METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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鉄血後日談、あの人たちは今!

 アフリカは先進国が多く集まるヨーロッパなどの地域に比べ、第三次世界大戦などの影響が少ないと言われている。とは言っても、大戦初期に起こった高高度核爆発によって巻き散らされた電磁パルスは、アフリカ諸国のインフラを徹底的に破壊してしまったため、いくつかの国家は破綻していった。

 アフリカ南部にある南アフリカ共和国もまたその中の一つである。

 あらゆる電子機器が使用できなくなったことで都市は荒廃し、人々はE.L.I.Dや未知の伝染病が蔓延する都市部を離れ、周辺地域に分散し安全な地方に小さなコミュニティを作るようになったのだ。

 

 争いごとはもちろんあった。

 作物を栽培できる土地を求めたり、水を巡って殺しあったり…規模こそヨーロッパに比べ小さいが、文明社会が崩壊したアフリカの大地でも血で血を洗う紛争は絶えることは無かった。今日の糧を巡って、奪い奪われる。いつしかアフリカ大陸は、その惨状から暗黒大陸と再び称されることとなってしまったのだった。

 

 しかし、昔ながらの生活を続けてきた部族は今まで同様の暮らしをしているし、アフリカの国が全て崩壊したわけではない。貧困にあえぐ社会はあるが、それでも平和なコミュニティは残されていた。

 

 

 ボツワナを中心に南アフリカ、アンゴラ、ナミビア、ザンビアの一部地域に影響力を持つとあるコミュニティでは、アフリカで唯一戦術人形や無人機を保有し、精鋭ぞろいの傭兵部隊を抱え込んでいる。その勢力は放置されたダイヤモンド鉱山や油田地帯を占領し、それら資源を採掘することで外貨を稼いでいる。

 豊かさを求めて難民たちがそこを目指すこともあるが、そこの領主はある種の人嫌いでなおかつ排他的、大抵の者は追い払われるか入ったとしても追放される。一度怒った人々が仲間を率い武装して攻撃を仕掛けたが、逆に圧倒的な戦力を仕向けられ、より過酷な砂漠の不毛地帯に追いやられる羽目になったのだった…。

 

 そんな恐ろしい土地にやって来たとある一団。

 上陸した海岸からそこまで長い道のりであったため、酷く疲れた様子の女性たちは、前方にある広々とした農園を見てホッと安堵の息を漏らす。

 

「やっと着いた! もうくたくただよ…」

 

「まったくだ。あのやろう、迎えの車くらい手配しろってんだよ…こっちにはエリザさまもいるって言うのに、何様のつもりだい」

 

 愚痴をこぼしながら、アルケミストは農園の敷地内になびく旗を忌々しく見つめる。

 赤色の生地に尾を喰らい合う蛇の姿が黒で描かれている、前に見た時からデザインが変わっていて、より蛇の姿が威厳あるものへと変わっていた。農園の門には、赤と黒の塗装がなされた装甲人形が鎮座する、試しに簡単な命令を送ってみるが装甲人形は微動だにしない……既に鉄血の、エルダーブレインのプロトコルから切り離されているようだった。

 

「止マレ」

 

 門の前まで進むと、装甲人形が手を挙げて彼女たちを制止する。

 

「ごきげんよう。ウロボロスに、エリザさまが到着したとお伝えください」

 

「エルダーブレイン。認証完了、オ通リクダサイ」

 

 身じろぎ一つせず、ただ声だけを発する装甲人形。

 ひとりでに開かれた門の前で、彼女たちはしばらく入ることを躊躇したが、やがて農園の敷地内へと足を踏み入れていくのであった。

 

「おぉ……これは素晴らしいですね…」

 

「初めて見る景色だ」

 

 イントゥルーダーとスケアクロウの二人は、敷地内の緑豊かな庭園に目を奪われる。

 ここに来る間にも、農場には水が引かれ作物が豊かに実る光景に驚いていたが、今見ている庭園は欧州の廃墟の中で生きてきた彼女たちにとって、古い記録の中でしか見ることのできなかった光景であった。

 

「前来た時よりも発展してるな」

 

「そうだね。なんかムカつく」

 

 以前アルケミストとデストロイヤーがここを訪れた時も農場は発展していたが、今はその頃よりはるかに規模が拡大している。前に来た頃は、農場の警備に雇われた傭兵はならず者ばかりであったが、現在歩哨に立つ傭兵は身なりもよく装備も整っている様子だった。

