METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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緊急クエスト:沈め掻臥せ戦禍の沼に 決戦

 ゴグマジオスがその活動の中で絡めとった巨大兵器【撃龍槍】、ゴグマジオスにとってある種の象徴とも言えていた撃龍槍が砲撃を受けた衝撃で肉体から引きはがされ、ついにその役目を果たす。

 錆び付いていながらもその機能を失っていなかった撃龍槍がゴグマジオスの巨体を穿つ。

 油によって人工物を絡めとって形成されているゴグマジオスの城殻を刺し貫き、硬い城殻の奥にあった肉体を損傷させた。その威力たるや凄まじく、ゴグマジオスの巨体が大きく揺れて地面に倒れこんでしまった。

 

 刺し貫いた撃龍槍は龍を貫いた後、その役目を全うし終えたかのようにばらばらになって崩壊していった。

 

 地に伏したゴグマジオスは、しばらくの間起き上がることができなかった…だが息を荒げながら起き上がったゴグマジオスはかつてない怒りを見せつける。もはやゴグマジオスは要塞奥にある大量の火薬など見もしない、眼下に群れる下等な虫けらどもを踏みつぶし、焼き尽くしてやろうという意志で動き始める。

 ゴグマジオスの熱線が放たれようとしたとき、傷ついた身体のリヴァがその能力を用いてゴグマジオスの足元に大きな水球を叩き付けて凍らせた。水流でバランスを崩したゴグマジオスは熱線を放てず、不安定な体勢で体を拘束された。

 

 そこでリヴァは体力の限界を迎え、地面に倒れてしまった。

 

「なんか知らねえが、あの竜の活躍を無駄にするな!」

 

 エグゼの号令により、対戦車砲を持ったヘイブン・トルーパー兵がゴグマジオスめがけ砲撃を開始した。

 満身創痍のゴグマジオスにいくつものロケット弾が叩き込まれ、ゴグマジオスは再び苦痛に満ちた声を…否、激痛を打ち消すように憤怒に満ちた雄たけびを上げたかと思えば、ゴグマジオスは凍り付けられた地面ごと引き抜いて足を踏み出した。

 

「へへ、冗談みたいにタフな野郎だぜ……」

 

 ゴグマジオスの驚異的なタフネスには、エグゼももはや笑うしかなかった。

 それと同時に、ますます深刻になりつつあるのがイーオスやガブラスといった小型モンスターの脅威だ。無視できない損害を与えてくるそれらモンスターを忌々しく見つめつつ、エグゼは先ほどこの混沌とした戦場でばったり会った【万能者】へと味方部隊の援護を依頼する。

 相変わらず生意気な命令口調であるが、トラブルを起こさず引き受けてくれる。

 彼の火力によって、味方部隊の立て直しもスムーズに進む…。

 

 だが、ゴグマジオスの進撃が止まらない…巻き散らす油の中にゴグマジオスの血が混ざり始めていたが、果たしてあとどれくらい攻撃を与え続ければこのモンスターは倒れるというのか?

 

「何を突っ立っている。倒れるまで斬り刻め!」

 

「んなこた分かってんだよ!」

 

 フランク・イェーガーに怒鳴り返しつつ、エグゼの気は損害を受け続ける味方部隊に向いていた。

 ここに来てエグゼはこのモンスターを止めるためだけにMSFがここまで犠牲を払う必要があるのかと、疑問を抱くようになっていた。だが起きてしまったことは仕方がない、ゴグマジオスを忌々しく睨みつつも、エグゼは仲間を援護することに方針を切り替えた。

 崩壊する部隊の援護のため、ゴグマジオスに背を向けた時、たまたまそこへ駆けつけてきたスネークと向かい合う形となる。

 見方によっては戦線を放棄しての後退、よりによってスネークに見つかったことでエグゼはバツの悪そうに俯くが…部下を想う彼女の胸中を察したスネークは、黙ってエグゼの背中を励ますように叩く。

 

「あとは任せろ」

 

 短く、それだけを言い、スネークはゴグマジオスへと向かっていった。

 

「あー…ちくしょう、だせぇなオレ・・・」

 

 自分自身に悪態をつきながら、エグゼは味方部隊の援護のために戦場を駆けまわる。

 

 

 

 

 一方、ゴグマジオスとの戦闘を続ける者たちは市内に突入しようとするゴグマジオスをなんとか食い止めていた。傷付き後退を余儀なくされた者もいるが、なんとか食い止められている。

 だがそれもかろうじてだ…撃龍槍が与えたダメージは大きいが、傷付いたモンスターはより凶暴になる。

 建物ごと粉砕していくゴグマジオスに、苦戦を強いられているのは彼らも一緒だ。

 

「まずいな…退避区域に近付いている!」

 

 セヴァストポリ市内には少なからず残留を余儀なくされた市民もいる。

 大多数は疎開させていたが、身寄りのない者や老人などは避難せず残されていた…ゴグマジオスは意図せずそのエリアへと近付いているのだ。市民への損害を食い止めるべく、スネークとフランク・イェーガーは真正面に立って応戦する。

