METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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母の愛は尽きることなく、永遠に包み込む……

「ハロ~ハロ~! みんな大好きアーキテクトちゃんだよ! 元鉄血、元ウロボロス配下の超天才技師のアーキテクトとはこの私のことなのさ! フルトン回収なる装置で吹っ飛ばされて来てびっくり仰天、私は今なんとMSFにお邪魔しちゃってま~す! 人類と人形はみんなお友だち! ラブ&ピース!」

 

 ピースサインを目の横にあててウインクして見せるアーキテクト、どこに行っても維持し続けるテンションの高さにイラッとしたエグゼが即座にビンタを叩き込んで黙らせる。だが不屈のアーキテクトはぶたれて鼻血を出しても笑顔を絶やさない。

 

「ぬふふふふ、ギャグ属性を得たこのアーキテクト様は無敵の存在になったのだ! 殺されても次の登場までには復活してるもんね!」

 

「ムカつくなこのクソ人形。おい誰かチェーンソー持ってこい、こいつの耐久力試すからよ」

 

「やめて?」

 

 さすがにチェーンソーでバラバラにされては復活することは出来ない。エグゼ配下のヘイブン・トルーパー兵が律儀にチェーンソーを持って来るのを見たアーキテクトは、目にも止まらぬ速さで独房に飛び込み、内側から鍵をかけて閉じこもってしまった。

 その隣の独房にはイライラした様子のゲーガーの姿がある。アーキテクトが割と自由に独房を脱出しているのに対し、ゲーガーは閉じこもったまま。というのも、アーキテクトは独房の警備スタッフとすっかり打ち解けてしまったために、気に入られた彼女はある程度の自由が認められているという。

 敵に媚びへつらうことを嫌ってゲーガーは独房に居続ける。

 

「フフン、この鉄格子の頑丈さは把握済み! いくらそのチェーンソーでも切断できないよね!」

 

「おーい、消火ホース持ってこい。もうムカついたからこいつに高圧放水してやろうぜ」

 

「やめて!? ぷぎゃーーー」

 

 先ほどと同じように素早く消火ホースを繋いで持ってきたヘイブン・トルーパー兵。ホースを受け取ったエグゼはホースの先を檻の中のアーキテクトに向けると、逃げ場のない独房で狼狽えるアーキテクトに放水した。高圧の放水を受けて吹き飛ばされたアーキテクトは目を回し失神、ようやくうるさい人形を黙らせることができてエグゼは一先ず満足した。

 

「ママー! ヴェルもやりたい!」

 

「おう、こっちのむすっとした奴にやってやれ」

 

「ちょっと待てなんで私まで! うわーーー!」

 

 哀れ、ゲーガーも巻き添えをくらいヴェルの放水を受けて全身水浸しになる。まあヴェルに消火ホースを預けるのは体格的に危険ということで、特製水鉄砲を与えられる。水鉄砲の比較的弱い放水を受けるゲーガーは、相手は子どもだとして微妙な表情で耐え忍ぶ…。

 ぴしゃぴしゃゲーガーに水をかけて遊ぶヴェルの事は、部下たちに任せエグゼは一人研究開発棟へと向かう。

 棟内のストレンジラブ専用の研究所内には現在、二人の戦術人形が眠りについている。一人はデストロイヤー、もう一人はアルケミスト。

 正確には、デストロイヤーの救助のためにアルケミストのメンタルモデルはデストロイヤーの中に潜り込んでいる状況だ。

 

「調子はどうだ…上手くいっているのか?」

 

 アルケミストのメンタルモデルをデストロイヤーの中に入り込ませたストレンジラブへと問いかける。彼女はいつも通りの表情で順調だと告げるが、今のところはと最後に付け加える。

 なにせ今までやったことのない試みであり、UMP45やあとアーキテクトの助言もあって技術的問題をクリアしてはいるが、問題はデストロイヤーを犯し続けるウイルスの存在だ。ほとんど未知のこの強力なウイルスは、デストロイヤーのメンタルモデルに飛び込むことによりウイルスの脅威を間近で受けることとなる。

 表情に出しはしないが、アルケミストが無事に帰って来てくれるかエグゼは心配していた。

 

「よし、アルケミストは無事にデストロイヤーのメンタルモデルに入り込めたようだ。少し話してみよう…アルケミスト、聞こえるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長いような短いような、暗闇の世界でじっと待ち続けていたアルケミストは不意にまぶしさを感じて目を開く。まぶたを開いたアルケミストの目に飛び込んできたのは、幻想的に光る七色の星空と平原の中にある古風なつくりの城塞であった。

