METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

239 / 318
タイトルは大日本帝国のスローガン、まあ贅沢は敵だみたいな意味です


身にはボロ着て心に錦

 MSFは世界各国から兵士たちが集い、多国籍軍の様相を持っているのは既に知るところである。

 MSFにいったいどれだけの人種がいるか数えるのは両手の指では数え切れないほどである…人種が違うということは、言語も習慣も文化も違う。必然的にもめ事は起きやすかったりもする…MSFではその点に注意した上で兵士たちの勧誘を行ったり、兵士たちのコミュニケーションの疎通を図りそれら争いごとは極力抑える努力をしてきた。

 兵士たちの協調性に注意する労力はあるが、各国から兵士たちを受け入れるメリットというのも存在する。

 当たり前だが、それぞれのお国柄によって軍隊のあり方などや部隊の訓練方式も異なるものだ。MSFでは一つのやり方に固執せず、兵士たちによって持ちこまれた訓練方法や戦術などを日夜研究し、よりよい形に昇華して組織の育成に役立てるのである。

 

 戦術人形の運用方法もその中の一つだ。

 

 MSFにとって戦術人形の運用方法はまだまだ遅れていると言わざるを得ない部分がある。

 命令を忠実に遂行するだけの軍用人形ならいざ知れず、MSF戦術人形で主力を担う人形たちは良くも悪くも個性的な者が多い。癖のある人形たちをどうやって運用するかが、戦術人形たちを利用する組織の悩みどころであった。

 グリフィンでは早期に戦術人形の有用性を見出したため、この分野においては他の組織より抜きんでているといってもいいだろう。

 

 

 さて、MSFにおいて実質組織の運営を担っている副司令ことカズヒラ・ミラーはそんな戦術人形たちの行動に頭を悩ませていた。傍らには同じくテーブルの上の帳簿とにらめっこする97式の姿と、我関せずといった様子の蘭々が居眠りをしていた。

 

「どうしたものか…」

 

「うーん…」

 

 二人が頭を悩ませている理由、それは自由奔放な戦術人形たちの浪費癖だ。

 エグゼは部隊強化のために時に圧力をかけて無人機や兵器をぶんどっていき、スペツナズは優秀だが平時のアルコール消費が半端ではない、そして多くの人形たちに言えることだが射撃場での弾薬消費が多すぎる。スプリングフィールドやWA2000といった一発必中を志す人形ならともかく、スコーピオンもMG5もネゲヴもとにかく弾をばら撒きまくる、416などは榴弾発射のおまけつきだ。

 一時期は弾薬は実費だった時期もあったが、猛抗議を受けて見直した……その結果が、MSFの収益減少である。

 

「射撃訓練で弾を使うのは分かるが、いくらなんでも浪費がすぎる。オレたちは国に予算を貰ってるわけじゃないんだから、そこらのところを考えてもらわなくちゃ困る」

 

「一部の人はストレス発散に撃ちまくってるみたいだし……ミラーさん、このままじゃ敵に倒される前に弾代でMSFが潰れちゃうよ!」

 

「むやみやたらに弾を浪費しているのが誰か分かってるが、どうしたものか……スネークは基本的に人形たちに甘いし、オセロットは諜報にかかりっきりだし」

 

 あと頼れる者はエイハヴとキッドくらいだが、エイハヴは優しすぎるしキッドはノリノリで戦術人形に付き合ってしまう。ミラーが直接出向いてもありだが、一部反抗的な人形の返り討ちに合う……ではどうしたらいいか、97式はあるアイデアを思い浮かべる。

 

「ミラーさんあたしにいい考えがあるよ! この手の問題を解決できそうな人がいるの!」

 

「む!? 何かいい考えがあるんだな!?」

 

「グリフィンにね、ものすごーくお金儲けが得意な人がいるの! その人フルトンで回収しちゃうんだよ!」

 

「いや、さすがにそれは…問題になるんじゃ……」

 

「背に腹は代えられないよミラーさん! 別組織の人を拉致じゃなかった、勧誘するのは今までやって来たことだよね! 損失は収益で補う、この手で行きましょう!」

 

「よし分かった! じゃあ早速戦闘班にミッションを用意しよう!」

 

