METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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人の振り見て我が振り直せ

「オレの我慢にも限界がある! もうお前たちには任せておけん! この乱れ切った風紀を徹底的に直してやる!」

 

 ある日突然、MSF副司令カズヒラ・ミラーがキレ始めた。

 マザーベースの食堂に勢いよく上がり込んできたミラーは、賛同者の97式と64式を引き連れて食堂に集まる者……おもに癖の強い戦術人形たちに対し大声で呼びかけ注意を引きつける。いきなりやって来てそんなことを言えば、基本短気なエグゼは不快感を露わにし、スコーピオンやFALなどの面子も怪訝な表情を浮かべる。

 

「なんだ、うるせえぞこのやろう」

 

「それだよそれ! エグゼさん、ミラーさんはMSFの副司令だよ!? そんな口の利き方ってないよね!?」

 

「あぁ?」

 

「ヒエッ……!」

 

 不機嫌なエグゼの睨みを受けた64式は即座に引き下がってしまう…が、そばに控えるミラーと97式が結託して戦いを継続する。一本の矢は脆く折れやすいが、3本まとめた矢は頑丈なのだ!

 

「64式ちゃんの言う通り、ミラーさんはMSFのナンバー2だよ! そんな人をバカにしたり蔑ろにしたりしたら、組織が成り立たなくなっちゃうでしょ!」

 

「あのな97式、オレはスネーク以外の命令は聞かないって条件でMSFに勧誘されたんだぞ? それで納得したのはそいつだぜ?」

 

「その時と今は事情も変わって来てるでしょ!? エグゼももう一児のママなんだから、いつまでもそんなガキくさい言い訳並べちゃダメでしょ!?」

 

「テメェこのやろう……一体誰に向かって喋ってんだ! ぶち殺すぞこら!」

 

「ヒィッ…!」

 

 97式の放った言葉によってエグゼは完全にキレてしまった…64式も97式も、ミラーの背中に隠れて震えるばかりで使い物にならなくなってしまった。話す前から分かっていたことだがエグゼに対話は通じない、理屈で分からせようとしても、暴力ではじき飛ばす輩だからだ。

 

「コホン、この際オレへの敬意はどうだろうと構わない。だがオレが指示することや決めた方針はスネークやオセロットと話しあったうえでみんなに周知させてるんだ。みんな好きな人から指示を受けたい気持ちはわかるが、何かあるたびにスネークやオセロットを呼ぶのは無駄な手間だろう?」

 

「そ、そうよ! エグゼさんだけじゃないわ、ワルサーさんもミラーさんと話したくないからと言って指示をガン無視するのはいけないと思うの」

 

「え……先輩、普段そんなことしてるんですか…?」

 

「そ、そんなことないわよ79式! ちょっと、みんなの前で誤解が生まれること言わないでよね! たまにちょっと聞こえが悪い時があるだけよ!」

 

「ガキみたいな言い訳禁止です!」

 

「うっ……わ、悪かったわね…!」

 

 後輩の79式より、心配そうに見つめられたWA2000は焦り始める…この人もミラーの女癖に関して最悪の印象を持っているせいで反抗的な人物の一人、しかし一応他の者の話は聞いてくれるのでエグゼ程厄介ではない。

 

 まあ、最終的にミラーたちが言いたいのはMSF全体のここ最近の規律の乱れだ。

 民間の軍事会社ではあるが、部隊の規律を保つことは正規の軍隊と変わらず重要なこと、むしろならず者の傭兵集団というレッテルを貼られることを嫌うのでより高い規律を保ちたいと思っている。しかし最近ではMSFの名声の高まりにともなってか、各員の風紀は乱れ、派遣先から少なくない苦情を貰う。

 

「やたら傲慢な人形がいるとか、そういう苦情があってだな…」

 

「うんうん、私も電話番大変なんだから…この間なんて酒場で乱闘して大勢けが人出してお店滅茶苦茶にされたり…」

 

「他人に道を譲らなかったりお客さんに言葉遣い悪かったり…」

 

