METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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二人はトラブルメーカー

「最近なんだか仕事が薄い気がする…」

 

 唐突にそんなことをつぶやいた馴染みの戦友に、ちょうど真正面に座ってビールを飲み干そうとしていたエグゼは戸惑い、少しだけ口に含んでいたビールを飲みこんでからジョッキをテーブルの上に置く。

 

「あ? なんだって?」

 

 重要なことを聞き逃すほど耳が遠いわけではないのだが、たった今目の前のスコーピオンが漏らした言葉を信じられないエグゼは目の前の戦術人形が漏らした言葉を追求しようとする。

 "何言ってんだこいつは?"そんな風に見ているエグゼに対し、スコーピオンは気難しい表情で腕を組んでいる。

 それからスコーピオンは腕を解いてビールを一口…それからまた腕を組んでうなりだす。

 エグゼは段々とイライラを募らせている。

 

 そもそも今回こうしてエグゼとスコーピオンがさしで飲んでいるのは、ここ何か月かに及ぶ過密なスケージュールを片付けた後の二人だけの打ち上げという名目なのだ。 

 MSF司令部が打ち上げた経費削減計画のため、エグゼとスコーピオンが現場で動く戦術人形の筆頭として最前線に立って部隊の編成や装備の見直しなどを行い、無駄に個性の強い部下たちの突き上げや上からの圧迫に二人とも苛まれつつその仕事を遂行。

 それ以外にもMSFとしての業務をこなすのもある。

 新兵の訓練や実戦なども当たり前にこなさなければならない。

 それに加え部下たちのメンタルケアだ…メシが不味いだの、隣の部屋の戦術人形が夜中までうるさいからどうにかしてくれだの、シーツの交換をもっと早くしろだのと……一昔前のエグゼならその場で激高して殴り返す挨拶をするのが当たり前だったが、最近では丸くなったのか一応は話を聞くようにしている、一応は。

 

 それはともかく、そんな激務を乗り越えての慰労会だったのだ。

 だというのにスコーピオンは最近仕事が薄い…などと漏らすのだ、一瞬キレかかったエグゼだが元々変なことを言うスコーピオンの事を考えいよいよ頭がおかしくなったのではと勘繰りだす。

 

「おいスコーピオン、お前大丈夫か? くそ忙しい毎日で頭がおかしくなったんじゃねえだろうな?」

 

「あたしの頭はしっかりしてるよ」

 

「だったら何なんだよ?」

 

「自分でもどう言っていいか分からないんだけど……なんというかこう…あたしらはしっかり働いていたと思うんだけど、ちゃんと働けてなかったというか…活躍出来てなかったというか、影が薄かったというか…」

 

「影が薄いだって? おいくそサソリ、オレたちがやって来たことはそんなもんじゃねえだろ。そりゃ確かに地味な仕事も多かったけどよ、必要なことだろうが」

 

「いや、そういう事じゃなくてだね」

 

「あぁ?なんなんだよ一体よ!」

 

 どうにもスコーピオンの言いたいことが全く理解できないエグゼ。

 これ以上付き合っていたら自分までおかしくなってしまいそうだと思ってしまう。

 飲み具合が半端のビールを一気に飲み干し追加のビールを用意する…酒、飲まずにはいられない!

 

「で? 何が言いたいんだよお前はよ?」

 

「なんて言うんだろうな…なんかこう、見てもらうべき人たちにあたしらの活躍を見てもらえてなかったというかさ…だいぶ長い時間、あたしらがここにいなかったみたいなさ……ねえ、エグゼもそう思ったりしてない?あたしらの活躍がここ2年くらい忘れ去られていたかもしれないとか! このままじゃあたしらの存在は古ぼけた歴史の底に沈んで行ってしまう! エグゼ、この気持ち分かってくれるよね!?」

 

「分かるわけねえだろバカやろうが!」

 

 ついにスコーピオンが狂いだした!

