窓から差し込んで来た朝日を顔に受けて、ウロボロスは起床する…寝る時はいつも寝間着どころか下着すら着ない主義の彼女は、華奢であるが程よく肉付いた美しい裸体をぐっと伸ばす。そのまましばらくぼーっとベッドの上で佇み、ふと同じベッドでぐったりしているイーライに視線を落とす。
全裸で寝るウロボロスにいつも抱き枕にされているせいでイーライはいつも悶々とした日々を送り、毎日寝不足だ。
「おーい、起きろイーライ。朝だぞー」
夜中になってようやく寝れたイーライはまだ起きたくないのか、ウロボロスの手を振りはらいシーツを頭から被る。それを無理矢理引っぺがされてしまい、強制的にたたき起こされる。怒ったイーライがウロボロスをやっつけようとするが、それを彼女は容易く返り討ち…朝っぱらからイーライは全裸の女性に組み伏せられるという屈辱を味合わせられる。
まあ、他に誰か見ている者はおらず、部屋でドタバタ騒ぎを起こそうが屋敷の使用人たちはウロボロスの癇癪に触れるのを恐れて入っては来ない。
「まったく朝から力を使わせるな」
「誰のせいだと思ってんだ! というかさっさと服着ろよ!」
「ふん、なに照れておるこのスケベ小僧が……まあいい、折角だから朝風呂にでも一緒に入るか?」
「なんで一緒に入らなきゃ…! 一人で入ってこいよ!」
「前は一緒に入ってただろうが? 最近は付き合いが悪いな……あ、もしかしておぬし…下の毛でも生えてきたか?」
口に手を当ててニヤニヤ笑うウロボロスに、イーライは顔を真っ赤にして怒りだす。
しかし抵抗する間もなく、イーライは強引に風呂場へと引きずられていってしまう……そこで入念に調べられ、風呂から上がる頃にはイーライはほとんど虫の息、逆にウロボロスの方が妙に生き生きしていた。
「ふむ、まだまだ小僧だな。さて、朝食を食べに行こうか?」
そうは言うが、朝からの騒動でイーライはもうぐったりしている。
仕方なく、イーライをおんぶして食堂へと向かおうとするが、寝不足とこの疲れでイーライはウロボロスの背中で寝息をたてはじめる。イーライが寝息を立てているのに気付き、ウロボロスは小さく笑うと、通路を引き帰し自室へと戻る。
ベッドメイキングをする使用人を追い払い、ベッドの上にイーライを寝かせると、ウロボロスもその隣で横になる。眠りにつくイーライを慈愛に満ちた表情で、ウロボロスは見つめ、彼の金色の前髪を優しくかきわけた。
「クソガキもこうしていれば、年相応だな……おぬしの成長が楽しみだ、きっとおぬしは誰よりも強くなるだろうよ…私やフォックス、ビッグボスなんかよりもな…?」
眠るイーライにシーツをかけ額にキスをする。
彼を起こさないよう、静かにウロボロスは寝室を後にするのだった…。
「さがれ、どけ! ウロボロス様の御視察だ~! 消毒されてぇか~!」
大規模農場をゆっくりと車両が進み、先頭車両では火炎放射器を持ったガタイのいい兵士が労働者たちを脅しながら道を開けさせる。
車両の列の中にオープントップの装甲車があるが、その装甲車に特設された玉座のような椅子に足を組みながら座るウロボロスの姿があった。
労働者を道端に跪かせ、その前を偉そうな態度で通り過ぎる彼女の姿はまさに悪の親玉そのものに見える。
まあ、こうしたパフォーマンスはウロボロスの虚栄心の現れだと労働者たちは知っているので、慣れた労働者たちは黙って彼女が通り過ぎるのを待つ。だが、こういったことに慣れていない義憤に駆られた若者などが黙っていたりはしない。
労働者を扱き使うウロボロスを常々敵視していたその若者は懐に拳銃を忍ばせ、ウロボロスとの距離が近くなると同時に駆けだした。
ウロボロスは若者が自分を狙って拳銃を向けようとしているのにいち早く気付くも、視線を向けたのみで一切動じない。大声をあげて拳銃を構える若者に対し、素早く行動を起こしたのは、ウロボロスのすぐそばに控えていた一人の男だ。
男が素早く投げたナイフが、拳銃を握る若者の手に突き刺さり、若者は拳銃を落として悲鳴をあげた。