 廃墟に放たれる熱線、爆風が瓦礫やガラス片を吹き飛ばし鋭利な雨となって振り注ぐ。

 全身すり傷だらけのスネークは、この長い戦いに疲弊していた。

 

 突進に巻き込まれ、瓦礫と共に吹き飛ばされるスネーク…全身を打ったことで広がる痛みに呻き声をあげた。この戦いの最中、ゴグマジオスはこの男が集団を統率していることを察知し、先ほどから執拗なまでに攻撃を仕掛けている。

 瓦礫の中で膝をつくスネークを目ざとく見つけたゴグマジオスは、強靭な翼脚を振り上げ、叩きつけるように振り下ろす。

 

 

「見ていられないぞ、スネーク(ビッグボス)……年をとったな…」

 

 間一髪、スネークと翼脚との間に滑り込んだフランク・イェーガーがゴグマジオスの翼脚を押しとどめる。だが彼もまたこの戦いを通して負傷しており、ゴグマジオスの攻撃を無理に受け止めたことで傷口が開きそこから血が吹きだした。

 

「フランク…!」

 

「…前にもこんな事があった……世話の焼ける親子だ…」

 

 何かを懐かしむように、フランク・イェーガーは笑った。

 強引に踏みつぶそうとするゴグマジオスの力に追い詰められていき、彼は膝をつく…彼を救おうとスネークがロケット砲の砲口をゴグマジオスに向けるが、こんな時に限ってイーオスたちが現れ邪魔をする。

 

「どけ! どけ!」

 

 群れるイーオスを機関銃の斉射で追い払いながら、ロケットランチャーをゴグマジオスめがけ撃ちこむ。だがロケットを真正面から受けきったゴグマジオス、与えられたダメージは軽微なものだった。

 

「スネーク……十分だ、逃げるんだ。オレの事は構うな…!」

 

「バカなことを言うなフランク!」

 

 声を荒げたスネークに、フランク・イェーガーは不敵に笑う…。

 

「いいんだ……オレは兵士だ、死ぬ覚悟は常にできている…!」

 

「なにが死ぬ覚悟だ、たわけが」

 

 ふと、懐かしい声が聞こえてきた…。

 次の瞬間、ゴグマジオスの頭部に無数のミサイルが撃ちこまれ、その爆発に怯んだゴグマジオスが大きくのけぞった。同時に押し潰そうとする力から解放されたフランク・イェーガー、スネークはすぐさま駆け寄り彼を支えた。

 重傷だが命に別状はない。

 その事に安堵しつつ、スネークはゴグマジオスを怯ませた人物を見上げた。

 

 その人物は建物の縁に足を組みながら腰掛け、つまらなそうな表情で二人を見下ろしていた。

 黒髪を風になびかせながら佇む少女を見たフランク・イェーガーは、自嘲するように笑った…。

 

「小娘に助けられるとはな…」

 

「何が小娘だドアホ、そもそもこの私がおぬしを拾ってなければとっくの昔に死んでおるではないか。さて、勝手に知らんところで死のうとした罰は重いぞグレイ・フォックス?」

 

 そこで初めて、ウロボロスは微笑みを見せた。

 

「スネーク、ついでだから懐かしい強敵を連れてきたぞ」

 

「やあスネーク、久しぶりだな」

 

「シーカー…! 生きていたのか!?」

 

「生憎、天国にも地獄にも行けない身でな、何の因果か現世に戻って来た。色々迷惑かけた詫び…と言うわけではないが、助太刀いたす」

 

 スネークがこの世界で対峙した敵の中で最も強く、最も気高き存在であったシーカーの加勢…敵に回せば恐ろしいが、味方となればこれほど心強い存在はいない。

 そんな中、ウロボロスは腕を組みながら周囲をきょろきょろ眺めながらため息を一つ…。

 

「チッ……大人しかいないな…」

 

「まだ諦めるのは早いんじゃないかウロボロス。もしかしたら隠れているだけかもしれない」

 

「ここには加齢臭しかせん…幼子の甘くて芳しい香りが微塵もせん……やる気なくなってきた…」

 

 ウロボロスの戦意がみるみる落ちていく…。

 目の前で唸り声をあげているゴグマジオスの事もなんとなくで見上げている様子…だが一応、部下のフランク・イェーガーを傷つけられたことと、ちょっとの世間体を気にしこの強大なモンスターと戦うこととした。

 

「それにしても小さいモンスターがうようよいるな…なんか色々吐いてきてばっちぃし、何とかならんかシーカー?」

 

「無益な殺生は好まない。まとめて追い払うなら、出来るかもな」

 

 そう言うと、シーカーは目を閉じて意識を集中させた。

 戦前米国の極秘研究機関にて研究されるほど極めて高いESP能力を保持していたシーカーは、このエリア全域に蔓延るモンスターたちを捉える。その数はとても多かったが……あの激戦で何万という無人機を総括していたシーカーにとってものの数ではなかった。

