METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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鉄血大集結~仲が良いんだか悪いんだかよく分からない奴ら~

 MSFを電撃訪問し、エグゼらMSF所属の鉄血勢とおまけのスコーピオンをぶちのめしたうえで、自身の願望に無理矢理協力することを約束させた代理人。マザーベースにどうやってやって来たのかは不明だが、アフリカまでの移動手段はまたもエグゼに難癖をつけてエグゼ配下の輸送部隊から飛行機を用いるのであった。

 鉄血工造の代理人(エージェント)といえば鉄血のナンバー2、エルダーブレインに次ぐ権限を持つハイエンドモデルとして知られ、常に主人への敬意を忘れず冷静沈着であるとみんなから思われていたのだが……腕っぷしの強さでエグゼたちを強制的に従わせ、私利私欲に走る彼女にはもはやそんなイメージなど残っていなかった。

 

「はえ~、ここが噂に聞くウロボロスの屋敷かぁ。思ってたより滅茶苦茶豪邸じゃん」

 

 はるばるアフリカまでやって来たスコーピオンは、初めて見るウロボロス邸を見て素直に感心していた。

 

「あの成金野郎、まーた改築しやがったな? まあ姉貴やエリザさまが不自由してなければいいけどよ」

 

 訪れるたびに何かしら増えていたり、改築されて大きくなっていくウロボロス邸。

 羨ましく思ったりはしないが、ウロボロスが調子に乗っているのが気にくわないエグゼとしては長く見ていたいとも思わない。久しぶりにここに戻って来たアーキテクトとゲーガーも少し驚いた様子…平常心でいるのはハンターだけであった。

 あちこちきょろきょろ見回す彼女たちを代理人は冷めた目で流し見る。

 

「いいですか皆さん、ここには鉄血工造の人形以外の者もいます。見られて恥ずかしい言動は慎むように」

 

「代理人、あたしはI.O.Pの人形だからふざけててもいいよね?」

 

「なんだっていいですよ」

 

 スコーピオンのボケをスルーし、代理人はさらに注意を勧告しようとした時だった……突然、エグゼらの前から代理人の姿が消えた、唐突に。いきなりのことに驚き立ち止まる一同、先ほどまで代理人が立っていた場所にはぽっかりと大きな穴が開いている。

 おそるおそるその穴を覗き込んでみると、穴に落ちて土まみれになった代理人が呻き声をあげていた。

 

「なにを黙って見てるのです、早く助けなさい…!」

 

 かける言葉も思い浮かばず、言われた通り手を差し伸べて引き上げてあげる。

 衣服についた汚れを払った代理人は口を真一文字に結び、鋭い目つきでそばの茂みを睨みつける…そこにはクスクスと笑う数人の少年少女たちがいた。

 どうやらこの落とし穴をつくった犯人のようで、代理人が怒りを露わに詰め寄ると慌てて逃げだしていく。しかし代理人は逃げ遅れた少女の一人を捕まえると、厳しい表情で説教をし始めるのだが…ウロボロスがやって来たことで話はややこしい方へと展開してしまう。

 

「ここの子どもたちはどういう教育をしていますの!? 落とし穴は掘る、部屋は汚す、プールに洗剤をぶちまけて泡だらけにする! 門限は守らないし、ご主人様にタメ口をきくし、あちこちで悪戯をしてまわる! もううんざりですわ、ウロボロス!」

 

「うるさい奴だなおぬしは……子どもたちのやることに一々目くじら立てんでもよかろうが。イントゥルーダーのように教育者の立場にあるわけでもないのに、好き勝手言うな」

 

「私が教育して差しあげようと提案した時、反対したのはあなたではありませんか?」

 

「だっておぬしなら絶対叱ったり厳しくしたりするだろう? うちは子どもたちにのびのび暮らさせて、褒めて伸ばす方針なのでな。ああそうだ、おぬしには"しくじり先生"として教育を任せてやろうか? おぬしほどのポンコツ、いくらでもしくじり話があるだろう?」

 

「相変わらず鼻につきますわね。そんな態度で対等な友だちが一人でもいたら驚きですわ、どうせ今も友だち0人でしょう」

 

「だからそれは禁句だって言っているだろうが!!」

 

 不毛な争いを繰り広げる代理人とウロボロス、この段階でエグゼらはさっさと帰りたくて仕方がなかったのだが、ケンカをしながらも帰らせないよう代理人は退路を塞いでいる。結局、二人は口論を続けながら屋敷の玄関をくぐる。

 

「いらつくなおぬし! 表に出ろ、ここらで立場をはっきりさせようじゃないか!」

 

「のぞむところですわ」

 

「いい度胸だ代理人、ついてこい、決着をつけよう!」

 

 ついに二人のケンカは乱闘に発展するかと思われたが、代理人はウロボロスに先に外に行かせた上で玄関を閉め、そして鍵をかける。その時の代理人のしてやった、とでも言いたげな妙に満足そうな表情は二度と忘れられないだろう。

