FOXHOUNDの称号を持つ9A91率いる
だからと言って闇雲に増やそうという考えはなく、ひとまずもう一個小隊ぶんの増員を総司令官のスネークと部隊長9A91との間で話をまとめていた。バルザーヤの増員メンバーについては、当初正規のルートで戦術人形を購入することも検討されたが、最終的にはMSF伝統の
そして今日、バルザーヤ拡大のため腕の立つ特殊部隊候補生たちを司令官のスネークに紹介する計画であった。スネークに紹介するため、メンバーをグローザに呼んできてもらう間、9A91はスネークにメンバーを集めるまでの詳細を話し褒めてもらっていた。既に候補生たちの訓練を始め、MSFの理念についても叩き込み忠誠心も持たせてある…まあ戦術人形にとって忠誠心という意味は人間と変わってくるのだが、珍しく成果をアピールする9A91にスネークも一緒になって喜び褒めてあげる。
二人きりで頭を撫でられて9A91は愛らしく微笑んでいた。
「ところで、グローザはまだ来ないのか?」
「遅いですね…どこに行っちゃったんでしょうか?」
グローザに新しい仲間を呼びに行ってもらうよう頼んでからもうずいぶんと時間が経つ。
たまにはこんな事もあるだろうとしばらくは二人で談笑していたが、いくらなんでも遅すぎるということで二人はグローザの様子を見に行くこととした。マザーベース内で事件が起こるということは稀であるし、もし何かあれば緊急警報が鳴らされるはずだ。
腑に落ちない様子で宿舎へ向かうと、なんと廊下の壁にもたれかかって座り込んでいるSV-98がいるではないか。
「SV-98! どうしたんですか!?」
「うぅ……た、隊長……た、たすけ…」
「一体何が…?」
顔をあげたSV-98の目は虚ろで顔色が悪そうに見える。
ただ事ではない気配を感じていると、すぐ近くの扉が開かれた。
「SV-98、この程度で根をあげるようじゃバルザーヤには……はっ、隊長さん…!」
「グローザ! あなた一体何をしてるんですか!?」
「あ、いや……ちょっとね…」
部屋から出てきたのはなんとグローザだ。
彼女は9A91を見た瞬間手に持っていた物を咄嗟に隠したが、一緒にいたスネークはその手に酒瓶を持っていたことを見逃さなかった。厳しい目つきで説明を求めると、グローザは珍しく目を泳がせて頬を掻いている……するとまた別な人物が同じ部屋から姿を見せた。
プラチナブロンドの髪のその女性は千鳥足のままグローザに近付くと、肩を組んで酒瓶をあおる…ぷはー!と気持ちよさそうに酒を飲み干す彼女は既に出来上がっていた。
「にげないでょグローザ~、あらら……? 隊長さんと、へんなおじさんがいるわ~?」
「A-91! 司令官になんて口の利き方を!」
"A-91"彼女こそ当初9A91がスネークに紹介するはずだった新しい仲間であった。
それが今や酷く泥酔して紹介するはずのスネークをちゃんと認知しているかどうかも怪しいコンディションで、さらにあろうことかスネークをへんなおじさん呼ばわりだ。9A91はスネークへの申し訳なさとA-91への怒りに駆られるが、二人の背後から見えた部屋の様子に表情が凍りつく。
部屋にはバルザーヤメンバーのPKPとヴィーフリもおり、そこへ新しい仲間でA-91と同じようにスネークへ紹介するはずだった"PP-19Bizon"と"Saiga-12"も混じって酒盛りをしているではないか。グローザを押しのけて9A91が部屋に入って来るのを見た新入りの
「や~~ん! 隊長さんいつ見ても美少女過ぎるよ! やっぱりいい匂いする~!」
9A91に抱き付き頬擦りするサイガでるが、やや潔癖症の気がある彼女は後ろにいるスネークを見るやジト目で睨む。
「ちょっと、いま美少女子会やってるんですよ? おじさんは立ち入り禁止です!」
A-91と同じように酔っぱらっているサイガはその相手がMSF司令官のスネークだと気付いていない。
それが面白可笑しくてクスクス笑っていたグローザであったが、9A91が無言で静かに抱き付くサイガを絞め落としたの見て笑顔を一瞬で消す。周囲は9A91の変化に気付かずばか騒ぎしていたが、突如響いた破壊音に跳びあがり音のした方を見る。
「酔い……覚めましたか?」