「それ全部エグゼじゃないの?」

 

「オレはそこまで無礼者じゃねえっての! というか、酔っぱらって酒場ぶっ壊したのスコーピオンお前だろう? 止めに入ったオレまで投げ飛ばしやがって…」

 

「でもその後お巡りさんぶちのめしたのはエグゼだったよね?」

 

「そりゃあ、気安くオレに触ろうとしたから……」

 

「呆れたわね。あんたらの無秩序ぶりにはこっちが恥ずかしいわ」

 

「そういうFALだって、酔っぱらって誰彼構わず絡んでいったりって…苦情多いからね?」

 

「なによ、私みたいな麗しい美女と一緒にいれてなにが不満だって言うのよ!?」

 

「絡むだけならともかく…しつこかったり、むちゃくちゃ言ってきたり、突然泣きわめいたり、いきなり吐いt-―――」

「分かった分かったわ! それ以上いうのは止めてスコーピオン!」

 

 どうやら予想していた以上に規律の乱れは深刻らしい。

 MSFにとっての脅威の高まりにつれて軍拡は避けられないことで、そのための資金源を得るためには、顧客の印象は大事にしたいもの。ここまでの問題点を洗い出したところで、それまで食堂の外でやり取りを聞いてもらっていたスネークとオセロットの両名に出てきてもらう。

 案の定、二人を見たエグゼやWA2000などは狼狽える。

 

 予想以上の規律の乱れに、スネークとオセロットもミラー同様表情が固い。

 

「エグゼ、スコーピオン…こっちに来い」

 

「うぅ、スネーク…いつもより顔怖いよ、大丈夫?」

 

 持ち前の能天気さで場を和ませようとするスコーピオンだが、今回ばかりは通じないようだ。

 人形たち部隊を任せているエグゼとスコーピオン両名の規律の乱れが、部下たちの行動の乱れに繋がっている、そう厳しい口調で言われれば普段反抗的な二人も言い返すことは無い。しゅんとなる二人に、普段甘やかすスネークはついつい手を緩めてしまいそうになるが、ここは心を鬼にする。

 

 一方で、普段から鬼のオセロットと対峙するWA2000の方は遥かに悲惨だ…。

 彼女を食堂の外に連れていって一対一での説教、それだけでも恐ろしいが…。

 

「お前、MSFの指揮系統がどうなっているか分からないのか?」

 

「もちろん、分かってるわ…!」

 

「ミラーは組織の2番手だ、そんな男に対するお前の言動は…はっきり言って度が過ぎている。お前の言動を見て、下の者がどう考えるか少しでも考えたことはあるか? オレはボスやミラーに再三MSF独自の軍法を定めるよう助言しているが、そこまでする必要はないと二人は言っている…ボスやミラーの温情を当たり前だと思ってふんぞり返っているのが今のお前らだ」

 

「で、でも…」

 

「話の途中に口を挟むな、黙って聞け」

 

「……はい」

 

「さっきも言った通りミラーは組織の二番手だ、そんな人物に対し侮辱や命令無視をする……正規の軍隊じゃまずありえない、世が世なら上官不敬罪及び命令無視で銃殺隊の前に立たされることだ。戦場を知らない新兵ですらできる命令遵守を、お前はできていないということだ……今更一からそんなことお前に教えてやるつもりもない……一兵卒からやり直すか?」

 

 今にも泣きそうな表情で唇を噛み締め、肩を震わせる……一兵卒からやり直す、その言葉はWA2000に最も効く言葉であった。彼の説教が終わると、WA2000は耐え切れずぽろぽろと涙をこぼし始める。

少し言い過ぎたか…そう思ったのかオセロットは去り際に、WA2000の頭を軽く撫でて食堂へと戻っていく。

 

「おい、ミラー」

 

 スネークとオセロットの登場で、なんとかみんなに規律の乱れを直させる目星がついたと安堵するミラー、そんな彼をオセロットは呼び出す。連れていったのは建物の外、そこには見慣れない戦術人形が一人いるではないか。