 案の定、外からウロボロスの怒号と玄関を叩く音が聞こえてくるが、代理人は素知らぬ顔でエグゼらを連れて屋敷の奥へと進むのだった。

 

 

「まあなんつーか、色々ツッコミどころあるけど、めんどくせえから全部スルーするな……そんで、オレらにシーカーの奴をどうして欲しいんだよ。恥をかかせるにしても色々方法はあるだろうけどよ、オレだってあまり卑怯な真似はしたくねえぞ?」

 

「分かっていますわ、そこまで頼むつもりはありません。あなた方の誰かがシーカーに挑み、エリザさまの目の前で打ち負かしてみせなさい。完膚なきまでに叩き潰してあげるのです」

 

「あぁ? シーカーってスネークともやり合ったやつだろ? 滅茶苦茶強いんじゃ…」

 

「あなたを信頼しているのですよ処刑人。相手が強ければ強いほど闘志をみなぎらせ、そして勝利を勝ち取る…それがあなたでしょう? これは本心です」

 

「へ、こんな時ばかりおだてやがってよ。まあ、そこまで言われたらオレも少しは協力的になれるってもんだ」

 

「感謝しますよ、処刑人。今までひどいことをしたりしてすみませんね。さてと、シーカーはこちらにいるはずですわ」

 

 少しだけ代理人と和解したエグゼたち。

 気持ちを切り替えたエグゼは初めて会うことになる強敵シーカーに想いを馳せる。

 スネークと互角の戦いを繰り広げた強敵とこれから戦う、代理人の言う通り、相手が強ければ強いほどエグゼは燃える。一体どんな戦いができるのか、ワクワクしながら通された屋敷内の修練場へと入って行く…。

 

 そこに、シーカーはいたが、修練場にいたのはシーカーだけではない。

 

 エリザを間に挟んでジャッジとドリーマーがベンチに座り、修練場の中央でシーカーの向かいにいるのはブレードを握るグレイ・フォックスだ。対峙するシーカーもまた刀剣を構え、グレイ・フォックスを見据えていた。

 エグゼたちが修練場に入ると同時に二人はほぼ同時に踏み込み、激しい剣劇を繰り広げる。

 あまりの速さに太刀筋は見えず、刃がぶつかり合い激しく火花を散らせる。

 

 人間の身であるがサイボーグ手術を施され強化外骨格を纏うグレイ・フォックスは規格外のスピードとパワーを有するが、シーカーは彼の剣技を見切り、果敢に前に出る。

 戦士として培ってきた技術を持つグレイ・フォックス同様、貪欲に力と技を追い求めたシーカーの戦いは熾烈を極める。

 剣術だけでなく、体術においても達人の域にある二人は時に打撃戦も繰り広げる……二人の戦いを眺めているエリザたちの様子から、これはあくまで模擬戦のようだが、二人が持つ武器はどちらも真剣であり少しでも間違えば相手を殺めてしまう。

 本気の殺しあいと錯覚するような二人の戦いに圧倒されるエグゼたち……そして、二人の激闘は修練場に響いたベルの音で止まった。

 

 二人は刀を鞘に戻すと、互いに敬意を払うように礼をし合う。

 

 修練場にぱちぱちと拍手の音が響く、二人の健闘に拍手を送るのはエリザとジャッジ、ドリーマーであった。

 つられてエグゼたちも拍手を送るが、代理人が即座にエグゼのつま先を踏んで止めさせた。

 

「ほらエグゼ、出番ですよ。さっさと行ってシーカーを打ち負かしなさい」

 

「あのな、あんなのに勝てるわけねえだろ! ふざけんな!」

 

「あなた常々MSF最強って自負してましたわよね。MSF代表として行ってきなさい」

 

「ちくしょう……おいアーキテクト、お前が今日からMSF最強だ。お前がシーカーに挑んで来い」

 

「えぇ!? それはないよエグゼ! だったらみんなで袋叩きにしてやろうよ、だよねゲーガー!?」

 

「いや、ダメに決まっているだろう」

 

 シーカーに挑むという役を押し付け合うエグゼたち……そんな風に騒いでいればいやでも注目を集めるものだ。

 

「なーにやってんだお前ら? 再会するの早過ぎだろ…」

 

「あ、姉貴! いやそうなんだけどよ、代理人のやつがな?」

 

 やって来たアルケミストにため息をつかれるが、エグゼの言葉を聞いて代理人が絡む理由を察する…代理人がエリザからシーカーを遠ざけようと企んでいるのは、彼女も知っているようだった。

 ともかく久しぶりの再会を喜びあう。

 後からデストロイヤーもやって来たことで、久しぶりにサクヤの教え子である4姉妹が揃うことになった。再会とは言っても涙を流すような感動の再会でもなく、お互い元気だったかと他愛のない会話をするのだった。

 

「失礼するよ」

 

 楽しそうに喋るエグゼらに声をかけてきたのはシーカーだ。

 彼女を見てエグゼは少し身構えるが、シーカーは極めて穏やかに、そして礼儀正しく挨拶をしてくる。

 