それまで平伏していた労働者たちは襲撃を仕掛けた若者から離れ、ウロボロス護衛の兵士が駆けつけた。
襲撃者を止めた男性も装甲車から降り、若者の手に突き刺さったままのナイフを抜き取り鞘に納める。
「お嬢、お怪我はありませんか?」
「見事だ【ヴァンプ】、後で褒美を取らす」
ウロボロスの労いに、ヴァンプと呼ばれた黒髪の男は仰々しくお辞儀をしてみせる。
「ウロボロス様! こいつはいかがいたします!?」
「好きにしろ」
「了解しましたッ! 汚物は消毒だ~!」
領内の見回りを終えて屋敷に戻って来たウロボロス。
出迎えのために整列していた使用人たちを手を払って散らせると、プールサイドのビーチチェアに腰掛ける。いつの間にかビキニスタイルの水着に着替えたウロボロス、彼女の白磁のような白い肌に黒のビキニは良く映える。
ビーチチェアに座りながらワイングラスをつまみ、ウロボロスは手のひらをヴァンプに差し出す…彼からナイフを一つ受け取ったウロボロスはおもむろに自身の手首に刃を突きたて、流れた血でワイングラスを満たす。
美女の血で満たされていくワイングラスを見つめるヴァンプはやや興奮した様子で、彼女から手渡されたグラスに迷わず口をつけた。
「ウロボロス、いい加減になさい! ここにはご主人様もいるというのに……精神衛生上極めて不潔ですわ!」
たまたま一連の様子を見てしまった代理人が、ウロボロスとヴァンプの二人を指差し怒りだすが、ウロボロスはまるで相手にせず、ヴァンプも聞く耳を持たなかった。
このヴァンプという男だが、先日ウロボロスがアフリカの砂漠を散歩していた時にたまたま行き倒れていたのを見つけて拾われたのだ。
ウロボロスが見つけた時、ヴァンプは死にかけていたが好奇心で世話をしていたところ復活した。
彼は当初酷く混乱していたが、そこでウロボロスは彼もまたフランク・イェーガーと同じ境遇のものであると気付くと同時に、味方陣営に引き込むべく説得をしたのだ。交渉の末、ウロボロスはヴァンプの協力を見返りとなる血と引き換えに獲得したわけだ。
ヴァンプを屋敷に連れ帰った時、屋敷のハイエンドモデルたちからは猛反発を受けたが元々屋敷はウロボロスのものなので強引に押し通す。納得のいかないジャッジがヴァンプを力づくで追いだそうとしたが、ここでヴァンプは驚異的な戦闘能力でジャッジを返り討ち、ウロボロスは良い拾い物をしたと大層喜んだ。
「まったく……まあいいですわ。ウロボロス、何やら環境保護団体の過激派が領内で抗議デモと称して破壊行為を続けているみたいですが?」
「ほっとけばいい」
「何を言ってるんです? このまま野放しにしておけば、同調者が現れてますます被害が拡散しますわ」
「それがお嬢の狙い。お嬢の統治に不満を持つ隠れた連中をあぶりだし、一気にまとめて始末する。少し出て潰していくいたちごっこは時間の無駄だ……そうでしょう、お嬢?」
「その通りだヴァンプ。なんだ、おぬし代理人のカチカチ石頭より柔軟だな?」
「いちいちあなたは一言多いんですよウロボロス!」
「ええいうるさい奴だ……ヴァンプ、とりあえず屋敷に近い町の過激はどもはおぬしで潰しておいてくれ。手段は問わない」
「すぐにでも、お嬢」
ヴァンプはウロボロスにお辞儀をすると、ゆっくりとプールサイドから離れ姿を消していった…。
すると、それまでヴァンプが怖くて近づけなかった屋敷の子どもたちが一斉にプールサイドへと集まってきた。それを待っていたのか、ウロボロスは先ほどまでの仏頂面をひっこめて子どもたちとプール遊びに興じ始める。
いたずら盛りの子どもたちによって、プールサイドにいた代理人が哀れにもプールに突き落とされたのは言うまでも無い…。
はい(怒)
MGSから敵さんが一人ログインしたようです(笑)
フランク・イェーガー「ウロボロスに少しでも手を出したら―――」
ヴァンプ「オレはバイセクシャルだ」
フランク・イェーガー「!!!????」
代理人「ハレンチですわ!」
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