METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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最近サブタイトルてきとう


要するにマシンガンが好き

 MSFは、この世界に存在する他の多くのPMCと同様に都市の行政を請け負う業務を行っている。とはいえ、国境なき軍隊と標榜する手前、グリフィンなどのように広い範囲の行政管理を行っているわけではなく、紛争を経てから蜜月状態にあるユーゴスラビア連邦共和国より一部都市の運営を委託されている。

 行政運営の問題は多々あるが、ユーゴにおいて諸民族の軋轢に比べれば些細なことだろう。

 治安、経済、他国との外交…それらは全てユーゴスラビアという多民族国家が抱える問題に直結してしまう恐れがあるのだ。

 

 幸いにも、MSFが管理する都市ではそういった民族間のいざこざは起きていない。

 実はあるのかもしれないが、今のところ表面化していない。セルビア人、クロアチア人、モスレム人のいずれでもなく一つの価値観に囚われないMSFの諸民族に平等な都市運営が功を奏しているのかもしれない。あとは都市部で銃器の所持を禁止し、常にMSFの兵士が巡回していることも治安の維持に貢献しているのだろう。

 

 

 ある日のこと、都市にあるMSFの哨戒所にてM1918BARはのんびりとだらだら一日を過ごす。

 この町のパトロール業務は持ち回りで行われているのだが、特に事件らしい事件も起こらず、仕事しては退屈な部類に入る。一応、この業務に携わる人形たちには、先輩戦術人形であるWA2000や9A91、スプリングフィールドなどからユーゴスラビア連邦構成国が抱える民族問題についてと、テロの危険を説明されるのだが現在では平和そのものだ。

 MSFがこの都市の管理を任されたときは治安も悪く、諸民族の対立も凄まじかったというのだが…まあ、あの地獄さながらの内戦を見ていない後輩の戦術人形たちにとっては、いまいちピンと来ないものがある。

 

 その中の一人であるBARは哨戒所の机に腕枕で突っ伏し、ぼんやりと道行く人を見ていた…そんなことをしていると外は暗くなり、一日があっという間に終わってしまうのだ。一応の勤務時間は終わり、ということで宿舎に戻ろうとすると哨戒所の電話が鳴り響く。

 業務時間外の電話はとらない主義だが、その日はなんとなく電話を受けるBARであった。

 

「はいはいこちらMSFの哨戒所ですよ」

 

『おぉ、その声はBARか? ちょうど良かった!』

 

「ありゃキッドさん? どうしたんですか?」

 

 電話の相手がキッドだと知った瞬間、BARはニコニコし始める。マシンガンを誰よりも愛して止まないキッドの魅力に取りつかれた人形の一人で、最近ではネゲヴとキッドの取り合いをしていたりするのだが…ネゲヴは今頃マザーベースでジャンクヤード組の人形と訓練をしていたはずだった。

 

『ちょっと面倒なことがあってな…迎えに来て欲しいだが…5番街の飲み屋だ』

 

「キッドさんお酒飲んでたんだ。なーんだ、それなら私のことも誘ってくれたらよかったのに」

 

『いや、そうしたかったが…イーブルがよ』

 

「あ…イーブルがいるのね、なんとなく分かった」

 

『そういうこと。すぐこれそうか?』

 

「うん、ちょうど仕事終わりだし行けるよ。適当に待っててね~」

 

 受話器を戻したBARは急ぎ身支度を済ませると、哨戒所前の車両を適当に選び道路を走らせる。

 車の往来が少ない道路をかっ飛ばして向かった5番街、バーやパブなどが集まる都市の区画では酔っ払い共がふらふらと歩いており、中には泥酔して道端で寝ているおっさんもいたり、マネキンに向かってブツブツ話すおっさんもいる。

 そんな酔っ払い共に対処するパトロールたちに同情しつつ、飲み屋街を見回せば、キッドとイーブルを見つけ出す。遠目から見ても、イーブルが酷い酔い方をしているのが分かり、BARが苦笑する。

