METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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モブたちの嘆き

 ウロボロスがうちだした方針によって、彼女が抱える軍隊はあらゆる面で見直しが求められ、装備の一新や部隊の再編制、戦闘教義の変更に至るまで慌しさを増していった。シーカーがある日思いついた【バトルドロイド】という新たな兵器の開発と量産は、他の多くのプロジェクトの中でも特に重要であり、ウロボロスはそれまでの活動で得た潤沢な資金を投入することを惜しむことは無かった。

 それにともなって各産業が忙しくなり、統治下の都市部では人手不足の問題が露わになって来た。

 秩序の崩壊によって日々の生活すら困難なほどの貧困社会に陥っていたアフリカにおいて、ウロボロスは基本的に重労働を民衆に課すが、賃金はちゃんと払い衣食住を保証する…最低限人として生きられる暮らしを提供し、それでも文句を言うものは圧倒的軍事力で潰す。

 人は弱い権力には反抗するが、強い権力に対しては従順になるものだ…。

 

 そのようにウロボロスが軍拡をして見せれば、内情を知らない敵対的な各軍閥も危機感を持ち始める。

 ウロボロスの勢力拡大を快く思わない勢力との小競り合いは以前よりも増え、国境沿いでの緊迫感は徐々に高まっていた。

 

 さて、そのようなウロボロスの軍が新兵器であるバトルドロイドへと移り変わっていくなかで、別な理由で危機感を持ち始めている者たちがいた。 

 それまで鉄血工造の主力を担っていた、鉄血下級兵たちである。

 同じ物量戦を想定したダイナゲートやプロウラーは、よりコストが安く汎用性に長けるB1バトルドロイドの登場で価値を失い生産停止。スカウトはまだ生産されているが、バトルドロイドが搭乗できる偵察機が開発されれば同じように生産は停められてしまうだろう。

 他にも装甲人形はB2スーパー・バトルドロイドへ、マンティコアは装甲型強襲用戦車(AAT)やヘイルファイヤー級ドロイド・タンクに置き替えられる予定だ。

 

 意思を持たない戦闘機械たちが次々姿を消していくなか、下級兵士の【リッパー】、【ヴェスピド】、【イェーガー】などが集まってここ最近の状況を嘆き悲しんでいた。

 その日はドリーマーとシーカーの工場で新たに生み出されたバトルドロイド【IG-100マグナガード】の性能テストのため、接近戦を目的とする【ブルート】がマグナガードとの戦いに付き合わされていた。

 

 マグナガードはB1バトルドロイドとは設計思想が異なり、要人警護を目的とした高性能なバトルドロイドであり、他のバトルドロイドと大きく違うのは経験によって戦闘能力を向上させる独自のプログラムを搭載していることだ。これは、要人警護を目的としたバトルドロイドを開発するにあたり、不測の事態にも対応できる能力が必要とシーカーが判断したためだった。

 この性能テストに送り込まれたマグナガードはシーカー直々に鍛えあげた個体であり、このドロイドと戦ったブルートは惨敗、マグナガードは自身の有用性を文句の言えない形で証明して見せたのだ。

 

 

「うーん、痛いよぉ…痛いよぉ…」

 

「うんよしよし、君はよく頑張ったよ」

 

 

 訓練場にて、マグナガードにこてんぱに打ち負かされたブルートは修復施設に送られたものの、診断結果全身の打撲程度と判断されて施設を追いだされる。あまりにもかわいそうなブルートのために、同僚の下級兵士たちが迎えに行ってあげたのだった。

 

「なんかますます私たちの肩身狭くなったよね…最後に戦闘に出たのいつだろう?」

 

「さあね、覚えていないわ」

 

「私たちもダイナゲートたちみたいに生産停止させられちゃうのかな…」

 

「何を弱気なことを! 私たちこそ元祖鉄血、そんな気弱なことを言ってるとほんとにとってかわられちゃうよ!」

 

「うん…それもそうだね。ところでドラグーン、あなたの乗り物どうしたの? 最近見ないけど」

 