 一瞬、自分が今何をしているのか分からなくなったアルケミストは自分がいよいよヤバい薬に手を出してしまったのではと疑うが、どこからか聞こえてきたストレンジラブの声により、自分がデストロイヤーを助けるために彼女のメンタルモデルに入り込んだのだと思いだす。

 

『上手く入り込めたようだな…どうだ、調子は?』

 

「変な気分だよ。あたしはいつからファンタジーな世界に入り込んだんだ? これがデストロイヤーのメンタルだって?」

 

『おそらく今見ているのはデストロイヤーの中の強い記憶の一部だろう。彼女が見た風景、記憶、あるいは想像していることが今のお前に見えているんだろう』

 

「なるほどね。おっと…」

 

 不意にそれまでの風景が代わり、今度はおどろおどろしい暗雲が立ち込め、枯れ木が立ち並ぶ暗黒めいた風景へと変わった。この風景にはアルケミストも見覚えがある、確か鉄血にまだいた頃、廃墟の跡地からアニメ映画を見つけたデストロイヤーが見ていたものだ。

 そのアニメ映画は予想外にショッキングな内容で、何も知らず映画を見たデストロイヤーは泣いていたのを思いだす…懐かしさに笑みを浮かべていると、いばらの森の向こうからふらふらと揺れ動く物体が。姿を現したそれは、青白く膨れ上がった腐乱死体の亡者だった。

 確かそれもアニメ映画でに出てきたモンスターであったと記憶するが、その亡者はアルケミストを見据え真っ直ぐに近付いていくる・

 

『アルケミスト、今お前の近くにいるのがデストロイヤーを苦しめるウイルスの一つだ』

 

「こいつがウイルス? 映画の中の腐乱死体だぞ?」

 

『おそらくウイルスの容姿はデストロイヤーの記憶に影響されるようだ。私たちにはお前が何を見ているのかは分からないが、ウイルスの接近は判断できる。このくらいのサポートしか出来ないが…』

 

「十分だ。さっさと済ませよう」

 

 アルケミストは腐乱死体に向き直る。

 接近してきたことで、亡者の水を含み膨張した体組織が鮮明に見て取れる。だがグロテスクな亡者を間近に見てもアルケミストは眉一つ動かさず、亡者の眉間を撃って消滅させる。亡者は甲高い悲鳴をあげると、青白い光となって消滅した。

 

『ウイルスの消滅を確認した、どうだ?』

 

「簡単だ、次のウイルスを探してくれ」

 

 デストロイヤーのメンタルモデルの中で、アルケミストは普段通りの姿で具現化されている。自前の身体と武器で相手を消滅させるので、やっていることは現実世界とほぼ変わらない。

 次に風景が変わると、今度はどこかの薄暗い倉庫の中であった。倉庫の中で小さな容姿のデストロイヤーが膝を抱いてすすり泣いている。

 

「ドクター、ここにウイルスはいるか?」

 

『いや、その辺にはいないぞ』

 

『どうしたんだ姉貴? なんかあったのか?』

 

「いや、デストロイヤーの記憶を垣間見てるだけだ。なあ覚えてるかエグゼ、蝶事件の前にお前がデストロイヤーのカードキーを隠して宿舎に戻れなくしたのを。どうやら相当根に持ってるらしいな」

 

『勘弁してくれよ姉貴! そん時のオレはガキだっただけだろ!?』

 

「分かっているさ、少し懐かしく感じただけだ」

 

 ここにはデストロイヤーを助けるために来たのだが、彼女の記憶を通してみる過去に懐かしさを感じてしまう。この後の展開は、ピンチを聞きつけたアルケミストが夜の研究所内を捜し回って助けだしにくるところだ。その後はエグゼとケンカして、代理人にこっぴどく叱られた……自分が忘れかけていた記憶を、デストロイヤーは今も鮮明に覚えているのだ。

 再び風景が変わる…再びファンタジックな世界観に戻ると、ストレンジラブがウイルスの接近を告げる。

 

『ウイルスの反応が多くあるぞ。注意してくれ』

 

「了解……っと、今度はなんだ?」

 

 この風景は見覚えがあった、確かこれも廃墟から見つけてきたゲームソフトの風景だったと記憶する。額をとんとんと指で小突きアルケミストは思いだそうとする…確かこれは女性キャラを動かし、ゴブリンやスライムといったファンタジーの王道的モンスターを倒していくゲームだったと記憶する。それで負けてしまうと大変なことになる…要するにエロゲ―だったはず。

 一人でこっそり遊んでいたところをアルケミストがやって来たものだから、その時のデストロイヤーはかなり慌てていた、これも強烈に覚えているのだろう。

 

「さてと……早速お出ましだね」

 

