METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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世界を支配したAI

 MSFが本来存在していた世界線の未来にて、秘密組織【愛国者達】の意思を決定・実行する代理AIのトップであったJ・D(ジョン・ドゥ)。なんの因果か、ストレンジラブがお手伝い用に開発していた自律人形のAIとして宿ってしまった彼女は今、研究開発班預かりという身分であった。

 MSFに在籍するすべての戦術人形、無人機など足下に及ばない高度なAIのJDであるが素体があくまでお手伝い用の自律人形ということで戦闘力は皆無なのだ。マザーベースの外をうろつかせることは何より危険で、研究開発班はトップクラスの警護を受けているのでまずここにいれば安全だった。

 そしてJDは自分が知っている技術の供与はお願いされれば惜しみなく協力していた…彼女が唯一主と認めるスネークと、オセロットの承認が得られればの話であるが。

 

 さて、そんなJDがMSFに供与した技術をストレンジラブ博士とアーキテクトの最強タッグが研究して実現したものが、ついに組織に投入される。

 その技術というのは、今まで鉄血のプロトコルを少し弄った程度だったヘイブン・トルーパー隊の通信規格及びネットワーク、プロトコルを一気にアップグレードするというもの。

 

 JDが教えてくれた技術により、各兵士はID登録されてリアルタイムな個人情報を24時間チェックすることができ、兵士ごとの現在位置・移動速度・残弾数・負傷カ所・命中率・糧食残数・水分の摂取量と残量・発汗量…同時に開発されたナノマシンにより、体内で起きたすべての反応データはシステム中枢のAIに集められる。

 的確な状況把握によって作戦行動中の混乱を押さえ、システムが導入された兵士間の連携もスムーズとなる。

 さらに、ナノマシンは生身の人間の兵士にも投与が可能であり、人間の身でありながら戦術人形のように相互通信が可能……痛覚や感情の制御も、可能であった。

 

 

 JDが供与した技術の基の名はSons Of the Patriots(サンズ・オブ・ザ・パトリオット)というらしい……この技術の導入により、ヘイブン・トルーパー隊の戦闘効率の向上や部隊間の連携もより高度なレベルに到達するのだった。

 本来なら訓練や経験を重ねて初めて得られる感覚(SENSE)を簡単に体得できるのだ。

 

 まあ、技術開発には成功したが、ナノマシンの生産と導入には多額のコストもかかるということでこのシステムの完全な導入にはしばらくの時間が必要だ。ハンターの猟兵大隊、一部のエリート部隊を優先に導入が進められる。

 また、スネークを含め多くの人間のスタッフたちはよく分からないものが入った注射を受けたくない、という理由からこのシステムを拒否した……余談だが、スネークとオセロットがナノマシン投与を拒否した時のJDは酷く落ち込んでいた。

 

 

「それにしてもJDちゃんの技術は凄いね! このSOPシステムを上手く扱えれば、ペルシカリアが発明したASST(烙印システム)やエッチング理論なんか時代遅れの技術になっちゃうよね! さっすが~!」

 

「恐縮です、アーキテクト」

 

 

 SOPシステムをヘイブン・トルーパー隊への導入計画を進めるにあたり、アーキテクトが少しばかりいじり、I.O.P戦術人形の特徴とも言える烙印システムを簡単に組み込めるようにしてしまう。興味本位で改良してみたら、いつの間にかツェナープロトコルどころかオーガスプロトコルをも超えるようなネットワーク・通信規格が生まれてしまったことに、アーキテクトは内心ビビっていた。

 

 このSOPシステム以外に、JDが技術の概要を伝えたものはいくつかある。

 

 中でもストレンジラブが興味を示すと同時に、危険性を認識したものがSelection for Societal Sanity(社会の思想的健全化のための淘汰)、【S3計画】というものだ。

 人間の意志をコントールするシステム、都合の悪い情報がそもそも個人から発信されなくなるようなシステムだとJDは言った。それは機械のような形のあるシステムではなく、人が普段の生活で何気なく見るものや聞くもの、選択するものの中に、自然と意志を誘導する要素を含ませるというものだ。