「バトルドロイド生産の原材料にするからって…降ろされて持ってかれた…」

 

「えぇ……」

 

 下級鉄血兵の中では高い地位にいるはずのドラグーンも今ではこの有様。

 一時期原材料の鉱物が手に入りにくくなった時、二足歩行兵器を乗り回していたドラグーンであったが、ウロボロスに無理矢理引きずり下ろされてしまったのだった。一心同体といえる乗り物を取り上げられたドラグーンはうつ病一歩手前のようで、部屋の隅っこで体育座りして意気消沈していた。

 

「このままじゃいけないわ! 私たちはまだ戦えるってことを、ウロボロスさんに訴えなきゃ!」

 

「やめろ! 殺されるぞ! アポなしで訪問したストライカーが吊し上げられたのを忘れたのか!」

 

「でもこのまま黙って見てるわけにはいかないでしょ! ウロボロスさんがだめなら、他の上司に相談しなきゃ! 黙って死ぬか、反抗して死ぬか選ぶんだ!」

 

「いや、死ぬのは嫌だよ、痛いもん。それよりダメだった時のこと考えた方がいいんじゃ」

 

「この敗北主義者め! お前みたいな豆腐メンタル人形と肩を並べてたと思うと私は恥ずかしいぞ! AR小隊にみんなで挑んで返り討ちに合った時を思いだせ!」

 

「結局死んだじゃん…というか、みんなで喫茶店やらない? ほら、鉄血人形が働く喫茶店さ」

 

「バカやろう! こんな殺伐した世界でそんなことできるか! いらっしゃいませご主人様~、なんて誰が言うものか! 恥を知れ恥を!」

 

「えーでも鉄血で喫茶店やったら繁盛しそうな気がするんだけど…」

 

 いまいち乗り気じゃないイェーガーを、リッパーとヴェスピドがムキになって叱咤する。

 こんな時、イェーガーのように別な身の振り方を考えた方がある意味利口なのかもしれないが、彼女たちは上司たちと共に戦場を駆けまわったあの日々を忘れることが出来ないのだ。まあ、下級鉄血兵如きの記憶容量で覚えていられる戦場はたかが知れているのだが…。

 乗り気じゃないイェーガーを無理矢理追従させた彼女たちは、直談判するには誰が良いか考える。

 

 まずは聡明そうな人に相談しよう、ということでスケアクロウとイントゥルーダーの元へ向かう。

 二人は主にウロボロスお抱えの子どもたちに英才教育を施す仕事をしているので、いつも屋敷内の教室にいる。下級鉄血兵たちが向かった時、ちょうど家庭科の授業を行っていて、スケアクロウとイントゥルーダーが子どもたちに裁縫を教えているところだった。

 わいわい遊ぶ子どもたちの笑顔を見た下級鉄血兵たちの顔がほころんでいく。

 

「いいなぁ、わたしも子どもたちに授業教えたいな」

 

「諦めろ、私たちの記憶容量じゃ教えられることなんてたかが知れている」

 

「だよね……というか、授業中お邪魔しちゃうと悪いしやめよっか…」

 

「そうよね」

 

 上司のお仕事を邪魔しちゃいけないというおもいから彼女たちはその場を後にする。

 しかしそこで困り果てる…二人以外に相談できる上司はいるのかという問題だ。まず代理人はエルダーブレインに尽くすことだけを考えるので相手にしてくれない、ジャッジは恐れ多くて気軽に話しかけられない、デストロイヤーはあまり協力してくれなさそう、ドリーマーとシーカーは遠方にいる…そこで彼女たちは相談できる相手が誰もいないことに気付くのだ。

 

「はぁ……処刑人さんがいてくれた頃が懐かしい…」

 

「そうね…あの頃は楽しかった…」

 

「あの人は私たちみたいな下級兵士にも気軽に声をかけてくれたし、大事にしてくれた…」

 

「ハンターさんも優しかったよなぁ…」

 

