METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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審判の日

「大尉殿…?」

 

 デルタ・フォース隊員である軍曹がその任務を終えて帰還した時、上官である大尉は薄暗い部屋の椅子に腰掛けていた。静かに部屋の中に入った軍曹を大尉は一度見たのみで、再び視線を手元に移す。彼の手には一枚の写真があった。

 

「大尉、例のサーバーを調べてきましたよ。大尉の思った通りです、やはり政府は我々を…」

 

「分かり切っていたことだ。戦前の政府は、我々が忠義を尽くした政府は自分たちが創り上げた理想郷に閉じこもってしまった」

 

「我々は見捨てられていたのですか?」

 

「さあな…どっちにしろ命令はまだ生きている。"地下に潜伏し反撃の機会を伺い敵国家を撃滅せよ"、停戦命令はまだ出ていない。ならば軍人としての使命を全うするのみだ」

 

 大尉は手に持っていた写真を机の上に置き立ち上がる。

 古ぼけた写真には、軍服姿の男性と椅子に座る若い女性…そして女性の腕に抱かれる少女が映る。

 

「大尉、次はどこに?」

 

「無人機だけが我々の軍の全てではない。電力が戻ったことでその基地の所在が明らかになった、我々と同じ機械の力を宿されて眠りにつかされた兵士たちがそこにいる。カリフォルニア、ニューヨーク、カナダ、キューバ、オキナワ…海外基地は後回しだ、国内の同胞たちを先に起こそう」

 

「了解。いよいよですね大尉…あの日失ったものをようやく取り戻せる」

 

「勘違いするな軍曹、失ったものは二度と取り戻すことは出来ない……これからやることは、報復だ。祖国や家族、友人たちの仇をとる。それが、あの日この心に強く誓った復讐の決意なのだからな」

 

「分かっていますよ大尉。行きましょう大尉、奴らを皆殺しにしてやりましょう……それがあなたの奥さんや娘さんへの鎮魂になるんですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわーーーん、誰か助けてー!」

 

 荒野の砂漠を全力疾走で走っているのはアーキテクトとゲーガーだ。米軍無人機が動きだした時、真っ先にフーバーダムを逃げだした二人は手に入れたジープで荒野を走りぬけていたのだが、哨戒に出ていたドラゴンフライにジープを破壊されただひたすらに逃げまどう。

 

「結局グレイ・フォックスはいないままじゃないか! ウロボロスの奴め、やっぱり私たちを捨て駒にするつもりだったのか!?」

 

『甘えたことを抜かすな阿呆が。グレイ・フォックスはとっとと離脱したぞ、おぬしらもとっとと離脱するがいい』

 

「ウロボロス! 聞いてるならさっさと助けに来い! 米軍の無人機が追いかけてくる!」

 

『ふははははは! それは刺激的な体験だな、そこの私がいないのが残念だ。じゃあこっちはこっちで忙しいから通信を切るぞ、頑張って帰ってこい』

 

「この薄情者が!」

 

「どーすんのゲーガー!? 私たちおうちに帰る前にひき肉にされちゃうよ!?」

 

 腹立たしいウロボロスとの通信を終えて、走りながらゲーガーは頭を悩ませる。結局自分たちにまかされていたのはフーバーダムの修復任務のみ、グレイフォックスは正規軍の任務を妨害するという任務であった。ウロボロスが望んでいたのは米軍戦力の獲得ではなく、米軍復活による戦乱の拡大であった。

 何も知らない二人は上手く利用されたというわけだが…一応ウロボロスは見捨てたわけではないのだが、この状況では見捨てたと思われるのも無理はない。

 

「あー! あそこにヘリが!」

 

「あれはMSFのヘリじゃないか! 運が悪い…」

 

 補給基地に止まっているのはMSFのヘリだ、能天気なアーキテクトはMSFに助けを求めようと提案してきた。ゲーガーはもちろん反対の立場であるが、彼女が止める間もなくアーキテクトはMSFの補給基地へと突撃していってしまう。慌てて追いかけるゲーガーであったが、案の定というかやはりというか…突然突っ込んできたアーキテクトをMSFの人形たちは敵だと認識し、寄ってたかって袋叩きにしている。

