METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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恋の騒乱!

 MSFの前哨基地に珍しい客人がやって来た。

 その客人というのは国家保安局の諜報員でもあるアンジェリアとその護衛としてついてきたAK-12とAN-94である。彼女を前哨基地にまで招いたのは、MSFの諜報活動を指揮するオセロットであり、わざわざこの基地まで呼んだのはアンジェリアから機密情報を受け取るためである。

 国家に属する諜報員として、それはとてつもなく危ない橋を渡っていることと同じであり、発覚すれば情報漏洩と国家反逆罪でアンジェリアは間違いなく処刑されるほどの事をしている。

 しかしアンジェリアはそれを承知の上で、命の危険を知りながらもオセロットに情報を流している…。

 

 果たしてアンジェリアの真意とは?

 それは、機密情報を見つめるオセロットの向かいに座り、うっとりとした表情で彼を見つめる姿を見れば一目瞭然だろう。これには護衛のAK-12も呆れ、斜め上の天井に顔を向けて固まっている…AN-94の方はいまいち状況を理解できていないらしい。

 

「それで、お前がこうして情報を寄越していることを上は気付いていないのか?」

 

「それはあなたの方がよく分かってるんじゃないの?MSFは保安局に何人の人間を潜り込ませているのかしら…気になるわね」

 

「さあな…それで、新しいニュースはあるのか? 前線の情報に関しては、そちらの方が一枚上手だ」

 

「興味がありそうな情報がいくつかある。米軍残党共があのエリアで遺物を漁ってるのは知ってると思うけど、奴らは地中海の港から潜水艦を使って荷物を運び出したり運び入れたりしているのよ。それが何なのかはよく分からない…軍が一度強奪を試みたけど、うまくいかなかったわ」

 

「なるほどな」

 

「ごめんなさいね、ハイブリッドに関しては役立つ情報はないわ。けど、あなたが要望したその作戦データは十分役立つと思う。手に入れるのに苦労したわ…報酬、期待してもいいかしら?」

 

 そんな言葉を口にして、アンジェリアは向かいのオセロットに微笑みかけてさりげなく手を伸ばすがタイミングが非常に悪かった、かねてからアンジェリアを泥棒ネコと呼んで嫌っているWA2000がその場に姿を現したのだ。部屋に入ったWA2000がオセロットに手を伸ばすアンジェリアを見た瞬間、怒りの形相に変わるのをAk-12は見逃さなかった。

 

「また現れたわね泥棒ネコ!? オセロットに近付くな!」

 

「や、やぁWA…いつぶりだったかな?」

 

「ちっ……オセロット、なんでこの女がいるのよ!」

 

 アンジェリアを指差しながら猛抗議するWA2000であったが、オセロットは全く相手にせずに資料を読みながらコーヒーをすする。今のところアンジェリアは苦笑しながらも余裕の態度であったが、次に現れた女性を見た瞬間その表情も固まる。

 やって来たのはユーゴ連邦幹部会議員のイリーナだ。

 部屋に入って来た時のイリーナはやら輪かな笑顔を浮かべていたが、部屋にいたアンジェリアの姿を見るなり笑みを消し、凍てつくような目で彼女を睨む。

 

 まるで蛇に睨まれたカエルのように固まっているアンジェリア、滅多に見られない様子に護衛の二人も驚いていた。

 

「すまないアンジェリア、少し席を外す。すぐに戻ってくるから待っていてくれ」

 

「あ、オセロット…! 待っ…」

 

 アンジェリアが救いを求めるように手を伸ばしたが、オセロットはあっという間に外に出ていってしまった。

 頼りのオセロットがいなくなり、息苦しい空間に取り残された彼女はおそるおそる二人に向き直る……イライラした様子のWA2000、殺意全開のイリーナを前に彼女は表情を引き攣らせる…。

 

 

「あ、あー……今日はいい天気だな」

 

「外は雨よ」

 

「そ、そうだったなWA…あははは…」

 

 

 乾いた笑いをこぼすアンジェリアの目の前で、イリーナが取り出した葉巻をギロチンでカットする。その音が嫌に大きく感じ、吸口を斬り落とす仕草がまるで何かを揶揄しているような錯覚を覚えてアンジェリアは震えあがる。

 アンジェリアは背後のAK-12をちらちらと見て助けを求めるが、彼女は素知らぬ顔で状況を楽しんでいた。

 

