METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

256 / 317
注意 モブキャラしか登場しません。


モブキャラだって目立ちたい

~カエルちゃんの警備任務~

 

 

「お腹空いたな…」

 

「そうだな…あと1時間でシフトが変わる、そしたら食堂に行こう」

 

「あと1時間か…長いわね」

 

「右か左のポケットにビスケットが入ってる。当てたらお前にあげよう」

 

「………左のポケット」

 

「残念」

 

「どうせ最初からないってオチでしょう? はぁ……余計疲れた…」

 

「警備に戻ろう…」

 

 なんとも気の抜けたような会話をしているのは、マザーベース・糧食班プラットフォームの警備を行っているヘイブン・トルーパー兵士の二人…以下、腹ペコの方を【カエルちゃんA】、天然っぽいのが【カエルちゃんB】と呼ぶ。

 

 数週間前までは、エグゼの戦術人形連隊に配属されていて前線で活動をしていた二人であったが、何の因果かマザーベースの警備班に配置転換されてしまう。前線に比べ危険に晒されるリスクはほぼ無く、時折一部の無人機たちの暴動対処に動く以外やることはほぼ無い。

 要するに、マザーベースの警備は暇すぎる。

 暇すぎてマザーベースの警備任務につかされることは、ヘイブン・トルーパー兵にとっては恐ろしいことなのである。

 

 毎日毎日変わり映えしない日々…前哨基地などの警備は、たくさんの人がいるということでトラブルが起こりやすいためそれなりの忙しさがあるからまだいい。マザーベースではよほどのことが無い限り、事件は起こらない…一時期はスコーピオンやエグゼなどがよく暴れていたため、それなりにやりがいのある任務だった。

 最近では二人とも落ち着いていて、ミス・トラブルメーカーのFALが暴れるのも大抵前哨基地の方なのでマザーベースはいつも平和だ。

 

「なあ…」

 

「なに?」

 

「やっぱり何でもない」

 

「なんなの? 言いなさいよ」

 

「なんでもないよ」

 

「アンタとは二度と話さないわ」

 

 カエルちゃんBの謎の言動に精神的疲労感が増していくカエルちゃんA。

 だが、シフトが終わるまであまりにも暇すぎるため、カエルちゃんAは相方が一体何を言おうとしたのかしつこく追及する。するとカエルちゃんBが無言で視線の先を指差す…そこには甲板上に不自然に置かれたダンボール箱があった。

 

「ダンボールだ」

 

「ええ、ダンボールね……気になるの?」

 

「あんなところにダンボールが一つだけあるんだぞ、気にならないか?」

 

「そうね」

 

「見て来たらどうだ?」

 

「何故わたしが?」

 

「この間わたしがダンボール箱を持ちあげたら、睡眠ガスが仕掛けられててな…犯人はヴェルちゃんだった。だから見て来い」

 

「その話を聞かされて素直に見に行くと思うの? こうしましょう、私たちは何も見なかった」

 

「……警備員失格だな」

 

「たかがダンボールよ。どうせ何もないわ」

 

 二人が顔を合わせて話している間に、ダンボール箱から2本の足が飛び出しそのままどこかへ走り去っていったが二人はもちろん気付いていない。さらにダンボールがいつの間にか消えたことにも気付かず、二人は残りの時間まで退屈そうに警備の仕事に励むのであった。

 

 

 

 

 

 

~無人機狂想曲PartⅡ~

 

 【四足獣型無人機フェンリル】は、MSFに存在する数ある無人機の中で自分こそが最強の存在であると信じて疑わなかった。開発されて以降、その優秀さから各部隊から引っ張りだこであり、戦場での活躍も目覚ましいものがある…小柄ながら装甲を持ち機動力も高く、遠距離では長射程の小型レールガンを装備し、近接戦闘では高周波チェーンソーと隙の無い武装を持っている。

 見た目もオオカミのようでかっこいいという評判もあり、はっきり言うとフェンリルくんは少し調子に乗っていた。

 フェンリルくんはマザーベースを我が物顔で歩きまわり、他の無人機たちを小ばかにするような態度をしていた。

 そしてその対象は、最近MSFにやって来た【赤いゴリアテ通称赤豆くん】によく向けられる。

 

