先日、カナダから連れ帰ったグリズリーを白と黒の模様を施したうえで、パンダと偽って97式にプレゼントしようとしたスコーピオン…だが97式をそんなクオリティの低い偽装で誤魔化せるはずもなく、逆に動物虐待だと喚かれてしまい、大騒動を引き起こす。97式が大声を出したことで、スコーピオンが97式に危害を加えたと思ったのか蘭々が激怒、強烈な虎パンチをくらってスコーピオンは病院送りになった…。
というわけで早速グリズリーを持て余したわけであるが、かねてからペットが欲しいと言っていたリベルタドールがこのグリズリーを預かった。無論、凶暴なグリズリーはリベルタを襲おうとするも、逆にリベルタが上下関係を力で分からせて以降、基本的にグリズリーは彼女に従順だった。
ある日のこと、リベルタはグリズリーの背にまたがってMSFが管轄する領域沿いを散歩していた。
グリズリーの首にはネームプレートが下げられており、
ちびとは到底思えない体重500キロを超す巨熊のチャポと、呑気に辺境を散歩しているリベルタであったが、遠くから一台の車両が向かってくることに気付く。チャポの胴体に括りつけたバッグパックから双眼鏡をとりだし、観察してみれば、車両はコンテナをけん引する形で走行…運転席とその助手席には少女たちがいた。
唸り声をあげるチャポを落ち着かせ、リベルタは外部からの来訪者に対するマニュアルに則り、警告灯を灯し自身のもとへと誘導するのだった。
「はいはーいこんにちは。私たちグリフィンのD08地区からデリバリーサービスに来ました! 一応電話でアポとったんだけど、聞いてます?」
「……………」
車を運転していたD08地区よりの来訪者であるHK417、以前MSFが主催した平和の日に招かれたお客さんの一人である。他にもPPKとマカロフの戦術人形二人が同行し、元気よく挨拶をする……のだが、じっと三人を見つめたまま一言もしゃべらないリベルタに三人は首をかしげる。
「あ、君ってもしかしてユノちゃんと友だちのリベルタちゃんだよね? ほら、私平和の日に遊びに来た417って言うんだけど…」
「…………」
やはり沈黙したままのリベルタに、だんだんと417の表情が引き攣って行く。
双眼鏡を片手に、使い古した感のあるマチェットを片手に握りしめたまま何も言わず、ただじっと3人を順番に見つめていく。背後には巨熊が今にも襲いかかってきそうな様子で唸り声をあげているのだから、3人は困惑を通りこして恐怖する。
「あ、あのー。わたしたち危なくないよ~……あぁ…っと、 ほら戦術人形はみんなお友だち! 私とあなたもお友だち!」
「…………!」
リベルタがわずかに目を見開いたので、いよいよぶち殺されるのではと震えあがった3人であったが、意外なことにリベルタは何やら嬉しそうに目を細めて握手を求めてきたではないか。わけも分からず握手を受ける3人…そこで、リベルタが口元にあてている赤いバンダナが小刻みに動いているのに気付く。
なんだなんだと注意深く観察すれば、か細い声が聞こえてきた。
「ユノと友だちのみんなと友だちになれてうれしい……ありがとう」
「あー、あははは。思いだした、リベルタちゃんはめっちゃ小声だったんだよね、聞いてたのに忘れてたよ」
「これでも精一杯出しているつもりなんだ」
どうやらリベルタは最初から417のことは分かっていたようだが、車のエンジンを止めていなかったせいで、リベルタの小さな声が聞こえなかったようだ。誤解も解けたところで本題へ…電話で訪問することをスコーピオンに話したと主張する417、風の噂で甘味料の不足に困っているというのを聞いて、甘味料を含むその他調味料、そしてあまくておいしいというミルクを運んできたのだとか。
「というわけなんだけど、スコピッピいる?」
「スコーピオンなら、虎にパンチされて入院してるはず」
「えぇ…虎にパンチって、そんな事ある?」
「蘭々はただの虎とは思えないほど強いんだ」
「まあ、よく分からないんだけど。折角だからスコピッピのお見舞いもしなきゃね!」
「スコーピオンも喜ぶだろう」
というわけで、D08地区の来訪者の目的にスコーピオンのお見舞いが加わる。
リベルタの案内で3人はMSFの前哨基地へ、そこに一旦けん引してきた荷物を置くと、リベルタと共にいざマザーベースへ。数時間に及ぶ移動中、3人はついつい眠りについてしまい、マザーベースへ到着したところでリベルタに起こされる。
「ふわぁ~……おはよう」
「おはよう、ほら、スコーピオンに会いに行こう」
「はーい……って、うわぁ! ここが噂のマザーベースか! ほんとに海の上にあったんだね!」
ヘリを降りた417は大海原を眺め歓声をあげる。
海から吹いてくる心地よい風を、両手をいっぱいに広げて感じ取る…多様な海鳥たちの鳴き声もまた心地よい。未知なるMSFの本拠地に今自分はいるのだ、感慨深さに浸っていると、何やら慌しい様子で駆けつけてきたMSF兵士のヘイブン・トルーパー兵。
あっという間に周囲を取り囲まれてしまった3人は困惑、リベルタも首をかしげている。
後から続々と兵士たちが駆けつけ、巡回の月光までもやってくる慌しさにいよいよただ事ではないと察する。説明を求めてリベルタに目を向ければ、彼女も首をかしげるばかりだ。
そのうち、兵士の一人がリベルタに何事かそっと耳打ちすると、リベルタは目を見開く。
そして何かを迷った末、申し訳なさそうな表情で3人に向き直る。
「ごめん、マザーベースは部外者立ち入り厳禁だったんだ。申し訳ないんだが、死ぬしかないって」
「えぇ……」
「でも417は私の友だちだから痛くしないよ。約束する、苦しませないように殺すから」
「ちょっと待って、ステイステイ! 待て、待てだよ待て! ちょっと落ち着こうかリベルタちゃん!?」
「死ぬか、メンタルモデルを初期化するしかないって。でもせっかく友だちになってくれたのに、忘れるなんてひどい話だ…それなら死ぬ間際まで私のこと覚えててくれた方がいい」
「うわぉ、ここに来てヤンデレ発言……ってそうじゃない、誰か助けて!?」
マチェットを鞘から抜いて近付くリベルタは、まさに殺し屋そのもの。
まあ、結局はリベルタの刃が3人を傷つけるようなことは無く、騒ぎを聞いてやって来たWA2000の取り計らいで事なきを得る。
ヘリの映像をチェックし、移動の間爆睡していた3人を見て、マザーベースまでどのように飛行したか分からないだろうと判断したからだ。
3人を殺す必要がないと言われたリベルタはマチェットを納めると、まるでさっきまで殺そうとしていたのが嘘のように、3人をスコーピオンが入院する病棟へと案内していくのだった。
戦車は拾えなかったけど、リベルタのお友だちフラグは拾えたろい!(そんなのどこにあった)
ちなみに、ビッグボスの作戦能力を530,000とするのなら、蘭々の作戦能力は単体で184,000くらいあるんじゃないかな?