 案内も用意されず、一度来たことのあるアルケミストとデストロイヤーを先頭にどんどん奥へと進んでいく。

 ここにはウロボロスがエルダーブレインを匿ってくれるという話でやって来たが、迎えも案内もなく、主を蔑ろにしているとしか思えない扱いにハイエンドモデルたちに不信感が募っていく。

 

 そして敷地内にある立派な屋敷に設けられた屋外プールに何気なく目を向けた時、彼女たちは信じられない光景を目の当たりにする。

 

「あのやろう…!」

 

「なに呑気に寝てるのよ! エリザさまが来たっていうのにあの態度!!」

 

「これは…一体どういうことですか…!」

 

 ハイエンドモデルたちが一様に憤慨する理由、それは屋外プールのプールサイドで呑気に寝ているウロボロスの姿にあった。

 より詳しく情景を説明するならば、黒のビキニ姿にサングラスをかけ、鮮やかな日よけのパラソルの下でビーチチェアに寝そべっているのだ。そばのテーブルにはおしゃれなカクテルが置かれ、使用人と思われる女性が羽根のうちわで静かに風を送っている……ウロボロスの舐めているとしか思えない態度に、怒り狂うハイエンドモデルたちが詰め寄るのだ。

 

「おいウロボロス! とっとと起きなこの恥知らずめ!」

 

「あぁ? む、アルケミストか……なんでここにいるんだ?」

 

「なんでって、あなたが今日ここに招待したんでしょう!? エリザさまがいるのよ、とっとと起きなさいよ!」

 

「エリザさま? いや、到着は三日後って……チッ…」

 

 慌てるそぶりも見せず、面倒くさそうに起き上がったウロボロスはテーブルのカクテルを一口飲む。それから屋敷の方に向けて、誰かの名前を呼んだ。すると、男性が一人慌てて駆けつけてきた。

 

「お呼びですかお嬢様?」

 

「おぬし、エリザさまが今日来るの把握してなかったな? 今日来たぞ?」

 

「え!? そんなはずでは…!」

 

「使えないマヌケめ……お前、クビ。おーい、誰かこいつを砂漠の真ん中あたりに捨ててこい」

 

「お待ちくださいお嬢様!! お許しを!」

 

 必死で懇願する男であったが、傭兵たちに強引に引きずられていきトラックにぶち込まれる。トラックはそのまま走りだし、彼の悲鳴も聞こえなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――というわけで気を取り直して、エリザさま…わざわざ私の屋敷にご足労いただき光栄でございます。少々非礼がございましたが、なにとぞ寛大なご処置を」

 

「なにが寛大なご処置ですか。今更取り繕っても無駄ですよ」

 

「やかましいわ代理人、言っとくがおぬしのことまだ恨んでおるからな」

 

「陰湿なところは変わってませんね。こんな僻地で大成功して大満足ですか、この成金め」

 

「その成金様に頼らざるを得なかったのは誰かな? まったく、恩知らずの恥知らずだな代理人。いつも他の誰かを見下しおって、お前など眼中にないわ」

 

「眼中にないわりにえらく噛みついてきますわね。寛容の無さがうかがいしれますわ」

 

「お前も砂漠の真ん中に放り込んでやろうか? 昼は灼熱、夜は極寒、絶えず猛毒サソリの脅威に晒される中どれだけ持つか見ものだな。泣いて赦しを請う姿を晒したいか、えぇ?」

 

「ごちゃごちゃうるさい奴ですね。そもそも、あなた一体誰と話してるか分かってないようですわね?」

 

「エルダーブレインの腰ぎんちゃく、もしくは金魚のフンと話させてもらっていると認識しているが?」

 

「ほんと性格の悪さは相変わらずですね。だからあなた友だちが一人もいないのですよ」

 

「くっ……! 言ったな? おぬし、私が一番気にしてること言いおったな!」

 

 

「あの二人も相変わらず仲が良いな。デストロイヤー、バカがうつるからあんまり見るんじゃないよ」

 

「うん。代理人も落ち着けばいいのにね、バカだよね」

 