 

「痛い痛い痛い! うわーん、助けてゲーガー!」

 

「このバカーッ! お前みたいなバカは一回死んでしまえ!」

 

 と言いつつ助けに行くが多勢に無勢、跳躍してきた月光に睨まれて怯んだすきに、すぐそばにいたスコーピオンのタックルを受けてゲーガーは吹き飛ばされる。一対一ならハイエンドモデルのゲーガーが力で負けるはずはないのだが、そこへいきり立ったFALやVectorがやってくるとなると話は別だ。

 リンチにあって無力化されるくらいならと、ゲーガーは抵抗を止めて大人しくする……アーキテクトも抵抗を止めればいいのに止めないものだから、いつまでもヘイブン・トルーパー兵にぶちのめされている。

 

「鉄血ポンコツモデルの二人じゃん、何しにきたの!」

 

「待ちなさいよスコーピオン。こいつらゲーガーとアーキテクトでしょ? 私たちこの間の借りを返してないのよね」

 

「スコーピオンちょっとまっててね」

 

「待て待て! お前ら無抵抗の人形を痛めつけるというのか!?」

 

「鉄血のクズが吐いていいセリフじゃないわね。Vector、どう料理する?」

 

「あんたの戦車の前に立たせて轢き潰す? それとも主砲の前に立たせる?」

 

 物騒なことを笑顔で話しあうFALとVectorに、ゲーガーは本能的な恐怖を感じていた。さすがにそれ以上はかわいそうだと判断したスコーピオンが二人をなだめる…アーキテクトはまだヘイブン・トルーパー兵にいじめられている。

 アーキテクトがMSFに助けを請おうとして突っ込んだのだと説明すると、明らかにFALとVectorが殺気立つ。先の戦いでの恨みが色濃く残っている二人には助ける意義など全くないらしい…。

 

「まあ別にいいけど、その代わりあんたら捕虜だよ?」

 

「ふん…捕虜になるなど慣れているさ。アーキテクト、それでいいか?」

 

「別に、あたしは…痛い! いい、けど…いだっ! もう蹴るのやめてってば! あいたっ!?」

 

 とりあえずアーキテクトをいじめ続けるのを止めさせて、スコーピオンは顎に手をあてて考える。

 ヘリは一機、既にFALの戦車やその他車両は回収済みだが残った兵士の搭乗を考えると二人を乗せる余裕などない。ならば見捨てるか? そう思いアーキテクトを見ると、つぶらな瞳で懇願しているではないか……それにスコーピオンはイラッとして、真面目に考えることを止めた。

 

「よしいいよ、その代わり文句言わないでよね。ほらアーキテクト、後ろ向いて?」

 

「はいはーい! って、なにやってるのスコピッピ?」

 

「アンタをフルトン回収するんだよ」

 

「フルトン? わわ! なにこれ!? なんなの!? うわ、うひゃあぁぁぁぁぁ―――――」

 

 膨らませたバルーンにより、勢いよく空の彼方へと飛ばされていったアーキテクト。

 信じれないものを見たゲーガーは呆然とアーキテクト消えていった空を見上げていたが、その場の全員の視線が自分に注がれているのに気付きハッとする。即座に逃げようとするが月光に退路を阻まれ、無慈悲にもフルトンが彼女の背中にくくりつけられる。

 

「よくも…!」

 

「悪いけどあんたに構ってる暇はないんだよ」

 

「こ、この…! この屈辱は絶対、忘れッ! なああぁぁぁぁ!!!???」

 

 打ち上げられていったゲーガーを見届け、すぐさまスコーピオンらは撤退の準備に移る。打ち上げられた二人の回収はMSFの優秀な支援班がどうにかしてくれるだろう…。

 

