「ようエイハヴ、今帰ったぜ」
「おうキッド、無事で良かった。調査任務は上手くいったか?」
「ばっちりだ。それより懐かしい奴を連れて帰ってきたぜ」
「懐かしい奴?」
ニヤリと笑ったキッドが身を引くと、その後ろから"ジャングル・イーブル"が姿を見せる。
偽装のためのフェイスペイントを落とし、小奇麗な迷彩服に赤いベレー帽を被る彼の姿を見て、エイハヴはあり得ないものを見ているような表情で困惑していた。それからようやく事態をのみ込み、その顔に笑顔を浮かべた。
「驚いた…イーブル、また会えるとは。ああ、友よ」
「あえて嬉しいぜエイハヴ。相変わらずだ、元気そうだな」
「あんたこそな」
イーブルとエイハヴは肩を抱き合い、この再会を喜びあう。
彼の帰還に、マザーベースは色々な意味で賑やかになった。
キッドやエイハヴと並んでMSFの優秀なスタッフとして名をはせていた彼の帰還を、多くの者が喜んだ。彼の帰還を知って、スネークとミラーも駆けつける。
「ボス、久しぶりだな!」
「また会えて良かったイーブル。一体今までどこにいた?」
「そりゃこっちのセリフだよボス、あんたを探すのにどんだけ苦労したことか。結局諦めて祖国に帰ったが…あぁ、よく分からねえんだ。キッドの奴がちょっとおかしなことほざいてな、別の世界だとかなんとか人形だとか……なあボス、あいつヤクやってるわけじゃねえよな?」
「今見ているのが現実だぞイーブル。それはさておき、懐かしい仲間との再会だ。こんなに喜ばしいことは無い」
「同感だよ、ミラー副司令。ストレンジラブ博士やヒューイ博士も元気か?」
「ああもちろん。二人とも相変わらずだ」
「そうか……ところで、チコとパスは? あれからどうなったんだ?」
彼の何気ない一言に、スネークとミラーは押し黙る。二人の表情から事情を察したイーブルは笑顔を消して、目を伏せる。
「そうか……あのクソガキどもには手を焼いたが、少しはかわいげのあるガキだった……残念だ」
イーブルは生まれ育った環境からか、乱暴者でトラブルをよく引き起こすことがあったが、自分が仲間と認めた者には敬意を払い意思を尊重する。それは戦いの末自分を打ち負かしたスネークであったり、共に戦場で戦ったキッドだけでなく、一時的とはいえ一緒にいたパスとチコにも同じ想いを抱いていた。
悲観にくれる彼の肩に手をやり、場所を変えて改めて話をしようとした。
そんな時、イーブルはマザーベースの甲板上のあちこちで見かける戦術人形たちを見て唖然とする。
「なんだこりゃ!?」
「どうしたんだイーブル?」
「どうしたじゃねえよミラー副司令! なんだあのメスガキ共は!? いつからマザーベースはお嬢様学校になったんだ!?」
「あぁ、この反応久しぶりだな……彼女たちは戦術人形だ、今じゃオレたちの立派な仲間だよ」
「女子どもばっかじゃねえか…!」
笑いながら戦術人形のなんたるかをミラーが説明するが、イーブルは甲板上をはしゃぎまわる人形たちに憤慨しろくに説明を聞いていない。
「ようスネーク! あれ、誰だこいつ?」
そこへ、子どものヴェルを抱きかかえたエグゼがやってくる。
スネークを見てはしゃぐヴェルを彼に預け、イーブルをじろじろと見つめるが、それに対し彼は苛立ちを露わにする。
「これも人形か? 近寄るんじゃねえよ」
「あぁ? なんだテメェはよ?」
「よせ二人とも。イーブル、彼女たちは戦術人形といったがオレたちとなんら変わりない。大切な仲間だ」
「お言葉だがボス、オレはこいつらを仲間と呼べるほど理解しちゃいない。おい女、いつまでも睨んでると二度と笑えねえように前歯へし折るぞ」
「やってみろよこのやろう。それとオレはエグゼだ、よく覚えとけゴリラ野郎」
「よさないかお前たち…」
スネークとミラーによって二人は引き離されるが、距離が離れても睨みあったままだ。
久しぶりの再会で忘れていたが、イーブルという男は自分が仲間と認めた者以外の存在を拒絶したり、争いごとを引き起こしたりするトラブルメーカーであった。今までにも何度か乱闘騒ぎを起こし、仲間のスタッフを医療棟送りにしたこともあった…。
彼の粗暴な性格には、組織の長であるスネークも、戦友であるキッドやエイハヴも手を焼かされる。
一度仲間と認めれば面倒見は良いのだが…。
戦友の帰還を喜ぶとともに、トラブルの種にスネークとミラーは頭を悩ませた。
それから間もなくして、早速スネークとミラーのもとに戦術人形たちより苦情が寄せられまくる、そのほとんどがイーブルに関することだ。
ある一件では、彼が任務につく際戦術人形の一人が同行するが彼は仲間を無視してジャングルを進み、一時同行者の人形が道に迷って作戦行動不能に陥ってしまった。