 話がまとまれば行動は早い、諜報班にすぐさま向かい対象人物の居所を入手し早速部隊を向かわせる。そこから数日程待った後に、MSFには一人の少女がフルトン回収されて連行されてきた。道中暴れまくったのだろう、ロープでがんじがらめにされて物凄い形相でミラーと97式を睨みつける。

 二人の前に運ばれた少女であるが、97式は思っていた人物と違うようで首をかしげる。

 

「あれ? この人じゃないよね? あたしが言ったのは、グリフィン後方幕僚のカリーナって人なんだけどさ」

 

 どうやら間違った人物をフルトン回収してしまったようだ。

 

「うーん…グリフィンのカリーナだったら上手くいくと思ったんだけどなぁ」

 

「ちょっとなんなのよ! いきなり空に打ちあげといて! ここはどこ!? あんたらだれ!?」

 

「まあまあ、細かいことは気にしちゃダメだ。フルトン回収したからには、オレたちが君の面倒を見るつもりだから。よろしく、えっと…」

 

「いいから、その前にロープほどいてよ!」

 

「元気いっぱいな戦術人形だね」

 

 ひとまず要求の通りロープをほどいてあげる。

 拘束を解かれた少女は一瞬二人に跳びかかろうとしたようだが、真後ろでギラギラした瞳を向ける蘭々を見て踏みとどまった。

 

「君は、もしかして64式自動小銃の戦術人形かい?」

 

「あら、私のことを知ってるの?」

 

「もちろん。なにせオレは自衛隊にいた頃があったからな、それにしても懐かしいな…オレもよく、その銃で訓練に励んだもんだ。あの頃ときたら、薬莢一つ失くしただけでえらい騒ぎだったからな」

 

「へえ、あなた私について詳しいんだね。それに自衛隊って、あなたいつの時代の人間なの?」

 

 ミラーがかつて日本に住んでいた頃、自衛隊に所属していたこともあってか、自衛隊の正式採用小銃だった64式と会話に花を咲かせる。まあ、それを傍で見ている97式は面白くなさそうな表情をしているが…。

 会話の中ですっかり打ち解け、ミラーと97式の悩みを聞いた64式はこの問題について協力を申し出るのであった。

 

「事情はだいたい分かった。手を貸してあげるわね」

 

「それはありがたいが、どうやって?」

 

「あなたも知る、私たちのやり方を広めてあげるのよ。ルールとして定着させてあげれば、無駄な浪費も少なくなるはずよ」

 

「よし、それじゃあ今から実行しよう! よろしく頼むぞ、64式ちゃん!」

 

「ええ、ミラーさん!」

 

 固い握手を交わし、打倒浪費家を掲げる二人。

 彼女の協力を得られたところで、早速行動に移そうとするが、それまで黙っていた97式が頬を膨らませてツンツンしているのに気付く。

 

「97式? そんな機嫌悪そうにして、どうしたんだ?」

 

「知らないもん、あたしは蘭々と一緒に遊んでるから、ミラーさんなんて知らない!」

 

「97式? おーい、待ってくれ-!」

 

 蘭々を連れてさっさと司令部を立ち去っていってしまった97式、64式と親しそうに話しているのに嫉妬しているのを彼は気付けなかった。後を追いかけたが、蘭々に一撃で返り討ちにあってしまい、やむなくここからはミラーと64式の行動となるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……最近休む暇がねえな。こういう時は、射撃場行ってガンガン撃ちまくるのに限るよな」

 

「お!面白そうだね、あたしも行こうかな!」

 

「私たちもつき合うわ。なんか最近お酒手に入らないし」

 

 前哨基地での仕事を終えた戦術人形たちがマザーベースに戻って来た、彼女たちはストレスの発散法の一つに射撃場での射撃に興じる。やたらと頑丈な造りのマザーベースの射撃場では、大口径の機関銃を試射したり、時に無反動砲をぶっ放しても壊れない堅牢っぷりから火力を至上とする人形たちに好まれている。

 いつものように銃と弾薬を適当な量持って射撃場に向かうと、なにやら見慣れない戦術人形とミラー、そして月光が複数体いるではないか。

 