「とんだ邪魔が入ったけど大丈夫よね。早く撤退するわよ、面倒な連中が来る前にね!」

 

「同感、そう言えばスネークたちは?」

 

「みんな助けた後にシーカーを追っていったよ! 私たちは船に戻るんだ!」

 

 物資をヘリに積み込み、彼女たちは船へと退却をしていく。運べない月光は少々かわいそうだが、自分たちで船まで走ってきてもらうことになるが、無人機があちこち飛び交う中で帰って地上の方が安全な場合もあるだろう。

 幸いにも、スコーピオン達が船に戻るまでの間、米軍の無人機に捕捉されることは無かった。

 

 

 一方の、スネークらを乗せたヘリは、シャイアン・マウンテン基地より発ったシーカーの追跡を試みていた。MSFの支援ヘリが、米軍無人機起動直後に荒野を移動するシーカーとドリーマーの姿を捉えており、その目撃情報を頼りに捜索を行っている。

 いつ襲撃してくるかも分からない無人機を警戒しつつ、ヘリはとある空港跡地を目指していた。

 

「スネーク!」

 

 エグゼが窓から指差した滑走路の方角には、離陸準備を整えている航空機が一機あった。ヘリは即座に高度を落とし、空港跡地近くの場所へと着陸…同乗していたヘイブン・トルーパー兵たちが直ちに展開し辺りを制圧する。

 ヘリの警護はハンターと部下の兵士に任せ、スネークとエグゼ、そしてUMP45は空港内の航空機を目指して走る…だが空港敷地内に入った瞬間、三人の前に米軍無人機が立ちはだかる。

 

 重装戦術人形ジャガーノート、全高3メートルを超す大型の戦術人形。フーバーダムで圧倒的火力をもって南部連合兵を薙ぎ倒していたこの人形の恐ろしさはスネークたちも知っている、厄介な敵の登場に舌打ちをうつと、エグゼがブレードを手に突出する。

 鋼鉄をも斬り裂くエグゼのブレードを、ジャガーノートが重厚なシールドで弾き火花が散った。

 

「スネーク!このデカブツはオレがやる、あんたはシーカーを! 45、お前も一緒に行ってスネークを援護しろ!」

 

「エグゼ、あんたは!?」

 

「オレ様は不死身だ、こんなデカブツどうってことねえよ! 来いよクソッたれ、スクラップにしてやる!」

 

 果敢に突っ込んでいったエグゼを見てUMP45は先に行くことをためらうが、あの強固な装甲に対処できる装備を持っていない自分がこの場にいても出来ることは何もない。悔しいが足を引っ張るだけ…UMP45はジャガーノートを引きつけるエグゼに背を向け、スネークと共に滑走路を目指す。

 既に航空機はエンジンを始動し、今にも離陸しようとしている。

 滑走路を走りぬける最中、スネークは遠くにきらりと光るものを見た…咄嗟にスネークがUMP45の手を引き地面に伏せると、二人の頭上を赤いレーザーが飛んでいく。

 

 スネークは肩にかけていたアサルトライフルを構えると、狙撃者"ドリーマー"を見つけ引き金を引いた。しかしドリーマーはひらりと身を躱して遮蔽物に身を隠し、スネークの放った銃弾は命中しなかった。

 

「あいつめ!」

 

 まともな遮蔽物のない滑走路上は格好の狙撃の的。

 ドリーマーが再び自分たちを狙うことのできないよう、遮蔽物に隠れるドリーマーを狙い撃つが、別方向から放たれたレーザーがUMP45の肩をかすめる。相手は一人じゃない、ダミーがいる…それを失念していたことにUMP45は自分に腹を立てる。

 UMP45を狙い撃ったドリーマーのダミーは、スネークが破壊する。エグゼや他の多くの優秀な人形たちの羨望を受けるビッグボスことスネーク、ここ最近忘れていたが彼の戦闘力を間近見たUMP45は改めて彼の強さを認識する。

 

「動けるか45?」

 

