METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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97式より愛を込めて

 うだるような暑さが、マザーベースにもやって来た。

 季節は変わり、春の息吹が吹いて夏季に近付いてきたことでここ数日は気温が高い夏日が続いている。つい先週まで肌寒さすら感じられたというのに、この大きな気温の変化にはMSFの屈強な兵士たちでさえまいっていた。

 幸いにも洋上のマザーベースは海風が吹いて涼しいが、それは外の話…冷房が備え付けられていない施設内は煌々と照り付ける日差しに熱せられて、換気が良くない箇所は室温がどんどん上がっていく。

 

 暑さに耐えかねて男性のスタッフなどは上着を脱いだり、時には上半身裸になって過ごす。

 以前までははしたないという戦術人形たちの文句が飛んできたが、この暑さでは文句の言いようがない。

 

 

 そんな初夏を迎えようとしている頃、MSF司令部勤務の97式は司令室にて鉢を抱えて何やら怪し気な材料をゴリゴリと細かく挽いていた。暇そうに欠伸をかき、遊んでほしそうに頬擦りする蘭々であったが、97式が遊んでくれないのが分かると大人しくソファーに戻って目を閉じる…。

 そこへ、同じく司令室勤務のジェリコと64式自が戻って来た。

 二人とも97式が何をやっているのか気になるようで、資料を整理しながら尋ねる。

 

「ミラーさんのために漢方薬作ってるんだ!」

 

「漢方薬…?」

 

「うん! 最近暑いでしょ? ミラーさんもちょっと夏バテ気味だったから、元気が出るお薬を作ってあげてるの!」

 

 満面の笑みを浮かべながらそう答えてくれた97式。

 素材が何なのか分からないが、どうやら親切なカラビーナが教えてくれたらしい。薬学の知識がないジェリコと64式自は不安そうに漢方薬とやらを眺めていたが、97式が頑なに大丈夫だというので一応信用しておく。

 

「ふぅ、外は暑いな…」

 

 漢方薬とやらが出来上がった頃、外回りから戻って来たミラーに早速97式は駆け寄る。嬉しそうに漢方薬を手渡す彼女の姿を、普段は厳しいジェリコも微笑ましく眺めながら笑みをこぼす。

 

「ありがとう97式。よし、これを飲んで暑さをみんなで乗り切ろうじゃないか!」

 

「うん! 一緒にお仕事頑張ろうね、ミラーさん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後………午後をまわってみんなで仕事にかかっていた時、カズヒラ・ミラーは唐突に身体の違和感を感じ出す。なにやら身体が熱くなってきたのだ…暑さ対策のために司令室は冷房がつけられているというのに、何故だか身体が熱い。

 なおかつ身体に力がみなぎってくる、さらに細かく言うならば主に下半身に力が…。

 

「どうしたのミラーさん?」

 

 ペンを止めてじっと硬直している彼に気付いた64式自が心配をして声をかける。

 なんでもない…そう言おうと彼女の顔を見て再び固まる。

 

(う、なんなんだこれは……!)

 

 そうしている間にも彼の体はどんどん元気になっていく。

 体の変化を悟られまいと前かがみになるが、その姿を見て彼女は余計に心配する。近付こうとする彼女を手で制し、ミラーはわざとらしく足を組む。

 

「いや、なんでもない! ほんとだ、ちょっとトイレに行ってこようかな…なんて」

 

「さっき言ったばかりではないですか副司令。サボろうとしてもそうはいきませんよ…それよりここ、間違っています。訂正してください」

 

 トイレに逃げようとするミラーを阻止したジェリコは、彼の隣に立って不備のあった書類を目の前においた。

 

「ほらここです、先日の報告書をまとめるにあたってこの内容では不適切です。ですからここは――――」

 