「オイ、何カ面白イコト言エ」

 

 急なフェンリルくんの無茶ぶりに、赤豆くんは戸惑う。

 高度な自己学習AIを持つフェンリルとは違い、赤豆くんは敵を見つけて突撃して自爆する程度のAIしか持っていない。赤豆くんにとってのアイデンティティとも言える自爆機能も、安全のため除外されてしまったため、今ではやたらとタフなロボット程度の存在だ…それも、フェンリルにバカにされてしまう理由の一つであった。

 困った末に、赤豆くんは要求に応える。

 

「テキ ヨウサイ OUTER HEAVEN 二 センニュウ、サイシュウヘイキ METAL GEAR ヲ ハカイ セヨ」

 

「ツマラナイ奴メ。自爆シロ」

 

 散々な言いようである。

 赤豆くんを弄って遊んでいるフェンリルであるが、遠くからやって来た【歴戦の月光】がやってくると、その場からジャンプしてコンテナの上に昇る。体高が自分よりはるかに大きい歴戦の月光より、高い位置から見下してやりたい…その程度の意地の張り方だ。

 やって来た歴戦の月光は、独特の稼働音を鳴り響かせると、フェンリルに向けて威嚇する。

 MSFに最も貢献している無人機は自分であると信じて疑わない歴戦の月光、その戦歴は長く、ユーゴでの紛争からずっと戦い抜いてきたまさに最古参の無人機なのだ。少しかっこいいだけの若造にいきがらせてなるものか、そんな対抗心を剥き出しにしている様子。

 

「失セロ、美脚野郎」

 

「!!!!!!」

 

 フェンリルくんの安い挑発に乗せられて歴戦の月光は怒り狂う…マザーベースではよほどのことが無い限り、無人機たちには兵器の使用は許可されないため、大抵罵り合いで終わるが、威嚇のためにあげる稼働音がうるさいとしてひんしゅくをかっていたりする。

 突然目の前で始まったフェンリルくんと歴戦の月光との睨みあい、その間に挟まれてしまった赤豆くんはどうしていいか分からず右往左往している。

 

 さらに厄介なことに、そこへ【無人攻撃兵器グラートくん】と【無人攻撃ヘリコプターハンマーヘッドくん】が参戦する。両者ともたちが悪い事に、自分こそが一番だと疑わない自我の強すぎる無人機たちだ。

 周囲だけでなく、上空をハンマーヘッドに抑えられてしまった赤豆くんは動くことが出来ず、稼働停止してしまったかのようにピクリとも動かない。

 

「ピィ! ピピピィ!!」

 

 さらにさらに、この騒ぎを聞きつけて参戦してきた無人機がいる。

 MSFの無人機の中で自分こそが最もかわいい存在だと信じて疑わない【ダイナゲートくん】だ。

 同じ鉄血の同志ということで赤豆くんはダイナゲートくんに救いを求めるが、ダイナゲートくんはそれを無視して、日頃からいじめてくるフェンリルくんに対し挑発を仕掛ける。歴戦の月光を背にする姿は、まさに虎の威を借る狐…順調にフェンリルくんの神経を逆なでにしていく。

 

 赤豆くんを囲み睨みあいを続ける無人機たち…その異様な光景に、スタッフたちは関わるまいと見て見ぬふりをして避けていく。まあ本気で手を出しあうことは無いが、甲板を塞いで睨みあっているために結構迷惑であったりする。

 無人機のくせに面倒なAIを持っているが、一体一体がそん所そこらの戦術人形を遥かに凌駕する戦闘能力を持っているためになおさらたちが悪い。

 

 しょうもないプライドのためにいがみ合い、地味に周囲に迷惑をかけている無人機たち………そんな狼藉を働いていればあの"大いなる存在"が黙ってはいない。

 ズシンッと地震のような衝撃を感じ取り、無人機たちはハッとする。

 先ほどまでいきがっていたフェンリルくんもコンテナを飛び降りて、尻尾を丸めて縮みあがる。

 

 大いなる存在、MSFの守護神、鋼鉄の巨人【サヘラントロプス】がいがみ合う無人機どもを見下ろし圧倒的な覇気で威圧する。サヘラントロプスの前ではヘリタイプのハンマーヘッドも普段のようにはいかず、ゆっくりと高度を下げて甲板上に着地した。