 

「迎えに来たよ二人とも。だいぶ飲んでるね…」

 

「サンキューBAR。ほら帰るぞイーブル」

 

「うるせえ、オレはまだのみたんねぇんだ…帰るならお前ひとりでかえりやがれってんだ」

 

「何言ってんだよ。お前ほっとくとすぐ誰か殴ったりするから危ないんだよ。いいから乗れ」

 

 泥酔状態のイーブルを強引に後部座席に押し込む。

 イーブルは後ろで支離滅裂なことを喚くもので大変困ったものだが、ここで連れ帰らないと問題行動を起こすことになる。宿舎まで車を走らせている間にもイーブルは騒ぎたて、キッドがそれをたしなめる。

 

「おいおい止まれ! 止まれってんだ!」

 

「なになに? どうしたの!?」

 

 イーブルがまた喚きだしたので急ブレーキをかけるBAR、助手席のキッドと一緒に後部座席を振りかえって見れば、イーブルは窓の扉を開けて通りを歩く女性を見て口笛を吹いた。女性はちらっとイーブルを見ると、軽く手を振ってはにかみ、そのまま歩き去っていく。

 

「おい見たかよ。あの女、オレに気があるんだ」

 

「バカかお前は? こっちがMSFって知ってるから手を振っただけだっつーの」

 

「けっ、つまらねえ奴だな。もういい」

 

「おいどこ行くんだ?」

 

「ここは繁華街だぜ? 女と遊んでくる、キッドお前も行くか?」

 

「どうしようもねえ奴だなお前は。いいよ、もう一人で行ってこい…ちゃんとカネは払えよ? お前の尻拭いをするのはごめんだぜ」

 

「バカやろう、オレがいつお前に迷惑かけたよ。へ、お前はそっちの人形ちゃんとよろしくやってなよ、あばよ」

 

 そう言って、イーブルはふらふらとした足取りで夜の街へと姿を消していく。

 まあ何かあっても腕っぷしの強さだけはあるので心配することは無いが、いらないトラブルを引き起こすのだけは勘弁してほしいものだ。イーブルを見送りながら、キッドはパトロールの兵士に、イーブルがくれぐれも誰かをぶちのめしたりしてしまわないよう監視を頼み込んだ。

 

「ったく、あのバカ…」

 

「苦労人だね、キッドさん」

 

「あいつ飲み癖悪いからよ…なんか酔いが冷めちまったな。BAR、折角だからどっか飲み行くか?」

 

「うーん、まあやることないしいいよ」

 

 BARは軽いノリでキッドの誘いに乗ったように見えるが、内心では憎からず想っているキッドのお誘いを受けて心躍らせていた。ついつい車のスピードも飛ばし気味で、適当なバーを見つけると、路肩に車を寄せて二人はお店の前まで歩いていった。

 

「BARは何か食べたいか?」

 

「うーん、あんまりお腹は空いてないかな? まあちょっとしたものくらいは」

 

「そっか。じゃあ、ここでいいか? あー……VA-11 Hall……なんだっていいか?」

 

「うんうん、適当適当! ささ、楽しく飲もうね!」

 

 さりげなくBARはキッドの腕に自分の腕を絡ませて鮮やかなネオンが輝くバーへと入店するのであった。

 薄暗い店内には客はおらず、バーテンダーと思わしき一人の女性がバーカウンターのスツールに座り、退屈そうに煙草をふかしていた。女性はキッドとBARに気付くと、そっと立ちあがって会釈をすると、カウンターの向こうへと移動した。

 

「いらっしゃいませ、VA-11 Hall-Aへようこそ」

 

「お邪魔するぜ。えーと、BARは何飲む?」

 

「とりあえずビール飲みたいかな? キッドさんは?」

 

「同じので」

 

「かしこまりました」

 