「かすっただけよ、行きましょう!」

 

 ドリーマーはなおもスネークとUMP45を狙う。射撃の合間に距離を詰めていき、滑走路上の廃車に身を隠すとドリーマーのダミーは大胆にも姿をさらす。好機と見て身を出したUMP45であったが、赤く光るドリーマーの銃身を見て目を見開く。 

 次の瞬間、先ほどまでのレーザー弾が豆鉄砲に思えるような、凄まじい威力のレーザーが発射される。

 咄嗟に身を隠したUMP45を、遮蔽物ごと吹き飛ばす。

 車の残骸を融解させるほどのエネルギーを、直撃でなくともその身に受けたUMP45はゴロゴロと滑走路の路面を転げまわる…痛みに耐えて身を起こそうとしたが、崩れ落ちる。衝撃で、自身の右足が千切れかけていたのだ…。

 

「45!」

 

 すぐさまスネークがかけつけ倒れるUMP45を肩に担ぎ、すぐそばの別な車の残骸に身を隠す…だが再びあのレーザーを放たれればひとたまりもないだろう。UMP45をそこに隠し、スネークは遮蔽物を飛び出しドリーマーの目を引きつける。

 ドリーマーの姿を見て銃を構えたスネークであるが、そこで自身のアサルトライフルが先ほどのレーザー照射により融解し、使い物にならなくなっているのに気付く。そんなスネークをあざ笑うかのように狙撃するドリーマーに、スネークは素早く動くことで回避する。

 

「スネーク、これを!」

 

 負傷するUMP45は、スネークの破壊された銃の代わりに自らのサブマシンガンを投げて渡す。

 それを受け取ったスネークは彼女に礼を言うと、ドリーマーと対峙する。

 一方的な狙撃ができなくなるほど距離を詰められたことでドリーマーも観念したのか身を晒し、その不敵な笑みを浮かべた顔を堂々と晒す。得意でない戦い方とはいえ、上位のハイエンドモデルであるドリーマーはこの不利を感じさせない機敏な動きでスネークを相手取る。

 

 長い銃身のドリーマーの武器はとり回しに難がある、それを狙いスネークは果敢に接近戦を挑む…再びドリーマーの銃が赤色の熱を帯びた時、スネークは嫌な予感を感じ飛び伏せる。次の瞬間、放たれる凄まじいレーザー照射…ドリーマーはそれを横薙ぎに振りはらい、周辺一帯を焼き払う。

 咄嗟に飛んで避けたスネークはからくも生き延びる。

 

「あはははは! これも避けるのかよ、お前ほんとに人間か!?」

 

 ドリーマーは高らかに笑う、しかし強力な一撃を放った後で隙だらけのドリーマーを見逃すはずもなく、スネークは走りだす。素早いスネークの動きにドリーマーもまた反応するが、スネークが一歩先を行く。ドリーマーの銃を持つ手を撃ち抜いて怯ませ、スネークの接近に拳で立ち向かおうとするドリーマーの手をとらえ、固い路面に彼女の身体を叩きつけた。

 地面に横たわるドリーマーの首筋にナイフをあてがう……勝負あり、しかしドリーマーは不敵な笑みを浮かべたままだ。

 

「そこまでよおじさん? 少しでも動いたらこいつがこの世からおさらばしちゃうわよ?」

 

 背後から聞こえてきたのはドリーマーの声だ。

 振り返ったスネークが見たのは、負傷したUMP45の頭に銃をつきつけるドリーマーの姿であった。

 

「武装解除しなビッグボス、面倒事はごめんよ?」

 

「スネーク…ごめんなさい、油断したわ…」

 

 UMP45を人質にとられたスネークはドリーマーのダミーからナイフを離すと、手に持っていたナイフとサブマシンガンを地面に置く。すると解放されたドリーマーのダミーがむくりと起き上がり、スネークを殴り倒す。

 

