドだってあるんだよ!?」

 

「なんだネズミーランドって……まあいい、着いたんだから連絡を入れるぞ」

 

 ぶーぶーと文句を言うアーキテクトは無視し、自分たちの雇い主…アフリカにいるウロボロスへと連絡を図る。

 カリフォルニアからアフリカへ連絡をとる手段は非常に限られるが、発明家の一面もあるアーキテクトが独自に作り上げた万能無線機によって多少のラグはあるが連絡はとれる。

 

『ふむ、どうやら着いたようだな。そっちの調子はどうだ?』

 

「問題ない、若干一名バカが騒いでいるが問題ない。あと、上陸間もなくグレイ・フォックスとはぐれたんだが…」

 

『あいつ何やってるんだ? まあいい、そのうち合流するだろう……それより済まないな、一緒に行けなくて』

 

「問題ない。それよりイーライのその…風邪の具合はどうだ?」

 

『ああなんとか元気になってるよ。だが元気になるのが早いな…仮病か?』

 

「なんだかんだイーライはお前のことが気になってるみたいだからな、離れたくなかったんだろう。ところでこれからフーバーダムに移動するわけだが、何かプランはあるか?」

 

『そのプランをグレイ・フォックスに任せたはずだが……合流したら教えてくれるだろう。それまではフーバーダムへ向かうがいい……期待しておるぞ、ゲーガー』

 

「吉報を待っていろ」

 

 通信を切り、まずゲーガーは近場の廃墟を探索し地図を探しだす。

 知識としてアメリカの地理情報を頭に入れているが、事細かな地形データは把握していなかった……廃墟で見つけた地図を少しの間見つめ、地形情報をデータとして記憶媒体に書き込んだ。

 辿るべき道が分かればもう地図は用済み、ゴミ箱に地図を放り込みアーキテクトを捜すと、彼女は少し汗をかいて満面の笑みを浮かべていた…。

 妙にやり切った表情のアーキテクトのそばには、二台の自転車が置かれている。

 

「お前、なんだそれは…?」

 

「自転車だよ! 移動に便利かと思っていい状態のがあったんだよ!」

 

「はぁ……まったく、ここにきてなんでそんなものを…」

 

 却下しようとしたが、アーキテクトの物凄い笑顔を見てゲーガーは怯む。

 まるで却下されることなど微塵も考えていないような、自転車を見つけた功績を褒めて欲しそうな様子が一目で見て取れる。

 

「あ、あぁ……い、いい考えだと思うぞ…?」

 

「でしょ!? 自転車なら気晴らしになるし、燃料もいらないしでいいことだらけだよね! もー私ってばなんでこんなに頭がいいんだろう!」

 

「そ、そうだな……はぁ…」

 

 先ほど記憶に取り込んだ地形データをもとに、現在地とフーバーダムへの距離を計算する……400㎞近い道のり、道中は険しい山や砂漠地帯が広がっている。

 フーバーダムに着く頃にはきっと自転車とその乗り手はボロボロだろう。

 険しい道のりを前にノリノリではしゃぐアーキテクトの呑気さを、ゲーガーはこの日初めて羨ましいと思うのであった…。




シリアス中にも隙あらばギャグをぶち込んでいくスタイル()


2000㎞をヘリで乗り継ぎながら行くルートと、砂漠を400㎞自転車で行くルートどっちがいいんだろう?
どっちも可愛い女の子がいるから頑張れそう(ニッコリ)



~その頃ウロボロス邸~

イーライ「ケホ、ケホ……うーん」(36.6℃)
ウロボロス「かわいそうなイーライ、元気になるまで看病してあげるからな?」
イーライ(やったぜ)
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