 飲み物を頼み、用意してくれるまでキッドは何気なく店内を見回した。薄暗い店内にて、ジュークボックスから流れるミュージックや独特な雰囲気のポスターがよい味を出している。出身的にはパブの雰囲気を好むキッドであったが、この店は気に入った。

 

「ご注文のビールです」

 

「はいはーい。それじゃあキッドさん、かんぱ~い!」

 

「イェアッ! たらふく飲んでやるぜ!」

 

「あっはははは、キッドさんとばすねぇ!」

 

 二人が来るまで閑古鳥が鳴いていたバーはあっという間に賑やかなものとなる。

 その後も二人以外にバーに来るお客はなく、二人の貸し切り状態になっていた。最初に頼んだビールをあっという間に平らげた二人は次に何を頼もうか、そう思っているとバーテンダーさんがカクテルを作れるというので適当に作ってもらう。

 カクテルなどという粋なお酒など、武骨なMSFの連中が普通に生きていたら知りもしないことだろう。

 唯一知ってるカクテルとしてキッドが挙げたのは、韓国出身のMSFスタッフが爆弾酒(ポクタンジュ)というビールとウイスキーのカクテルを作って盛り上がったという逸話…当然ながらBARと店のバーテンダーの【ジル】には呆れられていた。

 

「そう言えばジル、アンタはどこの出身だい? セルビア? クロアチア?」

 

「いえ、何といいますか…気がついたらここにいたというか何というか…」

 

「なにそれ? へんなの」

 

 自分が何故ここにいるのかよく分からないというジル、とりあえずアパートの家賃と電気を止められないようにするので精いっぱいというのだから、本気で二人に心配される。

 ジルはなんとも話上手で、酔っぱらったキッドとBARの話にも付き合ってくれていた。

 気がつけば時計の針はいつの間にか12時を超えていた。

 

 

「ふぅ……なあジル、カクテル以外のお酒も置いてあるか?」

 

「ええ、ありますよ」

 

「そっか…スコッチあるか? 銘柄はなんだっていいさ、故郷の酒が飲みたくなってきた」

 

「あれ、キッドさんってスコットランド出身なんだっけ?」

 

「ああ。ハイランドの貧しい羊飼いの息子さ」

 

 小さく笑ったキッドはカウンターに肘をかけ、ジルがスコッチを持ってきてくれるのを静かに待った。ジルが目の前に置いたグラスに氷を入れようとするのを制する…キッドの意図を察したジルは、グラスにスコッチだけを注いだ。

 グラスに注がれたスコッチの香りを嗅ぎ、一口含む。

 

「いいもんだな…」

 

「美味しいの?」

 

「飲んでみるか?」

 

「うん」

 

 BARはキッドからグラスを預かり飲んでみるが、独特な風味に顔をしかめて見せる、BARの正直な反応に笑いながら、キッドはグラスを受け取った。

 

「私はバーボンの方が好きかな…?」

 

「ははは、好みは人それぞれさ」

 

「ねえキッドさん、いきなり故郷のお酒が飲みたいだなんてなんかあったの?」

 

「いや、なんとなくだがよ。ふと、昔のことを思いだしたんだよな」

 

「昔のこと……なんか興味あるかも」

 

「あんまり面白くねえぞ?」

 

「いいじゃん。こんな時くらいしか聞けないんだから、適当でもいいからさ!」

 

 昔話をせがまれたキッドは少し狼狽えていたが、お酒が入ったBARはいつもより少し強気になってキッドにお願いをするのだった。最終的にキッドが根負けして、あまり面白くないと前置きした上で語りだす。

 

 スコットランドのハイランド地方にて羊飼いをしている農家に生まれたキッドは、生後間もなく父親を病で失い、母親に育てられたのだという。キッドを含め、弟と妹がおり、暮らしは豊かではなかったらしい。キッドは母親の手伝いをするために学校に通う傍ら、農家の手伝いをしていた。

