METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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これでも認めてるんだぜ?

「お前はなんか悩みとかなさそうでいいよなぁ」

 

「うぇ……いきなりなんなのエグゼ?」

 

 何の前触れもなくそんなことをエグゼに言われたG11は、むくりと起き上がって心外だと言わんばかりに不満を露わにする。404小隊がMSFに居候していることは公然の秘密であるのだが、大抵メンバーは何かするわけでもなくそれぞれ気ままに生活し、G11などは惰眠を貪るイメージで通っている。

 真昼間からふわふわのクッションに身を預けて気持ちよさそうに寝ているG11を見て、エグゼはついついそう呟いてしまったのだ。

 

「エグゼはなんか勘違いしてるけど、404小隊じゃ実はあたしが最強なんだからね?」

 

「はいはい、9も45もアホ416もおんなじこと言ってたよ」

 

「こら、なんで私だけアホつけるのよ」

 

「ちっ、うるせえのが来た…」

 

 416がやってくるのを見るとあからさまに嫌そうな態度を取りつつも、ちゃんと場所を譲るエグゼ。

 例のAR小隊の事が大嫌いで仕方がないエグゼは416のことも大嫌い、だと隠すことなく周囲に公言してはいるが、特にケンカになったり深刻な事態になったりしていないので実は仲がいいのではと噂されるが、真相は誰にも分からない。

 エグゼの前に座った416はそのままクッションの上で横になるG11を肘掛けがわりに利用、背中に肘を付けて体重をかけられたG11は潰れたカエルのような声を漏らす。

 

「うぅ~、痛いよ416…手加減してよもう」

 

「あらごめんなさいね、力加減ができなかったわ」

 

「そりゃ体重は誤魔化しきれないからな」

 

「なんですって…?」

 

 エグゼの言葉に416が反応、まるで遠回しにお前はデブだと言われているようなことに416は苛立ちを露わにした。そして始まる不毛な争い…やはり二人は仲が悪いという認識で良さそうだ。

 

「言っておくけど、私とあなたの体重ってそこまで変わらないわよね?」

 

「オレの方が背が高いし鍛えてるからな、当たり前だろ。まったくやんなっちゃうぜ、口だけは達者なニートが多いんだからよ」

 

「私は待機中なだけ、決してニートじゃないわ」

 

「けっ、銃も言ってることもAR小隊そのまんまだな」

 

「なんですってぇ!?」

 

「もうやめなよ416、口げんかじゃエグゼに勝てるはずないでしょ?」

 

「腕っぷしの強さでもオレの方が上だけどな」

 

「やってやろうじゃないの、この鉄血のクズめ」

 

 どっちが強いかどうかでバチバチと睨みあう二人。

 間に挟まれたG11は二人の殺気を受けてもう寝ているどころではなかった。しかし416の邪魔をすれば後で面倒だし、エグゼは躊躇なく人の頭をバットでフルスイングするような凶暴性がある。最適解はこの場から退散することだ、そう思って退出しようとする。

 その時、部屋の扉が勢いよく開き、ちょうど目の前にいたG11は扉に弾き飛ばされて転倒、そのまま深い眠りに落とされた…。

 

「あらエグゼ、416と仲良くしてくれてありがとうね」

 

「そういう風に見えるなら一度視覚センサーもしくは電脳を再検査してもらうことを勧めるわ」

 

「冗談よ、冗談。ケンカはほどほどにね……ってあら、G11はいないの?」

 

「45姉、G11ならここで寝てるよ! G11、こんなところで寝ていたら背中が痛くなっちゃうよ!」

 

 後かやって来たUMP9が失神しているG11を揺すって起こそうとする。

 誰もG11が鼻血を流していることに気を留めず、どこか他人ごとのようだ…。

 

「うぅ……鼻が痛いよぉ…」

 

 ようやく起きたG11は扉にぶつけた鼻を痛そうに押さえつつ、ソファーに座った。

 

「オレが折角G11と楽しくおしゃべりしてたって言うのに、後からごちゃごちゃ来やがって。なんかあるのか?」

 

「ちょっとね…私たちの小隊に久しぶりに仕事が回ってきたの。まあ、敵のキャンプを潰すだけの簡単な仕事よ」

 