 真面目に不備のあった箇所を指摘し説明をするジェリコ。

 彼女が腕を動かす度に爽やかな香りが鼻をかすめ、顔のすぐそばでは服の上からでも分かる豊かな胸が揺れる。こんな状況でミラーが話をまともに聞けるはずもなく、そんな様子を見てジェリコはムッとする。

 

「私の話を聞いているのですか副司令? どこを見ているんですか、ほらここを見なさい!」

 

 ジェリコに怒鳴られてハッとしたが、既に下腹部は大変なことになっている。

 ばれないように下腹部を隠す行為を不審に思ったのだろう、ジェリコが眉間にしわを寄せて追及をしてくる。いよいよ追い詰められた時、司令室の扉が開かれて97式が冷たい水を持ってきた。

 

「お水持ってきたよ、ちょっと一休み…って、わわわっ!」

 

 何もないところで足をとられた97式は前のめりに転倒、トレーに乗せていたポッドの中身が勢いよくぶちまけられてジェリコと64式自は全身びしょ濡れになってしまった。

 

「もう97式! いつもそんなドジする子じゃないのに!」

 

「えへへへ、ごめん64式ちゃん」

 

「まったくもう……」

 

 舌をちょっぴり出してはにかむ97式にため息をこぼし、ジェリコと64式自は濡れた上着を脱ぐ……ふと、ジェリコはミラーが口をあんぐりと開けてじっと見つめているのに気付く。サングラスでよく分からないが、薄着になったところを見ているように感じた……そこでようやく、先ほどからの異変の理由に気付きジェリコは頬を赤らめ胸元を隠して睨む。

 

「副司令、後でお話があります……覚悟してください。ほら64式、一旦服を変えてきましょう」

 

「うん? 暑かったし、薄着くらいでちょうどいいんじゃ…」

 

「よくありません! ここにはけだものがいます! さあ来なさい!」

 

「いや、確かに虎はいるけど…」

 

 いまいち状況を理解していない64式自であったが、ジェリコに引っ張られるままに司令室を後にする。

 

 二人がいなくなったところでミラーと97式だけとなるが、いまだ謎の元気は残ったまま。濡れた床を雑巾がけする97式であったが、四つん這いになって床を拭いているため、必然的に短いスカートから彼女の下着やお尻が丸見えとなる。

 ミラーは何とか理性を保ち、目を伏せる。

 

「な、なぁ97式……さっき貰った漢方薬、あれって自分で作ったんだよな?」

 

「そうだよ! 原料はカラビーナさんに教わって調合したものだけどさ」

 

「そ、そうなんだ……ちなみに原料って、なに…?」

 

「えっとね、うーん……スッポンでしょ、南米で取れたマカにマムシのエキスに、えっとえっと…オットセイのなんとかと、イモリとかかな?」

 

「くっ…カラビーナの奴! 狙ったな! 呼び出して説教だ!」

 

 97式が述べた原料は全て精力剤の原料となるものばかり。

 WA2000の時もそうであったが、男女の関係にちょっかい出したがる彼女の仕業であることは間違いない。ただちに呼び出して説教をしようとした時、突然司令室の明かりが消えて室内の機材も全て止まってしまった。

 

「停電?」

 

 97式がそう呟くと、司令室のドアがどんどんと叩かれる。

 

「ジェリコ、一体どうしたんだ?」

 

「配線工事をしていたスタッフが事故を起こしてしまったみたいです。プラットフォームの一部が停電しています」

 

「それは大変だ! すぐに行く…えっと確かここの自動ドアは壊して開けられたな」

 

「心配には及びません副司令。すぐに修繕できますから、わざわざドアを壊す必要はありません。直るまで待っていてください」

 

「ああ、分かった。なるべく早く頼む」

 

「善処します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後、まだ停電は解消しない。

 冷房が止まったことで司令室の温度は徐々に上がっていき、小さな窓しかない部屋は風通しが悪い。97式も暑さにちょっとずつまいって来たのか、上着を脱いで少しでも体を冷やそうとする。