 

「や、やあイリーナ…久しぶりだな、何年振りだったかしら?」

 

 

 なんとか声を絞り出してあたり障りの無い言葉をイリーナに向けるが、イリーナは目も合わせず葉巻の先端をマッチで炙っている。ゆっくりとした動作で葉巻に火をつけて煙を口に含んで吐きだす…。

 

「同志たちの中には今もお前の首を欲しがってる奴は大勢いる。執念深い我が同志たちは祖国を荒した敵への恨みは忘れない…お前らはセルビアを支援し我らの同志たちを捕らえ拷問にかけ処刑したな。いつもいつもお前らは祖国を掻き乱し争いごとを引き起こす」

 

「だいぶ恨みがあるようねイリーナ。まあなんとなく想像がつくけど、アンタもユーゴ内戦の当事者ってことかしらね?」

 

「ワルサー、こいつに絶対気を許すなよ。ボリシェビキ政権以来脈々と受け継がれてきたチェキストの末裔だ、私自身こいつのせいで何度か危機に立たされた事がある」

 

 ユーゴがまだバラバラの状態にあった時、パルチザンとしてゲリラ活動をしていたイリーナはクロアチアとセルビアの両陣営から敵対視され苛烈な攻撃を受けていた。中でもセルビア側の領域では、セルビアを支援していた新ソ連のゲリラ狩りによって何人もの同志たちが犠牲になった。

 その時セルビアに派遣されていた諜報員の一人が、アンジェリアだったのだ。

 実際に二人は戦時下のユーゴで面識があったようで、イリーナにとっては忘れがたい経験の一つとなった用だった。

 

「なるほどね、アンジェとあなたはそんな過去があったの…でもその事でアンジェを恨むのはちょっと違うんじゃないかしら?」

 

 それまで黙っていたAK-12が口を出すと、一度イリーナはAK-12を鋭い目つきで睨んだがやがて目を伏せる。

 

「確かにその通りだ。お互い、祖国を想っての行動だ…それに恨み言をいつまでも言い続けるのは建設的じゃないしな。せっかくの機会だからな、和解しようか?」

 

「いや結構だよイリーナ。正しい事をしたのかどうか今でも分からないが、私は私の使命を果たしただけだ。誰かに頭を下げることも誇ることもない、ただそれが任務だったからしたまでよ」

 

「結構なことだ。さすが保安局様は言うことが違う…拳銃を持参してこなかったのが悔やまれるよ、じゃなければ今すぐお前の頭を吹っ飛ばして中身をぶちまけさせてやりたかったのにな」

 

「勘弁してくれ、イリーナ」

 

 本当に銃を持っていたら死んでいたかもしれない、なにせイリーナが内戦時に敵対者へ果たした報復の凄まじさや戦後の戦犯処理の苛烈さはアンジェリアが属する国家保安局でも語り草になっているのだから。

 それはさておきイリーナの激情はひとまず収まり、さっきまでの恐ろしい姿からは一変してにやけ面を浮かべ始める…どうやら彼女の興味はオセロットを中心とするWA2000とアンジェリアの色恋沙汰に移ったようだ。

 

 今度はWA2000が不機嫌になる番で、逆にアンジェリアはイリーナの圧力から解放されたおかげなのか余裕があった。

 

「まああんたの情報がMSFの任務に役立っているのは分かるけど……だからと言って後から現れたあんたがオセロットに近付いていい理由になんかならないわよ!!」

 

「別にあなたと張り合うつもりはないわWA。私は私なりに彼の素晴らしいところを知ってるんだもの」

 

「な、なによ…」

 

「見たところあなたは…ふふ、まあお子ちゃまには分からないわよね……あんな素敵な出来事は…」

 

 赤らめた頬に手を当ててうっとりとした表情を浮かべるアンジェリアを見て、WA2000は激高し机を思い切り叩く。

 隣で大笑いしているイリーナにイライラした様子で怒鳴りつけ、惚けた表情のままのアンジェリアを睨みつける。

 

「破廉恥だわ! この阿婆擦れ! アンタがどんな手を使ったか分かんないけど、オセロットの一番は私なの! 後から出てきたアンタの思い通りになんかさせないわよ!」

 

「最終的に選ぶのは彼よ? 彼も大変ね、こんなお子ちゃまに付きまとわれて…」

 