今しがた9A91が殴りつけたと思われる壁が陥没し、パラパラと砕けた壁の破片が落ちる。
9A91は微笑んでいるが目は全く笑っていない。
一瞬で酔いも吹き飛んだ一同は、9A91が声をあげると一斉に動いて彼女の前に整列する。失神するサイガもたたき起こされたが、一瞬で状況を理解し整列する。
「司令官、すみません。ちょっとお時間いただけますか?」
すがすがしい笑顔で振りかえってきた9A91に、スネークは頷くしかなかった。
「――――――と、言うわけで以上が我々の部隊に新たに加わるメンバーです。ちょっとトラブルもありましたし、どうしようもない連中ですけど覚えてあげてください司令官」
「ちょっと待って隊長さん、どうしようもない連中って…」
「黙りなさいグローザ」
改めてバルザーヤの既存メンバーと共にスネークに紹介される新メンバーの三名、
唯一、廊下で酔いつぶれていたSV-98だけは無傷だ。
彼女はみんながノリノリで酒盛りし始める中、なんとか止めようとしたがのだがみんなに飲まされて潰されたということで無罪となる。ただ部隊の先輩らがボコボコにされた中、一人だけ無傷なのが落ち着かないのかそわそわしていた。
「まあなんだ…9A91が見込んだのだから3人とも優秀な兵士であることに疑いは持たないが……飲酒がダメとは言わないが、節度を守ってだな…周りに迷惑をかけたりしないように」
「その通りです。酒を飲むのは構いませんが、時と場所を考えてください」
「ちょっと待って隊長、あなたがそれを―――」
「何か文句でもあるんですかヴィーフリ?」
「イエ、ナニモ…」
この場に限っては素直に話を聞いていた方が利口だ。
敬愛するスネークの前で無様な姿を見せられてしまったことに9A91はお怒りだ。普段怒ることは滅多にないが、スネークが絡めば暴走しがちな事はみんな知っていることだった。
「なお、今回の失態を踏まえて我が部隊員は私を含め飲酒量の制限と時間を厳しく制限します」
「え? そんなことしたら、一番困るの隊長じゃ…」
「口答えするつもりですかPKP?」
「イヤ、ナンデモアリマセン…」
有無を言わさない態度に歴戦のスペツナズも震えあがる。
このまま9A91の厳しい制裁が押し通るかに思えたが、そこは彼女の副官であり制御役のグローザが動く。
「まあまあ隊長さん、そう厳しくしないで。この子たち伝説のビッグボスに会うのに緊張するからって、少し気を紛らわせるのにお酒を飲ませてあげただけなのよ」
「そんなの言い訳になりません! いいですか、司令官はMSFという組織の長なんです! そんな方を前にしてあのような態度…言語道断です!」
「厳しすぎるのは良くないわ隊長さん。あの子たちも反省してるし、そもそも勧めたのは私よ? 責任を取るのなら私一人で十分だわ」
「え~? あたしが飲んでるの見てグローザが―――ぐふっ…!」
A-91がいまだアルコールが残った様子で何かを口走りそうになったが、隣にいたPKPが即座に脇腹へひじ打ちして黙らせる。A-91は常にアルコールを摂取し、それが通常状態というやや困った戦術人形だ。
それからもグローザの説得は続き、彼女の言葉を聞いて少し落ち着いたところでそっと耳打ちする。
「――――そんな制限しちゃったら、一番困るのは隊長さんでしょう?」
落ち着いたところでのその言葉は9A91に確かに効いたようで、ようやく考えを改めるに至る。スネークも今回の件で罰を与えるつもりもないので、この件はただ注意にとどめることとなった…。
「分かりました、今回の事は不問と致します。ですが、明日からもうあなたたちはお客さんではなくMSFに所属する兵士として自覚を持って訓練に励んでもらいます。これについてこられないようなら私の部隊に必要ありません、容赦なく切り捨てていきます。いいですね?」
9A91が見回すと、バイソン・A-91・サイガの三人は背筋を伸ばし敬礼を返す。
「いいでしょう。その決意が微塵も揺らがないことを祈ります…3人とも、アウターヘヴンへようこそ」
9A91&スペツナズ「「「「というわけでまずは歓迎会したいと思うのでお酒ください」」」」
春田さん「あの、あなたたち出禁ですから」ニッコリ