 それをエグゼは怒りの鉄拳で強引に黙らせると、吹っ飛んだ先で鼻っ面を押さえて呻くスコーピオンを引き起こす。

 テーブルに置いてあったビール瓶をひったくるように手に取ると、ビールの栓に噛み付いて開ける。

 

「おら! 飲み足りねーから余計な事言い出すんだお前は、ほら飲め!」

 

 開けたばかりのビール瓶をスコーピオンの口に突っ込んでやると中の液体が見る見るうちになくなっていく。

 

「どうだ調子は?」

 

「はぁ…はぁ……もう一杯ちょうだい…」

 

「よっしゃ!」

 

 既に二本目を用意していたエグゼからビール瓶を受け取ると、先ほどと同じように瞬く間にビールを飲み干してしまった。

 ちなみに二人はエグゼの部屋で飲んでいるのだが、後から合流する予定で遅れてきたハンターが部屋の中の様子を見て危機感を抱きそっと扉を閉めて去っていった……それはともかく、ビールを2本飲んだことですっかり上機嫌になったスコーピオンに、エグゼもほっとしていた。

 

「はぁ、やっぱりお酒は美味しいねぇ。ここ最近飲めてなかったし、ストレス溜まってたのかな?」

 

「そうかもな。まあそういうストレス発散も兼ねての事なんだから、もっと飲めよ」

 

「お、悪いね。いっただきまーす! そういえば飲み物ってまだあるの?」

 

「そりゃあもちろん…ってあれ? 悪い、あんまりなかったな…」

 

「まあ無くなったら後でスプリングフィールドのカフェに行こうよ! あ、そう思ったら久しぶりに行きたくなったね!」

 

「おう行こうぜ、その前に残った酒を片付けてっと…さーてっとスプリングフィールドのとこで何飲もうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? お酒の提供はしてないだって~!?」

 

「おいどういうことだよそりゃあ!」

 

「あの…二人とも静かにしてくださいよ…」

 

 すっかり酔っぱらった状態の二人が意気揚々とスプリングフィールドのカフェに向かったところで言われたのは、アルコール類の提供一時停止中との言葉だった。

 美味しいお酒が飲めると思ってやって来た二人はご立腹だ。

 それに対しカフェを経営しているスプリングフィールドは呆れつつ対応するしかない。

 

「カフェにお酒が無いって、どういうことなのスプリングフィールド!?」

 

「そうだそうだ! というかなんだマスクなんかしてお前! 風邪か!?」

 

「もう静かにしてください…! 全く分からないんですか? 今世界的に新型ウイルスが流行していて、MSFでも感染予防対策が取られてるんですよ?」

 

「新型ウイルスだぁ? オレたち戦術人形にそんなの関係ねえだろ?」

 

「そんなことありませんよ。ウイルスの感染経路は色々あるんですから…ほら、二人とも手を出してください」

 

 スプリングフィールドに言われた通り両手を差し出した二人。

 スプリングフィールドはスプレーボトルで、二人の手に向けてシュッシュと中の液体を噴霧する。

 よく分からない液体を手に塗られた二人は訝しい様子で手に鼻を近づける…その妙に嗅ぎ慣れた匂いは…。

 

「これは…酒か!なんだ、あるじゃねえかよ!」

 

「消毒用アルコールです!! 全くもう…! 9A91といいグローザといいあなたたちといい…ここのカフェはコーヒーがメインなんですからね!?」

 

「分かったってば…仕方ないよエグゼ、どこか別な場所でお酒を探そうよ」

 

「そうだな…邪魔したなスプリングフィールド」

 

「そんな悲しそうな顔しないでください…いつまでも続きませんから、落ち着いてきたらまたお酒の提供も再開しますからね?」

 

 ちょっぴり罪悪感を感じるスプリングフィールドであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、マスクって感染予防に効果あるのか?」

 

「うーんよく分からないなぁ。どうなんだろう?」

 

 お酒を求めてマザーベースの甲板をふらふら歩いている二人は何気なく見るマザーベースの日常の中で、そこそこマスク着用者がいることに今更ながら気付く。

 しばらくマザーベースのスタッフたちの様子を見ていたが、エグゼがあることに気付く。

 