「なんですって!? 誰がガキよ! わ、わたしほど彼の教えに忠実で技術を継承した優秀な存在はいないわ、そこらの奴に負けない実力はあるわよ!」

 

「でもそれって結局師弟の域を出てないってことじゃない?」

 

「…っ!?」

 

「あっははははは! もうダメだ、腹が痛いっ! ハハハハハ!」

 

「イリーナ!! あんたさっきから笑い過ぎよ!」

 

 腹を抱えて大笑いしているのはイリーナだけでなく、AK-12も一緒になって笑っているしAN-94もとりあえず笑っていた。これ以上ないほど顔を真っ赤にしたWA2000は耐え切れず、アンジェリアを無理矢理引き立たせてその背を押して部屋から追いだしていく。

 

「あんたもう出てけ! とっとと帰りなさい!」

 

「待て、オセロットに部屋で待っていろと…」

 

「うるさい! 出てけ! 二度と来るな!」

 

「これは退散した方が今は良さそうだな」

 

 激高するWA2000から逃げるように、アンジェリアは護衛二人を連れて足早にその場から立ち去っていった。

 怒り狂う猫のように息を荒げるWA2000は、後ろから肩を掴まれ咄嗟に振りほどこうとしたが、肩を掴んだのはオセロットであり振り上げた腕が掴まれる。

 

「騒ぎ過ぎだ」

 

「うっ…!」

 

 振り返ったとたん、WA2000は額に手刀を叩き込まれる。

 額をおさえて悶絶するWA2000のそばにわざわざやって来たイリーナが、サムズアップしながら肩を叩いて行ったことにさらに苛立ちを募らせる。

 

「まあ頑張れよワルサー。それじゃあオセロット、例のものは貰ってくからな」

 

「ああ、あまりうちの未熟な生徒をからかうんじゃないぞ」

 

「待てオセロット。これ以上笑い転げるのは私も遠慮しておくよ」

 

「あんたもさっさと帰りなさい! スオミに邪魔しに来たって言いつけてやるんだから!」

 

「ちょっと待てワルサー、それはシャレにならないからやめてくれ」

 

「うるさい! さっさと帰れ!」

 

 イリーナの事も拳を振り上げて追い払い、ようやくその場は静かになる…オセロットの憐れむ様な目線がなによりも辛いが…。

 

「それで、あの女から今度はどんな情報を貰ったわけ? どうせ教えてくれないんでしょうけど…」

 

「いや、今回は教えても構わない。MSF全体に役立てられる物だからな」

 

 オセロットが掴む情報は一度諜報班に持ち帰りより詳しく調べられた情報のみしか教えられないため、今回もそうだと思っていたWA2000は意表を突かれる。普段と違う様子に落ち着きを取り戻した彼女は、アンジェリアから入手した作戦データとやらに興味を示すが、そのデータ量の膨大さに目を丸くする。

 単なる小規模な戦地の記録などではない、もっと大きな記録だ。

 

「すごいデータ量ね。でも戦術人形に与える作戦報告書として纏め上げるとなるともう少し情報はコンパクトになると思うけど、それにしたって凄まじい量ね」

 

「これはそういう使い方をするためのものじゃない。これには正規軍が経験したある戦場の詳細なデータがおさめられており、シミュレーションとして用いるのに利用する。お前たち戦術人形の訓練の一環として使えるんじゃないかと思ってな」

 

「なるほどね…ちなみに、その戦場はなんなの?」

 

「第三次世界大戦のアムール戦線とウラジオストク戦線…正規軍と人民解放軍双方合わせて数百万もの兵力が動員され、世界史上最大の激戦となった戦場のデータだ…体験してみるか? 果てしない消耗戦を、一兵士の視点としてな…?」

 

 オセロットの言葉に、WA2000は息を飲む。

 

 それは彼女がユーゴ内戦やこれまで経験したいくつもの戦闘と比較しても比較にならない、人類が生み出した暴力装置の全てを一点に集約したような苛烈な戦場なのだ。




イチャイチャやれっていうから(違う


そういえばこの作品の登場人物や組織は好きに使ってくれてええで
その場合一言貰えれば見に行ったりもしますんで!

ただコラボってなると、最近執筆時間取れないから難しいかもしれませぬ(´ω`)
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