 その頃からキッドは学校では素行が悪く、ケンカや問題行動を起こしたりもしていたようだが、母親にだけは孝行をして母親もそんなキッドを大切に育ててくれたという。

 

「キッドさんのお母さんは良い人だったんだね!」

 

「そうだな、そこは自信をもって言えるよ……だから、あんな別れ方をしたのは…今でも悔いている」

 

「え? なにかあったの…?」

 

 キッドは小さく頷くと、スコッチの入ったウイスキーを眺めながら続きを話す。

 

 学校を卒業する頃になって、将来を考えるようになったキッドは軍に入隊することを決めた。

 弟と妹も大きくなって農場の手伝いをするようになり、自分の手伝いがなくても家は大丈夫だろうと思ったのと、軍人として国家に尽くしたいという気持ちがあったのだ。その事を意気揚々と母親に告げたキッドであったが、母親はキッドが軍に入隊することに猛反対したのだ。

 それまで息子のわがままを聞いてくれていた母親が始めて考えを否定して来たことにキッドは驚き、そして激しいケンカになったという…。

 

「その時オレはお袋になんて言ったかよく思いだせない。だけど、お袋がとても哀しい顔をしていたのはよく覚えている……たぶんオレは、相当酷いことを言ったんだと思う」

 

「キッドさん…」

 

「後から知ったことだが、お袋は若い時に第二次世界大戦で家族を亡くしたんだ。ロンドン空襲で父親を亡くし、軍に志願した兄弟はマーケット・ガーデン作戦で戦死したらしい…それ以来、お袋は戦争を憎んでいたんだ……オレが軍に入隊するって言った時、お袋はオレまで戦争に奪われるんじゃないかって恐れたんだろうな」

 

「それから、どうなったの?」

 

「それっきりだよ、お袋とは。何度も故郷に戻ろうとしたが、戻れなかった……お袋が最後に見せたあの顔が浮かんでしまうんだ。だから、お袋がどんなふうに笑っていたかとか、大切なことが思いだせないんだよ」

 

 どこか寂し気に笑うキッドをすぐ隣で見ていたBARには、彼の後悔と自責の念をひしひしと伝わっていた。大切に想っていたはずの人を、自分自身が傷つけてしまったことへの後悔…キッドにとってのある種トラウマを興味本位で掘り起こしてしまったことに、BARは申し訳なさを感じていた。

 そんな想いが表情に出てしまい、それに気付いたキッドはふと彼女の頭に手を置いて少し乱暴に撫でるのだ。

 

「そんな顔するなよBAR。誰かに話せてオレも良かったよ…それに、もしオレがお袋の言うこと聞いてたらお前とのこういう出会いはないんだからな」

 

「いくらなんでもそういう風には考えられないよ…」

 

「あー…オレが言いたいのはだな…物事は前向きに考えろってことさ。やることはやって、ある程度は適当にな…BARのそういうとこ、オレは結構好きなんだぜ?」

 

「え? それってどういう…」

 

「要するにだ、オレはマシンガンが大好きってことさ! ジル、なんか腹が減ってきたぞ! なんかあるか!?」

 

「えぇ…キッドさんそれはないよ!」

 

 肝心なところをはぐらかされてしまい不満を口にするBARであったが、呑気に笑うキッドの傍らで、あまり深刻に思い詰めるのもバカバカしくなって一緒に笑う。

 キッド、BAR、ジルの三人で夜を語り明かす……。

 

 余談だが、朝まで飲んだくれて朝帰りをしてきた二人を見たネゲヴは発狂、キッドの周りはしばらく殺伐とした空気が流れていたとさ。




・マシンガン・キッド
マシンガンの使い手。元SAS(スペシャル・エアー・サービス)の隊員。
~Wikipediaより

これだけの紹介文でよくここまで個性広げられたなと我ながら思うw



今回はネゲヴはお休み、BAR✕マシンガン・キッドでした

何気にヒロイン候補多いキッドさん(ただしMG戦術人形限定)
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