 過ぎ去った日々を懐かしむように思いだす。

 記憶の容量が少ない彼女たちであったが、何故だか優しかった上司との思い出だけは消えることなくいつまでも残り続けていた。一緒に戦場を駆けまわり、共に戦い、戦いが終わればちょっとしたパーティーなんかも行った。

 あの頃の輝かしい日々をもう一度…そんなことを願わずにはいられなかったが、現実は無情だ…そう思っていた。

 

 

「なに辛気臭いツラしてるんだお前らは?」

 

「ア、アルケミストさん…!」

 

 

 その場にふらっと現れたアルケミストを見た瞬間、彼女たちは姿勢を直し背筋を伸ばす。

 鉄血で絶対に敵に回しちゃいけない存在として良くあげられるアルケミスト、もちろん味方である彼女たちにとってもアルケミストは畏怖する存在であった。それに加えて他にジャッジ、シーカーもその場に居合わせるのだから彼女たちはすっかり萎縮していた。

 

(おい、私たちついに廃棄処分されるのか!?)

 

(バカな、早過ぎる!)

 

 慌てふためく下級鉄血兵たちの様子を見たアルケミストたちは首をかしげている。

 もうこうなったら素直に悩みを打ち明けよう、そう思ったリッパーが涙声になりながら自分たちが先ほどまで考えていたことを打ち明けたのだ。バトルドロイドが増産されることで自分たちの価値がなくなるんじゃないか、そして近いうちに廃棄処分されてしまうのではないか。

 リッパーたちの想いを、3人は静かに聞いてくれた……全てを打ち明けた後でも続く沈黙、やがてそれはアルケミストの笑い声で破られる。

 

「なんだお前ら、そんなしょうもないことで悩んでたのか?」

 

「しょうもないだなんて、いくらアルケミストさんでも!」

 

「あー悪い悪い。安心しなお前ら、お前らがお役御免になることはなさそうだからね」

 

「ほえ?」

 

「そうだとも。そう悲観してくれるな、アルケミストの言う通りだ。お前たちはまだ活躍できるぞ?」

 

「シーカーさん、それは一体…?」

 

 その問いかけに対して、ジャッジが答える。

 

 確かに部隊の主力はバトルドロイドへと置き変わっていくことになるが、そんなバトルドロイドの部隊を戦場で統率する存在が必要となる。規模の大きい部隊の指揮はこれまで同様ハイエンドモデルが行うが、ドロイド軍の小隊規模の部隊を指揮する下士官が必要なのだと。

 そしてその役目は、それなりに知能を有する下級鉄血兵たちに担わせたいのだと。

 

「喜べポンコツども。恐れ多くもエルダーブレインがお前たちのために、メンタルモデルのアップグレードデータを作成してくれたのだ。欧州にいた頃よりちょっとだけ地位が高くなるぞ」

 

「ほ、本当ですか…!?」

 

「そうだとも。それからドラグーンは乗り物取り上げられたみたいだが…後でいい物やるから元気を出すんだ」

 

「うぅ…感謝します、シーカーさん…!」

 

「礼はアルケミストに言うのだな。最近お前たちが悩んでるって言ってたから、それに配慮したまでさ」

 

 シーカーが話す意外な事実を聞いて、彼女たちは目を丸くしてアルケミストを見つめる。

 

「あーまあ、お前らとはそれなりに付き合い長いしな……エグゼの奴からちょっと面倒見てやってくれって言われてたしな」

 

「感謝感激ッ! 一生ついて行きます姉御!」

 

「いちいち大げさなんだよお前らは…ま、せいぜい頑張りな」

 

「「「「はい、姉御ッ!!」」」」

 

 

 下級鉄血兵たちがお役御免になるのは、どうやらまだまだ時間がかかりそうだ。




ウロボロス軍のBGMはコレだ!

https://m.youtube.com/watch?v=IAdYmUk6oVY

スターウォーズいいですわゾ~……ハッ、いかんいかん脱線し過ぎた、メタルギア✕ドルフロに戻らなきゃ。



戦力増強イベントって、その後でかい戦いある前触れだったりするんだよなぁ…(意味深)


さて、次なにやろ?
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