「いらっしゃいませ、本日から射撃場の管理を任された64式自動小銃というものよ。早速だけど、あなたたちが持ってきた弾薬を管理させてもらうわ」

 

「あぁ? なんだてめぇ?」

 

「おっと手荒なことはしてはいけないぞエグゼ。今日から射撃場で使った弾薬のチェックを厳格化することになった、持ちこんだ弾の数と、薬莢の数を後で照らし合わせるからそのつもりでな」

 

「なんだこのやろう、そんな貧乏くせえことやってられるか! どきやがれ!」

 

「おっと、そんなこと言っていいのか?」

 

 ミラーがニヤリと笑うと、背後にいる歴戦の月光たちが無言の圧力を仕掛けてくる。

 

「きたねえぞこのやろう!」

 

「弾の管理をしてくれるだけでいいんだ。好きなだけ撃っていいが、後で薬莢を数えて欲しいだけだ。何も難しいことじゃないだろう?」

 

「まあまあエグゼ、ここはミラーのオッサンの言う通りにしようよ。後でかき集めればいいだけなんだしさ」

 

 スコーピオンになだめられて、エグゼは渋々持ちこんだ弾薬の数を正確に64式に申告する。他の人形たちも申告を終えれば、あとはおもいおもいにいつも通り射撃訓練を始める。一度撃ってからはさっきのことなど忘れ、何人かは娯楽気分で銃を撃ちまくる。

 相変わらずの浪費に、そばで見ているミラーは目まいを起こすが、これからしっぺ返しを貰うことになる彼女たちにほくそ笑む。

 

 気が済むまで銃を撃ちまくった人形たちは、散らばった薬莢をかき集め出ていこうとするが64式が引き止める。

 薬莢の数を数えるまでが役目だ、仕方なく薬莢を数え始める人形たち……こういう時にやりたい放題銃弾をばら撒いたマシンガンタイプの人形は悲惨だ、ネゲヴの目は途中から死んだ魚のようになっていた。

 

「ほらよ、数え終わったぞ」

 

 拳銃タイプのエグゼが先に報告をする。

 薬莢と、数えた数を見つめる64式は健やかな笑顔を浮かべこう言った。

 

「射撃前の弾の数と、薬莢の数が合わない。やり直しね」

 

「あぁ!? ふざけんなこら! ちゃんと数えただろうが!」

 

「持ちこんだ弾薬の量より2発ほど足らないわ、ちゃんと数えたならたぶんそこらに落ちてるんじゃない? 数が合うまで帰さないわよ」

 

「うるせんだこのやろう! たかが2発くらいどうってことねえだろばかやろう!」

 

「ダメよ」

 

「新入りが調子に乗りやがって、ぶち殺すぞコラ!」

 

 手を伸ばし、胸倉を掴もうとするが再び歴戦の月光たちに威圧されてエグゼは引き下がる。

 もしもここで月光どもを強引に薙ぎ倒しても、次に出てくるのは最強のサヘラントロプス…圧力に負けたエグゼは尻尾を丸めて引き下がった。それを見ていた他の人形たちは青ざめて、結局薬莢一つ欠落することなくかき集める羽目になる…解放される頃には、すっかりくたびれた様子であった。

 

 そしてこれを機に、ミラーと64式の定めた射撃場でのルールが周知され、これまで好き放題撃ちまくっていた人形たちを戦慄させる。

 二人の自衛隊式射撃訓練はやがてみんなに恐れられる。

 だが恐れたところで射撃訓練は欠かせない、訓練に向かうたびに薬莢を数える苦行を強いられるのだった。

 

「クソ! やってらんねえぜ! オレは薬莢数えるためにMSFにいるんじゃねえぞ!」

 

「そうだそうだ! 何が節約だ、好きなもの食べて好きなだけ撃ちまくって何が悪い!」

 

 人形たちの不満は日に日に大きくなるが、それでも爆発しないのは、このルールをよりによってスネークとオセロットが公に承認したからだ。

 ミラーはともかく、スネークとオセロットには逆らえない…。

 