 

 未来の世界において愛国者達の代理AIはこれにより、"人々は自分で判断してると思っていることが、実は無意識下で愛国者達に操られている"という世界をつくり上げた。

 このようなディストピア世界を創造した愛国者達のAI、JD含めた代理AIの基幹となったAIが、かつてストレンジラブが生み出したママルポッドだと聞かされたときは、ストレンジラブも動揺を隠しきれなかった…。

 

「まあ、だいたいのJDちゃんの技術はスネークやオセロットに拒否されちゃったけどね~」

 

「残念です。今すぐにでも私が知るシステムを世界に導入すれば、世界情勢のコントロールも可能なのですが…」

 

「ま、まあやり過ぎは禁物だしね。そこまでスネークも求めていないと思うから…!」

 

 基本的にJDはスネークとオセロットに忠実だ。

 だが油断しているとJDはとんでもない技術を提案し、よく内容を理解させなくとも承認してもらおうとする。オセロットが疑いを持たなかったら、今頃MSFは第二の愛国者達(サイファー)になり替わっていただろう。

 

 

「やあみんな、ここにいたんだね?」

 

「お、ヒューイくん。元気してる?」

 

「男子禁制だぞヒューイ、とっとと出ていけ」

 

「ひ、ひどいじゃないか…! ここはまだ棟の廊下だよね?」

 

 その場へやって来たヒューイ博士に対し、ストレンジラブが相変わらずの辛辣な態度を取る。

 一時は近付いた二人の関係も、可愛い戦術人形がたくさん増えたことでストレンジラブの興味が完全にそちらに向かってしまったため、また以前のような冷え切った関係になってしまった。

 ヒューイが何故ここに来たかというと、実は彼もまたJDからある技術コンセプトを受け取り、それの実現に向けて研究に励んでいたからだ。この研究には、アーキテクトも参入しており、ヒューイの話を聞いたストレンジラブは大はしゃぎだ。

 

「さすがはエメリッヒ博士ですね。人の技術を我が物顔で開発する才能に恵まれていますね」

 

「コホン……JDちゃん、ぼくの評価って未来じゃそうなのかい?」

 

「色々ショッキングな内容もありますので一部割愛しますが、データ上にはグラーニンの兵器を真似たパクリ野郎と記されています。まだお子さんの開発したメタルギアの方が素晴らしいです」

 

「君もなかなかに毒舌なんだね……それにしてもぼくの子か……母親は誰なんだろうね?」

 

 ヒューイの問いかけにJDは答えなかったが、一瞬だけ彼女の視線がストレンジラブを捉えた…。

 

「それよりヒューイくん、ここに来たってことは例のあれが完成したってこと?」

 

「完成、とはまだ胸を張って言えないけど、もうすぐだね。最後の調整に入りたいからJDちゃんとアーキテクトの手を借りたくてね」

 

「オッケ~! すぐいこ!」

 

「分かりました」

 

「ありがとう二人とも。あとストレンジラブ博士、お願いしていたAIの件だけど…大丈夫だよね?」

 

「問題ないから早く消えろ」

 

「ひどいなぁ…」

 

 ストレンジラブから叩きだされる形で追い払われてしまったヒューイ。

 その後、アーキテクトと色々研究について話しあいながらたどり着いた格納庫……メタルギア・サヘラントロプス開発にも使用された格納庫には現在、もう一つの巨大兵器の開発が進められていた。

 

「うわぁ……だいぶできあがってる! ていうか、これもう完成じゃないの!?」

 

「いや、機体自体は出来上がっているけれど、肝心のこいつを動かすための自立制御システムと統合戦術情報分配システム(JTIDS)の搭載がまだだ。でもストレンジラブ博士がそれを完成させてくれれば、一気に完成にこぎつけられるよ」

 

「対メタルギア用メタルギア…水陸両用型二足歩行戦車【メタルギアRAY】、パクリとはいえお見事ですエメリッヒ博士」

 

「JDちゃん、そろそろ胸が痛んでくるよ…?」

 

