METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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平和の日~おもてなし!~

 あちこちで予想を大きく上回る賑わいを見せる前哨基地。今のところ目立ったトラブルは起きておらず、平和の日はその名の通り平穏そのものである。

 

 いつも一緒にいるミラーがバンドの準備のために一時離れているため、97式は蘭々を連れてお祭り会場を練り歩く。出店が密集するエリアでは人がごった返しているが、97式と蘭々が通ろうとすると勝手に道が開いていく。勝手に道を譲ってくれる様子を不思議に思いつつも、97式はみんなのやさしさを感じてつい笑顔を浮かべる。

 

「えへへ、みんな道を譲ってくれて優しいね!」

 

「グルルル…」

 

 蘭々の首元を撫でてやると、蘭々は気持ちよさそうに目を細める…が、蘭々は一瞬たりとも気を緩めず周囲に目を光らせている。察しのいい者は分かるが、97式に道を譲っているのは優しさだけでなく、牙をちらつかせて威圧してくる蘭々を恐れてのことであった。

 まあ、そんな蘭々を前にしても道を譲らない戦術人形が一人。

 邂逅するや否や、蘭々は唸り声をあげて威嚇する。

 

「なんだこの縞猫やろう! 今日も調子に乗ってんな、毛皮にしちまうぞこら!」

 

 威嚇するトラに、同じように威嚇するのはMSFの狂犬ことエグゼである。

 ブレーキの壊れたダンプカー、常にキレてる女、メスゴリラ、一発殴って自己紹介する人形…と、散々なニックネームをつけられている。トラ相手に一歩も引かないエグゼだが、見かねたハンターがげんこつを叩き込んで黙らせる。

 

「すまない97式、ほら蘭々、干し肉食べるか?」

 

「わーい、蘭々いっしょにあそぼー!」

 

 蘭々を見てぱたぱたヴェルが駆けつけ、ハンターと一緒に干し肉を与える。

 97式に害を与えそうな輩とミラーとエグゼ以外には基本穏やかな蘭々は、ヴェルの前で身体を横たえて干し肉にかじりつく。

 

 

「いってぇな、このやろう!」

 

「落ち着けエグゼ、今日は平和の日だろう? 穏便に済まそうじゃないか」

 

「姉貴はすっこんでろ!」

 

「あぁ? なんだその口の利き方は?」

 

「うぇ、そう怒るなよ姉貴…冗談だってば、あははは…」

 

「だっさ」

 

 

 相変わらずアルケミストに睨まれると途端に尻尾を巻いてしまうエグゼ…ここまで手綱を握れるのもそう多くはないため、今日でアルケミストが去ってしまうのはとても惜しいことである。だが、仕方のないことなのだ…。

 さて、姉妹がポンコツなやり取りをしていると、少々息を切らし気味のスコーピオンが駆けつける。

 

「お、どうしたんだスコーピオン。今朝から見なかったじゃないか」

 

「お祭りの招待客を迎えに行ってたんだよね。あたしとリベルタと、あと誰か一人で接待しようと思ってるんだけど…」

 

「へえ、客かぁ……どこのどいつだ? オレ様がMSFの流儀を直々に教えてやるぜ!」

 

「エグゼ? 相手はお客さんだからね? あんまりちょっかいかけちゃダメだからね?」

 

「何言ってんだスコーピオン、第一印象が大事だろう? 舐められるわけにはいかねえよな!」

 

 どう見ても何か騒動を起こそうと言わんばかりの表情を見て、周囲の者は一瞬の間合いで目線を合わせ意思の疎通を図る。そして、この凶暴なメスゴリラがお客さんにちょっかいをかけないよう抑え込もうと連携を取ることとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 S09基地より招待されてやって来たのは、 【ユノ】と【ノア】。ユノの方は白い髪に赤い瞳、ノアの方は茶髪に鋭い猫を思わせるような金色の瞳と、細かな差異はあるが二人は身長やその他の容姿もよく似ている。実際、二人は姉妹と言うことで、いざお迎えに行ったスコーピオンは初対面のノアにびっくり仰天、まさか妹がいるとは思わなかったのである。

 そしてノアのミニマムな身体には持て余すような豊満なバストを見て、スコーピオンは苦笑いを浮かべる。

 

「やっほーMSFのみんなー! 初めまして、D08のHK417ですよ~!」

 

「フッフフフ…念願のMSF基地、さーて、どこから観察を……噂のサヘラントロプスとやらはどこ!?」

 

「トラブルはごめんだからね?」

 

 それから現れたのは、スコーピオンが間違い電話の最中に知り合ったついでに招待をしてしまったグリフィンD08基地の面子だ。HK417と、ヴィオラにロマネシアという如何にも鉄血ハイエンドモデルのような戦術人形で、どこかで見たような顔をしている…しかし、MSF内でも顔の似ている奴が多くいるし、初対面のハンターなども無反応なのでただの偶然だろう。