 

「ねえねえミラーさん、どうして壁の方向いてるの?」

 

「き、気にしないでくれ! 何でもないから!」

 

「ふーん……ねえ、退屈だし暑いけど何かして遊ぼうよ」

 

「いや、ちょっと今は……それにほら、みんなが一生懸命停電直そうとしてるのに遊んでいたら、ジェリコに叱られるだろう?」

 

「そうかもしれないけどさ……最近二人きりで遊べなかったし、たまにはいいじゃん…」

 

 なるべく97式、いや異性の存在を感じないように努力しているが、97式の言葉はミラーの理性を狂わしていく。深呼吸を何度も繰り返し、平常心を取り戻そうとする…そんな時、頭のてっぺんに冷たい何かが落ちてきて飛び跳ねる。

 慌てて振りかえれば、97式が笑顔で冷水の入ったポッドをもっていた。

 

「ミラーさん、これで体濡らすと冷たくて気持ちいいよ! ほら!」

 

「あ……あぁ……!」

 

 部屋の暑さで火照った身体に水を垂らしていく。

 薄着になりシャツ一枚だけになったところに水をかければ、シャツが透けて彼女の下着やボディラインが露わとなる。ここまでミラーは何とか男の性に抗ってきたが、もう限界だった……突然立ち上がったミラーに驚き、97式はミラーと一緒に床に倒れ込む。

 

「いたたた………ミラーさん、急にどう……ミラーさん…?」

 

 倒れた97式に覆いかぶさるような体勢で、ミラーは彼女の両腕を掴む。

 

「えっと、ミラーさん……ちょっと、怖いよ…? ミラーさん?」

 

 97式の呼びかけは彼の耳には届かない。

 いつもと違う雰囲気のミラーに怖気づいた彼女は、ふとふとももに触れた固い感触に気付く……彼のズボンが大きく膨らんでいるのを見て、97式は目を丸くする。そこでようやく彼がどういう状態にあるかに気付き、97式は羞恥心から顔を赤らめて目を逸らす…。

 だが97式は、潤んだ瞳を彼に向けると少し怯えながらも小さく微笑みかける。

 

 

「いいよ、私……ミラーさんになら、なにされても……その、えっちなことも…ミラーさんなら…」

 

「うっ、97式…!」

 

「……ん…」

 

 ミラーの手が胸にあてられると、97式は小さな声を漏らしピクリと反応した。

 それから彼女はミラーの顔を両手で掴むと、そっとキスをした…。何もかもを受け入れる姿に、ミラーはもう自分を抑えることはしない…。

 

「んん……待って、ミラーさん…」

 

「大丈夫、安心して…乱暴にはしないから…」

 

「そうじゃなくて…」

 

「ほら、力を抜いて…」

 

「……んん……ほんとに待ってってば、ねえったら…」

 

「恥ずかしいのかい?」

 

「それもあるけど…」

 

「けど?」

 

「……蘭々が見てる」

 

「え?」

 

 

 97式のその言葉に一瞬で理性が戻ったミラーは、おそるおそる顔をあげた……97式の言葉通り、そこには蘭々がいる。それも今まで見たこともないような怒りの形相を宿し、暴力的な牙を剥き出しに唸り声をあげていた。

 

 

「あー……蘭々? 一旦その…落ち着こうか? ほら、お互い同意の上でだな……」

 

「グルルルルル……!」

 

「ダメみたい。滅茶苦茶怒ってるよミラーさん」

 

「そんなぁ」

 

 

 

 

 数十分後、停電が直り司令室に戻って来たジェリコと64式自が見たのは、めちゃくちゃに荒された室内と頭から血を流し倒れるミラーの姿であった…。




この作品にR18はない(無慈悲)

どうしてもという方は脳内補完おなしゃす(無能の極み)


最近ツイッター遊びに嵌まってて執筆時間がとれないw(無能の極み×2)

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