またある一件では、戦術人形が持っている銃を取り上げて雑に扱ったり。戦術人形にとっては半身とも言える銃を無理矢理とられて雑に扱われたらたまったものではない。
名前を覚えず、敬意を払わないイーブルの態度に人形たちは我慢の限界であった。
マザーベースにギスギスとした空気が広がりつつある中、ある少女が立ち上がる。
困った時のスコーピオンである、彼女は早速トラブルの中心人物であるイーブルの元へ歩み寄る。
彼は愛用のナイフを研ぎ続け、寄って来たスコーピオンを見もしない。
「やっほー、あたしスコーピオンだよ、よろしくねー!」
返事がない。
相変わらずナイフを研ぎ続けるイーブルに一瞬殺意が湧いたスコーピオンであるが、なんとかこらえる。
「良いナイフだね! 切れ味良さそうだね!」
また、返事はなかった。
笑顔を浮かべながらも、スコーピオンの額には青筋が浮かぶ。
内心はらわたが煮えくり返る思いを抱きながら笑っているため、ひどく滑稽な表情となっている。
「えっと、一応あたしらもMSFの仲間だからさ。お互いを理解していい関係になれたらな~なんて思ってるんだけどさ」
「なあ、無言ゲームしようぜ。先に喋った方の顔面にパンチする、スタート…」
ようやく口を開いたかと思ったらこのありさまである。
滅多に怒ることのないスコーピオンがあからさまに怒りの感情を露わにしている…普段愛想のいい笑顔を振りまいているが一度キレたら手がつけられないスコーピオン。だがイーブルの人となりを知るMSFのスタッフは、イーブルもまた火がついたら手に負えないことを知っている。
場の空気が凍りつく…ちょうどそこへスネークが来てくれたのは幸いだった。
暴発寸前のスコーピオンをなだめた上で、彼はこの問題をどう解決すべきか考える。
戦術人形に限らず、今まで彼と他のスタッフとの関係をよりよいものにするには一つしかにことであるが…。
後日、イーブルとスコーピオン、そしてエグゼがスネークによって呼び出されると、とある任務を出されることとなる。任務の内容は、フランス領内にいまだ蔓延る旧米軍残党部隊の掃討だ。相手は米軍だが残党ということで規模は大したことではないが…。
「ボス、アンタが何をやらせようとしているかは分かる。このメスガキ二匹を子守しながら仕事しろってんだろ?」
「冗談だろスネーク、誰がこんないかれた脳筋野郎と一緒に仕事するかよ」
「いやいや、いくら何でもこれはきついでしょう」
案の定、三人はこの提案に否定的だ。
よくよく考えればこの3人はいずれもトラブルメーカーな素質を持った者で、この場に呼んでから人選をミスしたかとスネークは思う。だがWA2000はそもそも相手にしないし、スプリングフィールドではイーブルの粗暴さにやられてしまいそうだし、9A91では少々不安……イーブルという男を相手するには、ある程度の度胸とガッツの強さが必要となってくる。
それを満たすとなると、この二人しかいなかった。
「とにかく、今の空気が続けば士気に関わる。せめてお前たちだけでもお互いを理解しろ」
「時間の無駄だよボス」
「おう、珍しく気が合うな。テメェと一緒にいる一分一秒が無駄だよ」
出発前からバチバチと火花を散らす3人に、スネークはあきれ果てる。
最後はスネークの強い口調で渋々従う3人であるが、なんとも不安が残る3人であった。
あの戦いからずいぶんと時間が経ったが、今だに米軍が欧州に残した傷跡は大きい。
大量の化学兵器使用による汚染地帯の拡大、欧州侵攻に伴う影響でE.L.I.D感染者の大規模移動が発生、残った米軍残党による無差別な攻撃などだ。
制御を失った米軍無人機と戦術人形はうち捨てられた鉄血の工場を占領し、そこを改造して活動を続けているようだった。
フランスは米軍の侵攻で多くの都市部が機能を果たさなくなり、領土のほとんどが危険地帯となってしまった。
エグゼたちがやって来たのは、人がなんとか暮らすことのできる都市からほど近い市街地である。
最近そこに米軍の残党が姿を現すから撃破して欲しい、というのがMSFへの依頼であった。駆けつけた3人は早速米軍の残党部隊を発見、部隊は小規模であったために、迅速な奇襲攻撃によってあっという間に残党部隊は撃破されるのであった。
「強いのは認めるんだけどよ…」
「確かに」
残党を倒し、今は休憩中。
イーブルはジャングルでのゲリラ戦を得意とすると言う話は聞いていた二人だが、市街戦においてもイーブルは敵を圧倒。得意のアンブッシュは今回は活かさなかったが、素での戦闘能力は非常に高い。
強さは認めるが性格に難あり、それが二人の印象であった。
「おいお前ら、MSFに入ったきっかけはなんだ?」
