なんの因果か辺鄙な村にある孤児院をあのハイブリッドの襲撃者たちから防衛することとなったエグゼとレックス。手を組むのは因縁浅からぬAR小隊の3人と、国家保安局エージェントのアンジェリア指揮下の反逆小隊の2人だ。一見いがみ合いはすれども、決して手を組みあうことなどあり得ない面子に思えるかもしれないが意外なことに彼女たちは村の孤児院を守るという共通の意思のもとで協力し合うのだった。
彼女たちがまず最初に手を付けたのは、孤児院の子どもたちやその面倒を見る孤児院の先生が身を隠すことのできる安全な場所の確保だった。幼い子どもにも情け容赦なく手をかけるハイブリッドから守る最適な方法は今すぐこの場から子どもたちを逃がすことだが、周辺エリアではいつどこでハイブリッドの襲撃があるか分からない。
そこで一同考えたのが、子どもたちをこの村の中心に位置する古い地下貯蔵庫に隠れてもらい、村の全域を防御拠点として用い罠を張りめぐらせる作戦だ。孤児院の子どもたちが慣れ親しんだ村全体を罠に変える、すなわち村は破壊されつくすということを意味していた。
哀しそうに泣く子どもたちに胸を痛めるが、命には代えられない…。
「みんなー! 偵察してきたよー!」
子どもたちを避難させ、罠に用いる物資をかき集めている間に偵察に出していたSOPⅡが戻って来た。
作戦を立てるには敵の情報を知るのが何より大事、ましてや数で劣る彼女たちにとって情報は先手を打つための武器となる。手持ちのカメラにおさめた画像データを早速みんなに見せ、作戦会議が始まった。
「敵の数はたぶん100体以上いるよ。それに戦車が一両…滅茶苦茶堅くて強いあのマクスウェル主力戦車だよ」
「それだけじゃない。重装戦術人形ジャガーノートもいるわね、敵は火力面においても私たちを圧倒しているわね」
「それに敵は100体ではきかないかもしれない」
「それは、どういうことですかAN-94さん?」
AN-94が示唆するハイブリッドの新手についてM4が疑問を挟み込む。
AK-12と共にアンジェリアの指示でハイブリッドの情報収集任務に従事するAN-94はこの中のメンバーにおいて、敵の情報をより多く知る存在だ。AN-94曰く、ハイブリッドは戦闘音や同胞の声に反応し集まってくる習性があるのだという。
そしてさらに厄介な存在がいる…本能的に戦闘行為を行うハイブリッドを統率・指揮し、より高度な戦術を立てて群れを部隊として運用しようとする存在だ。SOPⅡが偵察で得た画像の中には、一人の戦術指揮をとる人形がおさめられていた。
青白い肌に長い黒髪をポニーテールにし、鉄血のハイエンドモデルに近い容姿の戦術人形だ。
他の多くのハイブリッドらが歪に変異しているのにも関わらず、その人形だけは小奇麗な容姿を保っている。その画像を見たM4は、何か知っていないかとエグゼに振りかえる。
「あなた、これを知ってしますか?」
写真の画像を見たエグゼはしばし空を見上げて思いだそうとしたが、どうやら見覚えはないらしいがレックスは少し覚えがあった。
「コマンダー、以前UMP45が任務で遭遇した鹵獲されたハイエンドモデルとはこいつの事では?」
「かもしれねえな。あのクソどもオレらの古巣を漁りやがって…」
「同じ鉄血なんだからもっと詳しい情報を持っていたりしないの?」
口を挟んできたAR-15をエグゼは軽く睨みつけるように見た。特にいがみ合うことは無いが、うっすらと両者に軋轢があるのが分かる。
「オレは開発に関係してないからな。アーキテクトやドリーマーなら知ってたかもな。古巣には製造されてないだけで設計書が残っていたり、プロトタイプモデルはいくつもあるから工場を占拠した奴らが何を送り込んできても驚きはしねえよ……それよりお前ら戦いたくてうずうずしてねえか? とりあえず一発殴りに行こうぜ」
エグゼはニヤリと笑い、呆気にとられるメンバーたちを見回した。
ハイブリッドが占拠した鉄血の工場から新たに生み出されたハイエンドモデル【レイダー】は退屈をしていた。
他の生み出されたハイエンドモデルたちがより高い位置に立ち、極秘任務に従事しているというのに自分は荒野に派遣され遺物の発掘や活動圏内にいる人間の排除が主な任務だ。排除する相手が正規軍やそれに準じる軍事組織ならともかく、正規軍は部隊を派遣してこないし万一に派遣してきたとしても戦闘回避を命じられる。