「初めまして処刑人、ハンター…自己紹介させていただきたい、シーカーだ」

 

「お、おう…初めまして」

 

「はじめまして」

 

 シーカーの物腰の柔らかさに不意打ちをくらう形となったエグゼは、ついつい丁寧な口調で挨拶を返してしまった。澄んだ表情で微笑みかけるシーカーは、先ほどまでグレイ・フォックスと激闘を繰り広げていた同じ人物には思えない。

 

「お二人を同胞、と呼べる資格が私にはあるか分からないが…二人にいつか会えることを楽しみにしていた。処刑人、あなたと会うのは初めてだが君がどういう者なのか不思議とよく分かっていた。戦いの中で君の仲間を想う気持ち、そして君自身も仲間たちから尊敬される者であることを知った……友情、信頼、絆……私が焦がれていたものだ。命のやり取りが行われる戦場で見た君たちの美しい友情、絆は…とても興味深かったよ」

 

「そ、そうなのか?」

 

「そうだとも、誰にでもできるものじゃない。君とハンターとの絆も聞いたよ、羨ましい限りだ……一人の人形として、あなた方を尊敬する」

 

「あははは……ちょっといいか……おい代理人、こっちこいや」

 

 たいして知り合った仲でもないはずなのにやたらと褒め称えてくるシーカーから離れ、エグゼは代理人を捕まえて少し離れた場所にまで引っ張って行くと、小声で訴えかける。

 

「なんだよありゃ……滅茶苦茶いい奴じゃねえかよ! あれなら別にエリザさまのそばにいても大丈夫だろう!?」

 

「なにを言いますか、このわたくしがエリザさまの一番でなくなったらどうするんですか!」

 

「やっぱそういう魂胆かよ……嫉妬する気持ちもわかるけどよ、だからって相手を貶めようなんて、アンタらしくねえって。それに、誰が一番だとか…エリザさまがオレたちを格付けするはずないだろ?」

 

「はぁ……それもそうですわね。迷惑をかけますね、処刑人」

 

「いまさらだろ」

 

「一言余計ですわ」

 

 憎まれ口を叩きながらも代理人は少し気が晴れたような表情で微笑んだ。

 嫉妬心は醜いものだ、そう諭しかけるエグゼもスネーク絡みで嫉妬心を爆発させるので堂々と言えたセリフではないのだが、一応代理人を落ち着かせることが出来た。

 余計なしがらみさえなければ本当は仲が良いはずの鉄血ファミリー。

 4姉妹と代理人のみが知る今は亡きサクヤが思い描いた穏やかで、温かみのある家族愛がここにある……新参のシーカーも、サクヤを知らないジャッジやイントゥルーダーもその輪に加わろうとしているのだ。

 

 まあ若干一名、その輪に入り切れない輩がいる。

 

 その輩は修練場の扉を乱暴に蹴り開け、カンカンに怒った様子で代理人に詰め寄っていく。

 

 

「代理人! おぬしよくもやりおったな! この下劣な女狐めが!!」

 

「なんですか、またあなたですか!? いい加減しつこいですわウロボロス、そんなんだから友だちができないのですよ!」

 

「みんないる時にそんなこと言うな!!」

 

「またケンカしてる……代理人、ウロボロス、もういい加減仲良くしなよ」

 

「そうは言いますがご主人様…」

 

「エリザさま、こいつがね、遊び回ってる子どもたちをうるさいって理由でイジメるんですよ? 信じられますか?」

 

「代理人がそんなことするはずが……しないよね?」

 

「え、えぇ…まあ。ウロボロス、余計なことでご主人様を煩わせるのは止めていただきますわ」

 

「ふん、つまらんやつだ」

 

「おーいウロボロス、どこ行くんだ?」

 

「子どもたちと一緒にサバンナに遠足に行ってくる、おぬしらに構ってなどおれんわ!」

 

 修練場からさっさと立ち去るウロボロス…一応彼女の保護者的な立場にあるグレイ・フォックスは少し呆れつつも、護衛のために一緒について行く。

 

「なあ代理人、お前の敵はシーカーじゃなくて間違いなくあいつだよな?」

 

「ふん、あんな不届き者、わたくしの敵にすらなりえませんわ」

 

 

 こりゃダメだ。

 ケンカは同じレベルの者としか発生しないというが、まさにこれに当たる。

 どちらかが大人にならないといけない、自分のことを棚にあげつつエグゼは代理人にアドバイスを送る……それを隣で眺めていたスコーピオンは、脳裏にエグゼとM4のあの伝説の戦いを浮かべていたのは言うまでもない。




鉄血版 エグゼVSM4(笑)
MSFでもまたエグゼとM4のしばきあいやりたいw



サバンナ遠足にて

ロリ「へびのおねーちゃん! ライオンさんがなにかやってるよ!」
ウロボロス「あれは交尾してるんだ」
ショタ「"こーび"ってなに?」
ウロボロス「ふふ、教えてやろうか?」


おっさんズ「是非教えてもらいたい!」
グレイ・フォックス「死ね」(惨殺)(護衛任務完了)

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