「珍しいな。ミラーのおっさんが仕事を回してきたのか?」

 

「そんなところね。ほら、ミラーさんの側近に最近ジェリコがついたでしょ? その影響じゃない?」

 

 ジェリコ、その名前を聞いた瞬間にエグゼは不快感を露わにする。

 先日、オセロットの斡旋でジェリコが副司令付の秘書となって以来、MSF全体の風紀や規律は見直されるようになった。ミラーは度々、乱れた規律を直したいと思っていたようだが、ジェリコの厳格な性格をもってしてようやく改善の見通しがたった。

 しかし、やはりというか案の定というか、他人にとやかく言われることを嫌うエグゼとは相性が悪かった。

 ジェリコのがエグゼの部隊にも手をかけようとしたのを知ってエグゼが激怒、たまたまその場面に居合わせた者曰く、殺しあい寸前の空気だったという…もしもスネークが任務から戻って来てくれなかったら、エグゼは間違いなくジェリコを殺していたかもしれない。

 

「いい加減落ち着いたら? ジェリコだって悪気はないんだしさ」

 

「うるせえよ。どこから来たか分からねえような奴に偉そうにされてたまるかって。お前らもよ、あんな奴になめられるようなことすんなよな? 日頃色々言ってるけど、お前らのことは一応認めてるんだからよ」

 

「うわぁ! エグゼったら、そこまで私たちのこと想ってくれてたんだね!? やったね45姉!」

 

「うんうん、それでこそエグゼよ」

 

「そう言われちゃうと、日頃の暴言もなんか許しちゃうよね?」

 

「別にあんたに褒められても全然嬉しくなんかないけど、一応お礼は言っておくわ」

 

「あぁ? 誰がお前まで認めてるって言ったよ、お前は除外だ416」

 

「なんですって!? やっぱりあんたムカつくわ、表に出なさいよ!」

 

 ムキになって416が掴みかかろうとすれば、エグゼはひらりと躱してからかいながら笑いととばす。挑発された416は顔を真っ赤にしてエグゼの後を追いかけていくのだ…。

 ケンカしても深刻な事態にならないあたり、言葉ではそのように言いつつも、お互いある程度は認めあっているということか。

 

「さてと、ダラダラしてると日が暮れちゃうわ。エグゼの言う通り、ジェリコにバカにされないようにお仕事頑張りましょ」

 

「うん、久しぶりだけどちゃんとやらないとね」

 

「お、G11が珍しくやる気出してる! 明日は雨でも降るのかな?」

 

「それはいいわね。雨が降ればこっちの気配を殺して敵に近づけるもの。期待してるわよ、G11」

 

「うーん、なんか素直に喜べないよ……ところでジョニーは?」

 

「ジョニーくんはオオナズチくんと敵地の偵察に向かったよ!」

 

「そういうこと。ほら、ちゃちゃっと準備を済ませてね」

 

 UMP45の指示に元気よく返事を返し、二人は出撃準備を素早く済ませる。

 ブランクはあるが、別に腕を腐らせていただけではないのだ、404小隊ここにありということを知らしめるべく彼女たちはヘリに乗りこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、過激派環境団体キャンプにて…。

 

 

「ヒィィ!! なんだあの頑丈な装甲人形は、弾が全然効かねえ!」

「ばか伏せてろ!」

「陣地ごと吹き飛ばされる、隠れても意味ねえよ! 退却だ!」

「うぎゃあ!」

「なにか、何か近くにいるぞ!? 砲弾が盗まれた!」

「げほっ、ごほっ!? ど、毒ガスか!?」

 

 

「フハハハハハ! 貴様ら如き45姉が出るまでもない、このジョニーが殲滅してくれる!」

「ケロケロ!(45姉と9ちゃんに褒められたい!)」

 

 

 404小隊がキャンプに到着する頃、そこは既にジョニーとオオナズチに制圧されていたらしい…。




ジョニー「45姉と9ちゃんの愛でオレたちは戦える」
オオナズチ「(狂ってる?それ、誉め言葉ね)」

45姉「率直に言ってきもいわ。9、目が腐るから見ちゃだめよ」
9ちゃん「うわーい!」

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