 その日も薬莢を数える苦行を済ませたエグゼとスコーピオンは、くたびれて射撃場内のベンチに腰掛ける。

 WA2000とスプリングフィールドがそれを見て苦笑するが、二人にとっては笑い事ではない。

 

「けっ、あんたら優等生は文句の一つもなくていいもんだな!」

 

「優等生って…やるべきことをちゃんとやってるだけですよ?」

 

「あんたら日頃からだらしないのよ。私は今回に限っては、ミラーの考えに賛同よ。だって、あんたらの射撃を訓練って呼んでいいものか分からなかったしね」

 

「噛みつく気力もねえよ、クソッたれ…」

 

 うなだれるエグゼとスコーピオンは、ベンチに深々と腰掛けて大きなため息をこぼす。

 そんな時だ、あの口やかましい64式の声が響いたのは。

 

「ちょっとあなた! 薬莢を一つも持ってこないなんて、どういうつもり!?」

 

 その声を聞いて目を向ければ、なにやら64式がとある戦術人形に対し説教をしているところであった。その相手というのが、G11である。いつものように寝ぼけ眼で説教を聞き流しているG11に、一緒に射撃場へやって来たUMP45が近寄り彼女をフォローする。

 

「ごめんなさいね、G11の使う弾薬は【ケースレス弾】って言って、薬莢を排出しないのよね」

 

「ケ、ケース……なんですって?」

 

 ケースレス弾なるものを知らないようで、64式は酷く困惑している。

 結局UMP45の話術に言いくるめられて、64式は欠伸をしながら射撃場を出ていくG11を黙って見ているしかなかった。

 

「閃いたぞ、おい…」

 

「閃いたって、何を?」

 

「ヘヘヘ…あのクソ女と、グラサンやろうをぎゃふんと言わせるアイデアが浮かんだぜ! わはははは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、司令室でいつものように執務を取り行っていたミラーは、ふととある報告書に目をとめる。それは射撃場を管理するようになった64式の報告書であるが、なにやら筆跡が乱れおかしなことになっている。

 添付された資料には、ここ最近自衛隊式射撃訓練法の導入で改善しつつあった弾薬費が再び悪い方向に変化していることが書かれている。

 何かがおかしい、そう思い慌てて射撃場へ向かうと、内部から激しい銃声が絶えず響いてくる。

 

 おそるおそる中を覗けば、大勢の人形たちが楽しそうに銃を撃ちまくっているではないか。

 普段なら薬莢の数を数えるのを恐れて、控えめに撃っている彼女たちであるのに。

 

「ミラーさん……! どうしよう…!」

 

 そこへ、今にも泣きそうな顔の64式がやってくる。

 

「あいつら、薬莢数えたくないからって……ケースなんとか弾とかいうのを使って、撃ちまくって…!」

 

「ケース? まさか……!」

 

 咄嗟に人形たちが撃ちまくる銃を見れば、それはケースレス弾薬を用いる【Gr G11】であった。

 

「お、お前たち何をやってるんだ! やめてくれ!」

 

「あぁ?うるせえな、後で薬莢数えれば好きなだけ撃っていいって言っただろうが」

 

「その銃は薬莢が出ないだろ!!」

 

 ミラーの注意も聞かず、やりたい放題撃ちまくる人形たち…今日まで我慢していただけにみんな容赦というものがない。ケースレス弾薬というのはあらゆる小銃弾の中で特に高い代物だ、それがこうも撃ちまくられれば大変なことになる。

 

「待て! やめてくれ! オレが悪かったから! ルールは撤廃する、だから頼むー!!」

 

 射撃場に、ミラーの悲鳴に近い叫び声が響き渡る。

 

 結局、ミラーと64式の自衛隊式射撃訓練法はそれっきりなくなってしまったのだった…。

 

 

「ミラーさん元気出して? あたしがついてるから、ね?」

 

 一度は見放した97式も、そんなミラーをかわいそうに思い健気に慰めるのであった。

 

 後日、そんなミラーのために97式はまた新しい助っ人連れてくるのを決心するが、それはまた別なお話…。




こんなふざけたお話でいいのかしら??


自衛隊の薬莢さがしは大変だと聞いたので、それをネタにしました。

陸上自衛隊にケースレス弾薬の実装をはよ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。