 そんなことはいいとして、現われたD08基地の面々を見てMSFのスタッフ…特に性欲を持て余した野郎どもに衝撃が走る。彼らは咄嗟にスコーピオンを捕まえると離れたところに連行する。

 

 

「スコーピオン同志、アレはなんだ!? あんなダイナマイトボディのお客さんが来るなんて聞いてないぞ!?」

 

「あたしだってびっくりだよ! 二度見どころか四度見くらいしちゃったよ!」

 

「羨ましいぞスコーピオン同志! オレたちが女性を5秒以上視続けたら月光が駆けつけてくるっていうのに!」

 

「アンタらは露骨すぎるの! でも気持ちはわかるよ…UMP45を地平線だとするなら、あの3人はエベレストだ!」

 

「おっと、45姉の悪口を言うのはそこまでだ。地平線の何が悪い!」

 

「出たなジョニー! ちょっとあれを見なさい」

 

「んん? んなっ!?」

 

 やはり、ジョニーはD08基地の爆乳三人を視るや否や、驚きで大混乱に陥った。

 貧乳を誰よりもこよなく愛する変態装甲人形ジョニーとしては、日頃から巨乳抹殺を掲げるプロパガンダを垂れ流しているため、彼女たちのような者を見つけるともう大変だ。ジョニーは怒り狂って三人の元へ走って行くと、拡声機能をオンにして叫ぶ。

 

「おのれ淫魔の如き巨乳め! お前たちのような風紀を乱す輩はこのジョニーが許さん、成敗してくれる!」

 

「おぉ? なんか来たよ!」

 

「クヒヒ、なんか弄りがいがありそう♪」

 

「なんか知らないけど、面白そうな装甲人形ね!」

 

「ひえっ! こ、こっちに来るなー! きょ、巨乳の悪魔が襲ってくる……神よ、我が主45姉よ助けてー!」

 

「まてー!!」

 

 ジョニーは迫りくるHK417、ヴィオラ、ロマネシアから逃げるように走り去る…が、三人は面白そうなおもちゃを見つけてその後を追いかけていってしまった。まあ、よく分からないが楽しそうなのでよしとしようとスコーピオンは一人頷く。

 さて少し遅れてしまったがスコーピオンはユノとノアの元へ向かう。待たされている間、二人は香ばしいかおりを漂わせる出店を見て目を輝かせている。もう待ちきれない様子であるが、一応外部の人間を受け入れるというか遠いのでもうちょっと時間がかかる。

 持ち物検査を済まし、簡単な質問に答えてもらえば完了だ……質問者であるスタッフが二人のバストサイズを聞こうとしたのをスコーピオンは聞き逃さず、容赦のない顔面パンチを叩き込んだわけだが…。

 

「ごめんね、うちのスタッフスケベばっかりでさ。さてと、改めてようこそMSFの平和の日に!」

 

「こちらこそ、改めて招待してくれてありがとう! あと、妹の方も改めて紹介するね、私の妹のノアっていうの」

 

「よろしく、MSFのスコーピオン!」

 

「うんうん、可愛くてよろしい! ところで、一緒に来たはずのガンスミスさんが見当たらないんだけど知らない?」

 

「ガンスミスさんなら、ほら、あそこに…」

 

「ほえ?」

 

 ユノが指さす方向を見てみれば、何やらたくさんのMSFスタッフたちにもみくちゃにされているガンスミスさんの姿があるではないか。騒ぎが大きすぎてよく聞こえないので近寄ってみれば、なんとガンスミスさんが流すラジオのファンたちが握手とサインを求めて群がっているようす。

 なんでこのようなことになっているかと言うと、MSFの古参スタッフの中には銃の知識が70年代で止まっている者が多いわけだが、たまたまラジオで銃器を楽しく解説してくれる彼を知りすっかりファンになったわけだ。よく分からない銃の解説をしてくれるのは、戦場に生きるMSFスタッフたちにとってありがたい存在だった。

 野郎どもにもみくちゃにされるなか、ガンスミスさんはスコーピオンを見つけると手を挙げて助けを求める。

 

「おーい! スコーピオン助けてくれー!」

 

「大人気じゃんガンスミスさん! 良かったね! あ、何人かホモ疑惑の奴も混じってるから注意してね~!」

 

「ちょっと待って、今聞き捨てならないことを…!」

 

 まあ流石にそのままにしておくことはいけないので、群がる群衆を追い払ってガンスミスさんを救出した。

 

「お疲れさま、ガンスミスさん」

 

「なんか、もう色々疲れた……」

 

「あらそう? なんだ、せっかくまた珍しい銃を見せてあげようと思ったのに」

 

「おぉ、なんか元気出てきたぞ!」

 