 あの後、気を取り直してエルダーブレインご一行を改めて屋敷内でもてなすこととなったウロボロス。

 しかし、到着は三日後と聞いていたため招待した時のために振る舞うはずだった食材がない……何もかもうまくいかないことに腹を立てたウロボロスによって、もう何人かが砂漠に追放されることとなった。

 そして歓迎会が始まれば、今度は代理人との口げんかが始まるのだ……生意気なウロボロスと情けない代理人は見限り、エリザ他ハイエンドモデルたちは出される料理を楽しむこととした。

 

「エリザさま、何か食べたい物はございますか? とってきますよ」

 

「待てイントゥルーダー、その役目はこのジャッジが務める! お前は引っ込んでおれ!」

 

「どうぞエリザさま、お疲れでしょうから甘いケーキが良いかと」

 

「ありがとうスケアクロウ、いただきます」

 

 鉄血にいた頃はどうしても資源などが限られて節制のために厳しい暮らしをしていた。

 そんな中で代理人は主であるエリザにはひもじい想いをさせまいと手を尽くしていた…しかしこの場所はどうだ、ウロボロスがこの地で築き上げた豊かな暮らしは彼女たちにとって夢のようなものだ。まあ、その豊かさの裏でなかなかにえぐいことが行われているのだが…。

 

「――――私はまずこの地に来て、武力によって反抗的な勢力を制圧したのです。そいつらを手駒にするのは苦労しましたよ、なにせ文字も読めないバカ揃いでしたからね。そいつらに文字を教え教養を身に付けさせ、土地を開拓させてこの農場を築いたのです。ええ、もちろんいつの日かエリザさまをお迎えするためでした」

 

「へえ、そうなんだ」

 

「そうですとも。これからはこのウロボロスがエリザさまのお役に立ってみますよ。従順なだけのどっかの不届き者と違って、今の私にはエリザさまの願いを叶える力がありますからね」

 

「ご主人様、耳を貸してはなりません。こいつの言葉には毒がありますから」

 

「そうなの?」

 

「そうですとも。蛇は旧約聖書にもある通り人を誑かし邪道に貶める悪しき存在なのです。耳に良いことだけを言ってくる輩を信頼してはなりません。ですがこの私めは違います、どこかのうぬぼれ屋と違ってご主人様のお役に立てます」

 

「エリザさま、こいつは息をするように嘘をつく奴です。気を許しては――――」

 

 相変わらず不毛な争いを繰り広げる二人に、冷たい視線が突き刺さる。

 二人の下らない争いに挟まれて困惑するエリザをこっそりアルケミストが救出し、アホな二人は放置する。

 

「すみませんねエリザさま、どうもアホ二人が騒ぎだして」

 

「かまわないよ。代理人の忠誠には感謝してるし、この場所に招いてくれたウロボロスにも感謝してる。それよりも、君たちは本当によかったの?」

 

「MSFから離れて、ですか? ええ、後悔していません……エグゼとハンターが目指す道と、あたしらが目指す道は違う、この別れは必然なんです」

 

「でも、永遠の別れってわけじゃありませんからね!」

 

「デストロイヤーの言う通りです。永遠の別れじゃない…生きてさえいればまた会えるんですから、寂しくはありませんよ」

 

「そうか、ならいい。つくづく思うよ、君たちを育てた人は立派だ…是非、会ってみたかった」

 

 育ての親を褒め称えるエリザに、アルケミストは目を伏せて頭を下げる。

 戦いの中で生きる戦士の道を歩んだ二人とは離れることになったが、これからは自分たちを産み、そして育ててくれたマスターが望んだ生き方を目指す。

 平和というのが何なのか、アルケミストとデストロイヤーはこのアフリカの地で見出していこうと決意を固めるのだった。




おねショタぶち込めなかったよ、でも後日談としての意味合いがあるからね、仕方ないね。

ほんとはウロボロス邸の孤児たちが、小さいジャッジさまを見て新しいお友だちができたと大喜びしたり、酔って裸のウロボロスにイーライがベッドに引きずり込まれるネタがあったんやが次回以降に持ち越しだす。



そう言えば、今回のアフリカネタ書いてたらワイがユーゴの歴史と並んで絶賛興味のあるアパルトヘイト政策が頭に浮かんだよ。
というわけで、次回はそれに絡んだ新キャラの登場を考えている、微シリアス。
マシンガン・キッドと同様に、初代メタルギアシリーズよりあのキャラが登場だ!
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