「おいスコーピオン、オレ気付いたんだけどよ…女の隊員がほぼ全員マスクしてやがるぞ」

 

「え? そうなの?」

 

 エグゼに言われてスコーピオンも甲板を行くMSFのスタッフたちを観察する。

 マスクを着用していないスタッフも見かけるのだが、それは男性スタッフがほとんど…エグゼの言う通り女性スタッフはほとんどが着用しているではないか。

 

「一体どういうことだ? なんか理由でもあるのか?」

 

「何だろうな…あ!」

 

「お、どうしたスコーピオン?」

 

「思い出した! 前にスタッフの子と話してた時、マスク付けると目元だけメイクすれば楽なのよね~なんて言ってた気が!」

 

 スコーピオンの話は妙に胡散臭い事がほとんどで半信半疑だったが、よく見れば女性たちはしっかり目元のメイクを行っているではないか。

 仕事柄、身だしなみに気をつかっている者など前までほとんどいなかったというのにだ。

 マスクを着用することでメイクに費やす時間が短縮されることで、ちょっとした時間を使ってメイクをするのかもしれない…というのはスコーピオンの推測だが、あながち間違いではないのかもしれない。

 さらにスコーピオンは推察する。

 

「マスクをしていると女の子は可愛く見えるのかもしれない…」

 

「は?」

 

「ほら、マスクをすることで小顔効果が生まれるじゃん? ほらあそこにいる子見て」

 

 スコーピオンが示した女性スタッフはエグゼも良く知る人物だ。

 そのスタッフもマスクを着けているが、言われてみれば確かにいつもより可愛く見えるかもしれない。

 

「ほら、ちょうどここにマスクが二枚あるし付けてみようよ」

 

 ちょうど都合よくマスクを2枚持っていたスコーピオンよりマスクを受け取り、半信半疑でマスクを着けてみた。

 つけ慣れていないからか妙に息苦しさを感じてしまう…スコーピオンはどんな感じだろうか?

 

「おぉ…確かに、なんかお前いつもよりかわいく見えるかもな…なんというか、アホっぽく見えないわ」

 

「アホ言うな。エグゼもなんか印象変わるね! かわいいよりキレイめに見えるし、なんというかガサツに見えないね!」

 

「がさつは余計だ」

 

 お互い自分の顔がどんな風に見えているのか分からないので、二人で好き勝手言い合っているが、二人ともまんざらでもない様子。

 

「しかしこんなマスク付けながら訓練してたら、人間だったら息苦しくてやってられねえよな?」

 

「でも感染対策はしなきゃならないしさ、大変だよね人間は……ん?」

 

「なんだ? また何か思いついたのか?」

 

「エグゼ…こんな話聞いたことない? 南極ではウイルスも生きていられないくらい寒いから、誰も風邪とか引いたりしないって…」

 

「まあ、なんか聞いたことあるけどよ…それがどうした?」

 

「マスクを着けていると訓練が苦しい、でも感染対策しなきゃならない…だったら南極で訓練すれば?」

 

「………スコーピオン、お前やっぱ天才だよ! いいじゃん面白そうだ!」

 

「でしょでしょ!!」

 

「よっしゃあ、じゃあ早速南極に基地建設だ! 確か南極基地の跡地がどっかに残ってるはずだからそいつを確認して輸送ルートを確立できれば、すぐにできそうだな!!」

 

 スコーピオンのひょんな発想から生まれたこのあまりにも非常識でぶっとんだアイデアは二人の驚異的な熱意と、一部の人形たちの悪ノリが作用しどんどんと計画が進んでいく。

 最終的には気付いたスネークとミラーが計画を中止させたが、その頃には基地の設計図も輸送ルートも人員も建設資材や機材も用意されているという、間一髪のタイミングであった…。

 

 その後しばらく、スコーピオンとエグゼは一緒にさせると危険、ということで二人は別々な任務を請け負わされて再び多忙な日々を送ることになったのだった。




時事ネタと、メタいネタをぶっこんだだけのお話

ふとした思い付きやで

ほなまたどこかで
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