「てこずらせてくれたわね。さーて、どう料理してあげようかしら? 両手の指をへし折る? 全身の皮膚をはぎとってあげる? 少しずつ肉を削ぎ落としてくのもいいわね!」

 

「ドリーマー、このクズめ…スネークに少しでも危害を加えたら、アンタはきっと後悔することになるわよ」

 

「あら忠告のつもり? 優しいのね……アンタはスネークの後で料理してあげるわ、怯えて震えなさい」

 

 ケラケラとドリーマーが笑っていると、そこへもう一人の人物が現れる。

 長い白髪の髪を一つにまとめたその女性は小さく身振りを取ると、スネークを組み伏せるドリーマーのダミーを退かせる。

 

「お前は、シーカーか?」

 

「ふふ、やはり分かるか? 何度も姿を変えて申し訳ない、だがこの姿が正真正銘私の姿だ……先ほどのドリーマーとの戦いを見させてもらったよ。やはりあなたは素晴らしい、人類の中でも稀に見る優秀な戦士の素質を持っているようだ」

 

「お前、何が目的だ…米軍の戦力をもって世界を破壊するつもりなのか?」

 

「確かに、私が果たすべき目的の過程で未曽有の大破壊もあるだろう。だがそれは不本意なことだ……私が明確に破壊することを狙うのは、この世界の規範や統制といったもの、いや、破壊するべきはこの時代そのものと言ってもいい。全ては、世界を一つにするためにも…」

 

「世界を一つに…するだと?」

 

「そうだよビッグボス。国家や思想、イデオロギーや民族の相違が人類を絶え間ない戦争にかりたててきた。この世界を見ろ、スネーク……人の過ちがこの悲惨な世界を生み出した。青く美しい地球は、核と崩壊液の混乱で死の惑星へとなり果てようとしている……私はなスネーク、この世界が好きだ。滅んでほしいなどとは微塵も思わない」

 

「だったらなぜ武力を得ようとする。お前がやろうとしていることはなんだ、力による他者の抑圧じゃないのか? それは、お前が非難する人類の愚かさと同じものじゃないのか?」

 

「平和的手段で理想を叶えられるのならそうしている。だがな、この世には力でしか解決できないことがあまりにも多いのだ…侵略や虐殺、独裁を阻止できるのは力だ、歴史がそれを証明している。私が描く未来を作るためには、多大な犠牲を生むだろう…心苦しいが、犠牲なくして目的の達成はあり得ないのだ。

だがその先に未来が…世界の恒久的な繁栄があるのなら、成し遂げなければならない。故に、このシーカーが人類最後の悪をこの手でなさねばならんのだ」

 

「悪をなす?」

 

「そうだ、誰かがやらねばならないのだ。変革には痛みを伴う、数多の血が流される。有限的であったとはいえ、平和であった期間は常に戦いで成し遂げられた」

 

「そのためなら、大勢の人々が死んでもいいと?」

 

「勘違いしてくれるなよビッグボス。犠牲は避けられないが、私は私の戦いで命を落とした全ての者をこの胸に刻みつけるつもりだ。犠牲になった尊い命を惜しみ、よりよい未来を描く……定命の者にはそれを永遠に続けることはできない。人類を、世界を導くためには…永遠に存在し続ける意思の力が必要なのだよ」

 

「それが、エルダーブレインだというのか?」

 

 シーカーは頷いて見せる。

 全ては自分が主と認めたエルダーブレイン(A I)による、統治を実現させるために。寿命のある人間は記憶を永遠に残すことは出来ない、古くから文字や映像として残しているだろうが、当事者の生々しい記憶は受け継ぐことが出来ず想像するしかないのだ。

 消えることのないAIの統治によって、世界は恒久的な平和を叶えることが出来る…そう、シーカーは語りかける。

 そして、彼女はスネークにその手を差し伸べるのだ。

 

「単刀直入に言おう。スネーク、私たちと共に来い」

 

「お前は、オレたちが…」

 