 銃をこよなく愛する彼の嗜好をついた言葉で、疲れは吹き飛びやる気をみなぎらせる。

 まあ彼が知らない銃は無いように思えるが、火縄銃があるよと言ったら二つ返事で来ることを約束してくれたので、折角だから見せてあげなくてはならない。

 

「さてと……あとはユノっちとノアちゃんを……って、やば」

 

 振り返った先で、MSFの狂犬エグゼが早速お客さんのノアちゃんにくってかかっているのを見てスコーピオンは青ざめる。首輪をして檻にぶち込んでおくべきだったと後悔しながら慌てて駆けつける。

 

 

「なにガン飛ばしてんだこのやろう?」

 

「なんだテメェ、ケンカ売ってんのか?」

 

「ちょ、ノアちゃん!? ごめんなさい、妹が失礼して…!」

 

「なんで謝るんだよ。先に難癖つけてきたのはこいつの方だぞ?」

 

「なんだその態度はよ、舐めてんのかコラ!」

 

「舐めてんのはお前だあほんだらーっ!」

 

 ノアに向かって吼えたエグゼに、スコーピオンの強烈な飛び蹴りが炸裂する。

 そしてエグゼに立ち直らせる時間も与えず、得意のスコーピオン・デス・ロック(サソリ固め)で抑え込む。

 

「いてててて!! 離せくそサソリー!」

 

「あたしが招待したお客さんに、ケンカ売りやがって、この! メスゴリラ! これでもくらえー!」

 

「いってぇぇ!! 分かった! 悪かった、オレが悪かったから!!」

 

「なにぃ!? 聞こえないよ!」

 

「ごめんって言ってんだろうが、聞こえねえのかこのやろう! ぶっ殺すぞ!?」

 

 スコーピオンの関節技を力任せに強引に振りほどいたエグゼ。

 すると二人は早速乱闘騒ぎを起こし始めたではないか……この平和の日のお祭りで、非平和的な行動をとればもちろん治安部隊に目をつけられる。即座に駆けつけた月光とヘイブン・トルーパーによって二人は拘束され、喚きながらどこかへ連行されていってしまった…。

 

 そんな光景を目の当たりにしたユノとノアは、ポカーンと口を開けて立ちすくむ。そんな二人のところへ、以前お世話になったリベルタドールが駆け寄り、久しぶりに会うユノの手を握り微笑みかける。

 

ユノ! 久しぶり……元気にしてたか?

 

「リベルタちゃん、久しぶりだね!」

 

 相変わらず聞き取りにくい小声で話すリベルタであるが、ユノは聞き漏らさずちゃんと聞いてくれる。それが嬉しくてリベルタもまた、にこやかに微笑む。

 

「そうだ、リベルタちゃんにも紹介するよ。私の妹だよ!」

 

「おう、初めましてだな。あたしはノアだ、よろしくな」

 

「……………」

 

「お、おい? 聞いてんのか?」

 

「リベルタちゃんは、シャフトと似た感じだからね。もうちょっと優しく声をかけてみたらどう?」

 

「お、おう。えっと……よろしくね、リベルタ」

 

よ、よろしく………

 

 相変わらずのコミュ障ぶりがなんとも懐かしい…表情にこそ出さないが、目が明らかに泳ぎまくっている。

 それも手を握ってあげれば少し落ち着く……戦場に一度出ればスイッチが入って冷酷な戦闘マシーンに変貌するが、平常時では誰よりもポンコツコミュ障なリベルタは安らぎを覚える。

 

今日はたくさんもてなす…ユノを喜ばせる……バンドの演奏とか、夜には花火もあげるから楽しんでいってほしい

 

「うん! こちらこそよろしくね、リベルタ!」

 

「よっしゃ、じゃあ早速屋台めぐりしようぜ! もうお腹ぺこぺこだ!」

 

料理はたくさんある……ハンバーガーも、でもキッドの料理は注意してくれ…不味い

 

「あははは……じゃあ、今日はリベルタちゃんに案内してもらおうかな?」

 

引き受けた……それに、ユノの妹とも…友だちになりたい

 

 ノアとその家族とは友だちになれた、きっと今日会ったばかりのノアとも友だちになれるはずだ。

 リベルタは引っ込み思案な自分の性格を理解しつつも、二人を精一杯接待するため、二人の手を引いてお祭りの中へと連れていくのであった。




はい(怒)


折角遊びに来てくれたお客さんにケンカ売ったり、巨乳悪魔と言って逃げだす輩がMSFに紛れているらしい。

はい、というわけでスコーピオンとエグゼが早速治安部隊に拘束されましたねw


ムメイさん、焔薙さん、通りすがる傭兵さんご協力ありがとう!
あとは好き放題遊んでくれ(無責任)

ま、まあこっからバンドの演奏とか花火とか、夜の部あったりするから(震え)

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