そんな日が続くごとに集中力は失われ、警戒感も薄まるもの…。
眠気すら感じられる退屈な任務は、前方を進むジャガーノートが突然爆発に巻き込まれて大破したことで一気に流れが変わる。爆発の衝撃波で戦車の砲塔にあぐらをかいていたレイダーは吹っ飛ばされて転落する。
「いってぇ…んだよ…!」
打ちつけた額を押さえながら起き上がったレイダーが見たのは、自身が率いる部隊めがけ投げ込まれる爆弾と縦横無尽にバイクを走らせるAK-12の姿だ。
突然の奇襲に呆気にとられたレイダーであったが、すぐにその表情は獰猛な笑みへと変わる。
「隊列を組め!」
その言葉を聞いた瞬間、右往左往していたハイブリッドの部隊に一瞬で規律が戻る。
前衛の人形が強固な盾を構え、その背後に銃を構えた戦術人形が並ぶ。
古い時代の戦列歩兵陣のように並んだハイブリッドを前にして、奇襲をかけたAK-12はバイクをターンさせて後退する。
「一斉射撃! 撃てッ!」
レイダーの号令と共にハイブリッドの戦列より強力な火砲が火を吹いた。
一撃一撃は強力だが命中率の低い砲火を、密集陣形からの一斉射撃で補う攻撃方法だった。一斉に放たれた砲火が大地を抉り、辺り一面を黒煙と砂煙で覆った。その先を睨みつけるレイダーであったが、動きがあったのは彼女の視界の端だった。
煙の中を突き抜けてきた一体の戦術人形が密集陣形を組むハイブリッドの側面を抜け、一気にレイダーへと詰め寄り強烈な斬撃を浴びせかけた。それをレイダーは咄嗟にそばに控えていた人形を盾とすることで防ぐが、二の太刀が迫ると止むを得ず自身の銃を犠牲にして斬撃を防いだ。
レイダーの動きが阻害されると統率するハイブリッドの動きも鈍くなる。
そこを先ほど奇襲を仕掛けたと思われるバイクに乗る戦術人形が再び襲いかかる。
「クソッたれが……あぁ!? お前、もしかして…エクス姉ちゃんか?」
「なんだテメェは?」
一方、攻撃を受けたレイダーは今なお競り合う相手の正体に気付くと、獲物を仕留めるような表情から途端に無垢な子どものような笑顔を浮かべた。それを不可解に思うエグゼであったが、攻撃の手は緩めない。
「やっぱりそうだエクス姉ちゃんだ! そうだろう!? なあ! そうなんだろうエクス姉ちゃん!」
「うるせえ! テメェにそんな呼ばれ方される筋合いはねえんだよっ!」
笑うレイダーを力任せに弾き飛ばすも、レイダーは直ぐに起き上がると素早い身のこなしで戦車の砲塔に跳び退く。それと同時にハイブリッドらは再び統率力を取り戻した。
「クソみたいな任務だとずっと思ってたんだ! だが違った! あんたに会いたかったんだよエクス姉ちゃん! ハハ、なんて素晴らしい日だ! あんた滅茶苦茶強いんだろ、そうだろう! あんたならあたしの退屈を紛らわしてくれる以上の事をしてくれるよな!そうだよな!」
レイダーがエグゼに向けるまなざしはまるで、憧れの人物を見るようなものであった。実際にレイダーはエグゼを尊敬し、あるいは崇拝に近い想いを抱いていた。だからこそそんなエグゼに全力の力を叩きつけることは最大級の敬意だと思っていた。
レイダーの指示で動きだすマクスウェル主力戦車、そばには強固な装甲を持った随伴歩兵が控え防備を固める。
あの戦いで幾多もの兵器を貫いたマクスウェル主力戦車の主砲がエネルギーを充填させていく……一撃で何もかもを粉砕する、圧倒的な一撃だ。
「はっ、バカが…まともにやってられるかよ!」
しかしエグゼは発煙弾を投げ込むことでマクスウェルの視界を遮断、主砲の強力な一撃は煙幕に遮られて外れてしまう。
「追え!逃がすな!」
マクスウェルの主砲が再び充填されるには時間がかかる。
撤退するエグゼとAK-12をすぐ追いかけるよう指示したが、前に出たハイブリッドたちは突然足下からの爆発に巻き込まれて壊滅状態に陥る。煙幕の最中にばら撒かれた地雷を踏みつけたのだとすぐに理解したレイダーであったが、その時すでにエグゼたちはバイクにまたがり遠くへ行ってしまっていた。
しかしレイダーはまだ笑みを消していなかった…。
「逃がすかよ、姉ちゃん…やっと会えたんだ! どこにも逃がすもんかよ!」
レイダーは、走り去った先を笑いながら見つめつつハイブリッドの部隊を進撃させる。
最近Twitter上でエクスキューショナー愛を叫びまくってるのはたぶんワイです(適当)