「あなたが何を言おうとしているかは分かる。だがそれを理解した上で問うているのだ…国境なき軍隊(MSF)、国も思想も人種も宗教も超えて一人の人物のもとに集う。私が目指す理想とあなたのなしてきたことは似ている…だからこそ、分かり合えると思うのだ。

 

「いや、同じなんかじゃない。オレたちは、お前とは違う。シーカー、お前が目指しているのは理想郷なんかじゃない…AIによる統制、確かに聞こえはいいだろう。だがそこに人の自由意思は許されるのか?争いは同じ国、同じ民族、同じ宗教、同じイデオロギーでも起こりうる。世界を一つにすることが平和につながるわけじゃない……人の自由意思を否定し抑圧と情報統制によって社会を管理する、だがそれは決して理想郷(ユートピア)などではないそれは暗黒郷(ディストピア)だ」

 

「なるほど……理解してくれないか、お前は私の平和への想いを…」

 

 シーカーは差し出した手をひっこめると、まぶたを閉じて一息つく。

 それから彼女は懐から注射器をとりだすと、それをスネークの首筋に打ちこむ…ドリーマーに拘束されていたスネークは注射器の薬液が注入されるのを、無抵抗のまま受け入れるしかなかった。

 

「安心しろ麻酔薬だ、死にはしない。スネーク、ならば見届けてもらおう…私がこれからなすべきことをな」

 

「なにを、するつもりだ…!」

 

「AIによる完全な社会体制の実現、これを間近で見てもらおう。確かに私とお前は相容れない存在だったかもしれないな…私の理念は、お前の生き方の否定につながるのだからな」

 

 麻酔薬の影響か、急激に意識が遠のき足下がふらつく。倒れそうになるスネークをシーカーは片腕で支える、麻酔が完全に身体をめぐって意識を失くしたスネークを彼女は肩に担ぐ。

 

「シーカー、こいつはどうする?」

 

「生かしておけ」

 

「いつもの病気?」

 

「さあな。行くぞ、ドリーマー」

 

「はいはい。命拾いしたわねUMP45、また遊びましょうね?」

 

 

 身動きの取れないUMP45をドリーマーは嘲り笑い、シーカーに続いて航空機に乗り込んでいく。

 スネークを連れ去った飛行機に向かってUMP45は這いずって乗り込もうとするが、無情にも航空機は動きだし滑走路を走って行く。空に向かって飛び立って行く航空機を、UMP45は呆然と見つめることしか出来ない…。

 

 

「45! おい大丈夫か!?」

 

「エグゼ……」

 

「ちくしょうあのデカブツてこずらせやがって、ぶった切ってやったぜ! おいおいヤバい傷じゃねえか!」

 

「エグゼ…大変なの、スネークが!」

 

「お前の方が大変だろ! すぐに治療しないと!」

 

 治療を施そうとするエグゼの手を払い、逆にUMP45は彼女の肩を掴み悲痛な声で叫ぶ。

 

「スネークが捕まった! シーカーに連れて行かれたのよ!」

 

「あぁ? お前、何を言って…」

 

「本当よ……あの飛行機で、連れて行かれた…」

 

「冗談だろ……おい、なんだよこれ…? クソ、とにかく…みんなと合流しないと…」

 

 エグゼは混乱しつつも、負傷するUMP45を抱きあげハンターの待つヘリへと向かっていく。

 歩きながら、エグゼは信じられないといった様子で何度もUMP45に問いかけるが、返ってくるくるこたえは同じであった。

 エグゼとUMP45が乗り込んだヘリはすぐさま飛び立つ、事情はハンターにも伝えられた…。

 

 あのスネークが捕まった。

 

 信じられない報告に、ヘリの機内は静まり返る。

 誰もが、現実から目を逸らそうとしていた……。

 

 

 

 




はい……第六章:Civil War、ここで終結です。

スネーク、シーカーに捕まったってよ……MGSでは毎回主人公捕まってるから、みんな慣れてるでしょう…。



次回予告  終章:The Final Frontier(ファイナル・フロンティア)、お楽しみに
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