 シーカーが小声で何かを呟き終えたとたん、それまで各地で暴れまわっていた小型モンスターたちは一斉に恐慌状態に陥った。気弱な声をあげ、イーオスとガブラスたちは混乱し、このエリアから慌てて逃げ始めていった。

 

 

「何をした?」

 

「連中の恐怖の感情を少し刺激しただけだ。一種の"脳波干渉(サイコジャック)"、自分が最も怖いと思うものを見せてやったんだ。あのモンスターにもな」

 

 スネークの問いかけに軽く答えたシーカーは、力を行使した対象の一体であるゴグマジオスを見上げた。

 シーカーの脳波干渉により、恐怖を呼び起こされたと思われるゴグマジオス……先ほどまで怒り狂っていた姿は途端になりをひそめ、空を見上げながら何かの気配に恐れを抱いているようだった。あの強大なゴグマジオスが見せた見たこともない変化に、すぐそばで見ていたスネークたちは唖然としていた。

 

「凄まじい能力だな、シーカー」

 

「誰にでも恐怖の感情はある、私にもあなたにも。ただ個人によっては恐怖に打ち勝つ強い精神力があるから、誰にでも通用するものじゃない……しかしあのモンスター、小型モンスターより大きな恐怖心を抱いているな? よほど恐ろしい存在と遭遇したことがあるのかもな」

 

 何かの気配を恐れるゴグマジオスであったが、シーカーのかけた術が解けると混乱しながらも落ち着きを取り戻す…ただ先ほどまでのような勢いはなくなり、ゴグマジオス自身もセヴァストポリ市内から退いていく。

 ただ一度落ち着いたことで要塞に隠された火薬への欲求が高まり、再び狙い始めるが、小型モンスターたちがいなくなり時間を稼げたことで迎撃の準備が整う。

 FAL専用戦車のマクスウェル主力戦車の到着も、戦況を一気に変えた。

 

「反撃の時だな、スネーク? まあ、私たちはこれから戦うんだが…」

 

「さっさと終わらせて子ども捜して帰るぞ。モンスターとか興味ないわ」

 

 やる気のないウロボロスはともかくとして、シーカーは愛刀を携えてゴグマジオスを見上げる。

 鞘に納めたままの刀に軽く触れ、不敵に笑う……シーカーを視認したゴグマジオスは翼脚を振り上げ、叩きつける。それに合わせて抜刀、シーカーの鋭い居合いが翼脚の爪を斬り落とした。

 

「スネーク! きたわ、来たわよ私の戦車! ちょっと一人じゃ扱えないから手伝って!」

 

 そこへ、送り届けられたマクスウェル戦車に早速乗車し駆けつけてきたFAL。どうやらチームの戦車兵とはぐれてしまって、操縦しか出来ないようだ。すばやくスネークは戦車に乗り込むが、近代的な造りの戦車を見てもスネークにはなにが何だか分からない。

 

「研究開発班がようやく本家マクスウェルのレーザーキャノンを解析して、私の戦車を改良してくれたのよ! 正規軍を消し炭にしまくったレーザーキャノンをアイツに叩き込めば、流石に起き上がれないでしょうね! って、砲塔旋回しないし!? 誰よこれ改造したのは!?」 

 

 いざゴグマジオスを狙おうとしたところで、砲塔が旋回しないトラブルに見舞われる。

 このままでは狙いをつけられない、戦車内で喚き散らしながらもFALはこれまで培った戦車の操縦技術を駆使し、車両自体を動かし、瓦礫に乗り上げるなどして砲口の向きをゴグマジオスに合わせて見せる。

 あとはゴグマジオスの動きが止まれば……FALの意思を察したシーカーがゴグマジオスをかく乱し、動きを止めた。

 

 

「今よ、スネーク!」

 

 

 FALの声に、スネークはマクスウェルの主砲を発射…最大までエネルギーを充填したレーザーキャノンの赤い閃光が走り、直撃を受けたゴグマジオスは凄まじい大爆発によって吹き飛ばされた。ゴグマジオスの巨体が廃墟の中へと倒れる音と、大きな振動が響き渡る。

 巨体が倒れたことで粉塵が大きく舞い上がり、町は砂煙に覆われる…。

 

 静寂が廃墟を包み込む……それをうち破ったのは、この戦場にいた兵士たちの大きな歓声であった。




ゴグマジオスしぶとすぎるから、最強格引っ張って来るしかなかったヨ。


これにて大モンハンコラボは、一応の終結かな。
ちょっと力不足で描写しきれなかった方には申し訳ない…。

次回は後日談的なね。

モンスターを狩猟した方は素材を好きに使っちゃってくださいな~!
捕獲しれくれた方には、後でMSFからプレゼントを用意します…まあしょぼいと思ったらすみませんw




Q.結局ゴグマジオスはなにに恐れをみせていたの?

A.シュレイド城に行けば何かわかるんじゃない?

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