 現われたのはタコのような触腕をうねうねと蠢かせる薄気味悪い生物だ…見た目は違えども基本的なスペックは同じために、生理的嫌悪感以外に脅威はないのだが。ただしそんな薄気味悪い容姿のウイルスの他に、子ども程度の背丈のゴブリンや、狼男などの姿をしたウイルスが多数現われるとなると緊張感は一気に増す。

 

「まったくデストロイヤーの奴め…」

 

 ため息を一つこぼし、アルケミストは異形のウイルスたちを一瞥する。見た目は違えどやることは同じだ、デストロイヤーを苦しめるウイルスは一つたりとものこしてはならない。武器を構えた彼女は迫りくるウイルスたちに向けて発砲し、ことごとく消滅させていく。

 次から次へと現れるウイルスたち…だがアルケミストの手により全て殲滅され、再び景色が変わった。

 

 今度の景色はどこかの研究所、白い壁の室内でデストロイヤーは彼女の記憶の中のアルケミストの腕の中に抱かれて微笑んでいる。これはあの事件が起こる前…幸せだった日々の記憶だ。

 質素な部屋の様子から、そこがあの人の部屋であることを瞬時にアルケミストは理解した……デスクの上には、いくつかの写真が飾られている。写真を手に取って眺めることは出来ないが、彼女は屈み込み、懐かしそうにその写真を見つめる……自分と共に写る、白衣を来た一人の女性の姿がある。

 そんな時、ストレンジラブのウイルスの接近を告げる声を聞き、アルケミストは気持ちを切り替え指示された方向へと向き直り…そこで彼女は固まった。

 

 猶予をもって告げたウイルスの接近、しかしいつまでも消滅しないウイルスの反応を不審に思ったエグゼが声をかける。

 

『姉貴、どうしたんだ? なんかあったのか?』

 

「あぁ……マスターがいる」

 

『そりゃそうだろう。そこはデストロイヤーの記憶の中だ…感傷に浸るのはいいが、さっさとウイルスを消してくれよ』

 

「マスターだ……ウイルスがマスターの姿をしているんだよ」

 

 忘れようもない、アルケミストにとっての最愛の人…恩師であり、母でもあるサクヤの姿がそこにあった。あの時の優しく温かな微笑みを浮かべるサクヤが、ゆっくりとアルケミストへと近付いてくる。最愛の恩師の姿に、アルケミストは構えていた銃を下ろす…。

 

『姉貴、そいつはウイルスだ…惑わされちゃダメだ!』

 

「分かってるよ、分かっているさ…」

 

 理解はしているが、たとえ消さなきゃならないウイルスだとしても、最愛の恩師を撃つことにためらいが生まれる。エグゼの呼びかけに何度も返事を返し、アルケミストは瞳を閉じて呼吸を整える…そして再び銃を構えると、照準の中に恩師をおさめるのだ。

 あの日、失った恩師の微笑みが瞳に映る……今すぐ銃を放り捨て、彼女を抱きしめたい衝動に駆られる。

 だがそれをすれば、自分は感染しもう二度と正気には戻れないかもしれない。アルケミストは恩師より目を背け、引き金を引いた……ウイルスが死滅する甲高い声が響く、まるでそれが恩師の断末魔の声に聞こえてならず、彼女は罪悪感にさいなまれるのだ。

 

『姉貴、よくやったな……辛いだろうが、やるしかなかったんだよ…』

 

「あぁ……速く終わらせよう」

 

 ふらふらと歩きだし、彼女は次なるウイルスを死滅させるために動きだす。果てしないウイルスの接近に対処し続け、彼女がたどり着いたのは奇妙な空間だった。今までのようなデストロイヤーの記憶や想像などではなく、光が明滅する暗闇の空間だ。そこが、メンタルモデルの深層なのだとアルケミストはなんとなく察する。

 

「さてと、なんだこいつは?」

 

 そんな暗闇の中でひときわ光る物体、ウイルスのようではないが、何かのプログラムに見えるそれを小突く。それが壁になっているようで、その先に進むことが出来ないのだ。つついたり触ったり迂回しようとしたり、しかし光る物体は立ちはだかる…次第にイラついてきたアルケミストが、おもいきりその物体を蹴飛ばすとなにやら悲鳴が聞こえてきた。

 やはり隠れウイルスかと、銃を構えると…。

 

『ストップストップ! 撃っちゃダメ、ダメだよ!?』

 

「喋るウイルスか、調子に乗りやがって! とっとと消えろ!」

 

『わー! やめて、一旦落ち着こう、ね!? アルケミスト、わたしだよ!?』

 

「あぁ!? お前ぶっ殺されたいのか!?」

 

『サクヤだよ! 忘れちゃったの!?』

 