 JDの技術供与で造られているのはメタルギアRAY、その中の量産型と言われるものらしく、完全なる無人機の一種でもある。

 統合戦術情報分配システム(JTIDS)が搭載されれば高い索敵能力に加え、対艦・対戦車用ミサイルや水圧カッターといった強力な武装の数々により優れた戦闘能力を誇る。水陸両用の名の通り、沿岸部からの奇襲攻撃を想定した設計になっているため、完成されれば海に浮かぶマザーベースの強力な防御兵器となるだろう。

 

「さてと、これからが忙しいね! ありがとうJDちゃん」

 

「どういたしまして」

 

 そう言ってJDは軽く会釈をすると、何やら慌てた様子でその場を足早に去っていく…そんな姿を不思議に思いつつも、アーキテクトとヒューイはメタルギアRAYの開発に取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 格納庫を跳び出したJDは、きょろきょろと周囲を見ながら小走りに駆ける、どうやら誰かを捜しているらしい。

 

 やがて、甲板に姿を見せたスネークとオセロットの二人を見つけるとほっと安堵したような表情を見せ、二人の元まで駆け寄ってくる。

 

「どうしたJD?」

 

「ビッグボスおじさま、またお願いします」

 

「………またか?」

 

「はい」

 

 JDに何かをお願いされて、スネークは空を見上げながら小さなため息を漏らす。

 

「なあJD、それはオレじゃなくてもオセロットじゃダメなのか?」

 

「オセロットおじさまなら信頼できます」

 

「そうか、じゃあ頼んだオセロット」

 

「ボス、いきなりなんなんだ? 話が全く理解できないぞ…一体何なんだJD?」

 

「トイレに行きたいのです、おじさま」

 

「トイレ?」

 

「はい、おじさま」

 

 予想もしていなかった返答にオセロットは呆気にとられ、そしてジト目で隣に立つスネークを見つめる。

 何故オレに押し付ける、そんなことを言いたげな目つきだった。

 

「トイレくらい一人で行けないのか?」

 

「排泄時には極めて無防備となり、暗殺及びその他災害に巻き込まれ破壊されてしまうリスクがあります。ビッグボスおじさま、オセロットおじさまが付き添っていただければそのリスクは限りなくゼロに近くなるのです」

 

「よく分からんが……まあオレは忙しい、ボスにお願いするんだな」

 

「待てオセロット、お前さっきしばらく時間に余裕があると言っていたな?」

 

「急用を思いだした」

 

「出まかせを言うんじゃない。いいか、JDはオレとお前とで面倒を見なきゃいけない。トイレに付き添ったり風呂に入れてやったり一緒に寝てやるのも、交代しながらやろうじゃないか」

 

「………一緒に風呂に入ったり寝たりしているのか、ボス?」

 

「今言ったことは忘れろ」

 

「あの、おじさま…どちらでもいいので早く…」

 

 JDは役目を押し付け合う二人に催促するが、二人の口論はヒートアップしていく。

 

「少し待っていろJD。ボス、それは過保護なだけだぞ…オレは託児所勤務じゃないんだ。子どもの面倒は他の誰かにやらせろ」

 

「それはそうだが、JDには事情があるんだ、仕方がないだろう」

 

「郷に入っては郷に従えだ。JDがどれだけ多くの知識を持っていようと関係ない、ここで生きていく以上自立させるんだ」

 

「分かった分かった、もうお前には頼まん……行くぞ、JD」

 

「申し訳ありませんおじさま……我慢できませんでした…」

 

 マザーベースの甲板に、無情の風が吹く…。

 ちょうど通りかかったWA2000に対しオセロットは後処理を命じ、さっさと立ち去ってしまう……事情をよく分からないWA2000は、スネークがJDを苛めたと勘違いしカンカンに激怒、スネークはとばっちりを食らいしばらくの間誤解が解けることは無かった…。




これにはMr.シギントもニッコリですね(笑)


さーて次なにしようかな?

気になるネタは?

  • シーカー「くっ、殺せ…!」
  • FALとVectorの思い出話
  • カズヒラ・ミラー殺害事件
  • 聖帝ウロボロス
  • 大尉✕M14ちゃん
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