 その人形は凛々しい佇まいのまま、やって来たミラーとオセロットに敬礼を向けた。

 

「紹介しようミラー。彼女は戦術人形の【ジェリコ】だ、ある人物から斡旋されてな。ある程度の厳しさを持った補助が、あんたには必要だと思ってな」

 

「いきなりどうしたんだ? オレの仕事の補佐なら97式と64式で…」

 

「オレが何故彼女をあんたの側近に勧めているかよく考えるんだな。大事な教え子を泣かせたんだ、文句は言わせん」

 

 この規律の乱れも元を辿ればトップの乱れに直結する、一部の問題児の素行不良に目が行きがちだが、ミラーもそれなりにやることをやっているのをオセロットは見逃さなかった。

 オセロットの有無を言わせない物言い、そしてジェリコのじっと心の奥底を覗き込んでくるような目つきにミラーは狼狽える。ぶっちゃけてしまうと、今回のことは自分のことを少し棚に上げて言った感じではある。

 先に下の者の規律を直させてから自分を律しよう、そんな風に甘く考えていたミラーだが、オセロットには通じない。

 

「あなたがここの指揮官ですか?」

 

「あぁ、そうだ…一応トップはスネークという男で、オレは副司令だ」

 

「なるほど…見た目は全然そういう感じがしないですね。もう少し威厳を見せてください、指揮官の肩書きを甘く見ないで」

 

 いきなりのこんな物言い。

 人材を見極めることを何年もしただけのことはあり、ミラーは瞬時にこの人物は超がつく厳格な戦術人形であることを見抜く。MSFの司令部は一部を除けば、ミラーと97式と64式の絶対領域…言い変えれば、そこでのんびり遊びほうけていても誰にも分からないのだ。

 そんな聖域にジェリコのような厳格な人物が来たら恐ろしいことになってしまう。

 今すぐ別な部署へ、そう言う前にオセロットの指示を受けてミラーの側近に決まってしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝……司令部のソファーをリクライニングにしてぐーぐーいびきをかきながら眠るミラー、97式、64式の三人。司令部に棲みつく虎の蘭々も一緒に心地よく眠る至福の一時…そんな時間は、ジェリコがドアを開き、部屋の照明をつけたことで打ち砕かれる。

 

「な、なんだ!?」

「敵襲だ!」

「はっ、ジェリコちゃん…!」

 

「なんですかこの体たらくは?」

 

 朝から絶対零度の視線で見られる三人。

 一方のジェリコは、今日でMSFの仕事が始まるということで、清々しい気持ちでやって来たのだが、予想していなかった自堕落ぶりを目の当たりにして一気に気持ちが冷める。

 ジェリコの一喝で3人は慌ててパジャマを着替え、言われてもいないのに整列する。

 いきなりたたき起こされた3人はまだ眠いのか、うとうとしている…。

 

「頭をあげろ!」

 

 そんな3人に再び怒鳴りつけ、3人は慌てて頭をあげた。

 

「胸をはれ! 前を見ろ!」

 

「ジェリコちゃん、オセロットに何言われたか分からないけど、そこまでしなくても…ははは」

 

「笑うなッ!!」

 

 雷が落ちた、そう錯覚するほどのジェリコの大声に3人は震えあがる。

 両手の指先をピンとのばし、背筋も真っ直ぐに伸ばして立ちすくむ3人……そんな3人を鋭い眼光で数秒見据えたのち、ジェリコは柔らかく微笑みかける。

 

「よくできました、みなさん。これからもその調子で一生懸命取り組んでください」

 

 ジェリコの含みのある笑顔が、その時は何よりも怖かった…。




出したいと思っていたジェリコをようやく出せたよ(笑)


ん?なんだかんだ言いつつもカズが一番ヒロイン多いんじゃ…モテるからねしょうがいないね。

やっぱりカズにはアジア系のヒロインが似合うね。

なに?ジェリコはイスラエル生まれじゃないかって?
wiki先生にアジアの範囲を聞いてみなよ…。
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