休憩の最中、珍しくイーブルの方から発言があった。
普段の彼の態度からその発言を無視しても良かったが、今回はスネークがイーブルと打ち解けて欲しいということもあり、二人はあえて大人になる。
「あたしはスネークに助けられたから」
「オレはあいつと戦って惚れたからかな」
「戦った? お前がか? 面白いじゃねえか、その惚れたってのは男としてか? それとも、戦士としてか?」
「んなもん知るかよ。気付いたらアイツにぞっこんさ、あんなに自分を剥き出しにして戦えたのはスネークだけだった」
「少しだけ興味が湧いた。かくいうオレも、ボスと出会ったのは戦場で…それも敵同士だ。ローデシアの森でな、オレは部隊を率いてクソッたれの
「当ててやろうか、出会った瞬間顔面パンチされてのびちまったんだな?」
「お前おもしれえな。ボスとオレの部隊は、森の中で2週間殺しあいを続けた。戦ってすぐに、敵が今までのうすのろのカフィア共とは違うと気付いた。お互い罠を仕掛け合い、最初の3日でオレたちの仲間が10人は死んだ…同じくらい敵も殺してやったが、オレたちは次第に追い込まれ、最後にオレはボスと遭遇し戦い、負けた……負けたのは初めてだ。オレは、自分が最強だと思っていたがそれは間違いだと気付かされた」
その当時の記憶を懐かしむように、イーブルは語る。
そこから先は予想できる通り、負傷したイーブルをスネークが回収し、MSF黎明期を支える人材となるのであった。MSFがコロンビアの地でくすぶっていた時期も、ニカラグアやコスタリカで戦った時も共にいた。
「理屈がどうとかじゃねえ、オレはあの人に一生ついてくって決めた。ボスの代わりに死んだっていい…お前らはどうだ、ボスのために死ねるか?」
「なーに言ってんのさ。スネークも生かして、あたしらも生きるに決まってんでしょう?」
「そういうこと」
「けっ、欲張りな小娘どもだ。まあいい、そのくらい強情な方がこの先生きていける。いいだろう、お前らへの態度を少し改めよう…このオレが、少し大人になってやる」
「なーにが大人だよ。まあいいさ、よろしく頼むぜ」
ほんの少し、彼と打ち解けることが出来た。
スネークが望んでいた通りかどうかは分からないが、いきなりすべてが上手くはいかないだろう。これからゆっくり、お互いを理解できればいいのだ。
「ところで、オレは腹が減った」
「お腹空いた? MSFのレーションあるよ?」
「違う違う、そうじゃねえ。オレが今食いたいのは、山盛りのチューイングキャンディだ」
「チューイングキャンディ? お前、そんな顔して甘党かよ?」
「甘いのが好きなわけじゃねえ。チューイングキャンディが好きなだけだ、ありゃあいいもんだ…山盛りのチューイングキャンディ、それもグレープ味ならもう言うことなしだ。さて、都合よく近くにショッピングモールがあるようだ」
「おいおい、あそこら辺はコーラップス液の汚染地帯とかぶってるぜ? 行くんじゃねえよ」
「コーラ……ちくしょう、またオレの知らねえ単語出しやがって。コーラだかジンジャーエールだか知らねえが、オレのチューイングキャンディを横取りする奴は容赦しねえ」
「危ないってば! E.L.I.D感染者がうじゃうじゃいるんだよ、分かる!?」
「知らねえ言葉を使うんじゃねえよ。よーし行くぞ、山盛りのチューイングキャンディがオレ様を待ってるに違いないからな!」
「だめだこりゃ」
強面のくせにチューイングキャンディというコミカルな単語を連発するイーブルに困惑する二人。
チューイングキャンディ欲しさに頑なに汚染地帯に突っ込んでいこうとする彼を止めることは出来ず、かといってそのまま行かせて死なれたら後で何を言われるか分からないということで一緒に行くことになったのだが…。
色々な災害があってショッピングモールは略奪にあった後、チューイングキャンディなどどこにもない……これに怒り狂ったイーブルが、道端に徘徊するE.L.I.D感染者を襲撃し、一通りストレス発散した後マザーベースへと帰っていった…。
E.L.I.D「徘徊してただけなのに(´・ω・`)」
イーブル「うるせえ、チューイングキャンディ寄越せ」
チューイングキャンディに病的に憑りつかれてるイーブルさん。
戦場じゃ滅多に食べられないからね、しょうがないね…。
FNCと遭遇してしまったらきっと殺しあいになるよ。
そういえば、敵役としての鉄血がなくなっちゃったからこれからは米軍残党が敵勢力となって貰うよ、色々ヤバい変異を遂げてるけど後でまた…。
次、なにやろうかなw
大尉ネタやりましょう、これやらんと投稿できないエピソードもあるんでね(気が変わったらごめんなさい)