 全員を黙らせたところで、サヘラントロプスは無人機だけに通用する独自言語を用い、通信回線上で説教をし始める……みんな反抗せずにいうことを聞く辺り、やはりサヘラントロプスの威圧感は凄まじいようだ。

 

 

「はぁ……アーキテクトの奴め、どこに行ったんだ……って、うわ! なんだこれは?」

 

 

 そこへ、たまたまアーキテクトを捜すためにあちこち歩きまわっていたゲーガーが通りがかる。

 サヘラントロプスの前で反省している無人機たちの奇妙な光景に怯んでいると、それまでしょんぼりしていた無人機たちが一斉にゲーガーの方を向く。一斉に向けられた視線に再度怯むゲーガー……そんな彼女へ走り寄っていったフェンリルくんが、後ろ足で立ち上がって押し倒そうとする。

 だがそれは、同時に駆け寄った歴戦の月光によって阻止される…そこへグラート、ハンマーヘッドも再び参戦してカオスな展開へ発展していく…何が何だか分からぬままもみくちゃにされたゲーガーは、結局サヘラントロプスにつまみあげられてなんとか難を逃れるのであった…。

 

 

~End~




はい(怒)


というわけでモブキャラどもを解説していきましょう。

【ヘイブン・トルーパー】
・カエルちゃんA
この世で最も嫌いな任務はマザーベースの警備任務。
相方のカエルちゃんBの不思議っ子ぶりに常に悩まされる…ダンボールは基本的にスルー。

・カエルちゃんB
この世で最も嫌いな食べ物はニンジン。
後先考えない会話で相方を常に悩ませる…面倒事は基本的に相方に押し付ける。

【無人機】
・フェンリルくん
自分が無人機の中で最もかっこいいと信じて疑わず、常に他の無人機を小ばかにしているDQN。
よく赤豆くんを弄って遊ぶ。
隙あらばゲーガーを手籠めにして我が物にしようと企んでいる。

・赤豆くん
ビッグボスに拉致されたかわいそうな自爆兵器。
自爆機能が取り除かれてしまったため、ただの頑丈な豆になった模様。
鉄血にいた頃からゲーガーが好きだったけど、フェンリルくんの積極性をみて複雑な心境…BSS(ぼくがさきにすきだったのに)

・歴戦の月光
自分が無人機の中で最も万能だと信じて疑わず、フェンリルとは極めて仲が悪い。
ユーゴ編から活躍し続けるまさにベテラン、対空・対歩兵・対装甲なんでもござれな万能兵器。
ゲーガーの前でかっこつけたがるが、上手くアピールできない軟弱者。

・グラートくん
自分が無人機の中で最も防衛任務に長けていると信じて疑わず、よく拠点防御の任務につく。
変形機能を持っているためフェンリルくんにかっこよさでは負けていないと思っているが、肝心のフェンリルくんからは相手にされていない。
ゲーガーの貞操を守れるのは自分しかいないとして、勝手にボディーガードのつもりでいる。

・ハンマーヘッドくん
自分が無人機の中で最も高い位置にいると信じて疑わず、無人機たちを常に空から見下している。
言葉を発する機能が皆無なためコミュニケーション能力はゼロだが、上空からの無慈悲な攻撃に定評がある。
将来の夢はゲーガーを乗せて空を飛ぶこと、常に上空からゲーガーを見守っている(ストーカー)

・ダイナゲートくん
自分が無人機の中で最もかわいい存在であると信じて疑わず、誰か強い奴を味方につけてしょっちゅうイキっている。
フェンリルくんとは仲が悪いが、同じ犬型であることから一定のリスペクトはある模様。
ゲーガーよりもアーキテクト派。

・サヘラントロプス
大いなる存在、鋼鉄の巨人、無人機の帝王、MSFの守護神。
ユーゴで破壊されたメタルギアZEKEのAIを流用しているので、無人機の中では長寿。
無人機たちには仲良くしてもらいたいと思っているが、しょっちゅう期待を裏切られるている。
ゲーガーの苦労を理解する数少ない存在。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。