「サクヤだ!? 言うにことかいてこの………どういうことだ?」

 

『もう……いつの間にかこんなに言葉遣いが酷くなっちゃって…久しぶりだね、アルケミスト』

 

 アルケミストは混乱する…ありえない、絶対にありえないと何度も自分の耳を疑うが、そこから聞こえてくる声は紛れもなく記憶の中に残るマスターの声であった。優しく語りかけるその声は、先ほどのサクヤを模ったウイルスよりもずっと彼女に限りなく近かった。

 

「本当に…マスターなのか?」

 

『そうだよアルケミスト…正確には、私が生前残したアンチウイルスプログラムなんだけどね。私はあの日、このプログラムをデストロイヤーちゃんに仕込んでおいたの。いつか、役に立つと思って…そうならないのが一番だったんだけどね』

 

「そうだったのか…マスター、もしかしてここから先に行けないということは…」

 

『あのウイルスで滅茶苦茶にされちゃったけど、あの子の大事なメンタルの深層はなんとか守り切ったよ。そろそろ限界だったんだけど、君が来てくれた。私も予想外だったよ』

 

「そうか……マスター、ずっとあなたが守ってくれていたんだな? ありがとう…」

 

 マスターの意思はアンチウイルスプログラムとしてデストロイヤーの中に生き続けていた、ずっと彼女はみんなを見守り…そしてデストロイヤーのことを守り続けてくれていた。この優しさは紛れもない恩師のものだ。

 

「マスター…あぁ、マスター…ずっと、あなたに逢いたかった。たくさん伝えたいことがあった……それに、あなたに謝らなくちゃならないことも…」

 

『いいんだよ、アルケミスト…いいの。分かっているから…大変だったよね、辛かったよね……私のせいであなたを苦しめちゃってごめんね。ずっとみんなのことを見ていた、何も出来ない自分がとても情けなかったよ…』

 

「そんなことは……マスターは、デストロイヤーを守ってくれていた…」

 

『優しいね、アルケミストは……やっぱり君はみんなのお姉ちゃんだね、あの子のために戦って。もうウイルスは残り少ないよ』

 

 最後の生き残りのウイルスがふらふらと接近してくる。

 それを即座にアルケミストは撃破する…最後のウイルスが死滅したとき、それまで真っ暗だった世界に光が灯される。デストロイヤーを蝕んでいた病魔が消え去ったのだと、アルケミストは理解した。

 

『アルケミスト、本当にありがとうね…この子を助けてくれて。もおかげでもう心残りはないよ』

 

「待ってくれマスター…もう、いなくなってしまうのか?」

 

『ごめんね、この子を守るために無茶し過ぎたみたい。悲しいけれど、お別れみたい……』

 

「分かった、分かったよマスター……」

 

『みんなをよろしくね、アルケミスト。わたしはいつもあなたたちを見守っているから…運命に負けちゃダメだよ、力強く、精一杯生きるんだよ? それと、私よりたくさん長生きしてね?』

 

「あぁ…もちろんだ、もちろんだよ…」

 

『うん、あなたはいい子だね。今度こそ本当にお別れだね…愛してるよ、アルケミスト』

 

「あたしも…あたしも、愛しているよ…マスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぶしさに目を覚ました私は、しばらく天井の青白い光を見つめていた。

 そこへ影が差し、私の顔を覗き込んできたのは妹分のエグゼだ…こいつは私に異常がないか確認しているようで、少ししつこいので鼻っぱしを指ではじいてやった。

 徐々に、意識が戻ってくる…目を閉じれば鮮明に思いだす、メンタルモデルの中での出来事を…。

 

「やったな姉貴…あのチビ助は助かったよ」

 

 エグゼの声を聞き、あたしは隣のベッドで横になるデストロイヤーを見つめる。

 相変わらず眠りについているが、その顔は安らぎに満ち、呑気によだれを垂らして愛くるしい顔を見せている。そっと手を伸ばし、この子の髪を撫でてやればその温もりを手に感じる……もう少しであたしは、この温もりを失いかけたのだ。

 そうならなかったのは、すべてあの人のおかげ……。

 

 

 ありがとう…マスター…。




はい……(涙)

ちと無茶があるかもだが、そんなの関係ねえ!

……死してなお我が子を守りぬく。
鉄血ファミリーに末永い幸があらんことを…。





その頃のアフリカ
イーライ「ゲホッ、ゲホッ……仮病してたら本当に風邪ひいた…」

ウロボロス「大丈夫か? おっぱい揉むか?」

イーライ「うーんこの……バタンッ」(高熱により失神)

グレイ・フォックス「やっぱおねショタは最高だぜ」
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